2019/03/14 のログ
ご案内:「タナール砦」にサロメさんが現れました。
■サロメ >
第七師団長とその直衛の騎士達がタナール砦へと帰還
これまで伝令や補給部隊を通しての連絡はあったものの、直接の帰還は魔族の国へと踏み出してから初となった
兵装や武器の損耗は見て取れるほど、傷も多く戦勝を持ち帰ったといった雰囲気ではない
が、無残な敗北に絶望したといった表情でもなく、出迎えた兵士は少なからず困惑しただろう
「砦が落とされていれば更にもう一戦といったところだったが、それは杞憂だったようだ」
僅かな安堵に胸を撫で下ろす
とって、とられてを繰り返す砦ではあるものの、今この時に人間のものとして機能しているのはありがたい
第七師団だけでなく、多くの王国軍や騎士団に感謝しなければならない
■サロメ >
自身に付き合ってくれた騎士達に治療と休息を命じ、
自らは足早に砦の臨時執務室へと向かう
もっとも砦のもの、立派な部屋でもなく、最低限の椅子と机のある個室といったところだが
各師団や、民間のギルドからやってきた傭兵達が混在する、王国と魔族の国を別つ戦場
歩みを進めながら、その変わらぬ姿に妙な安堵感を覚える
やがて辿り着けばその大剣を壁へと立てかけ、外套を脱ぎ払って椅子に腰を落ち着ける
───溜まった疲労が一気に襲ってくる感覚を覚え、小さく己の頬をはたいた
「……翼ある獣、ラボラスの追撃──見つけた砦とヤツの軍勢には痛手を与えた、だろうが」
残念ながら首を取るには及ばなかった
あの砦も、いくつかあるうちの一つである可能性は高い
そこにいた軍勢もほんの一部でないとは言い切れない
「……さて、どう報告を上げたものか」
砦にいる第七師団の様子からしてあの女が目立った動きを見せているということはなさそうだ、が
王城に報告があがれば、その揚げ足を取りに来るのは目に見えている
■サロメ >
あの魔族とは二度切り結び、おかげでその絡繰りにはほぼ見当がついたと言える
準備を徹底すれば、次の機会にはあの獰猛なる獣に安息を与えてやることが出来るだろう
問題は、その準備が整うまでに襲撃の可能性が存在することと、
そもそも王国の内部からその邪魔が入るかもしれない、ということだ
更に言えば、前師団長であるオーギュストが魔族の国の第七軍を名乗り砦を不定期に攻めていることが確実になった
「…この歳で知恵熱が出そうだ」
溜息と共に頬杖をついた
四面楚歌というには、味方も多く八方塞がりには遠い、しかし…
「取れる手が多いことと、有効な手が在ることはまた違う、か…」
報告をあげたとして、揚げ足取りからの追求と糾弾を身に受ける覚悟はしておいたほうがいいかもしれない
場合によっては…次の機会にて互いに完全なる決着を、
というあの魔族…ラボラスとの約束を違えることになるかもしれないが
■サロメ >
机の中から、僅かに湿気った羊皮紙を取り出す
以前は此処に座っていたものの血で使い物にならなくなっていたが、新しいものに交換されたようだ
あらゆる意味で今砦を占領している王国軍に感謝である
「(──まずは、味方を増やすこと、か)」
前師団長はそのあたりに長けていた
もちろん敵も多く作る男だったが、不思議と彼に惹かれ、認めあう者も同時に多かった
あれと同じように…とはいかないだろう、本質的には真逆の人間である
「まず王国軍第一師団…は、無理だろうな」
主に敵国との戦線に投入される巨大な軍ではあるが、それ故に魔族との戦闘経験は少なく
大きな規模を持つものの、その実戦機会の少なさから貴族騎士のちょうどよい見の落とし所となっているという話だ
性質的に違いすぎるものは、下手に足並みを揃えようとすれば共に転倒を招いてしまう
■サロメ >
羊皮紙に軽くペンを走らせ、撥ねるように斜線を引く
王国は広大である
第七師団などは、限定的な運用をもたされているだけのいわば少数精鋭に分類される
そして第七の存在が示すとおり、王国軍の各師団はそれぞれの思惑や在り方をもっている
無論、クセの強い軍も当然のように点在しているのだ
「次は──…」
魔法師団として名高い王国軍第二師団
一部の秀でた魔法の才覚は稀有である
故にこの軍の持つ力は戦局を大きく左右するだろう
問題はその性格、だが……
