2019/01/02 のログ
ご案内:「タナール砦」にミリーディアさんが現れました。
ミリーディア > 「……成る程、報告通りに無人の様だ」

何者の気配も感じられぬ無人の砦、其の屋上に突如として姿を現わした少女。
一度目を閉じ、僅かの間を置いて小さく呟く。

『はい。
他、何度か入れ替わりは在りましたが、侵略の気配は無かったので放置しておきました』

其の少女の呟きに応えるのは何処から聞こえるとも分からない男性の声。
其の言葉に小さく頷いてみせる。

「其れで十分だろう。
只、又人間達が動きそうでな、指示の追加にやって来たのさ。
……チェンに連絡を入れ上の研究所の準備をさせておき給え」
『は…?然し、あの研究所は……いえ、承知致しました』

続く少女の言葉に、男性の声は一瞬戸惑いの色を感じさせる。
何故なのか、其れは解らない。
だが、即落ち着きを取り戻せば、言葉の終わりと共に気配は消えた。

ミリーディア > 其の気配が消えたのを確認すれば、少女は小さな溜息を吐く。
地平線に沈む太陽を見送る様に視線を其方へと向けて。

「後は事が始まってからで良い訳だが……疲れた」

そう呟き面倒そうに髪に指を絡める様に頭に手を添え掻いた。
こんな時期だ、年越しだ年始だと王城内は宴だらけである。
其の度に呼び出され少女の鬱憤は溜まりっ放しの状態と云うのも在った。
否、寧ろ少女としては其方の理由の方が大きいだろう。

取り敢えず、屋上から人間側と魔族側に広がる景色を交互に眺めた。
別に何か思う処が在る訳でも無いが、何と無くである。

ミリーディア > 「日も沈んだな…今日は久々に向こうでも行くか」

景色を眺める視線が魔族の国の一点へと向けられる。
其れだけでは他の者達では理解出来ないだろうが大図書館の方角だ。
向かうなら、最初から言伝は要らなかったのではないだろうか?
そう思えない事も無いが、其れは置いておこう。

空が夜の色に染まったのに合わせる様に、少女は其の姿を消していった。

ご案内:「タナール砦」からミリーディアさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にフリムスさんが現れました。
フリムス > 「……つまんねぇな」

げんなりといった様子で紫色の瞳を伏せながら、胸壁の縁に腰を下ろし、立てた片膝の上へ掌を重ねる。
眼下に広がるのは、無数の血飛沫が重なり合った鮮血の世界だった。
王国の兵士達が無残に串刺しにされ、踏み潰され、臓物と脳漿をそこらでぶちまけている。
咽返す様な異臭、それは人間のものだけではなく、魔族側のモノも混じっていた。
魔物は無残に引きちぎられ、喉を噛み潰され、挽肉になった屍がべったりと壁に張り付く。
小隊を仕切っていただろう魔族も四肢をもがれ、手遊びにほうられた頭部が砦の旗柱の先端に斜めに突き刺さっている。

「あぁ……もう帰ってていいぜ、ご苦労さん」

だが、その惨劇の九割は自分でやっていない。
砦の中央で冷気の鼻息をこぼす、水晶から削り出したような愛馬が雑魚を処理したのだ。
ゆらゆらとガラスを束ねたような尾っぽを揺らしていたが、退屈そうな様子に半目閉ざした薄ら笑みを浮かべると、ぱたぱたと手を降って帰還を許す。
すると、足元に浮かぶ魔法陣に沈むようにして消えていき、砦に残る動体は自身一人となる。
まだ誰か来るだろうか、膝の上で頬杖をついたまま、暇そうに新たな来客を待ちわびる。

フリムス > (「魔族軍か……頭殺るんのは面白そうだが、他はなぁ」)

先ほど愛馬がゴミ処理をしていた時、その名前を口にしながら腹を踏み潰された兵を思い出す。
そういえば、軍勢を率いているのもポツポツ出てきたなと、その程度の記憶だが。
有象無象とはいえ、我の強い魔の物を束ねるならそれなりに強かろうと思えば、わずかに口角が上がる。
それで女なら言うことなしだが、男なのが残念で堪らない。
とはいえ、魔王を名乗る女も居るわけだしと、落胆せずにこの血の香りが広がるのを待つ。

「誰か嗅ぎつける頃合いなんだがな……」

魔族の血が交じる香りは、そのまま同族の国へと風と共に注がれていき、人間側の反撃を錯覚させるには十分なはず。
人間の方も、殺すまでワザと時間を掛けさせたので、伝令なりなんなり、砦の窮地は王国側へと伝わっているはずだ。
とはいえ、お膳立てはしたが、誰も気付かない……人間が及び腰なら、徒労に終わる。
胸壁の上へ立ち上がると、暇つぶしにそれぞれの国の方へと目を殺していく。
紫色を狭めてピントを絞っていき、少々不機嫌そうな面構えで地平線の向こうを確かめていた。