2019/01/14 のログ
ご案内:「タナール砦」にラボラスさんが現れました。
ラボラス > (其の日、砦は人間達の支配下で在った――陽が、沈むまでは。
日没と共に響き渡った、唐突なる魔族の怒号と共に、為す術無く突破された砦の正面扉は
その、正しく蹂躙と呼ぶべき侵入を阻むには至らなかった。

数十分、或いは、一刻掛かったか、否か

其の日、人間達の支配下で在った砦は、魔族の支配下へと移り変わった
戦士や騎士で在った者の内、男は須らく殺され、或いは牢へと放り込まれて淫魔の糧と為り
女は須らく無力化され、尊厳を奪うなぞと表現する事も出来ぬ程に、ただ、貪られ、犯された。

――砦陥落から、既に数刻が経過して居た。)

――――――……居たのは雑兵だけか。

(今も尚続く、『勝利の宴』が、闘争を至上とする程の雄や雌達の情動が、留まるはずも無い。
無礼講と化した其の中を静かに歩み、砦の最も上層たる物見台へ向かう影は己を含み、計3人分。
腹心の部下たる二人を後ろに、既に夜を迎え、漆黒の闇ばかりが広がる荒野を
王都が存在するだろう方角へと向けて眺めれば、僅か双眸を細めた。)

――――……見逃した斥候が、王都を騒がせるだろう。
……餌に掛かる者が居るかは知れん、だが、次には備えろ。

(――態と、砦攻めの最中、見逃した人間部隊の伝令役。
其れが、砦が攻められて居る事を、王都へ伝えて居る頃だろう
果たして、其の情報を元に、更なる獲物が押し寄せるかは知らぬ、が
頷いた腹心達は、其の指示を受け取った後、階下へ伝えるべく、再び下がって行った)。

ご案内:「タナール砦」にレナーテさんが現れました。
レナーテ > 伝令が戻った後、王都側からの要請で出撃を決めたものの、電光石火の攻め手で一気に落とすとは行かなかった。
捕虜が中に残っており、その中には女性もいるという内容を聞いてしまったからである。
恐らく、男性は殺されている率が高いが、女性は生き残っている可能性があった。
助けられるなら助けるべきだろうという考えのもと、九頭竜山脈の中腹まで馬で向かい、人員配分を行った後、自身は数名の少女を連れて静かに山を下っていく。
普段の愛らしい戦闘衣をすっぽりと覆う紺色のケープマントを纏い、静かに静かに茂みを抜け出していく。
山の茂みの切れ目と、砦までの背の高い草地、そこへ忍び込むと、気配を消した少女達は草食獣を狙う猫科の狩人の様に、忍び足で迫っていった。
自分とあと3人は魔法銃を得意とする魔法銃士隊、残りの4人は刃と魔法で接近戦を一気に圧倒する魔法剣士体のメンバー。
日頃、前哨狙撃隊の護衛として着く仲間を選んだのもあり、夜闇に溶け込む紺色は、風や物音に紛れて、景色の中をずれ込むように進む。

『気をつけてね、物見台に何か居るよ? あれは……何か強そうな大きくて黒い鎧男、あとは部下っぽいのが二人。そっちからみて、10時ぐらいの角度』

それをバックアップするのは、山脈の中腹で、普段よりも大きな単眼鏡を装着させられた大きな魔法銃を構える射手と、護衛と目標周囲の探索を担う観測手のペアが二組。
長距離狙撃隊の仲間が、本来使うはずだった魔法銃とは異なる、大型のそれで遠距離からの援護にあたる。
月夜にレンズが光らないように、空と自身の位置を時折確かめながら、静かな反撃が近づきつつあった。

ラボラス > (果たして、どんな手で来るか。
人間の舞台が救援に駆けつけるとて、正面から押し潰しに来る事は考え辛い
単純な戦闘力だけで言うならば、魔族と人間の軍との戦力差は大きい
無論、其れを覆しうる程の個人戦力が、向こうに存在する事も確かだ
だが、そんな連中程、「救援部隊として」訪れる事は殆ど無いだろう
万が一にも、配送が在っては困るからだ。

無論、己の推測が外れ、人間の主力部隊が押し寄せて来るのならば、其れも構わない。
寧ろ、そんな予想外の状況こそを望むのが己で在り、我等でも在るのだから。)

