2018/06/03 のログ
ルーシェ > 「そうだよ~、魔王ヴェパール、魔の海を守る魔王だよ~! 今日は、お呼ばれで砦を守ってるのっ」

魔王といっても信じてもらえないことの方が多い。
その為、舐めるような視線で姿を確かめられていくも、仕方ないかと困ったように苦笑いを浮かべて、軽く頬をかいた。
水色のワンピースに包まれた胸元は、幼女を思わせるような貧乳や、淫魔の様な豊満な育ち具合のどちらともつかない。
魔王と言う割には中途半端に程よい程度な膨らみだが、臀部はスカートの上からも、丸みがはっきりと浮かぶ。
まさか身体を確かめられているとは思いもせず、相変わらず無邪気に返事を返していた。

「危なくないように? わ……っ!?」

こちらとしては戦う気がないなら戦いたくはなかった。
だからこそ、罠があることを先に告げて、相手が恐れて下がってくれればいいと思っている。
しかし、その思いは届かず、彼は意味深な言葉と共に笑みを浮かべていた。
重ねた指が幾つもの印を切っていくも、それが何を示すのかは分からない。
手品の前準備を見るように、その様子を大人しく見つめていると土が爆ぜる様盛り上がっていった。
次々と足場となって飛び出す固い地面が伸びていくと、ちょうどその先にいた貝が押し出される。
蛤やアサリなどの二枚貝の様な形状をしたそれが
転げ落ちていくも、警告どおりに足を挟めそうな大きな貝しか出てこない。
地面に落ちると、もぞもぞと隙間から足を伸ばして土を掘り返し、また潜っていく。
貝の地雷原を抜けた先は、城壁の前に広がった巨大珊瑚の網壁。
王都側の出入り口も、その珊瑚で絡め取るように塞いでおり、侵入されづらいようにロックしていた。
しかし、岩の出現で珊瑚が足元から揺らされると、その振動が増幅された先端はゆらゆらと踊る。
勿論、そこに立つ自身も、右に左にと踊らされて落ちそうになりながら両手をバタつかせていた。

「ぅわっ、え、えっと!? オジサン一人でここに攻めにきたのっ!?」

今にも飛び込んできそうな彼の動きに慌てふためきながらも、バランスの悪い状態で指を鳴らす。
同時に、周囲には水を圧縮した無数の礫が浮かび上がる。
お手玉程度の大きさのものだが、それ自体も魔術に使うものなのか、魔力を濃厚に宿しつつ、自身と共にゆらゆらと踊っていた。

影時 > 「海の魔王様ってワケか。こんな山の中にわざわざお出でになるとは、大変なモンだ。
 ……名乗ってくれた御礼だ。俺はカゲトキという。以後、お見知りおきを?」

伊達や酔狂で魔の王という言葉を名乗りはするまい。
子供同士の遊びではなく、少なからず大人かそれに近い風情の持ち主が名乗るには冗談が過ぎる。
だから、だ。己の嗜好と並行して、忍者として培った経験が告げる。見た目が全てではない筈である、と。
そうでなければ、こんな最前線である筈の場所に居たりはしないするまい。

己もまた、鑑賞させてくれたお礼とばかりに片手拝みをしてみせてた上で、簡単に名乗っておくとしよう。

「いーや? 俺なんぞの身で攻めきれるものか。
 オジサンはまた占領されちまった砦を見て来い、と言われてきたのさ。おつかいだ。

 ……――ただ、こんな殺風景な場所にカワイ子ちゃんが居れば見たくなるのは当たり前だろう。ン?」

忍術を行使する。本来は岩盤を屹立させ、障害物を作るための術である。これを応用し、範囲を絞って行使する。
地面から押し出せれてくる貝たちを見れば、おうおうと呆れとも感嘆ともいえる顔をしよう。
こんな場所で見かけるには、あまりにも異質だが海産物を食する文化に生まれた身とすれば、また別の興味も湧くものだ。
臨戦態勢らしい様を見せる様子に、しゃがんだ姿勢で顔の前で手を立てて横に振ろう。無理に遣り合うつもりはない、と。

