2018/12/08 のログ
ご案内:「タナール砦」にアマーリエさんが現れました。
■アマーリエ > ――全く。この任を与えた、発案した者は是非ともこの手で吊るし上げたい。
そんな物騒なコトを思う発端は至極、単純だ。
砦に駐留する部隊が後退するまでの間、タナール砦の防衛をせよ、という。そんな内容だ。
別段それは珍しいことでも何でもない。
ただ、交代の部隊の到着を待ってから任の引継ぎを行い、入れ替わるというあるべき流れが為されない以外は。
何でも、交代の部隊が流行り病で到着が遅れるという始末というのは、作為的なものさえ感じられる。
「……――事の真相を探っても、無駄かしらね。」
そんなことをぼやきながら、砦の胸壁に運ばせた椅子の上に座し、頬杖を突きながら眼下の光景を見遣ろう。
各所に灯火が灯る刻限は、夜。
魔を祓う効力を付与した油で着火した篝火を焚かせて、夜を徹して行う作業と訓練の風景がそこにある。
魔族の国側に向いた門。この門を中心に二重に半円状の濠を掘らせ、その内側で夜戦想定の訓練を行わせている。
これも発令された内容の一つだ。
魔族側に現在の人属の戦力を見せつけ、その威を示せ、と。
命令書を受け取って読む己には、間違いなく額に青筋が浮いていた。
ともすれば悪戯に兵を死なせかねない行為だ。しかし、訓練如きで死者を出すというのは師団の武錬を疑われる。
故に、手間をかけさせることになるが臨時で工兵を募り、濠を構築する中で訓練をさせる。
砦内でさせる方が、まだ少しは安全を図れることだろう。分かっている。分かっていても、命令だ。
ご案内:「タナール砦」にレナーテさんが現れました。
■レナーテ > 夜の空に広がる幾つもの白い翼、それは近づくほどに異様であることに気付くかも知れない。
普通の鳥よりも大きく、人を載せて飛ぶには十分。
そんな大きさの鳥達が、空を滑空しながら九頭竜山脈の方角から、砦へと近づいていく。
その内の二羽が徐々に地へと近づいていくと、足に掴んでいた籠を落とす。
人が数人ほど入れる大きな籠は、風をまといながら草地を滑っていく。
中に乗り込んでいた少女達は、落下の衝撃など無かったかのように飛び出すと、身を低くしながら一目散に砦の入り口へと走っていく。
「ユーレック、ここで降ります。後は他の子達と待機していてください」
鳥達の群れの中、一羽だけいる赤い鳥の背で呼びかけると、相棒たる鳥も念話でわかったとだけ小さく応えた。
とんっと背中を軽く蹴って飛び降りると、砦からはかなりの高さだが、臆すること無く自由落下していく。地表から100mぐらいになると、風の力で風圧のパラシュートの様に減速。
砦の中央辺りへと近づけば、風で暴れるスカートの裾を片手で抑えながら、綿毛の様に静かに地へ降り立った。
「こんばんわ……軍部の命令で派遣されてきた者です。第十師団の師団長さんはいらっしゃいますか?」
近くにいた者へ、柔らに微笑みながら軽く頭を下げてご挨拶をすれば、あたりを見渡す。
先程の少女達も、門の前まではやってきたが、直ぐに入ろうとはしない。
王国軍といっても師団毎に目的も思想も異なるところがある。
増援であるといっても、すんなり部外者を受け入れるかは相手次第だと思ってのことだ。
■アマーリエ > 上空で翼にて風を切る音がする。
己の竜のそれではない。かの竜は大儀そうに見張り塔の一つの上で丸くなっている。
哨戒も兼ねた夜間訓練を行う、麾下の竜騎士隊のものだ。平時でも行うが、前線となる場所となれば一層引き締まりもする。
そう、前線となる場所である。
砦より遠く離れて侵攻する意図は師団単位としては予定していないが、いつ、何が起きてもおかしくない。
「……ン、ご苦労様。
集積場所には、結界の構築と見張りを改めて徹底して頂戴。止むを得ない時は火を放つ準備――って、何? 客?」
思考の片隅で常駐させておいた通信魔法の一つが、部下からの連絡を告げる。
手を振って光で描かれた書面の如き枠を紡ぎ、対話の構築を示す明滅と届く声に頷き、答えよう。
過去の戦闘で虫害と定義するのも怪しいが、備蓄された食糧を食い荒らさせたと言う報告を受けている。
故、一旦砦内の整理、点検を兼ねて運び出し、結界の魔法円を描いた中に防水布で梱包したものを中庭の一角に集積している。
ほっと息を吐けば、別の用件を同じ通信魔法が告げる。飛来物の発見とそれを足にしたと思しい客の来訪だ。
「少し待たせてなさい。今、向かうわ」
承知したと答えて立ち上がり、椅子の背凭れにかけたマントと立てかけた鞘入りの剣を掴む。
身を翻し、中庭の方へと降りてゆこう。
王国側への門へと向かう中、敬礼する部下たちに答礼しつつ作業並びに訓練続行を伝達してはマントを羽織る。
左肩側に師団の紋様を染めた黒いマントだ。左手に鞘に納めた剣を下げつつ、開門したままの門へと至れば。
「――……お呼びかしら? 可愛いお嬢さん方。」
見えてくる姿に声によく通る声を投げかけよう。