2016/11/07 のログ
クラーラ > 「いくよ?」

手招きに答え、加速を経て彼へと吶喊する。
ジグザグのステップから目潰し、そしてタイミングをずらしての一閃と、並の兵士なら追いつけずに直撃するような一連の流れ。
しかし、剛の中に僅かに柔を混ぜるような立ち回りを見せた彼になら、これぐらい追いつけるだろうと思っていた。
超えられるか超えられないかのギリギリを与えて、限界を突破させていく。
それを狙ったはずが……刃の感触のおかしさに気づき、彼の声と目の前の光景に顔が青ざめる。

「馬鹿……っ!? 何を……!」

いくら彼が強いとは言え、本気で殺すつもりの力を込めた魔剣を掌でつかもうものなら、強烈な電流が掌を焼き、熱で切断力を上げた刃が肉と骨を簡単に断ってしまうかもしれない。
指がくっついているのは、違和感に力が緩んだのと、彼が魔剣を得て備わった力や、本来の身体の強さ故だろう。
電気が一気に消えて行くと、剣から手を離し、慌ててポーチの中を探る。

「手…ダメにする…っ! 何でそんな事……」

あまりに無茶すぎる行動の理由を問いつつ、軟膏と包帯を引っ張り出せば、彼の手を広げさせようと小さな手を延ばす。

ご案内:「タナール砦」にソル・グラディウスさんが現れました。
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ご案内:「タナール砦」からソル・グラディウスさんが去りました。
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ソル・グラディウス > 【PCの不調により、多数の入退出ログを残してしまいました。誠に申し訳ございません。】
ソル・グラディウス > 彼女の青ざめ顔を見て、ニヤリと笑みを浮かべる。
しかし、手に走る雷の痛みにより、その笑みも歪み、額からは冷や汗が噴き出してくる。

「何て…剣を掴んでんだろ…」

いくら加護があるとはいえ、相手はおとぎ話の強力な魔剣。
強烈な電流で手は焦げ、刃は骨にまで達していた。
電気が一気に消えていき、彼女が剣から手を離した様子を見ればこちらも剣から手を離す。
手は見るも無残に焦げ、骨が露出して原型を留めてなかった。

「手ごとき上等…どーせ治るしな…クソいてぇけど」

剣の加護のお陰で傷はみるみるうちに修復され始める。
焦げが治り、裂かれた肉は繋がり、徐々に元の彼の手へと戻っていく。
数秒後、手が完全に修復されればグーパーして彼女を見据える。

「クラーラ。殴るぞ」

彼女の方を向き直り、治った手を振りかぶる。
大きな拳が彼女の頬めがけ飛んでくるが威力を大幅に抑えているのか、当たっても鼻血が出て仰け反る程度で済むだろう。

クラーラ > 「笑ってる場合じゃないでしょ…!? ぁ、ぁぁ……っ!? ヤダ……っ、なんで、馬鹿…っ!」

焼け焦げた匂いと共に刃が骨まで達し、支えを失った魔剣が地面に転げ落ちる。
骨が見えるほどの酷い怪我に、応急処置の品ではどうにもならないとポーチに戻し、魔法薬を取り出そうとするも、傷口の変化にその手は止まる。

「治るわけない…っ、こんな大怪我、貴方…魔剣の持ち主なんだから、手は大切に……」

治癒魔法を掛けたわけでもないのに、あっという間に傷が治り、元通りの手に戻っていく。
高度な治癒魔法を掛けられたかのような速さ、治癒効果。
自分ではなく彼自身がしたとするなら…彼の剣に宿った力の恩恵なのかもしれない。
そんなことをぼんやりと思っていると、彼の言葉に反応できず、頬を殴り飛ばされた。
鈍痛とじりじりとした熱い痛みに目を白黒させながら、顔が横に揺れ、殴られた理由もわからず、変わらぬ混乱した様子で彼を見上げ、頬をなでた。

