2018/12/12 のログ
ジェネット > 「……ふむ?」

馬たちがにわかにざわめき出す。
知らぬ匂い、物騒な、獣とも人とも違う匂いに混じって、鉄の匂いがするという。
なるほど、であれば敵襲だろう。門内に退くよう命じて、傭われ騎兵は高らかに叫ぶ。

「敵襲ゥ――ッ!!」

やれやれだ。
よりにもよって砦を落とした主力が一時的に退いているこのタイミングで攻勢が始まるとは、予想外。
敵将はかなりの智将に違いない。そりゃあもう"私くらいに"と、
自身の知性を過大評価しつつ敵将の戦略眼を湛えながらも弓を構え、駆け出す。

「門は閉じて、撤退の用意をしておけ! お前たちだけで守りきれるかわからん以上、砦の放棄は上も織り込み済みだろう!
 ……たぶんな!」

血気に逸って城外決戦など選ばれれば貴重な兵力が削れるだけ。
なら、さっさと逃げてもらうに越したことはない。その時間を稼ぐのが、傭われの仕事というわけだ。
――草原生まれの弓騎兵の実力を、魔族共に教えてやろう。

高速で駆ける重装甲の人馬は、隊伍を組んで前進する戦鬼の群れの前に躍り出るなり先鋒目掛けて大弓の高速連射を浴びせかける。
仕留められるに越したことはないが、知性の低いとか低くないとか聞く戦鬼どもがこっちに注意を向ければそれでよし。
あとは適当に逃げ回り、砦の放棄までの時間を稼げば報酬分の仕事は完遂出来るだろう。

「――我が名は草原の偉大な戦士、コーサー氏族が妾子ジェネット! 
 人の領土を侵さんとする者共、まずは義と多少の金によって王国軍に代わり私がお相手仕ろう!!」

さて、敵はこの挑発に乗ってくれるか。

カレリア > 「態々大声で…どうしましょうかね?」

高らかに叫ぶ人馬の女性を見れば2つの考えが浮かぶ
自身の力に酔った愚か者か、自身に注意を集めたいと画策する者かの二通り
オーガの大盾でも防ぐのがやっとの強弓を操る彼女の動きは速く数を裂いても無駄に終わるのは明らかだ

「貴方達は全員で砦を強襲なさい。
目的を忘れれば敵の前に私が八つ裂きにしますよ?」

魔力と共に殺気をオーガ達に飛ばす
弓の攻撃にばらけそうになった隊列は再び恐怖の元に結束し足を速め砦へと進む
武装し意図的な支持をこなすオーガの集団と人間の兵士達
真面にぶつければどちらが勝利するかは分かっている

「足が速いのであれば私が相手をしてあげます。
魔族の領土を蝕む王国に属した事を後悔してください。」

フワリと空中に浮かび1人の戦士を見据える
こんな事であれば足の速い魔物も連れてこればよかったと少し後悔しながらどう仕留めるか思案する

ジェネット > 「指揮官が居るのか、そりゃ居るよな……」

先制の逆撃で一瞬混乱しかかった敵軍がまたたく間に統制を取り戻す。
集団戦は専門外だが、よく訓練された――うーん、あれ訓練されてるというよりもっと強いやつがパワーで押さえつけてるタイプか?
まあいい。敵軍から飛び出した少女タイプの暫定魔族に視線を遣って、採るべき戦術を選ぶ。

いち。全力で逃げる。たぶん生還できるけど王国からの信頼度ダダ下がり。
に。正面から少女とやり合う。勝てるかわからんし砦も陥ちる、最悪手。
さん。少女無視して戦鬼を狩る。砦の生存率は多分これが一番高い。
問題は、それをやると十中八九途中で少女にやられることだが――

「まあその前に逃げればいいか。頭数を減らそう」

幸いにも少女は"私を無視して前進しろ"と命じた様子。
なら、敵はこちらに進路を向けない。回り込める。
全力で側面に向けて駆け込み、盾の構えられない斜め後方からの射撃で戦力の漸減を試みる。
ふわふわと飛んでいる少女への警戒も忘れない。

カレリア > 「舐められていますね。」

端的にそう呟く
オーガの数を減らしたいのか攻撃を始める少女に対して小さなイラつきを覚える
こちらを警戒はしている様だがその攻撃はオーガだけに向けられた様で…

「思い通りにはさせませんわよ?」

至高性を持った魔力が弾丸となり矢を迎撃する
続けてそのままジェネット自身に向けて魔弾を撃ち出す

「さぁ、矢が尽きるまで踊ってもらいましょうか♪」

ジェネット > 「ほぉ!」

連射した矢を撃ち落とされるとはちょっと予想外だ。
そういう名手も居るには居るというが、もっと何十年と修行した末の境地とかそういうやつだろう普通は。
あるいはあの少女が少女(80)とかである可能性も否めないが。魔族(仮)だしな。