「……それと、この貝。喰えンのか?」

近場に出てきた貝の一つを指差し、首を傾げよう。アサリやホタテ貝と比べるにはサイズ差が大きいが。

ルーシェ > 「うんっ。ホントだよ~、あんまり好きじゃないっていってるのにね?」

見た目にそぐわぬ力という点では、彼が経験から察したものは的中している。
困ったように苦笑いを浮かべてはいるも、人の姿に抑え込んだ魔王の片鱗は僅かに擬態からも零れ落ちてしまう。
その魔力の総量だけでも、並の人間では匹敵し得ぬ量を秘めており、戦いに身を置く彼なら気付くかもしれない。
名を名乗る言葉には、カゲトキさんね? と微笑みながら頷いていく。
片手拝みの理由に、ひっそりと卑猥な意味がこもっているとも知らず。

そして、貝達に驚きながらも距離を詰める彼に、応戦体勢を整えていった。
しかし、戦う気はないと間近でジェスチャーと言葉で返されれば……一間置いてから肩を揺らしながら吐息を零す。
ひゅっと掌を横に薙ぐと、水の礫は弾けていき、濃厚
だった魔力の気配も消えていく。

「うぇ、おつかい……? そっか~…それならいっか、私も朝までここを守れればいいだけだし、その後は知らないもん」

魔族らしい、利害での行動を口走りながらくすっと微笑むも、続く言葉には驚きに瞳を少し見開いてから、何度か瞬く。
まんざらでもないのか、言葉はないものの、頬を少し赤らめながら指先でくせ毛の先端を弄びながら視線を逸らす。

「……ぁ、それ? 食べれなくはないけど…美味しくないよ。魔海の貝だから」

吐き出したくなるような不味さは無いが、美味しいとも言えるような旨味もない。
挙げ句、巨大化させて更に大味になった貝を見やれば、苦笑いを浮かべて頭を振った。
お互いに珊瑚の上と岩の上と、話をするには不向きな場所で立っているのを今更ながらに確かめると、口角を上げていき、くすっと可笑しそうに笑う。

「こんなところで立ち話も変だし、中入ろっか? カゲトキさんも戦う気、ないんでしょ?」

中も殺風景だけどと言葉を付け加えながら苦笑いを浮かべれば、背中を向けて珊瑚の足場を蹴った。
小柄な身体が簡単に跳ね上がり、スカートの裾を大きく揺らす。
少し離れたところにある砦の城壁へと着地すると、裾が右に左にと踊っていき、彼の方へと振り返り、指を鳴らす。
パチンと弾ける音と共に、珊瑚の一部が粒子状に変化すれば、あっという間に足場の板へと形状を変えていく。
岩から珊瑚を抜けて城壁までの道をパステルカラーで作り上げると、こっちこっちと微笑みながら手招きをする。

影時 > 「そんな気質な癖に引っ張り出されたのか。大変だなぁ。
 ……魔王っていうのは数居るってハナシだが、そういうモンなのか」

聞いた話だが、と。そう言い足しながら、微かに感じる人ならざる超越の気配に口の端を捩じろう。
まともに戦えるか? その場合、己は勝てるのか? 
ふと浮かべる思考を直ぐに打ち消す。
忍者は謂わば戦場の何でも屋だ。破壊工作、偵察も含め色々と遣るが、一番重要な点は万事戦って勝てということではない。
課された目的を果たして、帰ってくるということだ。其れが出来なければ、無用の者以外でもなんでもない。

今もまた、然り。大物の首を勝ってこいという無茶ぶりの指示はない。

「朝まで、だな? 朝になったらお帰りになるってコトなら俺も楽でいいねぇ」

朝を越えれば、どうなるのか。少なからず引いてくれるということなら、後は騎士団にでも情報を回してゆけばいい。
守りが失せたあととなれば、再びこの砦を確保するのは今のタイミングで攻めるよりも容易いだろう。
向こうが紡いでいた水の礫が魔力の気配と共に消えて、失せてゆく。
その有様にほっと息を吐きながら、楽観的なセリフを口に出そう。そうならない場合も想定するのは――、王都の軍師にでも任せようか。

