2019/06/09 のログ
ご案内:「タナール砦」にアスベルさんが現れました。
アスベル > 人と魔の取り合うタナール砦。
小競り合いが起こるのは何も日中だけではない。
日没も過ぎた時間とはいえ、攻め手が動けば守り手も動かざるを得ない。
現在の攻め手は魔族、守り手は人間、戦況は均衡状態だ。

そうした中、魔族の国の領土から姿を現わしたのは一人の男。
両手をポケットに突っ込み、のんびりとした足取りで砦へと真っ直ぐに歩いていた。
まるでこの状況を無視しているかのようにも見える。

「何か無ぇかと来てみりゃ、この有様かよ。
今日はハズレか?期待出来ねぇな」

チッと舌打ちをしながら呟きを零す。
砦の攻防も時に激しいものがあると聞き及んでいた。
それが本当ならば楽しめそうだ、そう思い暇潰しにやってきたのだ。

アスベル > 歩みを進めれば、当然だが小競り合いの真っ只中にまでやって来る形になるだろう。
それだけを見れば、なんら戦いに影響もない自殺志願者のように見えるかもしれない。
しかし、そうではないと人間達が理解するのはすぐだ。

その男が近付けば、戦いの最中にも関わらず、魔族達は道を譲るように避けて行く。
目の前の人間という敵、それよりも危険なものだといわんばかりに。
それを見れば、一部の命知らずの人間は無謀にも男に突っ込んで行く。
見えてない訳でもないだろうに、男は目の前まで人間が来ようとも歩むだけの動きを変えない。
それは、相手の手にした武器が自分に振り下ろされようとも変わらないものだった。
もちろん、周囲の気付いている魔族達にも。

直撃。
続くのは肉の切り裂く感触ではなく、金属を打ち合うような甲高い金属音だった。

「邪魔だ、うぜぇよゴミが」

肩口から斜めに切り裂くはずだった刃は、その肩口で止まっていた。
何が起こっているのか理解していない、そんな表情を浮かべる人間。
そんな人間に言葉を吐き掛ければ、男は無造作に片足で蹴り付ける。

それを受けた人間は、まるで列車にでも撥ねられたかのように吹っ飛んだ。
蹴り付けられた部分は抉れ、弾けている。
それを見れば、その威力は容易に理解出来るだろう。

アスベル > それによって人間を支配するのは、恐慌。
この規格外の戦力が魔族の側に付いている事に気付けば当然か。
一人が恐れ戦けば、それは波紋のように一気に広まっていった。
それは均衡していた戦況を、一気に優位なものへと変える。
一方的とはいえないものの、魔族達は一気に砦にまで攻め込む状況にまで持ち込んだ。

「つまんねぇな、後は手前ぇらでどうにかしろや。
俺ぁ戻る、ゴミと戯れる気なんざ更々ねぇよ」

後続の魔族の一人にそう言い捨て、男は踵を返す。
男が望むのは戦いを感じられる興奮。
無謀であろうと勇ましく挑んでくる相手。
あわよくば、多少なりとも満足がゆく戦いの出来る相手だ。
逃げ腰であったり、口だけ達者な連中じゃない。

こうして、今日は魔族側の勝利、砦獲得となった。
それが、たった一人の男による影響とは思われはしないだろう。

ご案内:「タナール砦」からアスベルさんが去りました。