2018/05/26 のログ
ご案内:「タナール砦」に紅月/コウゲツさんが現れました。
紅月/コウゲツ > ーーーから、ころ、から…

戦争…国同士が、何らかの利害の対立で殺し合いの大喧嘩をする事。
その中で、勝ち負けの取り合いの中で、必ず発生するモノがある。

…怪我人と、捕虜だ。

怪我人はともかく、捕虜というのは…奴隷制度を推奨するようなこの国に、当然捕虜を保護する決まり事なんて、最早あるのかどうかすら怪しくて。
他の癒術師が何かしたという話も聞いた覚えがない。

「……、…気が進まないなぁ」

治療する側として最低な台詞を吐いた私を、どうか赦して欲しい。
今日ばかりは、どうか。

…私は今、地下への階段を降りている。

軍事施設の地下に何があるか…大体、倉庫か牢獄だろう。
私が向かうのは牢獄…捕虜の、いる、牢獄だ。

私はあくまで旅人で冒険者…この国のギスギスした法なんて知りたくもないが、つまりアレだ。
捕虜の扱いはどうなるのだと、気付いてしまったら…いてもたっても居られなくなった。
つまり、そういう事なのである。

偽善だと笑いたければ笑え、今この場において私は治療者だ。
治療者が中立とろうとして何が悪い。

…牢のある階に、着いて、しまった。

紅月/コウゲツ > 退屈そうな牢屋番は、癒術師の印を見せたらアッサリと通してくれた。
下卑た笑みを浮かべながら。

…もう、この時点で嫌な予感というか、確信に近いものはあった。

牢に近付くにつれて漂う、血液と生臭い臭い。
とりあえず血臭がするなら怪我人は居るのだろう。
だが、この濃縮されたような生臭い臭気は何だ…魚介系の魔族でも混じっていたのか。

檻を覗き込む…其処には、暴行を受けた、魔族がいた。

女人だろうか…?
ぐったりと鎖に繋がれ目は虚ろ、そして何かの粘液に塗れている。
ふと目が合うと、酷く怯え始めた。
基本的にプライドの高い魔族が、こんなにも…惨い。

「…大丈夫、私は治療者だよ。
兵士ではないし、騎士でもない。
痛いことはしないよ、ちょっとあちこち様子を見せてほしいだけ。
大丈夫、大丈夫だから…ね?」

宥めて宥めて、何とか落ち着いてもらって身体を診る。
…何で戦争の後の傷が肛門裂傷なんですかね?
嗚呼、頭が痛い。

紅月/コウゲツ > 次の檻も、その次の檻も、そのまた次も…順に、診ていく。
治せるものは治すし…清浄魔法で浄められる汚れは落として、栄養失調っぽい人には水と栄養価の高いドライフルーツを口に突っ込んで流し込ませ。

…檻を一つ覗く度に、心が凍っていく音がする。

それでも一つ一つ、一人一人…やれることをやっていく。
自己満足?無意味?…それでもいい。
だって、私が私で在るために見過ごせなかった…それだけの御話なのだ。

「…大したこと、してあげられなくて…御免、ね」

今回の捕虜を一通り診終えた後、檻の続く廊下を振り返り…呟く。
そうしてまた、今度は居眠りし始めた牢屋番の前を通りすぎ、地上へ帰る。

「世界は眩しいなぁ…憎らしい程に」

やれやれ、肩を竦めて普段の仕事場に戻る。
地下の彼女達をあんな風にした勝者達を治療するために。

人間というのは基本的に脆いのだ。
すぐ傷を作っては化膿させて熱を出す。
毒でも穢れでも熱を出す。

私の主義は『人間の国は人間が、魔族の国は魔族が』と…つまり、不干渉とまでは言わないが、それぞれでやれば良いというヤツで。
それ故に、矛盾しているかもしれないが、少し手を貸してやらんと人間達は苦しいんじゃないかと思うんだ。

…だからこそ、私は今、ここにいる。
矛盾に塗れて。

紅月/コウゲツ > 「さぁてと、疲れちゃった…休憩貰ってこよ」

砦の改修工事を横目で見ながら、今日も今日とて臨時癒師はダラけるのであった。

ご案内:「タナール砦」から紅月/コウゲツさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にラボラスさんが現れました。
ラボラス > (それは、きっと人間達にとっては青天の霹靂だったろう。
見張り塔の番兵は見た筈だ、其れまで平穏を保って居た筈の砦の正面に
まるで何処からか湧いて現れたように、魔族の軍勢が姿を見せたのだから。
怒号のような、獣めいた咆哮が砦を震わせると同時、軍勢は一気に侵攻を開始する
魔族が再び攻めて来る事を見越して造り上げられた防衛設備も
奇襲による兵力の分散と配置不備では、無用の長物と化す。

――程無くして、砦の門は、呆気無いほど容易に破られた。)

―――……他愛無い。 殺れ、制圧し、蹂躙し、殲滅しろ。
戦士で在らば、男も女も容赦無く犯せ、恐怖と絶望に染め上げろ。

(雪崩れ込む悪魔の群れが、浮足立つ人間達を容赦無く飲み込んで行く。
一度こうなって仕舞えば、どんなに堅固な砦と言えど、脆い物だ。
統制の取れて居ない防衛線なぞ恐れるに足らぬ、唯でさえ人間の兵力には「偏り」が在るのだ
一部の、特別に強き者以外は有象無象であり、個体能力に差が在るのだから。)

――――――一階を制圧後は司令部に向かえ。 少しは骨の在る奴が居るだろう。

(次の指示を出すまでに、やはり、そう時間は掛からない。
狂乱と喧騒の宴の中を、ゆっくりと歩き進みながら――地図の広がっていたテーブルへと
どかりと腰を降ろして、後は、見物に回る様に)。