しかしどうしたものか。弓矢が届かぬなら攻め手に欠ける。
戦鬼相手に白兵戦は御免被るところであるし、ううむ……
などと考えていたら、上空から狙撃。

「遊ばれているな、ハハハ、逆に考えよう。戦鬼を支配できるクラスの強敵が私一人に夢中なのだ」

であれば、敵の半分を誘引したも同然!
跳んで跳ねて、蛇行してあるいは直線で全力で駆け抜けて、狙撃を回避しながら時折思い出したように戦鬼に騎射を浴びせ――
からのフェイントで少女にも対空射撃を撃ち込みながら、さて次はどうしようか。

「そこの敵将、敵将か? なんでもいい、小娘!
 降りてきて正々堂々勝負しろ! そもその高さでは下着見えるぞはしたないぞ!」

とか言えば降りてくるだろうか。

カレリア > 「はっ、自身の有利を喜んで投げ捨てるほど戦闘狂ではありませんよ。
力で劣るのに距離の優位は捨てられないでしょう?」

白兵戦等人馬相手にできる訳がない
文字通り人馬一体の素早さと膂力を持った相手と武器を打ち合わすなんて無理に決まっている

「という訳で、点での攻撃は辞めにします。」

周囲に光球が浮かぶ
こちらへ向かう矢を躱しながら光球を地面に投げ落とす
地面にぶつかれば光球は激しい小爆発を起こすだろう
警戒代わりにまずは自分の真下に1つ

「さて、一応あなたの立ち位置を聞いておきましょか。
義と金、という事は貴女やと我の傭兵では?」

ふと砦を見ればオーガ達が砦にとりつき攻撃を始めている
時間を稼ぎたいのはこちらも同じなのだ

ジェネット > 「いやあどうだろう。ほら、私案外細腕の乙女かもしれんだろう?
 腕相撲とかしたらあっさり負けてしまうかもな」

どこの世界にフルプレートを纏って大弓を高速連射し、
その上背中に衝角と大盾を背負った乙女が居るのか、と突っ込まれること請け合いだが承知の上ですっとぼける。
こちらからしてみれば相手は魔法系の魔族、どんな隠し玉があるかわからない以上は得意の土俵でも油断ならない。

「面制圧か、うん、良い判断だと思う。私がお前でもそうする。人馬は面制圧に弱いんだ、賢いな!」

爆発する魔法弾を無数に浮かべて、その一つを近場で爆発させた少女の威嚇に称賛で返す。
賢い賢い。それで正解だぞ、と。

「私か? そうだな……いやこれが実はお忍びで最前線に遊びに来た王国軍の総大将なんだな、わはは。
 まさか単騎で戦う羽目になるとは思わなかったが!」

おちょくるような冗談交じりに、兜から突き出た馬耳を動かす。
遠く聞こえる嘶きは、既に半数以上が砦より退いた、教官もはよ逃げろと訴えている。
軍馬育成のために人より馬が多いくらいの比率で配置されていたのが功を奏したというところだ。
さすが私、もしかして王国軍の守護神かなにかなのだろうか。

「で、この総大将にして守護神、
 またの名を第何百次か知らんがタナール砦撤退戦の英雄が仮に傭兵だったとしてどうするつもりだったんだ?」

カレリア > 「そんな弓を使えるのに何を言いますか?」

文字通り細腕でそんなもの使えば一発で腕がおしゃかになる
分かり切った挑発に物言い、ただの愚か者でないのは分かっている
だから戦場を切り替えればいい

「傭兵であればこちらで雇いたい、それだけですわ。」

王国兵を全て逃がした訳ではない、だがかなりの数に逃げられただろう
オーガ達は興奮から逃げた兵達を追いかけているが…あの調子であれば碌に被害を与えられないだろう

「力自慢の愚者であればこのまま焼き殺していましたが、有能な傭兵であればスカウトも悪くないでしょう?
魔族の領域では能力に応じた報酬が得られますよ。」

ジェネット > 「弓ならうちの氏族はあれだ、5歳から使えるから。
 これは冗談抜きな。だから私は腕力5歳の細腕の乙女だ、よろしいか?」

嘘は言っていないが、流石に戦闘用の大弓を使う5歳児は氏族にも居ない。
こちらは精神的に余裕だぞ、とアピールするために努めて軽薄で人を食ったような振る舞いを見せる。
呑まれれば死ぬ、ならば呑まれぬよう会話で注意を引き続けるしか無い。

