2018/11/13 のログ
ナル > 『ひっミリーディア様。』
『わ、我々は上の指示で...。』

突然現れた第二師団の師団補佐、実力的に師団長でもなんら可笑しくない彼女には暗い噂が絶えない。当然軍の権威を振りかざし威張り散らすしか脳の無い彼等にまともな説明が出来る筈もなくあわてふためくのみだった。

『これはこれは。第二師団師団長補佐殿。いや、副師団長殿と御呼びすべきですかな?』

その中に飄々と割って入ったのは老齢の部隊長らしき兵士だった。

『貴殿のお怒りは心中察するに余りありませんがこれは上層部、ひいては教会の意向、逆立ちしたとて我々に覆す術はございません。』

そう言い事の顛末を語りだした。

『先の帝国との大戦の折に造られたのが【彼女】です、戦後に生き残った彼女を殺してしまうのは忍びないと言うことで彼女を放逐したのが事の発端。以降【彼女】は人に紛れ王国内で大きなもんだいもおこさず生活していたようです、しかし先日視察に訪れていた教会本部の視察団に【彼女】の存在が露見。教会側の主張は【殺せぬと言うなら兵器として果てる本懐を遂げさせるべき】とのこと。教会はいつ暴走するやも知れぬ【化物】を市民の手の届く所に置いておくべきではないの一点張りでして。此方が書状になります、ご確認ください。』

その初老の兵士は教会、王家両方の印の入った書状と運用を彼の部隊に任せるといった旨の書かれた羊皮紙をミリーディアに差し出し続けた。

『規制破りの罰と言うのであればどうかこの老いぼれの首ひとつで納めて頂けませんでしょうか?若い衆には何の罪も在りませぬ故。』

と深々と頭を垂れた。

「どうでもいい、私に仕事があるなら完遂するし無いなら帰らせてもらう。それとも貴女が私に命令を出すの?」

渦中の兵器少女はと言うと心底興味がないといった表情でぼんやりとやり取りを眺めていた。

ミリーディア > 現れた少女は一変して慌てふためく兵士達に、普段通りの変わらぬ表情を浮かべた侭だ。
尤も、ある意味では其れが依り恐怖を煽っている形にも為らない事は無いのだが。
そんな兵士達とは打って変わった、後に現れた部隊長らしき老齢の兵士。
彼からの言葉に少女は目を細めた。

「儂は補佐だ、其れ以上でも其れ以下でも無い。
そうは云っても、受け取り手側の捉え方は千差万別さ」

両腕を組む様にして答え乍、続く彼からの言葉に耳を傾ける。
其の言葉が終われば、深々と吐いたのは呆れた様な溜息だ。

「相変わらずだな、君達は。
利用する為に新たな生命を創り出させておきながら、利用価値が無くなれば捨て去る。
殺すのが忍びない?だから放逐?馬鹿げた意見も程々にし給え。
生命を持つ存在を生み出したからには、其の生命を持つ存在の生涯を正しく全うさせる事が創造主の義務だ。
其の程度も出来ぬ者達が創造主として存在する資格はない」

見せ掛けだけで内容も薄かろう書状、そんなものを見るだけ時間の無駄。
少女にとっては王家の印なんてものは何ら重みは無い。
受け取った書状は少女の手元であっさりと燃え尽きる。

「そんな義務を放棄したのは君達自身だ。
この子を君達がどうこうとする資格もない。
与えた力に依って自分達が滅びようと、其れは自業自得だろう?
君には悪いがこの子は儂の名において自由にさせる、そう伝えておき給え」

代わりに一枚の紙を取り出し自分の筆跡で名を記し、彼に渡した。
罰を与えるのは簡単だ、だが、そんなもので懲りる者達ではない。
何かが起こった時、そこでやっと自分達の仕出かした事に気付く、そんな連中だ。

そして今度は馬車へと向かい、此方を眺めていた彼女の前に。

「此処での仕事は無くなった、君は一度儂と共に戻るのさ。
後々の事は馬車の中なり、戻った後なりで説明する…面倒だがね」

周囲の反応を余所に、彼女の横に腰を下ろす。
御者に此処から王都へと戻る様に指示を出して。

ご案内:「タナール砦」からミリーディアさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にナルさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にナルさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にナルさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にナルさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にナルさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にカインさんが現れました。
カイン > 数刻前まで激しい戦闘の起きていた砦。
今は王国側の旗の翻る門の前で、億劫そうな表情を隠しもせず番をしている男の姿があった。
幸い死傷者はそう多くはない物の、先ほどの戦闘で被った被害はそれなりのようで、
結果として外様の傭兵までもが門の前に駆り出される始末である。

「……しかしこいつは、まずいんじゃないかね?」

そう独り言を漏らす物の、それを聞く者は誰もいない。
騒々しい声の聞こえる砦の内側に視線を向けると、
多くの人影が右往左往している所が見て取れる。

「砦をとったはいいにしろ、維持できないんじゃお話にならんなあ」

カイン > 「ま、そうなったら殿でも買って出るか。
 他にできそうなのも数がおらんだろうし、
 今の国軍に手練れが居るならそれでいいんだが」

雇い主が消えてしまっては報酬がおじゃんだし、
何よりも肩を並べた相手がくたばるのは目覚めが悪い。
仕方がないと流す程度の感傷とはいえ、酒が不味くなるのは宜しくない。
顎に手を当てながら剣を軽く叩くと、息を吐いて少し気合を入れる。
何せ相手は魔族である。何を仕掛けてくるのか分かったものではない。

カイン > 「…お、交代要員か。遅かったな?
 全く、このまま一日中立たされるものかと思ったぞ」

漸く現れた二人組の見張りにそう声をかければ手を挙げて、
そのまま横に振りながら入れ替わりに砦の中に去っていく。
持ってきた酒でもとりあえず飲んでしまおうと頭の中で算段立てながら。

ご案内:「タナール砦」からカインさんが去りました。