ラボラス > 指揮官位を見つけたなら、生きたまま連れて来い。
死んで仕舞ったなら…まぁ、其の時は構わん、報告だけに留めろ。

(其れは油断でも慢心でも無い。 冷徹に推し量った上での戦力差。
砦を利用した強固な防衛線の構成という、人間にとって唯一に等しい戦略を機能不全に陥らせて仕舞えば
後は圧倒的で絶対的な、侵略戦が幕を開ける他に無い。

右腕を振るい、戦闘には参加せず、付近に待機して居た数匹の悪魔を呼べば
階上ではなく、階下へと続く階段を示して向かわせる。
人間達の事だ、もし同胞の捕虜が囚われているなら、地下以外にあるまい。)

囚われている者を見つけ次第、解放して、此処に連れて来い。
――抵抗するなら多少強引でも構わん、だが最低限の治療はしておけ。

(さて、どれだけの同胞が囚われているか、其処までを把握はしていない。
万が一長く囚われて居れば、その分正常な思考を奪われ、判断にも乏しいだろう。
自軍の戦士達が、階上に攻め上がったのだろう気配が頭上から聞こえて来る。
悲壮な人間達の悲鳴と、断末魔の叫びに耳を傾けながら、今度は砦の扉を閉めるように付近の悪魔へ指示を告げ
――最早これで、地獄の蓋は閉められた。 煉獄の炎から逃れられる者は、居ないだろう)。

ラボラス > (突入から、どの位の時間が過ぎただろうか。
昼食を終える程度の時間も経過しては居ないだろう
主だった報告も無い、ということは、侵攻は順調其の物だと言う事だ
次第に、戦いの音は控えめに静まって行く。)

――――……来たか。

(階段の下より、姿を見せた部下の姿を認めた。
余力の在る者は自らの足で歩み、そうでなくば部下の小脇に抱えられ
己が目の前まで連れて来られた、捕虜達の姿を一瞥すれば。
――その瞳に映る感情の色合いを確かめ、双眸を細め。)

―――御前達を此れより解放し、連れて行く。
望むなら故郷へ、或いは元の群れへと帰れば良い。
だが…、……もし御前達の中に、己が未だ戦士で在ると叫ぶ者が居るなら。

俺と共に、再び闘争の道を歩んでも構わん。

(――其れは、勧誘。 自らを、下位存在で在る筈の人間共に貶められ
辱められ、その尊厳すらも奪い尽くされた其の果てに問う、意思。
怒りでも、絶望でも、或いは反骨心でも闘争心でも構いはしない
此の儘で終われないと、立ち上がる強き者が居るならば――迎えよう、と。

一瞬の困惑と、逡巡とが捕虜であった者達に広がり、沈黙が僅かに。
――嗚呼、でも。 その言葉に立ち上がる者が居る。 一人、二人…
在る者は憤怒の形相で、在る者は泣きじゃくりながら、其れでも立ち上がろうと足掻くなら。
口元に弧を描き、獣の如くに獰猛な笑みを浮かべて見せ。)

―――なら迎えてやろう、御前達は今より、軍団長たる、このラボラスの配下。
先ずは須らく傷を癒せ、残りの話は、砦を落とした後だ。

(右腕を掲げ、配下へと伝える指示。 『救護室へ運べ』
其れまでは人間達が使っていたろう其の場所を、我が同胞の為に用いる意趣返し
ならば、人間達が代わりに地下へと押し込められるのかと言えば、必ずしもそうでは無い。
殺すには惜しい、そう思わせられる者が、果たしてどれだけ残るのか。

――其れ次第だ)。

ラボラス > (――そして、静寂が訪れる。 完全なる静寂が。
争いの音は微塵も消え失せ、上層からは部下達の足音が聞こえるのみ。
それが…この砦が、己が軍団の手に陥落した事を告げる、証だった。)

―――砦内の探索に入れ。 人の気配を僅かでも逃すな。
伝令を飛ばされれば、其の分反抗勢力が押し寄せて来るのが早まるぞ。

(一回の、前線氏に向けて号令を放てば、護衛の数人を残して砦内の一斉捜索が始まる
こうして、己自身が僅かも剣を振るう事無く戦が終わる事の、清々しさよ。
個人的な闘争と言う点では物足りぬが、戦と言う点で見れば此れほどまでに痛快な物は無い。
――そうして、漸くテーブルから立ち上がれば、階上へと向けて歩みを進め。)

……捜索が完了次第、砦の改修にあたれ。
余分な設備は必要ない、破損個所の修繕と共に、人間達の用意した物品を全て破棄しろ。

(不必要な物を、置く理由はない。 敵の利になる要素は全て排除して置くべきだ。
暫くの間、この砦は己が軍団にて管理する事と成るだろう。
だが、本土から魔族側の戦力が送られてくれば、早々に明け渡す。
防衛戦は、此方が請け負う必要がないからだ。
寧ろ捕虜達の回復を待つ間、此処に滞在する意味合いの方が大きい。

――辿り着いたのは、人間の指揮官が座って居たのだろう、作戦司令室。
鉄錆の臭いが充満する部屋の中で、人間が用意したのだろう
比較的真新しい椅子へと近づけば、其処へと雑に腰かけて、肘を置く。
これもまた無意味なものだ、だが、そうだ、此れは象徴として残そう。
侵略の証、征服の証、人間の血に彩られた赤い椅子を、己が物とした、其の刹那に。

辺りを、悪魔たちの歓喜の咆哮が木霊するのだろう。
ほんの少し、退屈な時間が訪れる事と成るだろうが。
だが――其の間、勝利の余韻に浸るのは、悪くは無い――)。

ご案内:「タナール砦」からラボラスさんが去りました。