2016/10/21 のログ
ご案内:「タナール砦」にクラーラさんが現れました。
■クラーラ > 大きな戦闘が終わり、魔族軍も引き上げたであろう場所。
そこを一際目立つ真っ白な騎士風の格好をした女が歩き回っていた。
何時もは腰から下げている剣を、鞘ごとベルトより外し、ほんの少し感じる魔力の反応を元に、辺りを見渡していた。
自分の魔剣だけかもしれないが、同族を察知する力があり、呼応するように魔力の波を放つ。
こうして魔族とぶつかりあう場所には、そこそこ強い魔族が屍とともに魔剣を残していくことがある。
間違って雑兵が拾うと大変なことになるのもあって、どこだろうかと相変わらずの澄まし顔で探し続ける。
「……ココらへん、だとおもうんだけど」
裏から回ってくる一団には気づく様子もなく、魔物の屍をひっくり返す。
下敷きにもなっていないし、それらしい痕跡もない。
強い力を使った残り香に呼応したのだろうかと、思案顔で首を傾げながら小さな溜息を零す。
■ジャーク > ジャークの衛兵団一味がクラーラが彷徨する場所へ差し掛かる。
割合戦力のある騎士団である、魔剣を操る様な衛兵もその中に多くはないが紛れ込んでいる。
あるいは、その魔剣の波紋に何かしら微弱な反応をするかもしれない。
『む…あれは…騎士団ですかね。』
「ウーム……どうやら、出遅れたようだな、レイモンド君。」
『その様です……。』
さて、間をおかずに豪華な人力車めいたものに担がれた腐敗役人ジャークと、
その側近であるレイモンドと呼ばれる、一目で悪人の顔だと分かる様なコンビと、それを囲む衛兵が見えるだろう。
皆悪趣味で嫌味な宝剣や煌めく鎧を纏って居たり、悪い意味でとても個性的だ。
彼等は、魔族や魔物が死体となって、それらを物色している騎士団の女の姿を見て、
なんだか残念そうだった。
もう少し早く来ていれば、この辺に魔族が居ればモノに出来たのだろうが。
既にここは色んな意味で先客に仕上げられてしまったみたいだ。
■クラーラ > 魔剣ケラウノスと呼応するなら、剣から淡い光を一瞬だけ零す、そんな反応を見せるだろう。
自分はここにいる、まるでそう告げるかのような、穏やかな光を。
思案顔だった女も、近づく存在に気づいたようで、そちらへと視線を向ける。
明らかに悪趣味な、ただキラキラしているような剣に鎧、まるで実用性を感じない格好をした兵士達に、ぎょっとして少し動きが固まった。
(「あれって確か……」)
権力者の中でも飛び切り悪どさで知られている存在、かかわらないほうがいいと仲間内でも聞いたことがあったのだけれど、まさに絵に描いたような悪人ヅラの並びに、苦笑いが溢れる。
(「……なんだか残念そう?」)
何故かこの状況を見て落胆する理由がわからず、キョトンとしたまま軽く首を傾げた。
とはいえ、権力者をこんなところでうろつかせるには危なすぎる。
足早にそちらへと近づいていけば、眉をひそめながら彼を見上げた。
「ごめんなさい……ここ、危ないので…」
帰っていただけないだろうか? 暗に王都への帰還をお願いする言葉を紡ぐのも、下手な面倒を起こされないため。
下手に出つつ、こっそりと周囲の気配には気を配っていた。
別の魔族が、この瞬間を狙ってくるかもしれない。
それは最悪なケースで……困ったように笑いながら、彼の様子を見やる。
■ジャーク > 顔を見合わせるジャークアンドレイモンド。
危ない事は、言われずとも知っているし…、そもそも、情報を得て、危なくない所を回っているのだ。
人力車から覗くジャークの服装といえば、他の衛兵の皆さんに勝るとも劣らぬ派手で趣味の悪い紫カラーの貴族服。
隣のレイモンドは黒魔術師も吃驚仰天して泡を吹きそうなドクロや黒水晶をふんだんに並べた衣装。
トドメに腐敗役人特有の悪人顔。
クラーラがジャークという腐れ外道を知ってるなら、すぐにそいつらだと分かる事だろう。
ちなみに、やけにキラキラ輝く鎧も物理防御面はとてもじゃないが使いようもないが、
魔導鉱石や水晶をわんさか使ってるので、見た目以上の性能ではある。
「フン…知っている。その為の衛兵だ。
いやなに、私はね、魔族の娘を狩りに来たのだ。
