2016/10/24 のログ
ご案内:「タナール砦」にジャークさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にクラーラさんが現れました。
クラーラ > 「能ある鷹は爪を隠すって知らない…よね、知らないから晒すんだもの」

隠すどころか、これ見よがしに晒す彼に、呆れたように溜息を零して軽く肩をすくめる。
馬鹿に言っても意味はない、そこまでは口にしないが、暗に行っているようなもの。
続く言葉にも、ただ呆れた様子と冷ややかな視線を遠慮なく向け続けた。

「……人って、器以上の権力を与えると使いたがるって、ホントだね」

しっかりと手元の力を正しく使えない彼の言葉は、何をどう言い繕っても戯言に過ぎない。
そう思うからこそ、遠慮なく鋭い言葉を叩きつける。
この場で力を向けられたとて、力に溺れる輩に遅れを取るつもりもない。
もし敗れるのであれば…死しても抗うまでと、心にある高貴さは失うつもりもない。
不意に拳の大きな音がすれば、少しばかり驚いたものの、それだけでは少し驚くばかりで、すくむこともない。
彼の脅し言葉も、変わらぬ冷たい瞳で彼を見据えながら鼻で笑うほどに。

「慈悲深いって言葉に失礼、その拳を私に直接振り下ろせない……権力がなければ、ただの臆病者の愚者ね。――それで、何もないなら…早く行けばいい、貴方に背中を見せたら何するかわからないから」

威嚇するばかりで力を降るわず、それどころか屈辱の脅しを掛けるばかり。
魔剣も装備も、全て宝の持ち腐れと思えるほどの彼等に呆れながら構えは解かない。
警戒するなら去るまで、襲いかかるなら死に絶えるまで。
戦う時に気の緩みはならないと、女なりに殺し合いを生き抜いた結果の現れだった。

ジャーク > 「……さて、どうかね?井の中の蛙大海を知らずという言葉を返すとしようか。
キミの考えは正しい…が、しかし、私とて能無しじゃあない。隠すべき爪はちゃんと隠してあるさ。
つまり、今のは晒しても問題ないものだった、と言う事だよ。」

なぁ?と最後に感嘆の言葉を車の周りを歩く取り巻きへ語りかける。
ともあれ、腐敗役人とて単なるバカというわけでもない。
単に言葉がかみ合わないだけだが、しかし、反論する様子には大らかながら敵対的な表情。

「器以上の……クク。女、あまり無礼を繰り返すことはお勧めしないぞ。
私に権力があると知っているのであれば、大人しく媚びている方が良い。
……もう良いか、キミには分からん様だ。」

ふんーっ、と鼻から大きく息を出す。
軈て呆れが映ったかのように、悪人顔はやれやれと左右に振られた。

「フン…なら、キミは勇敢と無謀をはき違えた愚者だな。
この数が見えないのか、或いは勝てるとでも思って居るのか知らんが……。

後悔するといい。この私を侮辱したことをな。
フフッ…レイモンド君、やってしまえ!その女を捕えるのだ!」

遂に、悪人の腐敗役人はしびれを切らした。
どうせこの国の内部状況は腐っている。騎士団の女一人に権力者が手を出したとして、
法で裁かれるわけでも、衛兵が捕えにくるわけでもない。
今更余罪が増えたところでどうということはないのだ。

ジャークを取り巻いた数多の衛兵が装飾された豪華絢爛な宝剣や、珍品の魔宝石の付いた杖を掲げる。臨戦態勢だ。
それから、さっきから隣で便乗していた魔術師めいた格好の男、殊にレイモンドも臨戦態勢となった。
真っ黒衣装にオニキスみたいな黒水晶が印象的である。黒いが、大分派手である。
結果的に、襲いかかると言う事になったようだ。

『悠久たる氷河の寒気よ!その力、今ここに集いて巻き起これ!フローズンバインド!』

詠唱を伴って冷え切っていく砦の空気。
杖の先から収束して放たれる氷の魔力が、周囲の熱気を吹き飛ばしながら、
主にクラーラの足元を狙って、その動きを根本から凍てつかせんと、遠く長くに放たれる。
元来、人型の魔族を捕える為にと覚えられた魔術だ。
やけにギラ付く魔石の加護もあってか、見た目のふざけっぷりに反した威力と効果が発揮される事だろう。

それが故、ジャーク一同もその一挙でこれにて一件落着と言う空気になっていた。

クラーラ > 「海には出なかったけど、色んな場所は歩いたよ…そう、それが本当なら…期待しておくべきなのかな?」

意味深な言い方をされても、相手の様子があまりに小悪党そのものすぎて信憑性を感じない。
それでも警戒を怠らないのは、魔剣を求めて辿り着いた先での死闘の結果。
そして、彼の言葉を思うがままに叩き返すと、とうとう醜い本性を晒して刃を抜いた。
これで自分は襲われたことになる、つまり……魔剣を押さえ込む必要は何一つない。

