2018/07/12 のログ
ご案内:「タナール砦」にヴェルムさんが現れました。
ヴェルム > いくつかの師団や部隊がタナール砦の防衛を持ち回りで行うようになってしばらく。
第十三師団もまた砦で防衛線を築き上げていた。
師団が砦に訪れてから、既に魔族軍による侵攻を4回も受けているが、今のところ一度もタナールを突破されてはいない。
そして今現在、5回目の侵攻を受けているところだ。

「…あんまり指示することなく終わっちゃいそうだ」

戦闘の指示を出すつもりで砦の上へ陣取っているものの、すでに勝敗は決しかけていた。
魔族軍にとっては通常であればタナールを奪い取るのに十分な戦力を揃えたつもりだったのだろう。
ただそれはこちらが人間だけの軍隊だった場合だ。
今目の前で行われている戦闘では、十三師団の腕章を付けた魔族の大男が巨大な金棒で敵部隊を蹴散らしたり、宙に浮く魔族の女が手の平に作り出した火球を放って敵部隊を消し炭にしたりなど、圧倒的な様を見せている。

何せタナール砦から一歩出れば旧神の結界の外、当然師団に所属する魔族たちは本領を発揮できる場として、思い思いに力を行使しているということだ。
もちろん人間やミレーの師団員もしっかり連携を取って防衛線を維持しており、敵魔族軍はタナール砦に近づくことすらままならない状況。
やがて敵指揮官は撤退を決めたのか、魔族軍は抵抗しつつ後退していった。

ご案内:「タナール砦」にノワールさんが現れました。
ノワール > 「派手に暴れてるな…、どこの師団だ?」

砦の向こうに見える火柱に目を移しながら、つぶやいた。
背後には一個師団には程遠い部下を引き連れて、王都からやってきたわけだが。
向こうで派手にやりあっている部隊を見ながら、肩をすくめた。
この分では北意味がないとばかりに。

「貴族の阿呆どもめ、なにが貴殿らの活躍を大いに期待する、だ。
要は体よく私たちを王都から追い出したかっただけだろ。」
『近々大きな取引があるという話もありましたからね、不正の事実を隠したい目的もあるものかと。』

大きなため息しか出なかった。
視られては困るような取引ならしなければいいのに、と一体この騎士団になって何度つぶやいたことか。
もうそのつぶやきも漏れず、ため息を漏らしながら部隊をタナール砦の前線の手前に配置する。

「あー…貴殿らはどこの師団か?我々は王国騎士団、第12師団である。
貴殿らの師団と、その団長に話を通したい。
我々は、貴殿らの支援としてこの砦に配置されたものである。」

といいつつも、すでに雌雄は決しているように見えた。
名目上でも、一応仕事はしている的なアピールをして、貴族どもの機嫌だけは取っておくか。

ヴェルム > 第十二師団が到着した頃合いに、砦を挟んだ向かいの戦場では王国軍の雄たけびと共に、砦に勝鬨が上げられた。
魔族軍はタナール砦に近づくことすらままならず、その戦力の大半を喪失し5回目の撤退を余儀なくされた。
ただ、敵が撤退し勝利に喜ぶのも束の間、十三師団団員たちは負傷者の搬送や次の防衛線の準備、敵侵攻ルートへの破壊工作などをし始める。
魔族と戦うのであれば、できることはやっておかなければ勝利どころか生き残ることもできない。

「…十二師団が?いいタイミング」

部下からの報告を受ければ、早速砦の入口に向かい始める。
第十二師団の面々も砦入口にいた警備兵からの話で、今砦の防衛を行っているのが第十三師団であることが伝えられ、砦内部へ案内されたことだろう。
砦内部は次の戦闘に備え、十三師団の団員たちがてんてこ舞いな状況。
当然団員の中にミレーや魔族が多いことにも気がつくか。

「…どうも、十三師団師団長のヴェルム・アーキネクトです。
支援に来ていただき感謝します」

そんな中彼女の前に現れたのは、師団長の服装をした平凡そうな若者。
名前こそ知っていたがこうして会うのは初めてなので、敬語で丁寧に挨拶を。

ノワール > 「……13師団か、こっちもこっちで貴族の嫌われ者集団だったか…。
お前たち、わかっているな?差別した奴は即刻叩き出せ。
必ず二人一組で行動し、任務に当たれ。」
『はっ、了解であります!』