ソル・グラディウス > 「魔剣の持ち主だから、手を大事にしなければいけないのは知っている。
 だがまぁ…大怪我ぐらいは治るのが俺の剣の恩恵でな」

彼女を殴った手を再度グーパーとさせ、そう言い放つ。
混乱している様子の彼女を呆れた目で見て、ため息を吐いて説明を開始する。

「お前が何をされたのか、どうなったのか…剣からちょっと聞いた。
 言ったろ?剣で語るって…まぁ、この場合、剣『と』語るの方が正しいが…」

剣を掴んだその一瞬の出来事で電流に手を焼かれながらも剣との対話をしたらしい。
彼の恩恵の一つなのだろう。相手が魔剣だから出来た芸当だ。

「…お前馬鹿か?
 たった一晩、男に犯されたからって自暴自棄になって戦いで死のうとしたのか?
 笑い話にもなんねぇよ。騎士の恥さらしだな」

剣の話を聞いて彼女を慰める…のではなく叱咤罵倒を投げ飛ばし、彼女へ厳しい態度を取る。
早口でそう罵倒しつつも、言葉を紡ぐ度に剣を握る手に力が入る。

クラーラ > 「……だからって、こんな無茶…っ、貴方は…魔剣に選ばれるだけの…とても数少ない人なんだから……」

こんな無茶をして、万が一のことがあったら大変だと、彼の無茶に納得行かない様子。
口の中を切ったり、鼻血がでたりと、出血はなかったものの、かなり痛かったようで、赤くなった頬を未だに擦っている。
そして、彼が無茶をした理由、それが剣と語るためだと聞くも今ひとつ意味がわからず、首を傾げてしまう。

「……っ…!? 何でそれ……」

恥辱の記憶を唐突に言い当てた彼に、目を丸くして驚きながらも、言い当てた理由に困惑する。
それが剣と語ったということなのだろうと、先程の言葉と繋がっていけば、落ち着いていくも、流石に犯されたと知られるのは恥を感じるもので、少し俯いて赤くなってしまう。

「そう、だね。だって……犯されて、喘ぐような女が……ケラウノスに相応しいって思う? 恥で揺すられて、ずっと玩具にされるかもしれない……そんな汚れた女が…」

御伽噺にされるような剣の持ち主が、売女と変わらぬ汚れた女など、あっていいはずがない。
何故か魔剣は未だに自分を見限ってくれないのが不思議な事で、理解ができなかった。
死ぬ間際と思った時に彼に出会えたのも、もっと彼を強くして終わりたいと思ったからで…彼の言葉を否定はできないものの、俯いたまま、胸につかえた苦しみを静かに吐き出していく。

ソル・グラディウス > 「うっせぇんだよボケが…それはてめぇだって同じだろーが…」

無茶をして怒っている様子の彼女にこっちも怒りで返す。
治ることが保障されている傷を負うより、自暴自棄になって魔物の軍勢の突っ込む方が無茶だと付け加える。
深呼吸をして怒りを抑え、首を傾げる彼女へ口を開く。

「…ある、一人の少年の話をしてやろう。
 その少年は地図にも乗らないようなクソど田舎の村に住んでいた。畑で米を取って、狩猟で肉を得て、村全体で協力して食を繫いだ。
 少年の家は父親がいて、母親がいて、裕福とは言えない家庭だが幸せに暮らしていた。」

口を開き、そう唐突に語り出す。

「ある日、少年が10歳になった頃、村が山賊グループの襲撃にあった。ロクな防衛方法がない村は瞬く間に壊滅。
 少年以外は全員殺されたか攫われたか…
 少年は自分の無力さを呪った。何もできなかった自分を憎んだ。そして幸せな家庭を壊した山賊をひどく恨んだ。
 それから6年間、盗賊まがいの事をして食いつないだ。ぶん殴られようが蹴られようが泥を食わされようが、生きることを誓った。
 その山賊グループへ復讐するためにな」

「6年後だ。旅をしていた少年はとある街へとやって来た。
 住民の話を聞けば郊外の遺跡にあるという魔剣は物凄い力を持っていて
 それを手に入れるために何人もの人が遺跡に入ったが戻らなかったらしい。
 
 遺跡へと踏み込んだ少年は様々な苦難を乗り越えてそれを手に入れた。」

「その剣は噂通り凄まじい力を持っていた。
 剣の力を使い、自分の村を襲撃した山賊グループを一人一人見つけだして殺していった。復讐が完了したって訳よ。
 
 それから…10年後か。26歳になった少年は…いや、青年か。
 青年は黒衣のコートを身に纏い、一人の魔剣を持つバカ女に説教をしてるって話よ」

長々とそう語り、静かに瞳を閉じる。

クラーラ > 「違う……私はもう…選ばれるような人間じゃない」

自暴自棄の無茶と言われればその通りで、だからといって、自分が汚され、持つべき存在ではなくなってしまったことも事実。
剣が手放してくれないなら、手放させるしかないのだと考えてのこと。
とは言え、彼が怒りを露わにすれば、あの夜のことがほんの少し蘇り、ビクリと体を震わせた。

