2016/10/12 のログ
ご案内:「タナール砦」にリシェラさんが現れました。
リシェラ > 月夜に照らされた砦の屋上、目立ちもしない片隅に一匹の蝙蝠が舞い降りる。
床に着いた蝙蝠は身を羽根で覆う様に包み、其れが大きく広げられれば姿は一人の少女のものへと変化した。

(成る程、此れがタナール砦。そして…)

自らが身を舞い降りさせた砦に眼を向け、次いで魔族の国へと向けていく。
もう何百年…下手をすれば更に時は過ぎ去っているだろう。
其処に広がる懐かしき故郷の地が眼に入る。
戻る事はもう無いが、せめてこうして遠くから見詰める位は許されても良いのでは無いだろうか?そう思っている。

微風にフードが落ち背中に届く金色の長髪が靡く。
耳に掛かる髪を指先で流し乍、無言で見詰め続けていた。

リシェラ > 「此の様な物を造り上げ、御互いの隔たりを依り深め、何の得が在るものか…
共存の道を見出す事こそが正しき道なのだと何故理解出来ぬのだろうか…?」

今こうして踏み締める此の砦、まるで互いに歩み寄る障害を互いに作り出す愚かな行為で在るものか。
誰に言うでも無い小さな呟きと共に、深い溜息を付く。
力在る者が力を振るい続ければ、力に依って返ってくるのは当然の事。
故に己は其れを知らしめる為に人間に与した。
其れだけが理由かと問われれば、決して其れだけでは無いのだけれども。

其の力も永い年月と共に殆どは失われてしまっている。
此れから先は如何なってしまうのか…憂いに沈む。

ご案内:「タナール砦」にロザリアさんが現れました。
ロザリア > その黄金に輝くコウモリは月夜の下でも尚明るく
光る魔力の粉を散らしながら、屋上へと舞い降りた

黄金の光は大きくなり、やがて少女を形作り──
そこから闇が、血のような紅が生まれる

黒朱のドレスに身を包んだ、薄金の髪の少女がそこに立っていた

「──夜分にこのような場所に誰がいるかと思えば…ふむ、同族か」

翠の瞳に月光を立てて、少女が言葉を投げかける

リシェラ > 感じたくとも感じてしまう、其れは己の身に流れる血と同質に近いもので在るからだ。
遠く離れた地へと向けられていた眼が緩やかな動きで現われた相手へと向けられた。
覚えが無い、初見の相手だ。一度でも見た事が在る相手為らば忘れる事は無いと自信を持っている。

「…」

無言の侭で其の相手を見詰めていた。
同族では在るとして、何処の流れを組む者だろうか?そう考えを巡らせる。
見知った者の関係者為らば、何処かしら近いものを感じさせるものがあるのだが…其れも感じられない。
では己が眠っている間に新たに生まれ出た者だろう、そう考え到る。

「此の様な場所だからこそか…久しいものだ、同族とは」

考えに少々耽ってしまった為に言葉を返すのに間が空いてしまう。

ロザリア >  
「雑多な亜種<レッサー>共とは違う、な……名のある吸血貴種と見受ける」

ふわりと夜風にドレスと髪を踊らせ、優雅な所作で歩みを寄せる

「で、あれば名乗ろう。
 吾はロザリア。宵闇の城キルフリートの城主である。
 月夜の邂逅というのもまた、魔の眷属同士には相応しく良いものよな…」

目を細め、小さく笑う

リシェラ > 「否定をした処で意味は無いか…其方の思う通りだろう」

己が感じている為らば相手も其れを感じているもの、其れを理解しているからこそ肯定の言葉を紡ぐ。
フードの付いたマントを纏い身を隠す己とは違い場違いと言わんばかりのドレス姿、場所を考えれば相当な自信家で在るのは分かる。

(さて如何する…予が知らぬ者為らば、あの者も予を知らぬとも考えられるが…)

