2019/04/14 のログ
ご案内:「タナール砦」にユークレヴィテスさんが現れました。
■ユークレヴィテス > しんしんと、砦に雨が降りしきる。
水煙が視界を潰し、濃く色を増した砦の壁は滑らかに光をちらつかせる。
それを遠目から見つめる影が一つ。
「………ふむ。」
少女であった。子供程度の身長、体型、そして声。その体をローブに包み、砦を見つめる。
しかしその胸や尻には豊かに肉が実り、まるでそこだけが奇妙に成熟したかのよう。
そしてその頭からは…巨大な頭足類のような、太く長く大きな触手が伸び、体を大きく持ち上げている。
■ユークレヴィテス > 「ルヴィーが泣いて帰ってきたから何かと思ったが…まぁ、『ハズレ』でも引いたのだろう。
運のない奴だ。」
そう呟くと、メモ帳のような小さな書を取り出し…宙をなぞるように指を動かす。
その指先に、宙が切り裂かれるように光が溢れ…複雑な文様を描き出した。
「…これを使うほどでもないか。面倒だし。」
雨が空中で静止する。白い輝きが空を満たし…雨は鋭い槍となって、戦場へと降り注いだ。
ご案内:「タナール砦」にザイヴァーさんが現れました。
■ザイヴァー > 戦場に、槍となった雨が降る。
その槍たちは今砦を占領中の人間の兵士たちを貫き、阿鼻叫喚の図を作っている。
『ぎやあぁぁぁ』『痛い…ぐぇ』『た、たす……』
そんな悲鳴が、外で陣を作っている兵士たちから上がる。
もはや、壊滅かと思われた、その時だった。
砦の上から、声がする。
「ゴッド・ヴレイカァァァァ!」
その叫びと共に放たれた光が、槍となった雨を吹き飛ばす。
「動けるものは砦内に逃げろ!魔導兵は障壁を張れ!」
そう声を張り、飛竜に乗り、魔術の発動源を探し飛ぼうと……
『こりゃ、滅茶苦茶やりやがる魔族だな……』
「ああ…気を引き締めるぞ」
そう言って、戦場に立つ、怪しい存在へと向かおうか……
■ユークレヴィテス > 「……ああ、なんだ。私も『ハズレ』か。
運があるのはスピカだけだな、全く。」
氷の槍を吹き飛ばして砦から立ち上る光の柱を見つめ、興味なさげに欠伸を一つ。
飛び立つ飛竜の姿を水煙の向こうへ視認すると、その方向へと手を翳す。
白い煙が天を覆う。煙は渦を巻き、そして巨大な壁を形作る。
魔力によって練り上げられた凍獄の冷気が、雨を飛ぶ飛竜の前に立ちはだかる。
近付いただけで、鎧や翼に霜が降りるほどの極寒だ。無策に突っ込めば、どうなることか分からない。
その間にも、冷気によって空中で凍結した雨が、弓矢のように地上へと降り注いでいく。
「……使わねばならんか?いや、面倒だな…
…まぁ、もう少し様子を見るか。」
■ザイヴァー > 何か、怪しい場所から白煙があがる。
何かしてくるなと思ったら、案の定。煙は壁となり、極寒の世界を作り上げる。
飛竜も、いわばでかいトカゲのようなものだ。軍が飼育しているとはいえ、
寒さには弱い……
とたんに動きの鈍くなる飛竜
『どーするよ、ザイヴァー。このままじゃ飛竜が…』
「うむ……相手は冷気使い。この雨の中ではあちらが有利……なら」
そして、霜のついた鞘から、バスカードを引き抜き……
「イオセンディオ・ヴレイク!」
そう叫び、砦の方に剣を振れば、その先端から発射された「光玉」が砦の上に、
光の太陽を作る。
これで、氷の槍を、雨に戻そうというのだ。
『無茶するぜ、ザイヴァー……そう何度も、大技使えねぇぞ?』
「わかっているが、使い時があるだろうが」
そう言って、太陽と冷気の雲のぶつかる中、地上すれすれを飛び、壁の下をくぐろうと…
■ユークレヴィテス > 砦の上に、巨大な2つ目の太陽が目を開く。
降り注いだ殺意は陽光に照らされて再び水飛沫に変わり、防壁にぶつかり弾け飛んでいく。
巨大な虹が、砦を覆った。
「そう、そうなればドレイクは地を這わねばならない。
吹き飛ばそうにも魔力は有限だろう、本命以外に先程の大技を振り回すのは避けたい…そうだな?