騎士団の中でも便利屋と名高い舞台であることを告げられれば、余計に肩をすくめたくなってしまう。
こっちも貴族に”お払い箱”にされるためにここに配置されたのだと推測する。
部下に目配せした意味は、絶対に差別意識を前に出すなという意味。
とはいえ、十二師団の中でそんな意識を持っている人間はいない。
徹底された一枚岩の十二師団は、ミレーだろうが魔族だろうがお構いなしに傷の手当、次の戦闘の準備にいそしむだろう。
敬礼した部下を見送り、砦を見上げていた。

「ん、貴兄が師団長のヴェルムか、此度の小競り合いでの勝利、祝賀させていただく。
私は十二師団の師団長、ガジュール・シュライゼン・フォン・ノワールだ。
長いので、ノワールと呼んでいただいて結構。」

ガントレットに包まれた右手を出す。
勿論こちらは握手をしたいという意味合いで出しているが。

ヴェルム > 第十二師団と十三師団。
共に上層部から疎まれている部隊が共に同じ場に配置されるとは。
どれだけ戦果を上げようとも、ミレーと魔族を有している以上評価は望めないことは理解しているし今更だが。

「勿体無いお言葉ですノワール卿。
私一人の力でなく、優秀な団員たちの団結があったからこその勝利だと確信しております」

差し出された手をしっかりと握り返して握手をしよう。
様々な出自や思惑を持つ王国軍師団の中でも、彼女と彼女の師団は信用に値する存在だ。
共に上から疎まれているというのもあるかのしれないが。

「戦況についてですが、今のところ防衛線は崩されておりません。
すでに部隊は砦前方に前線を敷き、敵にタナール砦に触れさせぬつもりでおります。
…少々疲弊し始めていますが…」

砦防衛に駆りだされて数日、すでに5回もの侵攻を受けても返り討ちにした十三師団の士気は高い。
だが負傷兵も死者も確実に増えているし、疲労だけはどうにもできない。
立て続けに侵攻が続けば持たなくなるところではあった。

ノワール > 貴族の阿呆どもの思惑などこっちには関係ない。
彼らがどうしようとも、結局は体のいい当て馬になりその評価は必ず貴族に流れる。
第七のしかり、この第十三のもしかり。
落ち論、十二師団だって正当な評価を受けられないことくらいわかっている。
なのになぜこんなところにいるのか、それはたった一つ。
とりあえず言っておけば黙るからだ、しばらくすれば戻る。

「卿、などという堅苦しい言い方はやめてくれないか?
私は平民の出身であるが故、そのように呼ばれるとどうしてもむず痒くなってしまうんだ。」

騎士団長などといっても結局は、こういう時に出てきて捨てられるだけの存在。
わかっているからこそ、絶対に崩されない一枚岩の舞台を作りたい。
そう思って、この騎士団…十二師団を立ち上げた。

「…だろうな、貴兄らがここにきて何日になる?
貴族の阿呆どもは、ここで十三師団が消えても名誉の戦死という筋書きを用意して、そこには結局また貴族の息がかかった阿呆が居座る。
ミレーと魔族、さらにはティルヒア残党なんて言うものを一層できて一石二鳥、というのがシナリオだろうな。」

腰に手を当てて、首を横に振りあきれ返ったようなしぐさ。
十二師団にしてみても、ここでしばらく足止めをしておけば自分たちが有利になる取引ができる。

「だからさっさと切り上げて、お互い王都に戻ろうじゃないか。
適当にやって、少し戦況が変わったらまた王都に下がればいい。
お互い、貴族の皮肉や嫌味は聞きなれているだろう、ヴェルム団長殿?」

ヴェルム > 十二師団はその職務内容からしても貴族たちから疎まれそうだし、実際いろいろ噛み付いているらしい。
十三師団としては羨ましいところだ。
こちらは少しでも反抗的な姿でも見せれば、十三師団という居場所を奪われてしまうのだから。