名乗りを続けて挙げる相手に少しばかり悩んでしまう。
逆にもし知っていると為れば、最悪この者と相対する事と為る。
然し返さぬ訳にもいかない。

「予は…リシェラだ。今は故郷を離れ自由を求める身、其れ以外に名乗る術を持たぬ。
綺麗な月夜だ、確かに…相応しい邂逅では在ろうな」

どちらにせよ為る様に為るものか、小さく吐息を付いて。
返す笑みとは裏腹に、内心は己の考えが杞憂で在る事を願っていた。

ロザリア >  
「リシェラか、良い名であるな。
 家名を名乗らぬは相応の理由有りてのことであろう故、問いはせぬが」

まるで踊るような
この場にはどこまでも似つかわしくない歩みで月夜の下を歩みながら言葉を返す

くるりと踵を返し、黄金色の髪を揺らして再び翠の瞳がリシェラを見据える

「…故郷、か。年月に縛られぬ者であるからこそ、自由を求めるのかもしれぬな。
 吾も長らく過ごした故郷を捨て去り、この世界へと訪れた身だ。
 …リシェラ、お主もそうか?それとも…離れし"故郷"とは、魔族の国のことか?」

エメラルドのような、冷たい光を湛えた瞳が射抜くように視線を向ける

リシェラ > 成る程、己の名も科した行いも知らぬ者で在れば安心出来る。
一呼吸を置き改めて眼を向けた。

「理解をしてくれた事には感謝しよう。
理由を説明するには余りに語り難い事が在るものでな」

靡く金色の髪を手で抑え、彼女の仕草を只見詰める。

「故郷を捨てるか…そうだな、予も故郷を捨てた。
永く生きる中に色々と思う事が在ったのだ。
そう、色々とな…其方の言う通り、魔族の国こそが予の故郷」

彼女の故郷は此の地では無い、だからこそ己を知らぬのか。
普段為らば問われて言い淀む答えでは在るが、そんな彼女だと思うからこそ答える事が出来た。
ふと思考の片隅に真実を伝えたら如何思うかと浮かびはする…流石に其れは伝えれはしなかったが。

ロザリア >  
「悠久の時を生きる我らであればこそ、
 筆舌に尽くせぬ歩みもその背にあろう」

そう言って小さく微笑む少女の表情は打って変わって、見た目の年相応のものにも見えるだろうか

「なれば、人の国に身を寄せるか。
 人の中で生きる魔族も多いと聞く…吾からは、考えが及ばぬが。
 人間と魔族など決して相容れぬであろうに」

そう言って瞳を砦の向こう──人間達の国へと向ける
僅かに細めた、その眼から強い憎悪を覗かせて

リシェラ > 彼女の言葉に無言での頷きで答える。
同族で在れば相対していた頃と違う今この時だからこそか、雰囲気は落ち着いたものと為っていた。
だが彼女の続く言葉に表情は僅かに陰りを見せてしまう。

「今も人間と共に生きている、眠りに就く前もそうだった様に…
確かに魔族の国に生きる魔族から見ればそういった者達は異端で在ろうな。
…では、何故にそういった者達はそう思うだろうか?
其方と同じ様に相容れぬと考える、其の理由は…何であろう?」

彼女が人間の国へと向ける眼に見える憎悪。
其の理由は知る由も無いが、そんな彼女で在るからこそ…此の問いを投げ掛けてみた。

ロザリア > 「…ふむ」

小さく息を吐いて、向き直る
その瞳は先程と変わらず、敵意など欠片も感じられない

「人間は吾らを恐れ、排除する。
 そう、此処タナールのように、奪い奪われ殺し殺され、憎み合う。
 無論、例外もおろう…しかし、だ」

石造りの床をコツコツと叩き、歩み寄る
その顔を真っ直ぐに見据える

「その光は眩いが、小さい。
 リシェラ、貴様は人と近しく生きているのであろう?
 眩いものが近くに在れば、闇は小さくみえるものだ。
 無論それは、逆も然りである。…しかし違うものが見えている者達が相容れることなど…夢物語であろう?」

リシェラ > 静かに彼女の仕草を見、答えを聞き入った。
此方を見据える眼を見詰め返しゆっくりと眼を閉じる。

「確かに見えているものに違いは在る、其れは否定しない。
だが其れを理解出来るならば近付く事は可能ではなかろうか?
互いに違う考えを持つも、言の葉と云う互いを通じ合わせる為のものを持ち合わせている。
只違うから相容れぬと諦めてしまえば確かに夢物語で終わるだろうな。
予は…そうとは思ってはおらぬ、故に諦めはしないだろう。
人間とはか弱くも様々な可能性を感じられる素晴らしいものだ…そう思っているからかもしれん」