まぁ、突っ込むほど愚蒙でも無策でもなかったのは良い。
そしてヒトは、他者を守らねばならん。守るべき者が多いのは不利だな?」
かつかつと書を指で叩く。
…濡れた地は、水と冷気を扱うユークレヴィテスにとって、非常に強力な武器となる。
それゆえに、雨の日を狙って襲撃したのだ。
壁の下は、雲の中ほどではないにせよ極寒。
その極寒の全てが、吹雪として、氷柱として、殺意を孕み上下左右から遅い来る地獄であった。
空を飛ぶ飛竜を点で撃ち落とすのは困難であれど、地を這う飛竜を線で討つのは、多少ならず容易である。
■ザイヴァー > 光の太陽の影響下から、極寒の雲の下へと入る。
吹雪が、氷柱が襲い来るまさに、寒獄。ザイヴァーとて、
長年飛竜にのってきているから、そう簡単には撃ち落されない……そう、
ここが極寒でなければ。
「っち。流石に、きついか?」
そういう、飛竜には、何発も氷の槍が掠る。
『ザイヴァー、雲に二発目打っとくか?』
「いや、できるだけ、大技を使う体力は温存したい」
『って言ったって、飛竜落されたら、走ってかないといけないぜ?』
それもまた悪手だろう。低空飛行とはいえ、一応飛行しているからこその回避だ。
地面を走れば、確実に串刺しだ。
「っふ、何のために、俺が冒険者としても活動していると思う」
『はぁ?』
「こういう、魔薬は中々軍では手に入らないのでな……っ!」
そう言って、懐の袋から出した薬を、飛竜の首に打ち込んで。
「これは、モ・エール。体を温める薬だ。本来薄めて飲むものだが、原液を注射すれば…」
すると、飛竜の動きが良くなる。
『へぇ、そんなのも手に入れてたのか!』
そして、吹雪く世界でも、相手を目視できるところまで来たとき…
氷槍が、飛竜を襲い、避け切れず飛竜は絶命するが、
その上から、ザイヴァーはバスカードを抜き、地面に下りる。
「……初めまして、術者」
■ユークレヴィテス > 「……む?」
遠目から見ても分かる。露骨に飛竜の動きが良くなった。…何かを飛竜の首元に刺したように見えたが…
薬品か、あるいはそういったものを媒介とする魔術か。
何れにせよ、飛竜は殺意の嵐の中を雷光のように掻い潜り…
「…ああ、初めまして。」
死した飛竜の亡骸は、飛び込んだ勢いのままに極寒の雲の中へと滑り込み、白く輝いて砕け散った。
その姿を見ても、あまり慌てる様子はない。…あるいは、ただ単に無気力なだけなのか。
ひらひらと小さな手を振って、怠惰にその挨拶に答える。
「いや、予想外だった。掻い潜る者が居るとは。
思った以上だ、それは認めよう。」
どすん、と背の巨大な筒を地に下ろす。
…巻物、のようにも見える。
「見逃してはくれんだろうな?」
■ザイヴァー > 相手の声を聞けば、どうやら女の魔族の様だ。
そして、背から巻物のようなものを下ろすのを見つつ。
見逃しては~と言われれば。
「無論だ」
『気をつけろよ、ザイヴァー。こいつ、滅茶苦茶やばい気がするぜ』
バスカードの忠告には答えず、バスカードを構える。
「……此処は戦場だ。何人殺されただのは言いたくないが……」
そして、剣が吹雪く薄暗い世界の仲、大きな光源となる。
「貴様に虐殺された兵たちの無念、貴様の首を晒すことで晴らさせてもらう」
『ま、そーいうこった、ねーちゃん。捕虜にされず殺されるだけ、ありがたいと思えよ?』
そう、一人と一振りは言って…
小手調べにと。剣を振り、光の斬撃を飛ばそうか……
■ユークレヴィテス > 「そうか、見逃してはくれないか。
見逃してくれたら、素直に帰ろうかとも思ったが…」
そう言うと指を噛み切り…溢れ出る血を、巻物へ一直線に塗りつける。
血は一瞬で青く輝き、染み込むように巻物へと溶ける。
光の斬撃がユークレヴィテスへ届き、辺りが爆発したかのように明るく輝く。
少し遅れ、爆音。そして、土煙と水煙。
「……虐殺とは人聞きの悪い。
私は『材料』を調達しに来ただけだというのに。」
黄金の輝きは、しかしその威力を術者へと届けることはなく散った。
…まるで、亀の甲羅のような白銀色の壁が、二人の間を断ち切るように隔絶している。
「戦式・障壁(スティアル・ヴォーグ)。
……重いな。良い威力だ。」
■ザイヴァー > 白銀の壁。それによってコテ調べに打った……とはいえ、手は抜いていない斬撃が防がれた。
「おほめ頂きありがとう」
『女に褒められると嬉しいねぇ』
なんて、思ってもいない軽口を言う。
「……ふん、貴様にとっては材料でも……」
届くとは思っていなかったが、こうも見事に防がれると、幸先が悪いと思いつつ、
バスカードを、地面に突き刺す。
「俺達人間にとっては、かけがえのない命ある同胞なんだよ!グラロック・ヴレイク!」
そう叫べび、剣へと魔力を流す。すると、地響きが起き、
地下へとバスカードの聖なる力が流れ込んでいく。