「然様か。なら、無理に喰っても仕様がないな。――ン、いいぜ。お招きに預かろうか」

恐らく醤油と香草の類と一緒に焼く、あるいは煮ても辛いのだろう。
此の大きさだと、貝殻を開いて中身を切り出すのも大変な気さえする。
向こうの姿がひょいと簡単に跳ね上がり、城壁に至る様におー、と声を出し、次いで即席の階段まで作ってくれる様に愉しげに笑う。

海の魔王の権能ということなのだろう。
本来は己の領分ではないにもかかわらず、ここまでやれるというのはやはり強き力の片鱗を十分に感じ取ることができる。
素直に可愛いと褒めることに頬を赤くしてみせるのは、心も見た目通りということなのだろう。思うことは尽きない。

ルーシェ > 「あんまりそういう事に顔出さないと、面倒なところに余計引っ張り出されちゃうから仕方ないよ。ん~……私は珍しいほうだと思うよ? お友達の娘とか、人簡単に殺しちゃえってタイプだから……ちょっと複雑な気持ち」

数多く居るものの、自身も魔王と名乗る存在のすべてを知っているわけではない。
何より、顔を合わせたことがある存在こそ少ない。
自分のような温厚な魔王が居るかと問われれば、ゆるく被りを振って答える。
眉をひそめて浮かべる苦笑いは、言葉をなぞるように少しさみしげで、揺れた髪から溢れるフローラルブーケの甘い香りとは真逆の表情。
続く言葉には小さく頷きつつ、代わりに後詰めの軍勢が来るけどねと苦笑いを重ねる。
その後のことは自分の範疇外、だからか、何処か他人事のように軽い口調で呟いた。

「魔族の国の食べ物より、そっちの世界の食べ物のほうが美味しいよ? よく食べ歩きにいっちゃうしね」

場所によりけりなのだろうが、自分としては故郷よりも人間の世界の食べ物のほうが好み。
クスクスと笑いながら飛び移り、彼の足場を拵えていく。
いらっしゃいませ~と冗談めかした口調で彼を招くと、そのまま城壁から中へと階段を下り、砦の中央へ。
ところどころ濡れており、湿った土からは僅かに血の匂いが漂う。
城壁に面した扉を開くと、廊下を抜けて案内したのは一番上等なお部屋。
恐らく砦の長が使う予定だったのだろうそこは、大きめのベッドに室のいい調度品が並べられた場所。
ぽすっとソファーに座ると、月明かりの差し込む中でウェーブヘアをかき上げる様に撫でながら、彼に薄っすらと微笑む。
そして、再びパチンと指を鳴らすと、周囲のランプに明かりが灯っていき、徐々に室内は揺れる火に照らされる。
彼がじっと見ていた胸元も、間近でソファーに座ると程よく育った房の谷間が僅かに覗ける筈。
グロスの掛かった艶のある桜色の唇や、大きめの紫の瞳で童顔気味に見える顔立ち。
そんなパーツの揃った顔で穏やかに微笑めば、口さえ開かなければ少し大人びた表情になるが、だいたい喋って台無しにしていた。

影時 > 「……成る程成る程。あー、何となくだが見えてきたゾ。オトモダチにしようにもし辛いってワケか?」

魔王同士の横の繋がり、縦の主従関係というのは流石に伺い知りようがない。その正誤の裏付けも取れない。
しかし、見遣る表情から幾つか、想像と予測できるものはあるのだ。
仲良く連れ立って出かけたい等と思っても、素直についてきてくれそうにない、或いは殺戮等の方向に向くのだろう。
物騒だなと外套に包まれた肩を大きく上下させ、続く言葉にだろうな、と嘆息しよう。
それはそうだ。前線基地を確保しておきたい、あるいは防波堤を確保しておきたいというのはどの勢力も同じだ。
指揮官の首級を挙げよ、と言われれば考えもするが、万軍を相手せよというのは勘弁被りたい限りだ。

「つくづく、気軽いなァ。ここらはお嬢ちゃん方の敵地だろうに。
 だがまぁそうだな。毎日食べるなら、少しでも旨い奴に限る。まずい飯ばかりは心が折れる」

余程、人間離れしている見た目でなければ、容易く人界に混じることが出来るのだろう。魔族も、魔物も。何もかも。
感知できる手段でなければ、己とて自己紹介の上でネタ明かしでされないかぎり気づきようがない。
数日前に己も足を運んだ筈の砦に足を進める。
パステルカラーなサンゴ色した階段を高所故の怯みなく上り切り、至る砦の城壁から周囲を見て、浮かぶ表情はほろ苦い。