「……?」

不意に語られる物語、自分とは逆に生に執着した少年の生涯。
それが徐々に彼につながっていくと、生きることを選んだ彼からすれば、自分の行動が癪に障るのだろうと思う。
けれど…それは彼が男で、強かったからだとも思ってしまう。

「……貴方は復讐を果たせた、無残に散った…大切な人の心を、天に還せた…でも、私は……貴方とは違う。選ばれたけど、背負ったものなんてない。あるとしたら……剣を、ふさわしい人に…届けること。背負うものもなくて……相応しいって思うもの潰されて…それでも、惨めに生きろっていうの…? ねぇ、理由もなく生きて……どうするの、貴方は、その理由をくれるの?」

彼とは違う、自分は魔剣に選ばれてから国のためにと動いていただけ。
無念に満ちた人達の魂を晴らす運命や、世界を救うような使命を背負ってはいない。
生きるだけ、それだけの苦痛に耐えられないと首を緩やかに振れば、それでも繋ぎ止める彼に残される理由を問う。
恥を晒して生き続ける理由を。

ソル・グラディウス > 「チッ…物分かりの悪いクソ女が…」

自己嫌悪に陥り、卑屈になっている彼女。
自分の一番好きなタイプの女性が自分の一番嫌いなタイプの人間になりつつあって怒りが沸き上がる。
しかし、ここで感情に任せるのは状況を悪化させると頭で知っているため、必死に堪える。

「犯されて、穢されて、恥をかいた女を魔剣が見捨てなかった理由は何だと思う?
 それは畏怖と驕りを持たない高貴な女騎士がてめぇしか居なかったからだ。てめぇが良かったからだ!
 俺ですらケラウノスに電流食らわされたんだぞ!クソが!!」

自分を卑下する彼女についカッとなって大声でそう語る。
言葉遣いは悪いものの、その言葉は彼女と魔剣を想っているという感情が込められていた。

「…ふざけんなクソ女が…
 人には死ぬなだのなんだの偉そうに講釈垂れた癖に自分は汚されて惨めに生きたくないから死ぬってか!?
 
 じゃあ、理由をくれてやる!『生きろ』!この俺が許可するまで死ぬことは許さねぇ!
 人に偉そうに命令しといて、自分は死にたいときに死ぬなんて騎士のすることじゃねぇよなぁ?なぁ!?」

怒りがついに爆発して、瞳を金色に輝かせながら彼女へそう言葉を投げつける。
自分が許可するまで死ぬなという身勝手な命令と生きる理由を与え、それを彼女へと押し付ける。

クラーラ > 「……」

何故彼が自分にこんなにも怒りを向けるのかが分からず、向けられる憤怒に、少しだけ怯えていく。
あの夜の記憶で剥き出しの感情をぶつけられることに、少しだけ怖くなってしまったらしい。
小さく体を震わせつつ、ぶつけられる言葉に何一つ返せない。

「……それは、私が電気を放ったからで…でも…」

自分しかいないから、彼の言葉は尤もかもしれない。
同情で主を選ぶような生ぬるい剣ではなかったし、一度選んだからと言って、変わるならきっと見捨てるはず。
ただ、今は適したままだから…そういわれても、心の中には恥辱の夜が今でも食い込んで苦しく、大声の言葉にビクビクと身体を何度も震わせてしまう。

「私と貴方は…違うから。 ……無茶苦茶、そんなので…生きれるわけ、ないよ?」

無茶苦茶な命令に怯えていた表情が少しだけ崩れて、笑みをこぼす。
出会った時といい、言うことなす事滅茶苦茶だけれど、悪い人ではない。
じっと見上げながら、自分を殴りつけた手を、白い掌で包もうと両手を伸ばす。

「……クソ女っていうけど、そうだっていわれたら…生きていける、自信はないかな。 思っていたより……卑しくて、駄目な女なんだって…思っちゃったから。手合わせした時、いい女って言ったけど……あの時にしようとした事、まだしたいって言える…?」

