2019/03/22 のログ
カイン > 「ま、そうなったら殿でも買って出るか。
 他にできそうなのも数がおらんだろうし、
 今の国軍に手練れが居るならそれでいいんだが」

雇い主が消えてしまっては報酬がおじゃんだし、
何よりも肩を並べた相手がくたばるのは目覚めが悪い。
仕方がないと流す程度の感傷とはいえ、酒が不味くなるのは宜しくない。
顎に手を当てながら剣を軽く叩くと、息を吐いて少し気合を入れる。
何せ相手は魔族である。何を仕掛けてくるのか分かったものではない。

カイン > 「…お、交代要員か。遅かったな?
 全く、このまま一日中立たされるものかと思ったぞ」

漸く現れた二人組の見張りにそう声をかければ手を挙げて、
そのまま横に振りながら入れ替わりに砦の中に去っていく。
持ってきた酒でもとりあえず飲んでしまおうと頭の中で算段立てながら。

ご案内:「タナール砦」からカインさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にジナイアさんが現れました。
ジナイア > 夕刻の迫る時刻。
砦の建つ丘陵地帯は灰色の薄い雲に覆われ、その空の色は段々と闇色に近付いている。
風は強く吹いるがその方向はばらばらで、生暖かいそれに丘陵に点在する木が付けた花が、巻き上げられては散っていく。

その砦が、ようやく視認できようかという場所に、灰色のマントを靡かせて佇む女がぽつんと一人。
風に嬲られる黒髪を抑えて、翠の双眸を空に向けた。

「……ひと雨、来そうだな…」

生暖かい風が湿り気を帯びてきて、女の熟れた唇からひっそりと言葉が漏れた。

ジナイア > 当の戦場は、舞台を大分移した先にあるらしい。
昨日、砦を奪われそうになったのを必死に押し返して、追いすがって漸く…といったところだろうが

(降られる前に、退却するだろうな…流石に)

先ほど尋ねた砦の中に、予備の戦力は存在しないようだった。
押し返すのに全精力を吐きだした、と言ったところだ。
今、敵から搦め手を使われたら、ひとたまりもないだろう……ましてや悪天候の夜など。

ジナイア > 黒髪を抑えたまま、密かなため息をついて丘陵を見渡す。

前に来たときは冬で、いかにもいや寂しい荒れた様子だった場所も、春ともなれば多少なりとも新緑がちらほらと存在し、また香っても居る。
故郷の、あまり季節で代わり映えのしない景色からすると、随分と目を楽しませるものがある。
踏みにじられ、蹂躙されつづけて出来上がった丘。
それでも季節に花を着けるものが或る事が、とてもいじましく思える。

「……何とも、無粋な話だ」
(偶には、「花が咲いたから」などという理由で停戦をしたりしないものか……)