「……ほら、基本戦術が疎か」

魔術師がいるなら、剣士は前に出て相手の気を散らし、死角から強烈な魔法を放つのが定石。
魔法の破壊力任せな初手に、呆れた呟きと共に……その場から一瞬消えたようにみえるかもしれない。
実際にはとてつもない反応速度で地面を蹴り、冷気の直線を回避し、まるで早回しの映像を見せるかのように、機敏な挙動で狙いを定められないように動き回る。

「ケラウノス……やって」

ステップして移動すると同時に、抜刀して振り抜かれた刃からは電流が飛刃となって放たれ、弧を描くそれがかなりの速度で魔術師へと迫るだろう。
ステップと同時に刃、それを繰り返して彼の手勢に強烈な電気を叩き込もうと回避と攻撃を繰り返す。
まずは基本的な牽制攻撃、出方を伺うものだが果たして。

ジャーク > 「期待はしないで結構だ。それなりに恐れて居れば良い。」

くくく、付け足す様に笑ったものの。

「……何。」

ただ、見かけ以上に、思った以上には強かった。
たった一人だろうし軍勢で囲むか、魔法のオーバーアタックでも与えればそれで終わりであると。
大体あの一発で、魔族なり騎士なり誰だって動きを止めて、その後は煮るなり焼くなりである。
フローズンバインドは、強力な魔族の脚力をも一度で封じる氷魔法なのだから。
それが、無惨な結果しか齎さないので、ジャークは怒り半分な情けない顔をする。

「おい、キミ達…さっさと他所に行った兵を集めたまえ。急げ、今すぐに、だ。
多少乱暴しても構わん、捕えたまえ。」

そも、数は軍程連れているのだ。人間相手に負ける兵力なわけがない。
さっさと援軍を呼び寄せて、叩き潰そうと言う手立てを考える。
因みに、ジャーク本人は闘技場にでもいる気なのか、人力車に座ったまま寛ぎ姿勢で何もしない。

『地よ、我が呼びかけに応えその身を挺して我が身を守れ!アースシールド!』

地面から噴き出す様に土石が魔術師の身を庇い、盾となる。次第元素魔法である。
けれど、魔術師他の、防衛武装が貧弱な衛兵は、電流にやられて、この攻防でも多少の数は膝を付くだろう。

「……ええいっ、不甲斐無い。早く捕えないか!広域魔術だ!」

無論、ジャークの衛兵も黙ってはいないが、如何せん相手の速さが盾となって、
剣兵も槍兵もロクにその姿を捕えることは出来ないでいる。
他の魔法兵も行動を縛る魔法で加担するが、効果はきっと今一だ。
大分逃げ回られた事に怒りながら拳を握る。

『永久凍土よ!今ここに蘇り、巻き興れ!エターナルブリザード!!』

再び魔術師、レイモンドは攻防から中距離くらいのところで氷の魔術を詠唱する。
逃げられるならば、逃げる場所が無くなる様な飽和攻撃で埋め尽くせ、という観念で放たれる、
広域凍結魔法だ。地面から、軈てそれは砦の天まで、青い氷の魔力が凍てつかせて、上がっていく。
勘が良ければ、魔力の収束と周囲の温度で、発動は未然に察知できるだろう。
多少なりとも、逃げ遅れた衛兵が犠牲になるかもしれないのは、仕方ない事である。

クラーラ > 「……殺し合いを教えてあげる、金も権力も、意味を失う…生きるか死ぬかを」

雷鳴、二つ名に恥じぬ挙動と攻撃。
電流が迸る響きとともに刃が飛び、地面をける強い音が落雷を思わせるのだとか。
速度と技で押すこの女にとって、大振りの一発はとても避けやすい。
相変わらず戦場に来たとは思えぬふんぞり返り具合に淡い憤りを覚えながら、動きは止まらない。
まずは彼の右腕のような悪趣味魔術師を潰そうと考える。
こちらも、大量の軍勢に囲まれては、体力切れになった瞬間にまずい。
剣兵や槍兵を切り払い、足蹴にし、動きを止めることなく叩き伏せていく中、彼のわかり易い言葉に次の手が把握されてしまう。

「ライトニング……」

ある意味チャンス、そう思うと、詠唱と同時に地面を蹴り、宙に浮かぶ。
刃には大量の電流が溜まっていき、本来なら一点集中させる力を少しだけ自分の周囲に零した。
そのまま彼の回りにいる兵士達を足場に跳ね回り、地面から離れたまま加速すると、ジグザグの移動から一気に距離を詰める。
詠唱が終わるのが先か、こちらが届くのが先か。
どちらにしろ、地面ではなく人を蹴っての宙移動ならば、足元からの攻撃は届くまでに時間がかかるはず。