「ほう。じゃあ今から私は傭兵だ。いくら出す? 無論報酬は前払いだ、元敵の雇い主など信用できんからな、金は先にもらう」

有能だと、能力に応じた報酬が出ると評価するのだから相応の額なのだろう? と如何にも金に汚い傭兵らしく金額の提示を迫って、

「先にもらって、その後お前の首を土産にして王国から報奨ももらう!」

すばやく弓引き、少女に向かって三連射。
誰が魔族に降ろうものか。私には師団長閣下への恩義がある。
文字通りの馬鹿だが面倒を見た可愛い教え子への愛情もある。
その軍馬候補生達の断末魔が聞こえる砦を背に、兜越しの目で少女を睨む。

「生憎だが、私は人間が好きなのさ」

カレリア > 「貴女がどう思おうと私はそれを扱える貴女を細腕とは思えません。
近付き、組み合えば確実に潰されてしまうでしょうね?」

ただの事実としてそう答える
こちらにペースを握らせないつもりなのだろう
のらりくらりとした話しには確かに、少しうんざりとする

「そうですか。それは残念…」

こちらに向かう矢を光球が焼き払う
最初からこの交渉のみではい従いますと受け入れる輩ばかりではないのは分かっている
だから…少し残念だ

「ただ帰ってもらおうと思いましたが、残念です。
人間の味方と言うのなら、私とは相容れませんね。」

光球が更に展開される
ジェネットを見つめる目は先程までと違う
手に入らないならどうでも良い…むしろ壊さねば魔族が危険に晒される

「生き残ったら王国の方達に伝えてください。
魔族を滅ぼしたいなら、滅びる覚悟をする様にと♪」

無造作に放たれる光球は眼下に広がる草原を焼き尽くしていく
圧倒的広範囲の面制圧、普通の兵士であれば焼死体の出来上がりだろう…だが…


煙が上がる砦を最後に確認し魔族の国へと飛翔した

ご案内:「タナール砦」からカレリアさんが去りました。
ジェネット > 「どうだかな、私にしてみればお前がただの小娘とは思えないからなあ
 そんなこと言って組み合いに来させたところでぷちっ、とかするだろ」

そういうことするんだ、魔法使いってやつらは。
実感のこもったため息混じりにそう答え、反撃に身構える。面制圧で攻められれば、速力任せに退く他ないがそれもちょっと厳しそうだ。
可愛らしい顔をして、ばかみたいな戦闘力の魔族に引きつった苦笑を浮かべて、降り注ぐ光球への対処を考える。

――うーん、ダメだな、多分逃げ切れんし。

せめて一矢くらいは当てておきたかったものだ、と我が身の未熟を恥じながら、よいしょと背負った大盾を構えて膝を折り、座り込む。
あとは鎧と盾を信じて、生きていられればそれでよし。
此処で死ぬなら、そのときはその時だ。
最期が草原でなかったのが心残りだが、うん。そういうこともあるのだろう。

「――ちょっとだけ泣き言を言うなら、まだ死にたくは無いな」

誰か助けて、なんて情けないことだけは言わないように、耐えれる耐えれると虚勢を張って――――

ジェネット > ――――――――それから数時間後、
戦鬼を撃滅して再奪還を果たした王国軍の主力部隊が目にしたのは、砦の外で盾を構えたまま蹲る焼け焦げた人馬……ではなく。

「いや案外無事なものでな? ほら、あの威嚇で爆発した穴。
 あれに思いっきり飛び込んで盾でフタしてみたら結構耐えた」

そこには、救出され元気に馬場を歩き回る人馬騎兵の姿が!!

「でも死ぬかとは思った、結構本気で。
 もう二度と単騎で魔族に強襲なんてしないよ」

――仲間や雇い主に心配を掛けぬようにそうは言うものの、やはり魔族というのは危険な生き物なのだと再認識した。
生物的に相容れぬというか。なんかもう滅ぼすのが目的で滅ぼしてます、という態度が生き物として人馬として無理だった。
必要があれば何度だって連中の前に立ちふさがってやろう。私は人間が好きだ。
圧倒的な知略や武勇で戦場を導く英雄も、
共に戦線を駆け抜ける頼もしき騎兵戦友諸君も、
質のいい人参を取り置きしておいてくれる八百屋のおばちゃんも、
人参グラッセが異様に上手い酒場のおっちゃんも、
あと行きつけの娼館の可愛い娼婦たちも――
魔族にとって一律で滅ぼすべき人間にカウントされるのであれば、絶対にわかり合えないのだ。

「…………本気で王国軍に志願する、かな……うーん、でも人馬受け入れてくれるかどうか。
 団長閣下に相談だなあ……」

ご案内:「タナール砦」からジェネットさんが去りました。