2018/03/27 のログ
■ルシアン > 戦場そのものや、血が流れる事。命のやり取りとその結果も、身近とは言わないが知っている事。
慣れる事は無いが経験はある。それだけに、そんな中での覗き込んだ部屋の状況は――
「…………は?」
一応、砦の中である事は間違いないのだけども。
編み籠に、毛糸の玉。ほんのり香る甘い香りも、明らかにこんな場所に相応しくもない。
あー、「狐に化かされる」ってこういう感覚かー。今後は見習わないとなー。
一瞬でそんな思考が頭の中をぐるぐると。軽くめまいすらしてきた。
そしてふっと開けられたドアの向こうに居た、人の姿に。
「…………………っ」
屈託のない、というような口調。年のころは、見た所は自分と同じか少し下、くらいだろうか。
女性というべきか、女の子というべきか、丁度間位に見えた人物に話しかけられて。
飛び上がりそうになるのをぐっとこらえて、なるべく平静を装いつつ。
「……そのどれでもない。この近場で狩りをして、良い獲物が捕れたから買い取ってもらいに来たら、この状況に巻き込まれた」
正直に状況は口にする。言葉を紡ぐごとに少しずつ冷静になる。
余りにこの場所に異質な、この少女。どうしても、言葉は慎重になる。
「…君は誰?牢屋に居たのか、将校か、それとも捕虜?兵士って事は、なさそうだけれど」
部屋にはまだ入れない。ドアの辺りで、少し身構える様にしながら。
少女の言葉を同じように返しつつ、最悪の場合にも備えようと――
■ルーシェ > ドアの向こうに居たのは黒髪に黒目の男性。
自分の見た目より少し年上に見えるが、間違いなく自分のほうが歳上なんだろうなと、心の中で思う。
相手から感じる気配は人間のもので、魔の気配を感じさせられないからで。
それよりも、ドアを開けた先に居た彼が警戒する様子に、キョトンとした顔で魔王は小首をかしげた。
「狩り? ねぇねぇ、毛皮、それとも獣肉? お肉なら私が買うよっ、ちょっとお腹空いてきてたし」
獲物という言葉に子供のように目を輝かせながら身を乗り出し、彼に顔を近づける。
黒目をじっと紫色が見つめながら、相変わらずのマイペースで質問を叩きつけながら答えを待つも、それより先にこちらの所在を問われた。
ここでやっと、彼の警戒した理由が脳内で理解にいたる。
そうだったと言わんばかりにぽんと手を打つと、困ったように苦笑いを浮かべながら指先で軽く頬をかいた。
「えへへ、どっちでもないよ? 私、魔王だから。といっても人とは共存したい派の変わり者だし、ここにいるのも引き継ぎの魔族軍が来るまでの繋ぎだから」
しれっと自身の正体で所在を明らかにすると、背中を向けて先程の椅子の方へと向かっていく。
隅に寄せられていた別の椅子を一つ手に取ると、テーブルの方へと運んでいき、先程まで据わっていた椅子と向かい合わせに置いていった。
そして、彼の方へと振り返れば眉尻を下げながら微笑み、ちょいちょいと手招きをしていく。
「そんなところにいないでこっちおいでよ~、変なことしないから」
野良猫でも誘うような軽い口振りで、彼を席へと誘おうとする。
部屋の中も、周囲にも魔族の気配は一切ない。
魔力も外回りの霧以外には一切の滞留もない。
それが逆に不気味と思うかどうかは、彼次第というところか。
■ルシアン > 何だか、とても無邪気に語りかけてくる少女。見た目より言動はむしろ子供っぽいかもしれない。
ただ、その言葉の中でとんでもない単語がどうしても興味を引いた。
「…………………………………………………。ええ、と」
ちょっと待った。少し待ってほしい、と軽く頭を抱えながら少女の側に掌を向け、ストップの仕草。
魔王?この子が?いやでも他に誰か居るわけではなさそうだし?しかも変わり者の?
繋ぎとか言ってるがそんな軽い役職なの?とりあえず人即殺すとかそういうのは無さそう?