「スラッシュ……ッ!!」

併せて、零れた電流の熱が冷気を弱めようとするだろう。
振り抜かれた刃は電気と、その熱の両方をのせた魔法で破壊力を補った強烈な一閃。
彼の右腕を潰せば部下達も恐れ慄いて散り散りに逃げるだろう。
そんな予測の上の反撃を試みる。

ジャーク > 「丁重にお断りしよう、優雅な私には縁のない野蛮な言葉なのでな。」

と言うのも、戦場に立つことなどない役人である。
権力を持って搾取を行う、つまるところ殺し合いの部隊に等端から立つ事はないのだ。
それは今戦場が目の前でも、なおである。
足元から沸いて、吹きあがって行く冷気もその足元には届かず、反撃を許す。

『なッ…ぐ…―――!』

目を見開くレイモンド。奇怪な高速詠唱を用いて、間髪入れず再び作られる岩の盾。
噴き出すそれが更に吹きあがって、宙から繰り出される一撃を防ぐ。
けれども防ぎきる事はなく、熱量で融解されたのやら、岩石の盾を貫通して、魔術師レイモンドの肩口を焼き切り裂いた。
燃えて焦げる匂いが広がる。
それと同時に、魔術に寄る永久凍土が地面から、為される。
多くの場所が凍り付いてしまってはいるが、剣が熱を放っているのか、薄れた冷気がその周りに広がって、外側が極寒の氷結地帯と言う事になる。
蹴り倒された衛兵はそこへなぎ倒されて氷漬けだ。

「……援軍はまだか?早くするのだ。」

魔族を捕えんと編成した部隊が騎士団の女たった一人にここまで手こずるなんて思って居ろうはずもない。
妙に衛兵の士気が下がっているのがどうにもならない。
何故たった一人にこうも押されるのか、全く分からない…それゆえに、益々不甲斐無いと憤怒する。

『―――!』

切り裂かれたはいいが、膝を付くでもなかった取り巻き。
真正面なら逃すまいと、切り裂かれたその後、返す刀にてもう一つ、奇怪な言語の高速詠唱を用いる。
ローズコフィン。
咲き誇る、氷で出来た数多ある魔法の花弁が鋭い棘となり、思い思いに飛び交いながら、
冷気を煌めかせて場を彩り、氷の檻へ幽閉していく、悪趣味な魔術師ながら、綺麗な魔法である。
成功の如何にせよ、大きく肩を切られたレイモンドは、この後膝を付く事になるだろう。

クラーラ > (「浅い……っ!」)

岩の盾を貫通することが出来たのは幸いだが、肩を焼き切る程度のダメージになってしまえば、この捨て身は少々分が悪い。
冷気の魔法は、剣の熱が幸いにも防いでくれたのもあり、ほんの少しだけ肝を冷やす程度で済んだ。
僅かな時間の合間だけれど、この魔術師が怪我を負ったのは周囲の兵士の士気を下げたと見える。
自分一人がここまで仕掛け、右腕に一太刀浴びせたとなれば、流れはこっちに来ている…そう思ったのだけれど。

「ぐっ……!?」

瞬間的に放たれた冷気の魔法が襲いかかる。
咄嗟に体に電気を纏うことで、魔力干渉を発生させて防ごうとするものの、この距離と一瞬しか間がなければ、気休め程度のもの。
氷の花弁が手足を切り裂く痛みと、冷気の染み入る痛みに顔を顰めながら、剣を盾にしてダメージを抑えていく。
氷の檻が出来上がろうとする中、着地と同時に剣に貯めた電気を一気に開放して横一閃に刃を振るう。

「このっ……!」

檻を切り裂き、封じ込めようとする魔法から逃れようとする。
最後の最後で右腕が放った魔法は一番やられたくないものだった。
小さなダメージでも数で引っ掛け、動きを封じる檻。
速度と技の剣士としては、片方を失うまいと白い息を吐きながらの抵抗を試みた。

ジャーク > 「おーよしよし、そうだそうだ。よくやった。全員構えて囲い込め。
レイモンド君、キミは休んでくれて結構だ。後は何とでもなるだろうからな。」

そうして最後に一撃放った魔術師は膝を付いた。
術師が倒れた後も、その魔術はクラーラの身を掠めながら独りでに檻を形作っていく。
バリバリと氷が電撃の斬撃で切り裂かれて行く、そのまま花弁を全て切り払うか、熱で強引に檻に大穴でも開ければ、脱出は可能だろう。
花弁が電熱で融解され、破壊されていく様は輝いて中々綺麗な物だと呑気に思うジャークであった。