「(ある意味、うちの前師団長よりも扱いに困るかもしれんな)」
ぴ、とペンが踊る、とりあえず保留だ
■サロメ >
次、次…と、
自身の副官時代からの記憶を手繰りながら、ペンを走らせる
王国貴族の大半が、国防を丸投げしているといった証拠とも言える、この個性的な王国軍の数々…
「王国軍第五師団…は、彼女の軍だったな」
ある意味第七師団よりも実戦的な軍である
第一師団が対国家、第七師団が対魔族への特化戦力であるのに対し、第五師団は相手を選ばない
それ故に気性が荒く、生半可な制御は効かない印象もあるが…
「彼女の性格を考えれば、目はある…といったところか」
■サロメ >
次に思い浮かべるのは王国軍第六師団
おそらくどの王国軍も彼らには世話になっているだろう
器用万能、文字通り何でもこなすことが出来る特殊な王国軍
個性が強い王国軍の各師団にとっては足りないピースとなり、穴を埋め、時にはその性質、長所を伸ばすことにすら繋がる
「…しかし、な……」
故に、彼らは引っ張りだこである
需要が高すぎる故に、その人材が枯渇するのだ
恐らく今も、彼らにそれほど余裕はあるまい
■サロメ >
「第八師団…彼らには大きな借りがあったな」
一度目、オーギュストが企てた魔族の国への侵攻計画
その折に大きな協力と、尽力を頂いた
師団長へと就任したバルベリトも話の分かる相手である
「(期待感はある、か…)」
可能な限り、手を伸ばしておく必要がある
それくらいに、アレは用意周到な蜘蛛のような女だ
■サロメ >
続いて、王国軍第十師団───
おそらく戦力としては有数
王国軍の中でもそのコストに見合う強大な力を持っているだろう
一度崩れかけて尚、力を取り戻しつつあるその経歴にも感嘆せざるを得ない
「(守りよりも、攻めを得意とする性質。竜も、わかりやすい力の象徴だ)」
その強さが、素人目に見えるということは大事だ
恐らく王国貴族からの信頼も厚いだろう
…少なくとも、うちの師団よりは
■サロメ >
「───ふぅ」
そのまま、しばしの時が流れ、僅かな気疲れを感じさせる溜息を吐く
組んだ手に額を預け、僅かな時間その瞳を閉じる
可能性は多く転がっている
瞼を開き、眼を滑らせる
羊皮紙への走り書き、その下から三番目…
王国軍第十二師団───
戦場とはまた別の領域を日夜守り続けている彼らは、
王国貴族からの嫌われ者、という点では第七師団と共通している
師団長も、まともな話の通じる人物だったと記憶している
そしてその下に名を記された、王国軍第十三師団
過去の動乱によって傘下に置かれたティルヒアの兵達を中心とした、比較的新造の軍
以前、砦での攻防戦に置いてとある兵器を使用したことで知られる
……これまで挙げた中でも一番裏側の読めない軍であろう
■サロメ >
「どれもこれも、よくこれだけくせ者だらけの国防を許しているものだ」
第七師団の長が何を言うか、と言われそうなものだが、
思わずそう口をついて出てしまうのも無理はないだろう
「…第三師団はあの女が戻った以上ヤツの私物だ。
一部の将校達が謎の死を遂げたなど、白々しい。粛清されたに決まっている…」
ラボラスとの決戦の前に、片をつける必要がある
…とはいえ、あの女はあの性格以外は文字通りの傑物である
その指揮能力も、戦闘能力も、以前は比較され厭な思いもしたものだが、認めざるを得ない
そして冷静・冷酷・冷徹──戦場においてそれに徹することが出来るのも、才能と言える
「(天才、私もそう呼ばれたことはあったが実際はそうじゃない。真の天賦の才とは、彼女…カテリーナのような人間のことを指す)」
凡人の努力など嘲り笑いながら蹂躙してゆく、そういった存在こそがそう称される
──いい年になってコンプレックスなど笑えないが、多少なり弱気にもなってしまうというものだ
■サロメ >
「………」
椅子の背もたれに背を預け、深呼吸するように大きく息を吐いた
肩が、身体が妙に重く感じる
治癒魔法はかけ続けていたが…いや、魔力の枯渇も一因か
「──報告を纏める前に、小休止くらいは、いいか…」
瞼を閉じれば微睡みに落ちてゆく
……結局目を覚ましたのは翌朝報告に訪れた騎士の一声がかかった時であり
その日に砦への襲撃がなかったことを心から安堵するのだった
ご案内:「タナール砦」からサロメさんが去りました。