「はは、承知しましたよノワール。
こちらもヴェルムと気軽に呼んでもらって構いません」

とりあえず敬語だけは続けておこう。
年上ではあるし、経験もこちらより豊富であろうから。
何より平民という出自からここまで上り詰めた敬意も込めて。

「ふぅ…一週間です。
たった7日で5回もの襲撃を受けては、安らぐ暇も無い。
そんな安直なシナリオを描いているのが上にいると思うと眩暈しそうですが…まぁその期待にはお応えできかねますね」

十二師団もそんな感じの思惑でこの地へ向かわされたのだろう。
ただ、こちらとしてみれば支援があるだけでもありがたい。
そういう決定を下してくれたことには、上には感謝しておこう。

「命令がなければ、王都には戻れません。
忠実な犬ですからね、わんわん。
…でも貴女の言うとおり、十三師団揃って王都に戻るつもりですから、ご安心を」

彼女のように貴族に強く出られないのが、十三師団の残念なところ。
だからこそ上からの命令を忠実に遂行して、生きて帰還してやろう。
おどけて犬の鳴真似をしつつ笑った。

ノワール > 「そうか、ではヴェルム。支援物資の中に酒がある、あとで一杯やるといい。」

酒は嫌いだろうか、と声をかけて見せた。
あいにく、フルフェイスで声はくぐもっているのだが。
相手の誠意もあるので敬語までやめろ、とは言わなかった。
どっちにしてもむず痒いのではあるが、折り合いはつけてしかるべきだろう。

「1週間か……長いな。それだけ戦い詰めなら、兵士たちの疲労もまずかろう…。」

使い捨てにするつもり…いや、それなら支援を届けろとは言わないはず。
飼い殺しという言葉を思いつき、それをしっかりと当てはめてしっくり来た。

ここで十三師団が壊滅しても、王都からまた別の部隊が派遣される。
嫌われ者の部隊がどんどん消えていき、最終的には貴族の私物化が加速される。
肩をすくめながら、盛大なため息をついた。

「はぁぁ……、いかん、私も酒を飲みたくなってきた。
王都に戻ってきたら、いっぱい酌み交わすか…ヴェルムワンちゃん?
あいにくといい声で鳴く猫は準備できそうにないが、美味い餌ならば準備しておくぞ?」

おどけて笑っている彼に倣って、こちらもおどけて見せた。
だが安心した、これだけの口が利けるならば士気は衰えていないようだ。
王都に戻ったら、貴族をせっついて撤退命令を出させようかと思う。

ヴェルム > 「酒か、本当なら団員たちに振舞ってやりたいところですけどね」

未だ臨戦態勢が解けない状況では、酔っ払ってなどいられない。
だが今は敵部隊を退けたばかり、多少なりの余裕はあるだろう。
十二師団の団員たちの手伝いや支援物資もあって、今しばらくは防衛線を維持することができよう。

「ため息ばかりですね、ノワール。
落ち着いて飲むのもいいですが、今は気付けに一杯いかがでしょうか。
いずれにしろ今宵は静かな夜になりそうですし」

ワンちゃんといわれると苦笑いを浮かべて恥ずかしそうに頬を掻く。
酔っ払わずとも気分転換に少し飲むくらいなら問題はなかろう。
それに敵も十二師団の合流を知れば、戦力を整えるのにさらに時間を要するだろうから。

ノワール > 「ため息をつかせる状況にした阿呆どもが悪い。」

酔っぱらってなどいられない状況なのはわかっている。
だが、少しは気晴らしでもして取れるときに休息をとっておかないと、必ず足元をすくわれてしまう。
疲労というものは、いつどこで牙をむいて襲い掛かってくるかわからない。
しばらくは静かな時間になりそうだし、休息は取れそうだった。

「……サヴェン!すぐにタガとミョールを連れて見張りと交代しろ!
十三師団はしばらくは休む、さぼるなよ!」
『了解、師団長。その代わり、とっときのやつごちそうしてくださいよ!』

軽口をたたきながらも、部下はすぐに動いてくれる。
見張りの交代を命じて、タナール砦の中へと入る。

「今日一日は、我々十二師団でこの砦を守る。ヴェルム、貴兄は団員をしっかり休ませてやれ。」