2019/03/18 のログ
ご案内:「タナール砦」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 「……どーしよ」

義勇兵として、タナール砦の守備兵に参加した男は、悩んでいた。
自分の恋人のことではない――仕事とプライベートは分けるタイプだ。
人間関係のことではない――基本的に、男は人がどう思おうが気にしないタイプだ。
仕事のことではない――現状、仕事の事など考えなくても良い場所に、男はいる。
つまり、地下牢に男はいるのだ。

「隠れて仕事中に酒飲んでたから当然ちゃ当然なんだけど……。
まさかバレるとはなあ」

しかし、では牢屋に入ったことを反省していて、それについて悩んでいるかといえば、それも違うのだ。
つまり、悩みのタネは――上階の剣と剣がぶつかる音とか、明らかに魔法を使っている音なのだった。

「明らかに今、上で戦闘起きてるよね?
魔族との戦いかなにかが、おっぱじまってるよね。
これ、人間側が負けたらやばいのでは……?」

幸い、注射器は没収されていない(必要な薬だと言いはった。どうせ軍人は闘技場など来ないので信じた)が、剣は没収されている。
否、そもそもこの牢屋から出ることもできない以上、もしも人間側が負けた場合――

「……セルフ捕虜だよな、俺」

客観的には、積極的に捕虜になろうとしているようにしか思えまい。
武装放棄・戦闘放棄・挙句の果てには牢屋の中なのだから。
どうすればいいんだよ……と男は珍しく、本気で頭を抱えるのだった。