諦めてしまえば可能性の欠片も残らない。
彼女の考えには共感を持つ部分も確かに在るが、其れを肯定し切る事も出来ない。
故に其れを伝えずにはいられなかった。
今は理解出来ずとも何れは理解出来る事も在るのだと昔から信じる道で在ったから。

ロザリア >  
「…ふふ、健気であるな。
 いやすまぬ。貴様の言うこと、理に叶う」

小さく嗤った吸血姫は、表情を戻し言葉を続ける

「理には叶うが、其れだけだ。
 人間の中には吾らを排除しようとせず共存が可能な者もいる。
 しかし其れだけで人を受け入れるには…多くの魔族は人の闇を見すぎている。
 …我が城下、キルフリートの外れの村には戦えぬ魔族が多く営んでいた。
 その村をタナールを突破した一団が襲い、無抵抗な者を殺し、女子供を陵辱した。
 目的は何の事はない…村の中に一つはあるであろう…魔族の国の地図を入手することであった。
 無益な殺戮と陵辱は単なるおまけだ。
 ……リシェラ、貴様は許せる程にしか闇に触れておらぬだけであるよ、魔族のものよりも遥かに色濃い、人間の闇に、な」

言葉を紡ぎ終わると、ふぅ…と小さく息を吐く

「月の美しさに胸踊り少々喋りすぎたな。
 人の世で生きていくならば、忘れるがよい。
 瞳濁さぬよう生きることもまた、肝要なればな…」

リシェラ > 彼女の言葉を聞き考える。
確かに自分は人間の全ては知らない、処か魔族の全てとて知らないだろう。
だが其の言葉を聞いて僅かだが希望も持つ事は出来た。

「其方にとってはこうした予の考え方は余りにも都合の良い甘い考えだと笑うかもしれんが…
詰まりは人間も魔族も矢張り大しては変わらぬと云う事だろう。
歩み合う阻みと為るのは種族の違い、其れだけだ」

嘗ては自分もそうした事を行わせる立場の一人だった。
そうした意味では彼女よりも闇に近い存在だったかもしれない。
だが、自分は気付いた。自分達に無い何かを持つ人間と云う存在を。
其れと比べたら、自分達はどれ程に一つの存在として損なわれているものなのだろうと。
尤も其れは自分達吸血鬼に至っての事では在るが…
然し其処まで彼女に伝えてしまったら、気分を害してしまうだろう。

彼女と同じだ、此処まで語り終えれば小さく深呼吸をする。

「其方の心遣いは有り難く受け取っておこう。
願わくば…其方にも理解して貰える事では在るが、今はまだ難しいだろうな。
向けるにしても、向けられるにしても、憎しみと云うものが最後に行き着く先は深い深い虚無感さ」

言葉を終えれば、其の眼は地平線へと移される。
もう暫くすれば忌まわしい日の光が差し始める頃合と為るだろう。
そろそろ話も切り上げの頃だろうと示すように。

ロザリア >  
「…そうであるな。
 しかし種族の違い、ただそれだけのことを、
 ……理解し、同等で在ろうとする者など……いや、良いか…。
 飽くまでも可能性の話であった。それを否定しきることは神であろうとできまい」

ドレスを翻し、その背を向ける

「タナールに放ったアンデッド達の気配を感じず訪れたが…、
 今宵はもう日が昇る、死霊を放つのはまたの機会にしよう。
 ……リシェラ、願わくば貴様とは敵になりたくないものだな。
 まともに話のできる同族など、久しい邂逅であった」

そう言って僅かに別れを惜しむように苦笑して、その身を黄金の蝙蝠へと霧散させる
眩いばかりの黄金色の光を放ちながら、
僅かな魔力の残滓を残し、それは月へと飛び去っていった───

ご案内:「タナール砦」からロザリアさんが去りました。
リシェラ > 飛び去っていく彼女の姿を見詰める。
自分とて出来る事為らば言葉を交わせる相手とは相対はしたくはないもので。
完全に姿が見えなくなった処で己も踵を返した。

「予の様には為らぬのが一番良いのだ。
行き着く前気付き、道を正す。其方にはまだ戻る事が出来る…手遅れに為る前に、な」

其れだけを呟けば、今の姿へと変わった時の様にマントで身を包み…緩やかに縮む姿は蝙蝠と為る。
其の侭まだ薄っすらと闇を纏う空へと舞って行った。

ご案内:「タナール砦」からリシェラさんが去りました。