汚される前にいってくれた言葉は、いい女だといいつつ、からかうようなものだった。
彼の冗談かもしれない言葉に縋ったのも、あの時に唇を奪いたくなるような自分が、まだ彼の前にいるのかが知りたかったから。
同時に、いるはずないと心の中で否定しては、俯いて顔を隠す。
ずっと見ていると、目が潤んできたのばバレてしまいそうで嫌だった。

ソル・グラディウス > 「…ええい、クソ…」

怒りを爆発させてしまい、ハッと我に返れば怯えている彼女が目に入る。
やってしまったと思い、腕を組んで顔を逸らして悪態をつく。誰に対しての悪態でもないが、強いて対象を挙げるとすれば自分に対してだろう。

腕を組んで、クソクソと悪態をついていれば震える彼女の体。
流石に言い過ぎたかと頭を抱えるも自分の言葉以外に剣に関して恐怖を抱いている様子でもある。

「あぁ?無茶苦茶なんて百も承知なんだよボケが…」

笑みを浮かべる彼女の方を振り向けば、こちらはまだムスッとした顔。
悪い人じゃないという彼女の考えを看破出来るはずもなく、笑ってる理由がわからない。
白い、柔らかい掌で拳を包まれれば、彼女の言葉を聞く。

「…当たり前だろうが」

剣を手放して近くに来た彼女をハグし、少し強引に抱き寄せれば接吻を行う。
目が潤んでいるのが間近で確認でき、不安を打ち消そうと頭を撫でる。
もう片方の手は彼女の白い小さな手にガッチリとした自分の指を絡めて、ぎゅっと握る。
力強く、温かい掌で彼女の手を包み、彼の優しい温もりを伝えていく。

クラーラ > 「……」

怒り混じりの悪態は、今度は自分に向けられている様子がなく、少しばかりキョトンとしたまま彼をちらちらと見やる。
自分に苛立っているとは思いもしなかったが、こちらの笑みに怒りをぶつけてこない限り…やはり悪い人ではないと、笑みに安堵が篭っていく。

「ふふっ……乱暴だね…」

不器用というか、ガサツというか…。
そんなことを思うも、根は良い人なんだろうなと勝手に思ってしまう。
手を重ねて、呟いた言葉があっという間に肯定されたのは少しだけ想定外で、体が揺れた瞬間、ぁ と間抜けな声が溢れた。

「……ん…っ…」

小さな体は簡単に引き寄せられ、強引なキスにビクリと振るえた。
見開いた瞳が彼を捉えると、見られたくないと瞳を閉ざしながらも体中が恥じらいの熱を帯びる。
倒れた自分を撫でてくれた時と同じ感触、そして、大きな掌が指を絡めていくと、大きさの違いに指の間が目いっぱいに広がってしまう。
少しだけ痛いが、このまま握られていたいと思う気持ちが強く、痛みは隠したまま力強い温もりに包まれていく。
息継ぎをするように、少しだけ唇が離れると、濡れた瞳が再び彼を見つめた。

「……どう、かな…?」

彼が思った通りのキスだっただろうか、女だっただろうか。
そんな不安いっぱいになる胸中で、何がとは聞かず、意味深な問を告げる。

ソル・グラディウス > 「っ…」

ビクリとした相手を包み込むように抱いて行った接吻。
熱を帯びた彼女の体を抱き寄せ、伝わってくる温度と心拍。
ドクドクと心臓が高鳴る音が相手の体から伝わり、自分の鼓動も高鳴ってくる。
濡れた瞳と肉質の良さそうな唇の彼女を見据え、口を開く。

「…良いに決まってんだろ。俺がいい女って言ったんだから…汚い訳ねぇじゃねぇか」

不安いっぱいの彼女の頭を撫でながらそう告げる。
彼の掌から伝わる温かさが不安を遠ざけ、彼女を安心させる。
剣のおかげか元々の彼の体質なのか、その温かさ全てが彼女を包み込む安心させようとする。

「…でも、まぁ…アレだな。戦場でこんな事やるなんて結構クレイジーだけどな」

後ろを見れば魔族、魔物。前を見れば王都の兵士たちが抱き合ってる自分たちを取り囲んでいた。
全員の顔を見ればポカーンと唖然の表情をしており、その視線が全て自分たちに向けられていた。
不幸中の幸いか。この二人を邪魔するものが居なかったことだけが救いではあった。

