2018/10/20 のログ
ご案内:「タナール砦」にラボラスさんが現れました。
■ラボラス > (――平穏は束の間で在り、静寂は霹靂の如くに掻き消される
其の日、所有権は確かに人間の軍隊が有していた筈の砦は
敵襲で在る、と危急の報が駆け巡ってから僅か数刻で、敵の手に落ちた
この砦は今や、人間達の僅かな敗残兵と捕虜を残しながら、魔軍が支配する領土
――無論、少なくとも今この時だけは、だが。)
―――拘束しろ、牢に繋げ。
魔術の素養が在る者は、須らく魔力を絞り尽くせ、連絡を行わせるな。
それ以外は一斉に砦を捜索だ、罠の類、連絡装置の類は皆破壊しろ
笛役が300数えたら、合図と共に撤収する。 ――応援の軍も共に叩くぞ。
(指示に従い、統制の取れた動きで屈強なる魔軍の戦士達が砦の中を荒らし回る。
隠れている者が居れば、捕虜として地下牢へと放り込み、魔力での連絡を取れぬ様に
サキュバス達が魔術師達、或いは医術師達からマナドレインを繰り返す
文字通り吸精によって、足腰立たぬ様にしてから、砦を防衛する事無く一度退去を命じれば
程無くて、砦は地下に閉じ込められた人間達を残してもぬけの殻に為るだろう。
そうして、僅か距離を置いた小高い丘に魔軍は再び潜む。 ――防衛戦では無く、奇襲戦の為に)。
■ラボラス > (人間の軍も決して無能では無い。
恐らくは交戦の直前に、少なくとも砦が襲撃されたと言う第一報は飛ばして居る筈だ
其れが魔術による物か、或いは何某かの伝令による物かは判らないが
何れにしても、奪還の為の軍を派遣するか否かの議論は行われるだろう
――そして、少なくとも偵察隊や、増援を送って来る可能性を考慮した。
其れは詰り、この砦に留まる心算が無いと言う表れでもある。
元より砦の奪還を果たした後は、防衛を他の魔軍に任せて退去するのが常だ
逆に言えばこの砦は、其れだけ防衛戦には向いて居ないとも言える。)
―――……負傷者は後方待機、治療を受けろ。
偵察は飛ぶな、此処最近は向こうにも優秀な「眼」が居る様子だからな。
代わりに空を見張れ、野鳥と思って侮るな。
(部隊の存在は、丘陵の陰に隠してはいるが、現状では敢えて「消して居ない」
其れは試して居る事が在るからだ。 ――人間側の戦力に、どれだけの「ムラ」が在るのかを。
依然の襲撃にて、一度だけ部隊の存在を遠方より見破った敵の一軍は
けれど必ずしも出兵して居ると言う訳では無いらしい。
その後、幾度か砦を襲撃しても、あれ程までに見事な撤退戦を演じたのは、彼の軍勢だけだ。
故に、唯砦を落とすだけでは無い。 人間側の戦力状況を調査する意味合いも在るのだ)。
■ラボラス > (――待つ事、半刻。
平原の向こうに見えた影は――何か。
いずれにしても、丘で待つ魔族の長は、口元に薄く笑みを見せた。)
―――砦に入るのを待て。
(すべては其れからだ、と、後に控える戦士達に伝えれば。
きっと、後に待つのは、再びの闘争に他ならず――)
ご案内:「タナール砦」からラボラスさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にアデリーナさんが現れました。
■アデリーナ > 「あー、だる……
軍も情けないなあ、今回は何日保ったんだっけ?」
ぼりぼりと寝癖だらけの頭を掻きながら、魔導機兵風のゴーレムに肩車された少女はぼやく。
魔族に占拠されたタナール砦の奪還作戦――
の先鋒として、罠に掛かっても切り捨てられるゴーレム部隊を先行突入させる……
という理屈は判るが、其処になんで僕の同行が要るかね。
王都で研究してたいんだけど?
いやまあ、生で僕の作品が諸々吹っ飛ばすところを見るいい機会だけどさ。
視界の向こうでは城門をぶち破ったゴーレムが、魔導短杖から攻撃魔法を砦の内部に叩き込んでいる。
魔族の抵抗もそうでもなさげだし、もう僕帰って寝ちゃ駄目?