障壁の下を通り、地下から光の剣突を飛ばそうというのだ。
■ユークレヴィテス > ばりん、と音を立て、白銀の壁が砕け散る。
いや、砕け散ったというのは少し語弊がある。『分割された』のだ。
白銀の破片となったそれは、まるで衛星のように辺りをくるくると回り始める。
「はは、良くもそのような偽善ぶった言葉を恥ずかしげもなく吐ける。
『俺達』などと大きな主語を使うな、惨めに見えるだけだぞ。
同胞と思い、掛け替えのない存在だと思い込んでいるのは『貴様』だけだ。」
軽く挑発しながら、指をザイヴァーに向ける。
…その指先から、白銀の光が迸った。
先程、天から降り注ぐ雨を氷の槍に変えた時の光と同じ物なのは、火を見るよりも明らかである。
■ザイヴァー > 「ふん、魔族に言葉を否定されたところで……何とも思わん!」
相手を守る障壁が分解され、相手の周囲を漂う。
もしかしたら、自分を守る刃にする気かもしれない。
と思っていたところに、指先を自身に向けられた。
恐らく……自分を凍らせる気か。
「うおおお!」
声で気合を入れ、その光を受けて立つかのように向かっていって……
相手と自分の距離が中ほどになれば、バスカードを地面にたたきつけ、衝撃で、飛ぶ。
そして、上空から……
「ゴッド・ヴレイカァァァァ!」
と叫び、上空からの光の奔流。そして、先ほど地面に打った、グラロックヴレイクの、
光の刺突が、地面から飛び出してくるだろう……
その時、ザイヴァーとバスカードの間で。
『後一発、ゴッドヴレイカーを打ち込めば、砦からの撤退準備が完了するぜ』
「ああ……残念だが、砦は放棄するしかない」
という念話があった模様。
■ユークレヴィテス > 「貴様は所詮、同胞だ絆だと味の良い言葉を選り好んで喰らい、醜い現実から目を逸らしているに過ぎない。
富を貪り、利権を啜り、地位を渇望して悍ましく這い回る虫を見ていない。
何が英雄。何が英傑。日々の糧のために他者を殺すことを認める一兵士のほうがよほど高尚だ。」
…どすん、と光の刃が触手を貫く。脾臓を貫かずに済んだのは、その予見故か。
血が溢れ、しかしそんな事は意にも介さずに破片を目の前に集わせ…
「戦型・拡散(スティアル・ヴァララーク)。」
どばん、と光が弾け飛んだ。
光の奔流がまるで雨のように四散し、ザイヴァーへと弾き返されていく。
無論、全てを吹き飛ばすことは出来ず、多少は光が肌を焼く。
しかしそれでも、かなりの量を拡散・反射してしまっていた。
■ザイヴァー > 一発目の仕込みは、何とか届いたようだ。
だが、二つ目の攻撃は、あまり届かなかった……拡散しているとはいえ、
自身の持つ最大出力の技だ。人間である自分が受ければ、ただでは済まない。
とはいえ、現在のところ自由落下中、避ける術は……
「バスカード」
『あん?』
「もう一発、打てるか?」
『しゃーねーな……あとで、女の穴に突っ込んでくれよ?』
そう言葉を交わし、ゴッドヴレイカーを、空に放つ。
それによる反動で、空中を、飛ぶ。とはいえ、鎧には何発か、細い光が届き、ぼろぼろだが。
そして……
女の後方から、何か地響きがしてくるだろう。
「……今日は本来、この魔族どもを止めるために布陣していた。奴らに砦を明け渡すのは癪だが……
仕方がない。貴様というイレギュラーがあった。兵たちは撤退している……
貴様の材料は、もうここにはいない」
そして。地面に向かい……
「ヴレイク・ヴレイク!」
と、衝撃波で地面を吹き飛ばし、煙幕とする。その中を、砦方向へと走って行こう。
ここで後ろから撃たれればそれまでの運命だった……ということだ。
■ユークレヴィテス > 「………。触腕損傷大、姿勢制御困難。」
すとん、と触腕を地面から持ち上げ、自分の体を地面へ下ろす。
ぼたぼたと血を流す触腕を凍て付かせ、無理矢理に止血する。
…衝撃波で立ち上る煙幕に、少し顔を顰め…しかし、その背を狙うことはしない。
煙幕の中では光は拡散してしまうし、土煙に冷気を吸われて有効打は見込めない。
それに、触腕を犠牲にして弾き返したはいいが、このまま戦い続けても機動力は著しく落ちる。
何より……
「……はぁ、疲れた。もう良い、調達はまた今度にするか。
ああ、疲れた。痛い。眠い。腹が減った。ムラムラする……
ルヴィー、スピカ、姉を癒やしてくれー……」
…根本的に、怠惰であった。
「……ああ、名を聞くのを忘れた。まぁこちらも名乗っていないし、別にいいか。
…英雄も魔王も、救いようのない生物だ。」
そう言い残し、迫る魔族の群れの中へその姿を消した。
数体、魔族が凍て付いた遺体で発見されたらしいが…それはまた別。
ご案内:「タナール砦」からザイヴァーさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からユークレヴィテスさんが去りました。