……しかし、ね。見る限り遅かったようだなァ……。」
気に食わなさそうに死んだ魔物の身体を見下ろし舌打ちする。
しかめっ面は、悪人度数が3割増しだ。
「…下らん御機嫌伺いは結構だ。言いたい事があるなら言えば良い。
だが、私の質問にも答えてもらおうか。私は魔族の娘を探しているのだ。キミに心当たりはあるかね?」
鼻から息を吹き出して睨むような絡み付く視線でクラーラを見遣るジャーク。
自分の疚しい目的など隠す気は微塵もありはしない様だ。
戦術通り、ジャークの周りには衛兵がついているため、そうそうに魔族も奇襲を狙う事もないだろう、
余程の事がなければ、だが。
■クラーラ > こうして近づいてみると、異様に派手で下品な紫色の貴族服を纏った悪人面。
見るのも目に痛いといった黒魔術師に失礼な格好と、どういうセンスをすればこうなるのやらと思う。
魔剣が衛兵たちが持つ魔剣に反応するのがわかると、寧ろ憐れみすら感じた。
こんな凡愚の手垢に汚れるなんて、力の象徴たる魔剣にとっては屈辱以外の何者でもないはずと。
「……いえ、ちょっとした斥候隊ならまだしも、そこそこの軍勢が来たら…」
そんな気楽に言えるものではないと、やんわりと突っ込んでみるものの、ふてぶてしい態度で紡ぐ言葉は、自分の大嫌いな存在そのものだった。
戦争をなんとも思っていない、そんな彼等にふつふつと静かな怒りが沸き立つのをぐっと堪えていた。
「……じゃあ遠慮なく。 さっさと帰れ、ここは自分の国のために命を投げ出す覚悟をした…勇敢な人達だけの場所。貴方みたいに、女を食い物にする存在が踏み入れていい場所じゃない」
どうせこんな場末の戦場に、この言葉を云々と出来る存在もいるまい。
そう思えば、変わらぬ表情で淡々と紡ぐものの、瞳だけは冷え切った軽蔑の眼差しを向けた。
「ない、仮にいても…捕虜だよ。貴方が好きにしていいものじゃない、管轄外」
わかった?と言いたげに、いつものように首をかしげるものの、冷淡な視線は、まるで見下しているかのように威圧的。
そんな合間も片手を腰に当てているのは、いざという時のための備え。
苛立ちと共に脳裏を一瞬だけ過るのは、幼い頃に見た穢れた貴族の姿。
昔は畏怖こそ覚えたけれど、今は憤怒のほうが強く感じていた。
■ジャーク > 「はっはっは…、レイモンド君。」
『はい?』
人力車から覗いて、側近の様にとなりを立って歩く黒魔術師を超越した様なレイモンドに語り掛ける。
「キミは、魔王殺しの呪術を使える。そうだな?…過去に殺した魔王の数は?」
『はい!3名であります!』
「キミは、魔族の兵団を一気に即死させる死の魔術を使える。…過去に殺した魔族の数は?」
『はい!しかし、1000を越えてから忘れてしまいました!』
「よろしい。ということだ……軍勢が来ても、私は一向に構わん。
が、別に私は戦争が趣味ではないのでな。最低限の消耗で、最大限の収穫を。と言う訳だ。」
ドヤ顔コンビのジャークアンドレイモンド。
下衆同然の笑いをはははと絶え間なく交わした。
彼等には、この行為は優雅な貴族のハンティングである。
「ククク……女、私が誰か分かって言ってるのかね?」
『そうだぞ!ジャーク様は凄いのだぞ!!』
「それなら、私はこの身を賭して国を良くしようと勇敢に為政を行う役員で、王へ助言を行う大臣だ。何も問題はあるまいな?」
この数を、またこの兵力を相手に、こちらが促したとはいえ、よくもまあ、権力者に「帰れ」等と言えたものだとジャークは思った。
「帰れ…か。言うのは大いに結構だ。
当然、断るがね。ははは、止めてみるかね?女一人では随分きついと思うぞ。」
満悦した視線で周囲の煌めく衛兵を見回すジャーク。
腐敗しきったジャークには、軽蔑も侮蔑も今となっては特に気にならなかった。
だって、人からさげすまれて当然事をしていると、一番自分が知っているのだから。
だが……
「手を出さないからって…あまり私をバカにしない方が良いぞ、キミ。
……ここはハズレだが、まだ魔族の進路を辿れば幾等でも魔族の娘等見つかるはずだ。
それに、キミは魔物を弄っていたろう、何を探していたか知らんが、一個や二つ、
それらしい魔族の娘を見かける事だってあっただろうに……なあ?