「?」マークが脳内を飛び交う数がこれまでの人生でも最多を更新したのは間違いない。
何とか、少しずつ考えを消化して。顔を上げると椅子まで準備され、手招きをする魔王様?の姿。
「あ……ああ。わ、分かった。けど…」
ゆっくり足を進めて。もし本当に魔王というなら、抵抗してもあんまり意味もなさそうだ。
―――それでも、最後の命がけなら逃げ切る自信だけはあるのだけど。
とは言え、それは本当に最後も最後。そう心を決めれば、次に湧くのは好奇心。
こんな存在と話ができる。そんな機会を逃すことも、もったいなくて。
用意してもらった椅子の横までくると、少女へと軽く首を傾げ。
「……一応、確認なんだけど。魔王って…あの魔王、だよね?魔族をまとめる、すごい魔族というか、魔族の王というか」
基本的な確認から始めて見た。まだやはり、若干混乱があるらしい。
■ルーシェ > 「ん? あれ? ごめんね、何か分かりづらいところあったかなぁ?」
マシンガントークの後のかるい自己紹介に、混乱した様子で頭を抱える彼に、こちらも頭から疑問符を浮かべながら彼を見つめる。
魔王って教えたし、喧嘩したくないとも伝えし、仕事でやってるだけだとも伝えた。
本人としては、その説明が大雑把すぎるとは思っていないのか、何を間違ったやらと思いながら不思議そうに考え込みながら椅子に座った。
「そうだよ、私は魔王ヴェパール。本来は魔海や水辺を担当しているんだけどね?」
今日はちょっと出張お仕事とクスッと悪戯なほほ笑みを浮かべていたが、続く言葉にむすっと頬を膨らませながら視線を逸らした。
「そうですよー、水辺限定ですけどすごーい魔族の王様ですよっ。もぅ、見た目とかで判断されると傷つくなぁ」
子供っぽいと言われることはしばしばあり、挙げ句魔王らしい貫禄を感じないと言われると、時折憤りを覚えこともある。
そんな過去を思い出しながら不機嫌そうに呟き、小さく溜息を零した。
渋々と言った様子でテーブルの上へ掌を翳すと、粒子のような青い魔力が零れ落ちていき、テーブルの上へ積もっていく。
16倍速再生の様な勢いで魔力の粒子からピンクや水色、薄紫の珊瑚が育っていき、テーブルの上へ生え揃っていく。
ただ出現させたのではなく、細かな魔力のコントロールを一瞬でこなしながら珊瑚を自身の領地のモデルへと変えていった。
切り立った海岸、そこに段々の平地を作りながら拵えられた家々。
海を一望できる大きな丘には立派な屋敷があり、策に囲まれた範囲は自然公園かと言わんばかりに広い。
そんな小さな箱庭を作ることで、並大抵ではないという証拠になるだろうと一芸を披露していく。
「こんなところに住んでるの、潮風が心地良い…いい場所だけど、植物が枯れやすいのが難点なんだよねぇ」
近々薔薇を育てようと思ったものの、うまくいくやらと思いながら苦笑いを浮かべる。
これで多少魔王と見てくれただろうかと思えば、改めて彼の黒目を見上げるだろう。
■ルシアン > 「あ、いや…すまない。そっちは悪くない。こっちでその、受け止めきれてなかっただけ…だと思う」
好奇心も興味もあるのだけど、やはりまだ少し困惑の表情になってしまう。
こうして話している分には大層な肩書などとは程遠い、普通の少女のようにも思えてくる。
むしろこちらへ向けて来る微笑みは幼くも見えてしまう。
――だけど、そんな感想も、次に少女の成す行動を見れば目を見開いて。
「う、わ……!」
変哲の無い机の上に、みるみる出来上がっていく何かの姿。
とても小さいけれど、其れだけに精巧にできた、どこかの土地の模型だと気が付き驚嘆の声を漏らす。
材料は、これは珊瑚だろうか。目の前で見る間に育っていく、そんな光景は初めて見た。
そして少女の名乗り。ようやく、ふとある事柄を思い出した。
「海の魔王…そう言えば、そんな名前の王が治める領地があるって聞いたことがある、けど…」
ヴェパール。魔族と取引のある商人、それも海の品を取引するような者なら知っている名前だ。
世間話で聞いた程度だけど、まさかその主その人なのか。目をぱちぱちさせ、改めて少女を見つめてしまう。
「…失礼をした。気に障ったなら、謝る。その…魔王の印象とは、君の雰囲気から少し違う気がして」
