2019/03/24 のログ
ご案内:「タナール砦」に空木さんが現れました。
空木 > 「ふむ」

 女は言った。

「ふむ……これは、参りましたということを言っておくべきでございましょうか」

 人間と魔族の戦いの地。タナール砦の見張り塔の一室に女が閉じ込められていた。
 腕と脚部を縛られ床に転がされているだけであるが、周囲を囲むのが石造りの壁と鋼鉄製の扉では自由はないに等しかった。
 武器は取り上げられてしまっている。扉を壊すことは難しいようだった。

「わたくしとしたことがとんだしくじりを」

 女は目を閉じたまま言うと、芋虫のように体を蠢かせた。
 外がどうなっているかはわからない。どこかで魔術が炸裂する轟音が、剣戟が、鬨の声が響いてくることはわかる。
 人間が優勢なのか。魔族が優勢なのか。自分は出られるのかもわからない。

「はあ」

 退屈そうに息を漏らす。