駄目なの、あっそう……はいはい突入突入、捕虜が居たら解放して、それ以外は基本殺傷でよし。
ゴーレム中隊、とつげきー。
なんて、やる気なさげに配下のゴーレム部隊に書き込まれた命令魔術を更新しながら、
王国軍の攻撃部隊の本陣で気だるげに、無警戒にぼんやり砦を眺めている。
■アデリーナ > 「しかしまあ、魔族戦線の最前線って言うからには
もっとド派手な戦争やってんのかなって思えば地味だこと。
もっとこう百人単位で吹っ飛ばすようなバケモノとかさ。
そいつを単独で切り捨てる超人とかさ。
そういうのないわけ?」
研究材料としてそういう超越存在は興味深いし、
何よりそういうのが湧いて出てくれれば逃げ帰る理由にもなる。
ゴーレムの運用責任者として引きずり出されこそしたものの、僕は基本的に非戦闘員なのだ。
魔導機兵絡みでもない案件、本当なら来るつもりはなかったしさっさと帰りたい。
――――やんなきゃ出資減らすぞ、とか言ってくれちゃってまあ。
ほんと、案外魔族のほうが待遇良かったりするんじゃねえのこれ。
あれだぞー、技術者冷遇するとしっぺ返すからな、覚えてろよ。
ご案内:「タナール砦」にジーヴァさんが現れました。
■ジーヴァ > 幾度となく繰り返された、タナール砦を舞台とした奪還作戦。
今回は少々毛並みが異なり、その中心にいたのは大量のゴーレムと一匹のキメラ、もしくはキマイラと呼ばれる魔獣だ。
冒険者部隊として参加したアルマゲストのメンバーが作り上げた魔獣の実験体は使い捨てるにはちょうどよく、
いざとなればジーヴァに渡された魔法の笛を吹けば眠り込んでしまうので実際安心。
「こりゃすごい魔獣だ……けどあのゴーレムたちもよく制御されてる。
王国の魔術は伝統倒れのにわか仕込なんて噂、誰が広めやがった」
ミノタウロスに獅子の頭と山羊の頭を貼り付けたような出で立ちの巨人が二振りの斧を振るっては
魔族たちを切り裂き、潰し、薙ぎ払う。ゴーレムたちの攻撃魔法による巻き添えも恐れることなく最前線へ、敵がいる方向へと向かっていく。
後詰めとして待機しているジーヴァたちもやることがなく、小柄な少女のぼやきに返すくらいしか暇つぶしがなかった。
「……そんな奴らがいても面倒だろ?
それに、上位魔族は国のことになんて興味がないって聞くぜ」
■アデリーナ > 「おン? 誰さ?」
独り言に対して、予想外の方向から応えが返ってくる。
そちらに目をやればフード付きのローブに杖を握りしめた少年。
ははあ、なるほど。ウチとは別口で軍が用意した「捨て駒」の飼い主か、と納得。
「僕ぁデータが取れればなんでもいいのさ。極論、王国軍がまるっと消し飛んでも僕さえ無事ならそれでいいよ」
そんな危険な発言に、周囲の兵士たちがぎょっとする。
しったことかとどよめきを無視して、眠たげな目で視線を前に戻し、じっと砦を見詰め
「そりゃ残念。強力な魔族のデータがほしければ逆侵攻するしかないってか。
お、そろそろいい感じに敵が壊乱してきたようだぜ。ほい、ゴーレム中隊進軍停止ー。
そら指揮官殿、ゴーレムとなんかよく分からんナマモノに手柄取られたくなきゃ掃討戦くらい頑張んな」
正規軍をけしかけ、彼らが突っ込んでいくのを見送ってからもう一度少年に目を向ける。
「で、何の話だっけか。魔族領に突撃掛けるんだっけ? おう、頑張れ頑張れ行ってらっしゃい。
お土産はなんか強そうなヤツ生け捕りにしてくれるだけでいいよ」
ぶっちゃけ魔族より魔導機兵のほうが欲しいけどね。
ていうかこの子、誰だっけ?
■ジーヴァ > 少女の不遜な物言いに、軍の指揮官が反論もせず、どよめくだけ。
なるほど、この少女はどこかの大貴族か王国仕えの魔術師様のようだ。
だが、結果を追い求めるその口調にはアルマゲストにも通じるところがある。
縁があるかもしれないと思い、ジーヴァは会話を続けることにした。
「突撃もあの魔獣がやってくれる。
……俺の名前はジーヴァ。まったく、これじゃ報酬も全部あいつのもんだ……
魔導機兵の制御部を複製したもんを魔獣に組み込むなんて無茶苦茶、よくやれるもんだよ」
実際は完全な複製ではなく、粗悪な模倣品といったところだが、
それでも凶暴さがウリのミノタウロスを命令に従順にさせるほど本能を制御するのは大きな成果と言えるだろう。
そうしてしばらく眺めていれば、魔獣が指揮官であろう魔族の頭を掴み、ぐしゃりと潰す。
そして次の獲物を求めるように、砦の向こうへと歩こうとして――その巨体が止まった。
不審に思った指揮官が再度前進命令を下した瞬間、ブンと鈍い風切り音がして、指揮官は上下に分解されていく。
そして魔獣は獲物を見つけたとばかりに大きく咆哮し、動きを止めたゴーレムたちへと武器を振りかざして突撃した。