しかし、そのロスタイムで、衛兵が武器を構えて、有利な条件で多方から切れる様に剣兵が、
或いは、再びその身体を凍てつかせて、動きを封じられる様に、魔道士が。
脱出の後の仕事を終わらせられる様に武器を向けて、魔力を湛えて包囲網を作り上げていく。

「全く…この女、ヒヤヒヤさせおる。私ももう少し強力な兵団を作らねばなァ…。
おい、キミ達…そのまま逃げられんようにしておけよ。」

そうして、魔道士達がレイモンドのソレ程ではないにしろ、各々の氷や土の魔術を主体とする拘束や幽閉の魔術を使ってダメ押しをかけ始める。
ここまでに花弁の檻からの脱出が間に合わなければ、きっとこのまま魔法で袋叩きか。

クラーラ > 呑気に見世物でも見ているような声に苛立ちを覚えながらも、切り裂いた檻から垣間見える包囲網を確かめる。
飛び出しても魔法が飛んで来るだろう、避けても包囲網を抜けながらの戦いはかなりきつい。
何より冷気で身体が冷えたことで、トップスピードに普通に乗るまでにラグが発生してしまう。
氷や岩での封鎖を試みる魔術師が見えれば、どっちにしろでなければまずいと分かる。
ほんの一瞬の思考で、選び取ったのは一つの賭けだった。

「ケラウノス……遠慮なしで……っ!」

自分の分身とも思うほど大切な魔剣に、身を省みるなと命令して力を解き放つ。
バチィンッ!と強烈な電気の炸裂音を響かせると、小さな体が雷のように飛び出す。
真っ赤になった刀身を付き出しながら強引に檻を貫いて抜け出すと、切っ先の向かいにいる兵士を一人、無遠慮に串刺しにして跳ね上げる。

「……っ!!」

そして兵士を寸断した。
上半身と下半身に別れ、肉の焦げる嫌な匂いを漂わせながら、兵士の吐いた返り血を浴びる。
雷の力で強引に筋肉のリミッターを外し、急激なトップギアを引っ張り出した身体は、筋に多大なダメージを受け、身体能力はガタ落ちしている。

「……死にたい人だけ、続きだよ」

貴様らもこうしてやるという見せしめ。
これで慄くならいいのだが、果たして。

ジャーク > 氷の檻から抜け出した雷の様な真っ赤な剣。
そのまま外側にいる兵士が突き刺されれば、見るも無残な死にざまで、
脆い人間なりに真っ二つに分かれて、死に絶えるのだ。
囲い込みの兵士も何だか不穏な雰囲気。
レイモンドがやられて、下級兵が死んでしまった。士気を削ぎ取るには、十分な理由である。
怖気づいた衛兵から、幾等か包囲が後退していく。

「……見苦しいもの、だ…全く。」

今更ながらに、増援の衛兵がジャークの人力車の後方から沸いてくる。
流石にこれは分が悪いか、いやしかし、このまま引き下がるわけにはいかぬと考える。
相手は一人なのだ。此方から仕掛けた上にしかも騎士団。どうせ揉み消す事だが、汚点に残っては面倒だ。
それに、ここまでやられて癪なのだ。
眉間に皺を寄せながら、悪人度数300%プラスの表情で不機嫌に転ずるジャーク。

そういうジャークの思考とは裏腹、威圧される衛兵達の士気は駄々下がる一方。
援軍が加勢するまでに包囲から、或いはこの場から逃げ出すなら、今のうちかもしれない。

クラーラ > (「どうにか…怖がってくれた」)

必至の虚勢で脅しかけたものの、これでまだ喰らいつかれるなら、どうにもならない。
手足が震えだし、体の異常が察知される前に逃げたい。
包囲が後退したところで、その綻びから逃げ出そうと、最後の力を振り絞る。
地面を蹴る度に、筋肉痛なんて言葉が信じようがないぐらいの痛み。
ビキビキと身体中から自分にだけ聞こえる軋みの音に、少しだけ顔を顰めた。
どうにか逃げ出そうと、綻びから抜けかけた時に、少しだけ膝が崩れる。

(「色々…限界…っ」)

片膝をついて動きが一瞬止まるものの、怯えている相手からすれば気づきはしないかもしれない。
ただ遠目からみる悪漢からすれば、あれだけの動きをしてノーリスクではないとも分かるだろう。
ぐぐっと立ち上がりながら、更に速度が落ちそうになるのを持ち直そうとする今は、明らかに速度は落ちた。
雷が失速した瞬間に気付けるだろうか。