――毛むくじゃらのとんでもなくガタイの大きな髭面で目の吊り上がったバケモノじみた悪魔っぽい姿。
とか言う魔王の固定観念は口にしないでおこうと固く決めて。
出来上がった模型の出来栄えの良さに感嘆の声を上げつつ、少女の言葉に応え。
「海辺なら育つ植物はどうしても限られるからね…植えたい物によっては、塩の害に強い種類なんかもあったりはするけども」
顔を見上げられれば目が合って、思いのほか穏やかなそれに小さく笑い返した。
■ルーシェ > こちらの問いかけに困惑している様子はあるものの、多少は落ち着いたようにも見える。
もっと貫禄があったほうがいいだろうかと思いながら、苦笑いを浮かべつつ器用なコントロールを見せつけていった。
「そうなの? わぁ~…人間にも知られるようになってきたんだね、私。ちょっとうれしいかな」
砦とは面していないし、わざわざ遠回りになる海沿いから責めてくることも人間はあまりしない。
海が主体となる生息域な魔王だが、他と比べればマイナーな部類。
彼の噂話に花咲くような微笑みで喜びながら、ぱたぱたと両足が宙を蹴るように踊った。
「ふふっ、じゃあ赦しちゃおっと。私もあんまり魔王っぽくないなーって言われちゃうから、仕方ないかな」
彼が想像する荒海を制する魔王…とは異なり、そこらにいそうな少女のような姿。
癖の掛かった長い髪に、丸い紫の瞳に童顔。
格好もそこらの貴族娘を思わせるような、カジュアルな格好と威厳という文字は何処にもない。
クスクスと微笑みながら、続く言葉に頷くと、屋敷の裏手あたりを指さしていく。
「そうなの、海辺に咲ける薔薇とかもあったんだけど、ちょっと園芸っていうか農業みたいな感じな花なの。それでね、今度ここに――」
と、両手で拡大するようにモデルを撫でていくと屋敷へとクローズアップされていく。
裏手を指し示し、くるりとモデルを回転させれば、そこに作りかけのレンガの壁や新たな花壇の予定地などなど、そんな姿も綺麗に作り出し……お喋り好きな小娘の様に言葉を連ねる。
そんな勢いで語り続ければ、引き継ぎの時間もやってくるだろう。
霧を解いてすんなりと外へ彼を送り届けた後、ばいばいと満面の微笑みで彼へ手をふるときには、霧の中に解けるように子供な魔王は消えていく…。
ご案内:「タナール砦」からルーシェさんが去りました。
■ルシアン > 其処から付き合う話には、青年の持っていた「邪悪な魔王」なんてイメージはすっかり消えてしまうようなもので。
――もちろん、此処は戦場で。周りは血が流れた場所ではあるのだけど。
それを差し引いても、この少女には何処か安心した様子。
無事に帰路に付けたなら霧の中へともう一度軽く手を振って。
得難い経験をかみしめつつ、その場を後にして行った。
ご案内:「タナール砦」からルシアンさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にフォーコさんが現れました。
■フォーコ > 現在、砦の上には王国の旗が翻る。
まだ周囲には炎が燻っており、砦の中だけ漸く消化を終えた所。
私はいつものごとく、砦の周辺を一人で哨戒していた。
一番危険なのが勝利を確信し、気が緩んだ時。
魔族の中にも巧妙な者はその瞬間を見逃さないだろう。
下手をすれば魔王クラスの襲撃もあり得る。
そうなると戦況がガラリと入れ替わる可能性もある。
ご案内:「タナール砦」にカイリさんが現れました。
■カイリ > ふらり、と歩いてきたが辿り着いたのは砦。
普通に生活していれば自分は見ないであろう異様な光景に、苦笑を浮かべるばかりだ。
辺りを見回しても、自分にはどちらが優勢なのかはわからない。
けれど、戦闘能力のない部外者は早々に立ち去った方がいいだろう。
はて、帰り道はどちらだろうか。
誰か尋ねられる人がいればいいが...
■フォーコ > ケープを纏った青年が歩いていた。
武器らしきものは何も身に着けていないようだ。
ただ、先日は似たような状況にも関わらず居たのは魔族であった。
一応、いつでも戦えるよう心づもりだけはしておくか…。
「君、こんな所で何をしているのだい?
