2018/11/22 のログ
ご案内:「タナール砦」にアマーリエさんが現れました。
■アマーリエ > ――この砦が魔族に占領されたのは何回目であろうか。
よくあることと言い換えることもできる。
或いは、敢えて少しでも良く言うとすれば此処を捨て石とすることで魔族側の進行を一時的に堰き止めることが出来る。
王国側からの進軍により、奪回できる大よその流れとはそういうことなのだろう。
そんな数えるのも馬鹿らしいほどの状況に、軍議を経て出撃に掛かる。
現状、動員可能な竜騎士は指揮者以外で最大8騎。それを4騎ずつの隊に分け、その内の一隊を先鋒と為す。
後続となる布陣は歩兵並びに輜重部隊。周囲の護衛を足の速い軽騎兵に当たらせる。
『――竜騎士隊、前へ。胸壁上の敵を優先して叩きなさい』
王国側の砦の門に近い丘の一つに騎竜を着陸させ、探査系魔法並びに通信系魔法を並行して展開させる。
刻限は夜。丸い月が天頂にかかった良い夜だ。
故に視覚強化に暗視の術式を載せて砦側を見遣りつつ、先行する四騎一組の隊からの観測報告を受けて攻撃の許可を出す。
開戦の号砲を示すかの如く、竜の一体が放つ火球のブレスが熱波を散らして音を鳴らす。
それを背後に控えた白竜が、どこか眠たげな風情で欠伸でもするかの如く唸る。
つくづく、緊張がないことだ。だが、構うまい。用を満たすに足ると判断して連れてきたのは己だからだ。
■アマーリエ > 竜騎士を先鋒、先陣を切る楔にして切先とする関係上、第一にまず徹底して排除したいものがある。
上空にまで届く弓や魔法の使い手である。それらは速やかに排除しておきたい。
竜自身の鱗や甲殻は堅固であり、騎士自体も殆どが自身で魔法の障壁を行使できる類の術者を選抜している。
しかし、あらぬ方向から射かけられる攻撃に対し、事故が起きないとは決して言えない。言い切れない。
事故防止のため、単独で当たらせるのではなく隊伍を組ませても、だ。
熟練の竜騎士達は自分が言う以上に、それを心得ている。
上空からの竜の吐息や弩からの射撃を行い、長尺の騎兵槍を使っての急降下・即離脱攻撃を繰り返す。
だが、それでもやはり数がある。今回の砦に屯している魔物は数が多い。
それを今、戦場に居る部下達の通信魔法を経て聞き、頷こう。
『……仕方がないわねぇ。
私が出るから、その場を保たせなさいな。嗚呼、先に片付けられるなら良いけど、無理は駄目よ』
ぱっと手を振り、展開させた術式の群れを消し散らしてくるりと振り向く。
行くの?と言いたげな白い竜の顔を軽く叩き、頷いてその背に跨る。
鞍と鐙に尻と足先を預けて手綱を引けば、意を汲んで竜が小さく吠え、畳んでいた大翼をはためかせて飛び上がる。
砦の上空までは、まさに一足飛びが出来そうな速度を叩き出すのがこの竜だ。
協同戦線の経験はまだまだ足りないかわりに、師団長とセットでの突入に向く。
――吼える。別方向からの竜の襲来を告げる原初の恐怖を掻き立てる声に、敵陣がさざめく。
■アマーリエ > 「各騎散開なさい。
必要に応じて、各自の判断で降騎の上での突入を許可するわ!」
突入してくる白い竜の乗り手の姿に、四騎で菱形状の隊伍を組んで上空を回遊する竜騎士達が思い思いに挨拶を向けてくる。
それに片手を挙げて応えつつ、指示を出す。
一先ず見える範囲で上空への攻撃手段と思しい使い手を排除できれば、その後は切り込む必要がある。
固く閉じられた砦の門を破壊するのではなく、開門させる必要がある。可能であれば砦の施設は損壊は少ない状態で奪還したい。