クラーラ > まだ数回程度しか経験のないキスは、心臓が高鳴るばかり。
早鐘の様に脈打つ胸が、彼に抱き寄せられて密着すると、僅かではあるも女性特有の柔らかな感触を通して、鼓動を伝えるはず。

「……ありがとう、でも…本当に汚くないのか…分からない。その……今みたいに、教えて…くれないと」

撫でられる度に、幼子になったような心地で不安が抜けていく。
彼の胸板に頭を預けるように寄りかかっていき、続ける言葉は暗に誘っているようにも自分で感じる。
最後の言葉は消え入るように小さくなりながら、耳まで赤くして顔を隠そうとする。

「……ぇ、あ…」

彼の言葉に顔を上げると、敵と味方のど真ん中で甘ったるい劇を繰り広げていたことに気づく。
唖然とした様子は、つまりは自分の弱さを晒したのをある程度は見られてしまったということ。
みるみるうちに真っ赤になると、落とした魔剣へと掌を翳し、手品のように掌に吸い付かせると、鞘に戻してからぐっと彼の胸板にしがみつきつつ、恥じらいの表情をいっぱいにして見上げた。

「早く…ここから連れ出して…っ!」

こんなところにいたら恥で死んでしまいそうと、彼に訴えかけ、急げと言いたげに小さな手が駄々を捏ねるようにぺちぺちと胸板を叩くはず。

ソル・グラディウス > 彼女の体の柔らかさを通して伝わる鼓動。
小さいながらも確かに存在するそれが体に当たることに少し緊張し、体に熱が籠ってしまう。

「はは…わかったよ。みっちり教えてやるよ」

耳まで真っ赤にして、自身の胸板に寄りかかり甘える彼女へそう告げる。
誘っているとしか思えない彼女の言葉に笑顔でそう返して、未だに金髪の綺麗な髪を撫で続ける。

周囲の視線に気づいた様子の彼女が自分の手元から離れ、魔剣を吸い寄せたのを見れば「おぉ」と口にする。
何アレかっこいい俺もやりたいなどと思っている男性の元に戻ってくる彼女。ぺちぺちと胸板を叩かれて連れ出せと言われた。

「はいはい、わかりましたよ…えっと、魔族の者たちよ!ボスへ報告をしなさい!
 貴様の雇った傭兵、ハールーンは『雷鳴』を討ち取り戦線離脱したと!報酬は目的の場所によろしく!
 あと、王都の兵士諸君よ!なんか『雷鳴』が連れ出せって言うから連れ出す!頑張れ!

 最後にここで見た一切の出来事の口外を禁じ、見たことを忘れるように!破ったら雷が落ちる故、よろしく!!」

頼みを聞き、深呼吸して魔族の方へと振り返ればそう言う。
偽名を使い、傭兵に成りすまして魔族側としてこの戦いに参戦してたらしい。目的は色々あるが、一番はやはりストレス解消だろう。
一度はこういう大規模な戦闘に参加してみたかった欲があったようだ。

それと念のため、二軍の兵士たちにこのことを忘れるようにと言った後、自身の剣を鞘へと仕舞えば彼女を横抱きにして跳躍する。
その跳躍力は凄まじく、一気にタナール丘陵の郊外まで来てしまった。

クラーラ > 「……うん」

撫でられると小さく頷いていく。
髪が揺れ、金糸からは甘い香りがゆっくりと広がっていく。
汚されたと思っているせいか、前以上に手入れに力を入れて、香水の広がりも丁度いいぐらいに留めている。
魔力を共鳴させて、引力と斥力を操る術だが、もちろん今はそれを説明する余裕もなく、羞恥に耐えながら彼の胸板位を叩く。

「ばっ……馬鹿っ! 私ってバラさないで…っ! 気付いてない人まで…気づくじゃないっ!」

誰がそんなカミングアウトを願ったと思いながら、更にペチペチと叩きつけるも、あっという間に横抱きにされてしまう。
無駄な筋を着けず、しなやかな動きと力だけを求めた身体は柔らかくもしっかりとした体付き。
一足飛びで丘陵まで飛んで行く彼に、やはり凄いなと改めて思いながらも、身体を彼へと寄せて身を任せる。
そのまま何処に連れて行かれるか、どうなるかも全て……彼に任せようと、瞳を閉ざしながら、砦から遠ざかっていくのだろう。

ご案内:「タナール砦」からソル・グラディウスさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にソル・グラディウスさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」からクラーラさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からソル・グラディウスさんが去りました。