2019/02/18 のログ
アマーリエ > 竜が咆えて翼で風を打ち、舞い上がる。飛び上がる。
地表すれすれの高度を保ちつつ、進めば色の違う竜が先頭を進む白い竜に続き、左右で4騎ずつ菱形の陣を組んで追従する。
敢えて高く跳ばないのは射かけられる矢の的になる愚を避けるためだ。
騎士も竜も自身を守るための防御魔術を心得ているが、余分な魔力消費は避けたい。
だが、手管としては小細工であるのは否めない。めくら撃ちで放たれる矢の恐ろしさは何回も戦場に立てば、おのずと知る。

今もほら。放たれる矢を抜き打つ白金色の刃で払い捨て、長い金髪を靡かせて。

「――総員、我に続け。生かして帰すな」

その言葉と共に竜を加速させ、急上昇させる。
砦の胸壁手前と云うべき位置より、勢いをつけて飛び上がる影に魔物の射手は反応が遅れる。
隙を見逃さず、白い竜の背を蹴って飛び立つ。飛び込む先は、他でもない。

「御機嫌よう。そして、さようなら」

即席の城兵面している魔物である。出会い頭に一太刀を繰れてやれば、ぱっと赤い花が咲く。
むせ返る臭いの強い体液を浴びることなく、靴音を鳴らして着地し、周囲を見遣れば指示を下せば後続の竜たちが城壁に取りつく。
飛び降りてブレスの猛威を振るうものが居れば、勢い誤って城壁ごと魔物を潰すのものも居る。

一瞬、困った顔をしながら周囲の制圧を命じる。
後続には破城槌や梯子を担いだ城攻め専門の傭兵も居るのだ。彼らが事を為しやすいよう、御膳立てをする必要がある。

アマーリエ > 「トルデリーゼは向こうを引っ掻き回して。私はこっちを壁沿いに掻きまわすわ」

声を出して、己の騎竜に指示を下す。
方向の支持は正確にしなくともいい。言葉以上に契約を交わしたものであるが故に、意思が通じる。
白い竜が高圧、高速の詠唱を兼ねる唸りと共に幾つかの球雷を形成し、射かけながら悠然と城壁を進む。
己はその光景を背にしつつ、城壁に沿って駆ける。
斬るべき敵には困らない。如何に低位の魔物でも目に見える形で寄ってくる敵は、放ってはおくまい。

「――……!」

たん、と微かな靴音を鳴らし、右手で振るう剣を悠然と振るう。
身の捻りを以て込める力は水銀の如くうねり、切先を奔らせて風を裂く。
そうすれば生じる刃風が剣線の先に居る魔物を叩き、二の太刀で切り開いて吹き飛ばす。
必然、空いた空間に踏み込んで、今度は剣刃を以て己のよりも背のある巨躯の魔物を切り上げる。

ホブゴブリンだったか。それともオークだったか。どうでもいい。
否、どうでもよくない。混成の編成であれば、力関係などを考えておく方が今後の対策としては良い。
もっとも、細かく調べ上げた処で次に活かせるかどうかは甚だ疑問でもあるが。

アマーリエ > 「……後で検分している暇もないわね、これ。次!」

さらに踏み込むも、叩き込まれる槌や槍を見ればふわりと飛び退きつつ、剣を打ち付ける。
生じる反動を得て躱すための勢いをつけつつ、魔力を籠めた剣を突き出す。
微かに魔力を練り込んだ刺突の剣風がさながら弾丸の如く生じ、眉間を穿つ。中庭に落ちてゆく骸を一瞥し、後方から響く鬨の声を聴く。
橋頭堡を築いた城壁に梯子をかけた者達の快哉である。
乗り込んでくる傭兵や兵士が確保した領域を制圧し、更に竜から飛び降りた騎士が城門の裏に回ってゆく。

「敵の頭を見つけたら、報せて。向こうに逃げられたら面倒よ」

意識下に展開し続けている通信魔術の一つを起動し、騎士や指揮を執る魔術技能者に言葉を送りながら制圧を進めてゆく。
時間をかけ続けるわけにはいかない。ただ屠ればいいというものではない。
どれだけ速やかに枝葉の根本を切除し、そこから他の末端も切り倒してゆくことが肝要であるのだから。

故、現在砦を押さえる魔物の頭は逃しておけない。

アマーリエ > 「城門も開いたわね。結構――竜騎士は向こう側を押さえなさい。私も行くわ」

足元で軋むような音が続く。
結局破城槌で貞淑に城門を破ることなく、乱暴に開かせることに成功したようだ。
後で修理が面倒になることがなく済んで良かった。では、次だ。
逃げ道があれば、人間ではなくとも逃げるものだ。水が高きから低きに向かって流れるのと、同じものだ。
故に、流れる先を抑えて包囲を敷く。この場合、砦という形状はおあつらえ向きである。

騎乗中のままの竜騎士が空を進み、魔族の国側の門へと回ってゆく。その様を見上げて己も続こう。
砦の施設の損壊を考えると、竜のブレスや魔術によるごり押しは難しい。後は面倒でも手間をかける他ない。

事が完全に済むには朝まで時間を要するが――再度の制圧を完遂する。
後はどれだけの期間、確保し続けられるか。その点は保証の仕様もないが。

ご案内:「タナール砦」からアマーリエさんが去りました。