ここはさっきまで魔族と戦闘があった場所だよ。
民間人は巻き込まれない様に離れた方が良いと思うが。」
私はケープの青年に声をかけた。
別段威嚇するような態度は取っていないが、
物々しい鎧と刀だ。 人によっては怖がるかもしれない。
■カイリ > キョロキョロと周辺の様子を伺いながら人を探して歩く。
そういえば武器などは持っていないが、大丈夫だろうか。
歩いていると突然声を掛けられ、反射的に返事をする。
見れば鎧を着込んでいて、驚きで一歩後退ってしまった。
「ああ、えっと...迷子?です。
いつもと違う場所で歌いたくて。
離れるにしても道がわからず...」
目線を逸らしながら戸惑う素振りを見せる。
本当のことを言ったが、ふざけるなと両断されはしないだろうか。
刀を持った人は怖いものだ。
■フォーコ > 「迷子…?」
私は目が点になった。
こんな所に迷子になることはあるのか?
訳が分からない。
…怪しい。
砦に連れて行くには怪しすぎるし、そもそも彼は何者だろうか。
「すまんが、今はまだ敵の残党が残っているかもしれなくてな。
君が敵側の人間でないかと確かめる必要があるのだが。
そもそも君は何者だ? 普段は何をしているんだ?」
今の所、私の中では話半分で聴いている。
敵側と決まっているわけではないので刀を抜くことは無い。
何かこれと言った物があれば話は早いのだが。
■カイリ > 「はい...」
驚いている様子の相手の呟きに肯定し、頷く。
しかし、迷子と言えば嘘になる。
惹かれてしまったのだ。戦場に。
戦いの場では、必ず血が流れる。自分は風の...治癒の精霊だ。
それが誰であろうと、助けるためにその場へ吸い寄せられる。
「詳しくは言えないのですけど...
私はカイリ。人々を癒す吟遊詩人です。
魔力があるのなら、私の正体はわかるのでは?」
相手からの質問に、少し言葉を濁しつつ答える。
別にどちらの味方でもないと思うが、相手とは敵対したくない。
見れば相手はダークエルフ。気づくだろうか。
■フォーコ > 「すまんな。 私は確かに魔力はあるのだが攻撃の一点張りでな。
それに君が何者であろうと君の口から確認するのが筋ではないのか?」
怒られてしまった。
ただ、彼はウソをついている様子はない。
それなら彼の吟遊詩人としての腕前を披露してもらっても良いかもしれない。
現に砦の中には多少なりとも負傷者が出ている。
とりわけ逃げることが出来ずにいた魔族側の連中は深刻だ。
「なら、私についてくるか?
味方側に数名、そして魔族側に多数の負傷者が出ている。
味方の方はもうじき治癒も終えるだろうがどうしても捕虜の方は後回しになっている。
君が治してやれるのなら報酬も支払おう。
ただ、捕虜を逃がすとかそういうことは止めてくれよ?」
彼が首を縦に振れば、私は彼を連れて砦内に戻るだろう。
他に気配もなさそうだ。
■カイリ > 「そうですね...私は風の精霊です。
治癒の魔術を得意としています。」
にこ、と優しく微笑む。相手の身体に残る傷も気づいているが敢えて触れないでおこう。
吟遊詩人というのは建前で、人々に怪しまれず治癒を施すためだけの肩書なのだが、相手が望むならば詠って見せよう。
ちらり、と砦を見る。薄くなった負傷者の気が感じ取れた。
この人数なら、治せる。
「ええ、どこへでも。
負傷者を一か所に集めて頂ければ一度に終わりますよ。
報酬は要りませんよ。ただし私を町まで案内してくださいね」
今まで人々の疲労くらいしか治していない。そのために、魔力は余っている。
いつも抑えているのだ、存分に発揮できるだろう。内心嬉しく思いながら相手についていくだろう。
■フォーコ > 「精霊か。 まともに見るのも珍しいな。
こんなろくな加護もない場所に現れて大丈夫なのか?」
笑みを浮かべる彼。
私は彼に背を向け、砦へと案内する。
砦内は私が見知らぬ顔を連れてきたことで多少ざわめいた。
私は彼は捕虜ではないこと、そして彼の身柄は私が責任を持つことを伝えてから、
味方の負傷者と捕虜の魔族を広場に集めるように伝えた。
捕虜は当然拘束をした状態になるが。
そして、比較的に使える状態であったので選んだ広場だが、
まだ燃えた死体や血が溢れ、異臭も漂っている。
「ここが比較的ましな状況なのでここに集めるぞ。
街までは私が送ろう。
君の治癒能力に期待させてもらうよ。」
負傷者は確かに少なかった。
なにせ敵方は粗方逃げ出すか我々が炭に変えたのだから。
私は壁際に立ち、周囲を監視する。
こんなことはあまりない。
不測の事態がおきないとも限らないのだ。
■カイリ > 「私も驚きましたよ、あなたは魔力が強いのですね。
加護は無い方が楽です...人間に隷属するのも嫌だ。」
相手の背中に話しかける。
最後の言葉は小さく呟いただけで、はっきりは言わなかった。
砦に入ると物珍しい、といった視線が突き刺さる。
敵ではないと示すために何かしたいが、治癒魔術以外は簡単なものしか使えない。
負傷者が集められた広場は死体や血が散乱していて、サッと目を逸らす。
しかし舐められてはいけないと毅然とした態度でいる。
「これは、予想外...