だが、知っていたとして………答える気は、なさそうだな?」
長い息を吐く。
若干の苛立ちを含んだ視線が帰っていく。
周りの衛兵も緊迫している。
ともすれば、号令一つで全員が切りかかって、人間同士の戦闘が始まりそうな程に。
■クラーラ > 「……ひけらかして楽しい?」
仮にそれだけの力があろうとも、そんな幼稚に力を晒す愚か者を信じられるほど、日和っているつもりはなかった。
冷ややかな笑みでキッパリと言い捨てると、それでもここで物色したいという彼等に、呆れて溜息も出ない。
ただ、冷ややかにその様子を見ているばかりだ。
「大有り、それなら内政をして。貴方がここにいる必要はない」
小馬鹿にしたような笑いにも臆せず、ただ、淡々と思う言葉だけを重ねる。
どっちにしろ、こんな悪党が政治に関わっても、ろくでもないことばかりが起きるだろうし、王都の情勢は悪化する一方だろう。
けれど、こんな人を見下すばかりの輩に、真剣な命の遣り取りをするここにはいてほしくないと、思いは強まるばかり。
これだけ言われても表情が変わらないのも、不気味かもしれない。
「そう……じゃあ、貴方がここで野垂れ死んでも、貴方が選んだ事だから、私は知らない。好きにすればいいと思うよ」
小さくため息を零すと、再び仕事に戻ろうと背中を向けかけたところで、切っ先をちらつかせるような言葉が響く。
小さく舌打ちをすると同時に、全身を魔力が伝っていく。
「パルスアップ」
その言葉が聞こえる頃には、神経伝達の電気の変化を加速させた女の体は彼等から3m程離れたところへステップし、地面を滑る。
淡々とした視線を放つ瞳がゆっくりと狙いを定めるように細められ、零れ落ちるように息を吐き出し、腰を落とす。
「言えといったのは貴方、言われる所以を作ったのも貴方。つまり貴方が全部悪い。それと…さっきから言ってる通り、いなかった。仮にいても、貴方に差し出す存在でもない。あと、私が探しているのは魔剣。正しい持ち主に、正しい剣を届けること。それが私が国から授かった使命の一つ」
彼の言葉を全て否定するような事実だけを並べ、そのままジリジリと後ろへと下がっていく。
臆しているわけではなく、こんなところで無駄な戦いをしたくないから。
とはいえ、切りかかってくるなら好都合。
全て消し炭にすれば、誰にも彼の痕跡を追うことは出来ないのだから。
「私は魔剣を探しに戻る、貴方はここで魔族の娘でもなんでも探してればいい。ただ……刃を向けるなら、国の命のために、相応の行動は取るよ」
一触即発の状態の中、警戒態勢を見せる。
何でもない相手なら、先手必勝で切り捨てることもあるけれど、相手が相手。
向こうがそれでもこちらを脅かすなら、こちらも気兼ねなく刃を向けられる。
伸るか反るか、そんな先行きの見えない状態に、緊張の汗が少しばかり肌を伝う。
■ジャーク > 「愚問だな。貴族(わたしたち)は己の持って居る物をひけらかして楽しむ生き物だ。」
少しくらいは驚けよ、等と思ったが……おかたく冷静なようで、随分冷めている。
ジャークとしては、それはとても面白くない事だった。
「……余計な世話だな、内政だと?……はっはっは…。
今やってるだろう、私自ら執り行う、趣味と実益を兼ねた画期的な金策をなァ?」
とはいえども、ジャークが言うことは概ねがいい加減なことばかりである。
口八丁手八丁。
「それで、結構だ。」
帰っていく、それならばと、一段に人力車を運ばせ始めるジャーク。
さっさと魔族の進路を追わねば、一匹も得られないまま終わってしまう。
それはいけない。折角これだけ兵力を集めたのだから。
「………。」
黙って、クラーラが次々と述べていく言葉を聞いているジャーク。
だが、淡々と述べられる言葉と、変わらない表情。
まるでこの数に物怖じしない強かな態度が、気に障る。
クラーラが言葉を言い切った所で、ドン!とジャークは拳を車の壁面に叩き付けた。
たかが王国騎士団の女風情が言わせておけば。
お前らは我らに媚びてヘコヘコしていればいいのだ。
言いたい事は言っていいと、確かに言ったが、権力者への畏怖や畏敬が全くないではないか!
もっと畏まれよと。
「……こんな腐りきった国のために、などと。随分めでたい思考回路だ。
ここで死んでもらっても構わんし、それより辛い目に遭わせてやっても良い。
―――だが、私は慈悲深いのでな、女の身に免じて土下座して私の足を舐めたら全て許してやろう。」
車のヘリに肘を付き、大層胸糞が悪そうに睨んで提案した。
ご案内:「タナール砦」からジャークさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からクラーラさんが去りました。