2019/12/21 のログ
ご案内:「タナール砦」にアスベルさんが現れました。
アスベル > 今現在、人間が占領をしているタナール砦。
魔族側からの大きな動きは見えていない。
そうした中での異変は不意に起こる。

魔族の国から一人の男が姿を現わした。
物陰に隠れ忍び寄る訳ではない。
砦へと真っ直ぐに、堂々と歩んで来ているのだ。

当然、砦に建つ監視塔からの通達はあるだろう。
それを見て、人間達はどういった反応を見せるのか…

一方男の方は、そんな砦を眺めながらこう考えているのだ。
丁度砦があるのだから、飯でも食って抜けていこうと。
魔族が占領しているなら飯は勝手に出てくる。
人間が占領しているなら奪えばいいのだ。

アスベル > もう少しで砦に到着するだろう、そんな距離。
閉まっていた砦の門が開き、数人の武装をした人間の兵士達が現れた。
相手は一人なのだ、普通に考えれば十分に対応出来る人数だろう。
つまり、武力で排除をしようとしている訳だ。
無言のままで通しているのは、排除対象にかける言葉もないとでも考えるべきか。

「おう、今は人間共が居るって訳だ?
別にここに居るのは許してやらぁ、俺様の邪魔しなきゃな。
そうそう、ついでだ、美味い飯でも頼むわ」

臆びれる様子もなく言い放ち、男は素通りしようとする。
しかし、そもそも言葉を交わすつもりもないのだろう。
前、そして左右から、武器を振るい数人が襲い掛かって来た。
その場から動かぬ他の数人は魔術師か何かだろう、詠唱を始めた様子で。

「……うぜぇな、テメェ等」

男は両手をポケットに突っ込んだまま、そう漏らす。
振るわれる武器に、それを避ける様子さえ見せもしない。

ガギンッ…!

男を斬り裂き、貫き、叩き潰さんとする武器は、そんな金属を打つような音を立てて止まる。
見た目と人数だけで判断し、無謀な行為をした兵士達への代償は次の瞬間に与えられた。
ヌゥッと伸びる右腕が、間近に居る兵士の一人の腕を掴む。
一番硬そうな鎧に身を包んだ相手を選んでのものだ。

「おらよ」

そして、ブンッと掴む兵士の身体が男の腕に合わせ薙ぎ払われるように振るわれた。
再び起こる金属を打ち付ける音と、グチャリと何かが擂り潰れるような音。
掴んでいた腕を残し、その兵士と、周囲に居た兵士達が吹き飛ばされた。
それに合わせるように、男へと狙いを定めた炎や風が巻き荒れる。
それが収まった後そこにある光景は、平然と佇む男の姿。

「で?終わりか?
終わったんなら、後はどうすりゃいいか分かんだろうな?」

ゴミでも放るように、手元に残った腕を放り捨てる。
何事も無かったかのように、再び歩き始める男。
既に離れた場所にいる魔術士達には怯えの色しか感じられず、彼等には男に道を譲る事しか出来なかった。

アスベル > 今相手をしていた兵士達が、砦を現在守る人間でも腕の立つ者達だったのだろう。
そんな彼等が一瞬で返り討ちにあったからか、砦に足を踏み入れ、砦の中へを進む男を阻む者は居なかった。

「おう、美味い飯だ。
余計な事を考えねぇで、俺様が満足するだけ作れ」

砦内部の食堂に着けば開口一番にそう伝え、我が物顔で席の一つに座り込む。
砦の外で起こった事は伝わっているのだから、誰一人逆らう事もないだろう。
それもまたつまらなさそうな表情で、出される料理を口にする。
食事の味に拘りも無いのだから、それに関しては普通に出されるもので満足するだろう。
只、その量は人間とは比べ物にならない程の大食らい。
大量の食材を消費させ、満足するまで男は料理を食らい続けた。

アスベル > かなりの量の食材が男の一食に消費された。
大量の皿が重ねられ並ぶテーブルを前に、男は満足した様子で腰を上げる。
結構な時間を調理にかけられた料理人達は、逆に疲れ切った様子が伺えて。

「なかなかにいい飯だった。
また帰りも寄るからよ、次も楽しみにしてるぜ?」

それだけを言えば、男は食堂を後にする。
そして、そのまま悠々と人間側の領域へと向かう。
何者にも縛られぬ男、それがこの出来事でどう伝えられたのか。

ご案内:「タナール砦」からアスベルさんが去りました。