2018/09/26 のログ
ご案内:「タナール砦」にレナーテさんが現れました。
■レナーテ > 連日の魔族側の進行と占拠、それに対応すべく命を受けて向かった組合の面々は己の強みを活かした戦いを繰り広げた。
鳥達による上空からの攻撃、防壁上の敵を次々に撃ち抜き、更に後方へと人員を投下しての不意打ち。
数に劣るこちらとしては、攻めは火力を最大限に活かせる電撃作戦を取る他ない。
作戦時間は1時間も掛からず終了し、今は他の師団の人員と共に砦の防衛にあたっている。
砦の朽ち欠けたキッチンでは、戦地給仕担当の組合員が、その腕前を振るう。
何百と居る兵士達に暖かな糧食を振る舞うために、集落から持ち込んだ大型の調理器具を用い、食事を準備していく。
巨大な鉄板の上で、両手でターナー二刀流で肉をひっくり返していき、傍らでは機械が如く野菜を刻むものも居る。
大鍋に敷き詰めた大量の刻み野菜を一気に煮込みながら、既に計量済みで梱包されている調味料を順序よくいれるだけ。
パンも肉と一緒にひと炙りしてからサーブしていくが、連携と手順化した調理でそれらを素早く提供していくのだ。
今日の夕食は豚肉のソテーとミネストローネ風の野菜スープ、そしてパン。
酒は出せないが、戦場で干し肉といった保存が効くものしか口にしないよりは、遥かに士気を高められる。
交代で食事を摂らせていく合間も警備は敷かれており、魔族側の領地を見張っていた。
防壁の上と、砦の左右にある茂みには狙撃仕様の魔法銃を携えた、前哨狙撃兵と観測手が潜んでいる。
上空には、巨大な隼の背に乗った少女が偵察に飛び回り、厳重な警戒網を敷いていく。
これだけ偵察を厳にするのは、意味があってのことだが、今はもう気付く将校はこの国に残っていないかもしれない。
「……」
そんな中、自身は何をしているのかといえば予備の装備の点検を行っていた。
一緒に砦に入った装甲馬車の荷台には、予備の増幅弾、装備類、魔法銃、その他諸々の武器武具が敷き詰められている。
幌布を張った後ろからそこへ入ると、まずはトリガーガードの内側に鎖を通して束ねられた魔法銃の前へ。
クリップボードを片手に、銃を傾けながらナンバーを確かめると、チェックを入れていく地道な作業。
以前、とある出来事で魔法銃が一部流出してしまった事があったが、あまりに異質な理由だったため再発は無いとされている。
しかし、貴族王族に知れた時に騒がれないために、それぞれの銃の移動を把握するためにナンバーが振られていた。
普通なら気づかないような場所に、特殊なインクで刻まれた文字を魔石の光で浮かび上がらせてはチェックを行い、装備の在庫を確かめていく。
■レナーテ > 銃の在庫を確かめると、念のためにボルトを引いて機関部の中を軽く一瞥してから他の装備へ。
増幅弾の残数、各種装備品の在庫をチェックし終えると馬車の外へと抜けていった。
相変わらず食堂からは騒がしい声が響き、賑わう様子に薄っすらと笑みを浮かべながら次の作業へと向かおうとしたときだった。
『魔族の国側から敵の集団を発見したよ。結構いるかも』
『うわぁ、何百だろあれ。数えるの嫌になるぐらいいるんだけど』
脳裏に響いたのは少しだけエコーの掛かった少女達の声。
旧神の眷属達の念話の領域を利用した、長距離の通話で飛び込む報告は即時であり、生きた情報だ。
少女達へ観測を続ける様に告げると、念話の領域を切り替えながら集落へと報告を入れる。
そのまま師団の現場指揮官が居る部屋へと直行すれば、ノックの後扉を開くとすぐに、敵襲を告げてから軽く頭を下げた。
「迎撃の準備に入ります。撃退不可の場合は撤退となりますので、準備をお願いいたします」
協力しながらの防衛とはなるが、明らかに無理となれば、兵員消耗を避けるための撤退となる。
事前に伝えていた話を改めて確認すると、廊下を走って防壁へと上がっていく。
手を振る観測手の少女の元へと急ぐと、指さしながら差し出す遠眼鏡を手に取り、稜線の向こうを覗き込んだ。
『だいたい800mかな、伏せてる子達はそろそろ射程に捉えると思うけど』
「……先制で、敵の頭目らしいのだけ撃ちましょう。その後は前哨狙撃の娘は砦に撤収を。お二人はここで観察を続けてください」
敵の統率役へ一撃を加え、ダメージと共に混乱が起きればよし、即死が取れれば尚良しといったところ。
その指示を飛ばすと、駆け足で再び防壁を下っていく中、誰を狙えばいいのと少女達が問いかける。
だが、任せますと一言だけを返して急ぐ。
目視が出来ない自分よりも、常に山中から賊を探り、狙い続けてきた彼女達のほうが現場判断は適任だろうという考えが故。
たかたかと足音を響かせながら開けた場所へと向かうと、そこには退屈そうに羽を休める大きな鳥の姿があった。
少女一人のっても余裕のある体躯は、鮮やかな赤に彩られ、特徴的な鶏冠の凛々しい顔立ち。
そんな鳥がこちらを見るや、脳裏にはその声が響く。
『戦いか?』
「というよりは、集落から空中投下装備を持った娘達が車での時間稼ぎですね」
契約を交わした友人は、闇を憎む勇猛な火の尖兵だった。
主を奪われた怒りを胸に契約した彼にとって、この地を脅かす魔は憎むべき仇。
背中の鞍へよじ登っていくと、鐙に両足を掛けていき、鞍のサイドに備えられたホルダーに魔法銃の被筒を固定する。
とんと背中を軽く掌で小突くと、巨大なマシコは炎の様な赤の翼をひろげていった。
ご案内:「タナール砦」にラボラスさんが現れました。