血の匂いと気配には慣れていても、少なからず感慨もある。其れを調息と共に押し流して己を招く姿についてゆこう。
至る場所は己が訪れたことのない場所だ。砦の指揮官が使う部屋なのだろう。
扉の造りからして、上等な部屋だ。中を見遣り、外套を脱いで一息しよう。
指弾の響きから、灯火が灯れば先ほどまで遠くより眺めていた相手の肢体もよく見える。

大き過ぎるわけではなく、さりとて小さすぎるわけでもない。整った造形が織りなす結果の感想はバランスが良い、という形容だろう。
黙っていれば、確かにらしく見えるが、喋ると地が覗く。畳んだ外套を適当な場所に乗せ掛け、己もソファに歩んではどかりと腰を下ろすとしよう。

ルーシェ > 「うぅん、し辛いっていうか……何ていうのかな、人が凄く嫌いなんだよね。嫌な事されたからだけど…ん~……複雑なの」

友達と手を取ってくれた少女は、自分と同じぐらい…もしかしたらそれ以上に人に何かを奪われたのだと思う。
一緒に食べ歩きに何処かいこうなんて、人の世界に誘い出せるはずもない。
自分が好きな世界を憎むことを否定できず、止めさせることも出来ず。
苦笑いを浮かべながら彼の言葉に答えるものの、暗い話になると思えば、敢えて曖昧にして誤魔化してしまう。

「本当の姿にならなければ、戦い慣れている人以外にはきづかれないんだよねぇ。 でしょ? あと御花も好きだよ、王城の薔薇園とか、すっごく綺麗でいいなぁって。私のお屋敷、海の傍だから潮風で枯れちゃうの」

本来の姿になれば、誰が見ても魔族と分かる姿であり、隠された魔力も開放されてだれでも分かる状態になる。
何処か違和感のある笑みを見れば、きょとんと首をかしげるものの、そのまま階段を下っていく。
血の匂いを洗い流した中央を抜けて、一番いい部屋へと招くと、彼が外套を脱いでいく。
より一層引き締まった身体が見えると、男の人だなぁと思いながら、思わず目で追いかけるように見ては、あまり見ても失礼だと視線を逸していく。
お互いに向かい合うように座ったところで、数秒程の間が空き……あれっと一人首を傾げてから、今更ながらにハッとした様になにかに気付くと、ぽんと手を打つ。

「うん、お屋敷じゃないんだから誰もお茶入れてくれないよ」

どうやら屋敷の使用人がお茶を淹れてくるのを待っていたらしい。
間の抜けた言葉をつぶやくと、ごめんねと苦笑いを浮かべながら立ち上がる。
酒やら紅茶やらが収められた棚の方へと向かうと、ティーセットとグラスを準備しながら、彼へと振り返った。

「お酒……だとお仕事中だから駄目かな? 何がい~い?」

砦、しかも戦争の中心にある場所だというのにマイペースな問いかけ。
クスクスと微笑みながら、彼のリクエストを確かめながら飲み物を淹れていく。
――そのまま他愛もない話を交わしながら夜を明かしたのか、何処かで一線を踏み越えたのかは、今は知る由もなく。

影時 > 「……嗚呼、そういう流れか。悪ィ。軽く考えちまっていたよ」

成る程、もう少し思慮が必要な類のところだっただろうか。そう思えば、すまん、と小さく会釈するように頭を下げよう。
傍若無人を気取る身ではあるが、謝るべきところを謝ることになんら躊躇いはない。
少なからず共感を得ることが出来るからこそ、向こうの思考のカケラ等を読み解くことができるのだから。

「そういうもんか。だが、そうだな。俺もそうだと言われなきゃァ、さっきの珊瑚や貝の仕込みでもなきゃ分からんな。
 つくづく、お嬢様だな。花と――ぁー、菓子の類も好きだろう?」