―――……来い、気概を見せろ。 人は屈しないのだと言う気概を。

(其の独白は、誰に向けた物でも無い。
腹心二人が階下へと下がって行った後も、明かり一つを灯さない闇の中を見詰めながら
まるで、次なる闘争を待ち侘びるかの如くに佇む姿は
闇夜に潜む射手の、覗き込むレンズにも、映し出される事だろうか。
果たして、超遠距離を映し出す其のレンズの精細度がいかほどの物かは判らぬ、が

――己を映す、全ての射手へと。
獰猛な獣の如くに笑う口元が、獲物を探すかに見開かれた金の瞳が
意図してか、其れとも、偶然か。
一瞬、レンズ越しに「自分を見た」様な感覚を、伝えるやも知れぬ

そして、其の射手のうち、幾人かは思い出すやも知れぬ
其の金の瞳に『見られた』、一度目の記憶を)。

レナーテ > 正面衝突での戦いなら、相手の本隊が引いてから仕掛けるほうが有利となる。
故に国側も救助を兼ねた全力投球をする事にメリットがなく、ロストの大きさというデメリットに目が眩む。
だからか、こうして勝手の聞くところへと仕事が回されるわけだが、それも組合長が出来るであろうと判断しての事。
だが、此方の予想を裏切ったのは、そこに佇む巨躯が狙撃手の嫌な感じを煽って顔を顰めさせては……その瞳が移った瞬間に現実となったことか。
猫耳をピンと尖らせながら、瞳孔がきゅぅっと窄まっていく。
あのときと同じ、レンズ越しの視線を錯覚すると、小さく息を呑んだ。

『レナちゃん、あいつだ、この間狙撃弾いたやつ』
『うん。ただ、こっち見たような気もする……気がするだけ、かもしれないけど』

砦の壁に取り付き、魔族の国側へと回っていく最中。
普段は空を飛び回っている相棒たる鳥達の念話空間に響いた知らせに、ぴくりと身体が小さく跳ねていく。
精神的なダメージを与えられ、一歩間違えれば捕虜にされていた相手。
それにこの数で仕掛けるという情報は、忍び込む前には枷にしかなりそうもない。
鼓動が高鳴り、じっとりと手のひらに汗が浮かび、思考が瞬時に駆け巡る。
心配そうに背中を見る仲間へ苦笑いを浮かべると、ハンドサインを小さく出して、更に奥へと進む。

『生半可な攻撃では居場所を悟るでしょうし、此方の企みに気付く可能性もあります。絶対、その人達には狙撃しないでくださいね…?』

以前よりも長く離れ、何より砦の側面を取っての狙撃。
視野外から仕掛けられるはずだが、それでも僅かな殺気に気付く可能性もある。
その指示に頷く狙撃班の少女達だったが、自身はさらに言葉を重ねていく。

『ダイラスの多目的船を使います、位置観測を今のうちにお願いしますね。着弾は……砦の王都側寄りに、リトルストームの子を載せて、属性付与、収束炸裂でお願いします』

自分達の最大の切り札、それを撃ち込む事を躊躇わない。
挙げ句、自分達が忍び込むポイントへ何時でも撃てるようにと、自爆まがいな指示を飛ばせば、空間が静まり返った。
分かりましたか? と繰り返せば、しぶしぶと頷く声に少し胸をなでおろしながら壁の前へ立つ。
相変わらずのハンドサインで仲間を呼び寄せると、それぞれが獣化の力を開放する。
獣の力を身体に宿し、身体能力を一時向上させる過負荷の強い力を使い、魔族の国側の壁で一人が掌を重ねて足場を作り、腰を落とす。

『……周囲問題なし、いいよっ』

胸壁の上、見張りの視線が重ならない一瞬を狙撃班が見計らう。
アイコンタクト、タイミングを合わせて静かに地面を駆けると、足場を踏みつけながら全力で跳ねた。
それを砲丸投げのように空へ放れば、二重の力で重力の鎖を引きちぎって壁の上へ。
すとんと着地すると、周囲を警戒しつつ、ケープの内側から取り出したロープを壁の出っ張りに引っ掛けて垂らしていく。
後は仲間達が順次登りきり、何事もなく到達できれば潜入開始……となるが。