先にこっちの状況どうにかしたいんですけど。
...《天の恵みをここに》」
先に死体や血を雨のようなもので片づけて、
壁際の相手に微笑む。
どこからか楽器を取り出すと、透き通った歌声で歌いだす。
薄緑色の光が人々を包み、段々と傷を癒していく。
■フォーコ > 「ダークエルフだからな。
…無理に従う必要も無い。
君は君でやりたいようにやればいいのではないか?」
長い耳が彼の独白を拾ってしまった。
私は背を向けたままでポツリと返した。
彼にとってはここの光景は刺激が強かったようだ。
態度には出していないが、あまり見たく無さそう。
「私が絡んだ戦場は大抵こうなる。
圧倒的な火力で以て撃滅するのがうちのやり方だからな。」
私は口の端を伸ばし、嬉々として語っていた。
まるで良い点を取って大人に褒めてもらう子供の様だ。
なのでせっかく作った作品が片されてしまうと少々物足りない。
彼が曲を弾き、澄んだ歌声を発すると
皆が光に包まれ、敵味方の隔てなく傷が癒されていく。
「すごいものだな。
カイリこそ魔力が強いのではないか?」
私は籠手をつけた手で拍手していた。
最初は奇妙なものを見るような目をしていた者達も尊敬のまなざしにかわる。
■カイリ > 「ええ、何となくわかってました。
これからも従う気はありませんよ。」
声色は明るいが、表情は暗い。
さすがダークエルフ、耳はいい。
「...少しは加減してくださいよ?
いつかあなたまで壊れてしまいます」
広場を綺麗にし、相手へ呆れるように、あるいは心配するような話し方をする。
綺麗にされたのは不服だったようだが、光魔術の幻影なので安心してほしい。
歌い終わると楽器がすーっと消え、光も消える。
傷が治ったであろう人々を満足そうに見る。
「んー...私これでも長生きですからね。
これくらいなんともありませんよ」
満面の笑みで相手を見る。それと同時に幻影も消えるだろう。
そういえば、相手の名前を聞いていない。
■フォーコ > 「ただまあ、パートナー位はそのうち出来るかもな。
君は見た目も整っているし、声も綺麗だ。
パートナーがいるとまた楽しいぞ。」
人間はあまり好みではないのだろうか?
それ以上深入りはしないが。
「既に壊れているぞ。
ときどき無性に暴力を振るいたくなる。」
穏やかな彼とは異なる生き物だと自分では思っている。
これはこれで助かる者の居るのだ。
彼が術を解けば、広場はまた私好みの光景に戻っているのだろう。
その時、片付いたと思っていた者が居ればお生憎ではあるが。
砦中の者が傷が治っていく。
だいぶ深手を負っていた捕虜たちは安堵していた。
「とにかく助かった。 礼を言う。
私はフォーコ・アッサルト。 騎士団の一人だ。
約束通り街まで送ろう。」
消えた楽器に少し驚くが、魔力で出したものであろうと納得して。
私は思い出したように自己紹介をする。
彼が準備を終えれば二人で街まで向かうだろう。
砦を後にし、王都へと。
■カイリ > 「パートナーですか...出来ますかね?
褒めても何も出ませんよ」
と言いながらも、少しうれしい。
精霊の加護を、と小さなお守りを作って渡す。
「ふふ、自ら壊れている、とは面白い人だ。
命を落とさないように気を付けて。」
基本穏やかではあるが、悪人や敵対する人物には厳しい。
風も使い方次第、人を生かすも殺すも可能なのだ。
また現れた異様な光景に吐きそうになる。
反射的に口を押えてしまった。
「ファーコさん、ありがとう。
またどこかで会えれば、負傷者は任せてください。」
自己紹介を聞けば、頷いてこちらも礼を言い、町まで案内してくれるだろう相手についていく。
ご案内:「タナール砦」からフォーコさんが去りました。