言葉から拾うもの、考えるべきピースは多い。
相手の領分、思考と嗜好は言葉を交わし合うことでこそ、得られるものだ。このような情報を拾う事が諜報の基本である。
ただ、無用な交戦をせずにすむことを思うなら、その分の恩義として己を抱えている貴族等に伝えずにおくことにする。
己も所詮、この国にとっての異分子だ。客人である。
元々この部屋は砦の指揮官が使う部屋であり、用途として客間でもあったのだろう。
丁度、テーブルを挟んで向かい合うように座れるソファの片割れにどっかりと腰を下ろし、数瞬の間、横たわる沈黙に首を傾げ。

「――そこか。気にしなさんさ。酒でも良いが、多分安い茶葉程度はあるだろうよ。赤い茶をくれ」

ぁー、と。貴人故の習慣、癖だったのだろう。使用人がやってくるのを待っていたという風情に納得したと首肯し、品を頼もうか。
最悪水でも良いが、安心できるのは煮沸した湯で居れた茶に限る。
ここが戦場の真っただ中でも気にしない。
取り留めのない会話を交わし合い、或いは笑い合い、無用な流血なく事が済むならば、それは無為な流血よりもずっと有意義だろう。

興が乗り過ぎて、羽目を外したか否かは――今は思う由もなく。

ご案内:「タナール砦」からルーシェさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」から影時さんが去りました。
ご案内:「タナール砦」に紅月/コウゲツさんが現れました。
紅月/コウゲツ > ーーーかつ、かつ、しゃら…

魔族に奪われたタナール砦…奪還作戦本陣内、救護テントに私は居りました。

「大丈夫ですか?…あらまぁ酷い火傷。
今治しますからねー?
ちょっと疼くかも知れないけど、我慢して下さいねー」

傷の度合いを確認し、幹部の少し奥から徐々に徐々に細胞や組織を活性化させていく。
普通に治癒魔法を使ってもいいのだが、あんまり回復魔法ばかりバンバン浴び続けても体に良くないのだ…自然治癒力をサボらせてしまう。

「ん、後はこの矢じりを抉りだし、て…っととぉ!?
ほらほら暴れない叫ばない!あんさん、おのこでしょ!」

相変わらず便利なこの身の怪力よ…逃げようが暴れようがガッシリと押さえ付けられるから、拘束する手間が省けるぶん、多くの怪我人を治せる。

紅月/コウゲツ > 「はい次の方ー…あらぁ~、足無くなっちゃってるねぇ。
良かったねー、片足無事で」

こりゃ退役かしらね…瞳に輝きがない。
幸いこの国には腕のいい技師も沢山いる、ただ生活するだけなら、義手義足の類いにも困らないだろう。
それが戦場用のものとなれば、また話は少し変わってくるのだが。

今後どのような職人に任せるかは預かり知らぬ所だが…新たな足を作るにあたって不便しないように、均等に骨を覆うように治療を施してゆく。
どのみち傷は塞がねばならんのだ、後々メスを入れて肉を削ったりしなくて済むように一発で綺麗に治してやった方が負担も少なかろう。

紅月/コウゲツ > 「はいつ、ぎ…あんさん、よく頑張ったね」

脇腹の肉がごっそりいってる。
高密度の光線系魔法でも喰らったかね、これは。
奇跡的に内臓は無事、か…となれば。

「傷口一帯の一時的な時間停止と造血系魔法薬!
もたもたしない止まらない!動く動く!!
せっかく帰ってきてくれたヒトを、私らの手で殺す気かい!?」

失血でショック死しそうなモンなのに、本当によく耐えてる。
これはしょうがないわ、私物だけど秘薬使ったりましょ。

内臓が乾かないように片手で保護魔法をかけつつ、魔法薬を取り出して…唇、というか歯で強引に蓋を引き抜いて床に吐き捨てる。
自分の口の中に薬を含み、気道を確保しつつ唇を塞ぎ…薬を、ゆっくりゆっくりと流し込む。
…時間が勿体ない、空いた片手で胸の辺りに氣を流し込んで体内の血液生成と自然治癒力に働き掛ける。