故に、指揮者として手本を示す。
白い竜の頭を軽く叩いて促せば、竜が口を開く。
喉奥に溢れ出す光の色は炎の其れ。細く絞らせた火線が胸壁上に備えられた石弓の一つを、取りついた魔物ごと吹き飛ばす。
それを眺め遣って、鞍から立つ。背負った白銀の盾を左手に握り、右手で剣を引き抜く。
「上空は任せたわ、トルデリーゼ。――とうっ!!」
竜が首を擡げ、起こす動きに乗じて己も跳び上がる。
炎が残る城壁上に飛び込んでゆけば、進路上に居る人型の魔物の頭部を尖った盾の下端で抉るように殴る。
悲鳴はない。景気よく吹き飛んで、転げ落ちてゆく。
自分と同様に突入し、その身一つで戦域の確保に向かう騎士たちの様子を眺めつつ、周囲を睥睨する。
遠巻きにするような魔物達の様子を、眺め遣りつつ靴音を鳴らす。「……来ないの?」と。短くそう声を投げて。
■アマーリエ > 「……あら、不甲斐ない。なら――私の方から行くわよ?」
来ないのであれば仕方がない。此方から行くだけだ。
振り上げた剣を気合と共に振り下ろせば、剣筋をなぞって生じる刃風が前方、一塊となる魔物を断ち切り、打ちのめす。
そうやって切り開いた先へと、左手の盾を構えつつ突進する。
最前列に立つ一体に盾ごとぶつかりつつ、突き出す剣先で喉笛を穿ってかき回す。
その上で一歩、二歩と間合いを作れば一閃する剣で近寄る一体を切り捨て、引き寄せる盾で繰り出される槍や斧を受ける。
受けた得物を己の左方へと押しやるように盾を操れば、それにつられて敵の側面ががら空きになる。
「……やっぱり、不甲斐ないのね」
其処に再び剣を閃かせる。横に。縦にと。踏み込みながら剣を叩き込む。
一連の所作には遅滞はない。書類仕事もやるが、戦場の模範となる指揮者としては出来得る限り前線に立つ。
それで今、自分が立つ辺りは静かになる。
他の区画も同様だろう。剣の血振りを行いながら、王国側の城門のある方角が聞き覚えのある音を立てる。
開門のそれだ。遠く、後続となる己の部隊が鳴らす蹄の音を聞きつつ、通信魔法を再び立ち上げ、進行状況を確かめよう。
ご案内:「タナール砦」にジェネットさんが現れました。
■ジェネット > 「騎兵隊一番乗りはこの私がもらったッ!
我に続け、我に続けェ!! 正規軍がまさか傭兵風情に遅れを取るまいなッ!!」
重々しい音を立てて開きかける城門、それが馬一頭分の隙間を確保した所で勢いよく突き抜ける黒い巨体。
全身を漆黒で鎧った、東洋風とも王国風とも取れる奇怪なフルプレートを纏った重装騎兵が、
城門防御の魔族兵を大盾でぶん殴り、衝角槍で串刺しながら砦に乱入する。
「一番槍は竜騎士隊に譲ろうと、地の上で最速最強は騎兵だと示してみせろ、王国騎兵隊!
さあ進め進め! 敵は浮足立っているぞ!!」
後方の味方を鼓舞しながら盛大に蹄の音を立てて城門前を確保するその姿は、人ではなかった。
比喩ではなく、馬の首のあるべきところから騎手の胴が生えている。
――人馬。主に帝国東の大草原に少数が暮らす亜人。
それが、傭兵として騎兵隊の先駆けを務めて戦場に切り込んでくる。
「よし、城門制あぁぁぁぁつッ! このまま先行した竜騎士隊の援護に行くが良いな? 駄目なら貴隊は作戦通りやれ!
私は竜騎士というのを見たい、なぁに敵は轢いておくから気にするなッ!」
そして独断専行。傭兵ゆえのフットワークで、城門を完全制圧したと見るやあの強力無比な竜騎士、その騎手を間近で見るべく彼らの降り立った辺りへと一直線に駆け抜ける。
勿論、進路上の敵兵は軒並み轢き潰して、だ。