2018/06/20 のログ
ご案内:「タナール砦」にサロメさんが現れました。
サロメ >  
──第七師団が魔族軍の奇襲により撤退してから僅か半日後、再び砦には王国軍の御旗が風に靡き揺れていた

「…今後は偵察にもそれなりの人足を割かねばならないな」

第七師団は王国軍の中でもその存在理由がはっきりとしている一団だ
対魔族特化戦力…ゆえに、魔族との闘いに負けたままではいられない

オーギュストの撤退から僅か半日でその戦力を一挙投入し砦を一瞬で奪い返してみせる
それくらいのことを為さなければ、頭の固い王国貴族たちは納得しない

「──しかし」

砦の一角で足を止め、思案する
本来オーギュストならば単身でもそれなりの魔物の群れ程度ならば相手にならない
即座に撤退を決めこむからには、相手が件の「統率のとれた魔族軍」だったのかもしれない
それにしては、奪還は非常に容易に事が進んだ

サロメ >  
力、魔力、生命
あらゆる点で魔族や魔物に劣る人の軍がそれらを打ち倒すのに必要なこと
それは物量と統率、そして知恵である
故に、烏合の衆であった魔族・魔物を統率し軍として運用をする者が現れた事実は大きかった

「…ならば砦の攻略自体も一筋縄ではいかない筈だ」

少なくとも人間と同等、それ以上の知恵を持つ者が統率しているのならば、今までのようにはいかない
しかし、一挙に奪われることが増えてはいたものの、結局は奪い合いが続いている
──普通に考えるのならば…

「……不在、か」

人間側にも言えることだ
有能な者が常駐し、統率、指揮をしていれば
おそらくそう簡単に取り返されることなどはなくなる
しかし現実にはそうはいかない
王国軍の敵はタナール周辺の魔物だけではないからだ
つまり魔族軍側の指揮を執る者は、決して多くはない
そう考えるのが一番自然に思える

サロメ >  
携えた剣の柄に手をやる
冷やりとする魔力が、その手へと伝わった
この剣も、考えていることは同じらしい

…タナールを拠点とし、魔族の国へと攻め込む
第七師団が長い時間をかけて進めている計画の一つ
いよいよその計画も最終段階だ
残す問題は、拠点が安定したものでなければならないこと…

「………」

天井を見上げる
戦いの痕跡、無数の傷が浮き出ていた
壁どころではない、天井にまで及ぶ闘争の痕…

「…此処を攻める軍の頭が一人ならば…やってやれないこともない、か…例え、相手が魔王だろうと」

それを進言するのは渋っていた
恐らくあの男も許可を渋るだろう
自分が砦に常駐し、本作戦の間も此処へと残り続け、拠点確保を盤石とする…
無論、危険は大きいが…作戦の間くらいは持たせることも出来るかもしれない

サロメ >  
そう、魔族の軍を指揮する者
それが一人ならば…刺し違えることでも確実に止めることが出来る
こうやって砦を取り返せるのは、相手の統率者が少ないからだ
おそらくは一人、多くとも三人はいないだろう
三人以上いるならば交代で砦に常駐することができる

「伝令」

一言、言葉をつぶやくと近くに潜んでいたのであろう、隠密のような服装をした者がその場へと現れる

「第七師団副将サロメはタナールに残り陣頭指揮を執る。
 万が一、その間に砦が落とされたなら、私の安否を気にする必要はない。
 王城警護の任は、現場の人間に任せる───そう伝えてくれ」

隠密は小さく頷くと、その場から姿を消した
…王城警護に関しては、最近魔王達は姿を見せない。それに、あの少年もいる
恐らくは問題ないだろう

サロメ >  
魔族に比べ、人間の命は儚い
しかし故に、重い

「──命一つかけるなら、魔王の首一つでも土産にさせてもらおう」

踵を返す
向かう先は砦の指揮所

「(…ベッドくらいは変えておかねばな)」

とても清潔とは言い難い砦の内部であった
あまり長い期間ここで寝泊まりをした記憶もないが、
よい環境で眠れたことなどは一度もなかった気がする

サロメ >  
指揮所へ到着してみれば、当然ながら未だばたばたと騒々しい
仕方ない、オーギュストの撤退を受け、第七師団の威信を傷つけぬと中核戦力を叩き込んで一気に奪い返した形だ
おかげで死者こそは出なかったものの、反射ともいえるほど迅速すぎる行動と結果は後片付けを大変にする
書類や報告書の類が何もかも後出しになるせいだ

「…此処に来てまで座り仕事とは」

少しだけ苦笑し、指揮官用のテーブルへと着く
どうやらデスクワークからは逃げられない運命らしい

駐屯兵達に適切に哨戒等の指示を出し、王国側へ報告する為の書類へと手をつける
気づけば騒々しかった指揮所も一段落したか静かになっていた
兵達もそれぞれの持場を確認し戻っていったのだろう

「──………」

小さく溜息
此処への常駐を決めたのは完全に独断である
彼は怒るだろうか、いつも勝手な独断先行ばかりしているのは向こうのほうなのだが

サロメ >  
王国への報告書は手早く仕上げる
どうせ事細やかに書き連ねたところで細部まで読むことはしないだろう
概要さえ伝われば良い

第七師団の作戦要項におけるタナールの拠点としての保全のため

副将軍である自分が此処に常駐する理由としては十分なものだ
無論、無駄に命を捨てる気はない
完全に敗走しか見えぬ戦いがあれば一旦後方の駐屯地へ退き、即座に砦を奪い返す
半日以上それに時間をかけなければ、とりあえずは良しとしよう

「……問題は…」

今度は重い溜息、テーブルに頬杖をついてうーむと唸る

魔族の軍を指揮しているであろう個体の正体が不透明すぎること
それが目下一番の問題ではなかろうか

サロメ >  
はらりと一枚の書類を手にとり、視線を走らせる

「……『翼在る獣』…か」

誰がそう呼び始めたのかは定かではないが
統率のとれた動きをする魔族の軍はそう呼ばれている

「どの道、守るだけではな…。
 それほどの統率力と頭数…どこかに駐屯地でもなければ説明がつかないが…」

あまりにも魔族の国の情報が此方側に無さすぎる

サロメ >  
前線を押し上げ、魔族軍の拠点を炙り出す
その上で突破、恐らくは少数であろう敵の頭を潰す

そうなれば明確な勝利だ
魔物の驚異こそ残るものの、十分な戦力を注ぎ込めばタナールの保全は難しくはない

──砦を奪還された場合、取り返すためには、統率が取れた軍ならば作戦を練り出兵するだろう
つまり砦を奪還したばかりの今ならば、魔族の国へと打って出ても鉢合わせ…という可能性は低い

早馬と、手練れを数人
敵のエリアで拠点を探るにはそれくらいがちょうどいい

椅子から立ち上がる
我ながら書類仕事も手慣れたものだと一伸びし、剣を携えマントを羽織り、表へと

サロメ >  
──タナール砦、その魔族の国側へと出てみれば、
そこはもう人間の国側とはまるで空気も雰囲気も違う…

「何かあったら狼煙をあげろ。すぐに戻る」

騎乗し、鞭を一振り、馬が駆け出す
…馬は繊細な動物だ。場の空気の違いからか僅かにその脚は重い
それはまるで分の悪い賭けに乗り出したような…そんな不安を僅かに感じさせた

ご案内:「タナール砦」からサロメさんが去りました。