「……っ、ん……っ…ふは…っ…よし、ちゃんと飲んだ」

雑に口許を拭い、今度は一時的に時を止めた傷口を塞ぎにかかる。
細胞の活性化、ロストした血管の生成、他にも細かく気を使わないといけない所ばかり。
片手ずつで違う種類の治癒魔法の同時展開、合成…怪我人の血で皮膚に直接陣を書き込んで新しく3つ目を生成、展開。
血液、肉や脂肪、外皮等々の生成と細胞活性化の速度や程度調整…異形化防止もきちんと。

…嗚呼、やっと、傷を塞ぐことはできた。
後はこのひとの気力次第、生命力次第。

紅月/コウゲツ > 「……、…んぁ?人間が勝った?
そうかい…そりゃあ、よかった」

どうやら、砦は奪還成功らしい。
これで少しは休める。

「…あー……しんど。
目いたいグラグラする気持ち悪~…無理な治療いくない、ヒーラーに」

久々に魔力をバンバン使ったから、疲労が…いやはや、これで経過が悪くてさっきのヒト死んだりしたら割りに合わんわ。

「え、さっきの御貴族様なん?
…そりゃあ運のない……痕残るよアレ」

苦笑する…まぁ、生きてるから運だの何だの言える訳だし、何だかんだラッキーなのだけど。

紅月/コウゲツ > 救護テントを出て、ひとのび。
今日も何とかやりきった。

私のいたテントには、わりと無理難題な怪我人が来る…つまり、重症患者用テント。
何でそんな重要っぽい所にいたかと言えば、何の事はない…人手不足。
そう、技術的な問題とメンタル的な問題で…戦場の真っ只中に来れるっていう酔狂な奴が居ないってのが理由らしい。
…そんな奴がホイホイいてたまるか。

さてさて休憩時間である…と、いうより、また治癒術師仲間にテントを追い出された。
曰く、頑張りすぎ、だと。
…とりあえず、そこの木陰で仮眠でもとろうか。

ご案内:「タナール砦」に紅月/コウゲツさんが現れました。
紅月/コウゲツ > さて、さて…しばししたらまた治癒に専念せねば。
うとうと、樹に寄りかかってうとうとと。

戦勝の宴が始まるまで、静かな息をたてていた。

ご案内:「タナール砦」から紅月/コウゲツさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にカインさんが現れました。
カイン > 数刻前まで激しい戦闘の起きていた砦。
今は王国側の旗の翻る門の前で、億劫そうな表情を隠しもせず番をしている男の姿があった。
幸い死傷者はそう多くはない物の、先ほどの戦闘で被った被害はそれなりのようで、
結果として外様の傭兵までもが門の前に駆り出される始末である。

「……しかしこいつは、まずいんじゃないかね?」

そう独り言を漏らす物の、それを聞く者は誰もいない。
騒々しい声の聞こえる砦の内側に視線を向けると、
多くの人影が右往左往している所が見て取れる。

「砦をとったはいいにしろ、維持できないんじゃお話にならんなあ」

そう、ぼやいた言葉は風に消えていく。
ただっぴろい砦の前の殺風景な景色を詰まらなさそうに眺めて肩を竦めた。
もう一戦、などとなったらそれこそ尻尾をまいて逃げるか籠城でもするかだろう。

カイン > 「ま、そうなったら殿でも買って出るか。
 他にできそうなのも数がおらんだろうし、
 今の国軍に手練れが居るならそれでいいんだが」

雇い主が消えてしまっては報酬がおじゃんだし、
何よりも肩を並べた相手がくたばるのは目覚めが悪い。
仕方がないと流す程度の感傷とはいえ、酒が不味くなるのは宜しくない。
顎に手を当てながら剣を軽く叩くと、息を吐いて少し気合を入れる。
何せ相手は魔族である。何を仕掛けてくるのか分かったものではない。

カイン > 「…お、交代要員か。遅かったな?
 全く、このまま一日中立たされるものかと思ったぞ」

漸く現れた二人組の見張りにそう声をかければ手を挙げて、
そのまま横に振りながら入れ替わりに砦の中に去っていく。
持ってきた酒でもとりあえず飲んでしまおうと頭の中で算段立てながら。

ご案内:「タナール砦」からカインさんが去りました。