2018/07/10 のログ
タマモ > 少女は、己の世界である人間と誓い交わしていた。
幼き時代、自分の正体を知りながらも仲睦まじかった一人の少女と。
しかし、その相手が天寿を全うした時、少女はそれを破った。
口車に乗せられ、やらないと誓った行為を、それを手引きしたのが…

「母様…」

その存在が、今度は暴走によって、少女の誓いを再び打ち崩した。
男の言葉通りならば、唯一の救いは、襲った男の義妹は心配してくれていた事か。
それでも、少女が冷静さを取り戻すには一歩足りなかった。
身を震わせる少女、それはどんな感情によるものなのか、入り乱れ過ぎて読み解けない。

と、男の前の少女に異変が起こり始めた。
赤味掛かっていた金色の瞳、その赤味が徐々に増し始めている。
意識を乗っ取られる、そう言った訳ではない。
昂ぶる感情によって精神状態が人間寄りから、妖寄りになった事で起こる現象。
傾けば傾く程に…そして、最後は真紅となるのだ。
だが、それを男が理解出来るかどうかは分からない。

「………すまぬ」

少女は、男にそれだけを、絞り出すように伝える。
それは男に言ったものなのか、男の義妹に言ったものなのか…
しかし、次の瞬間、現れた時のように、その姿を消すのだった。

ご案内:「タナール砦」からタマモさんが去りました。
アーヴァイン > 彼女の声は、先程までとは異なって沈み続ける。
不意にこぼれた母親を呼ぶ言葉は、何を意味するのか。
ただ、それが彼女のもうひとりの正体ではないのは間違いないだろう。
それならもっと、明らかな感情を以って答えとなるはずだ。
妹の思いを伝えていくも、それは届いたかすらもわからない。
徐々に瞳が真紅に染まる瞬間、一瞬身構えるものの、記憶になぞった気配へ変わる様子はない。
瞳の変化は、意志の変化とはまた別なのだると思いながらも、不安にざわつく心中を押さえつけながら手のひらを重ね続ける。
今手を離したら、この娘の心を余計深く傷つけてしまいそうだからだ。

「……伝えておく」

小さな謝罪の声は、確かに届いた。
そこになかったかのように姿が消えていくと、掌が空を撫でていく。
狐に化かされたというような、あっという間のことだったが、こちらも必要なものは手に入れた。
少女達に近づかないでほしいという警告は伝えられなかったのは、結果として幸いだろう。
これ以上深く傷を与えずに済んだのだから。
立ち上がれば、今宵は彼もここを立ち去っていく。
再びこの血を支配するのは誰かは、今は知れぬことである

ご案内:「タナール砦」からアーヴァインさんが去りました。