2016/04/15 のログ
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ご案内:「タナール砦」にエレイさんが現れました。
エレイ > 「──うぅ~む……居るなあ」

──とある夜。
剣を背負った金髪の男は一人、砦の方に向かってざしざしと歩いていた。
かったるそうな眼差しで砦を見据えつつ漏らした独り言は、現在砦が魔族に制圧されていることを示すものだった。

「……つか、最近簡単に取られすぎじゃね? 気のせい?」

この砦の情勢は時折耳にするが、最近はなんだかあまりいい話を聞かない気がする。
軍が腑抜けているのか、魔族が本気を出してきたのか、あるいは両方か。
何にしても嘆かわしい話だ、などと考えながらフンス、と鼻を鳴らし。

エレイ > 「まああなんにせよ……今日いる奴らには運が悪いと思ってもらおう。今の俺は何故か機嫌がよろしくないからな」

そう、男は少し機嫌が悪かった。
何故か、とついているのは自分でも理由がよく解っていないからだ。
少し前まで寝ていたのだが、起きて少しして何故かイライラが湧いた。
…きっと夢見が悪かったのかもしれない。夢の内容は全く覚えていないのだが。

そうして砦に近づいて行けば、見張りらしき魔族がこちらに気づいた様子で近づいてきた。
特に身も隠さず堂々と近づいてきた人間の男に怪訝そうにしながらも、魔族は誰何、及び砦に近づいてきた目的を問い質してきた。

男はフ、と口元に笑みを浮かべて

「俺は謙虚な冒険者で…まああ名乗るほどの者でもない。とりあえずお前らをぶっ飛ばしにきたのだが俺は優しいからな退けば見逃すが歯向かうなら容赦はしない」

──などと、堂々と言ってのけるのだった。

エレイ > ──数秒の沈黙の後、魔族の笑い声が響いた。

当然ではある。人間が一人で砦の魔族全員をぶっ飛ばすなどと宣うのだ。
何かの冗談か、そうでなければ狂っているかのどちらかだ。
そんな旨の発言をする魔族に、男はまた鼻を鳴らして反論する。

「…これが冗談に聞こえるならお前の耳は意味ないな後ろから破壊してやろうか?」

男の言葉に、魔族は侮られたと判断したか顔を不機嫌にしかめる。
そしてその太い腕を突き出し、男の顔を握り潰そうと掴んだ。

……が、男の顔は潰れない。
人間の顔など容易くトマトのように潰してきたであろうその手が、目の前の男を破壊できない。
魔族の顔が驚愕と疑問に歪む。

一方の男は、魔族の手指の隙間から、相変わらず気怠げな眼差しを向けている。
その両肩から、ボウ、と山吹色の光が湯気のように一瞬浮かんで、消えた。
それからおもむろに右手で拳を作ると、魔族の顔に向かって振るう。

──ドン、と鈍い音を立てて魔族の首から上が弾け飛んだ。

エレイ > 力の抜けた魔族の手を鬱陶しそうに振り払い、頭を失って地面に崩れ落ちるその身体を一瞥もせず、単身砦の内部にズカズカと侵入してゆく。

──砦内部は程なく、戦闘態勢に移行した。

向かってくる魔族を、作業のように一人ひとり拳の一撃で葬ってゆく。
時には向けられた武器を受け流し掠め取って、敵の体に串刺しにする形でお返ししたり。

戦意を失って逃げ出した者は、先ほどの言葉通り追いはしない。
だがこちらへの殺意を萎えさせていない者に関しては、一切の容赦はしなかった。
待ち伏せして機を伺っている輩は、身を隠している障害物ごとパンチでブチ貫いたりして。

魔族側の攻撃も当たっているものの、男にはロクにダメージが入っていない様子。
というより、避けるのも面倒くさいといった風情にも見えた。
目の前の男は本当に人間なのか。
そんな疑問を心中に浮かべた魔族がまた一人、物言わぬ死体となった。

エレイ > 大体の敵戦力の排除が終わると、地下にも足を向ける。

捕虜を囚えておく牢に繋がる扉を、扉をそこを見張っていた魔族ごと粉砕して足を踏み入れる。

見渡してみれば捕虜にされた兵士であろう女性が2、3人囚われており、1人が今にも数人の魔族から陵辱を受けようとしていた。他の女性はすでに陵辱された後のようだった。
そこにいた魔族に関しては情状酌量の余地なしと看做し、問答無用で壁や地面、または天井に叩きつけて潰した。

女性たちを解放してやると、感謝を述べられてそこそこ機嫌は直ったのか笑みを浮かべてそれほどでもない、と謙遜する。
彼女らに転移魔法のスクロールを渡し、王都へと帰還してもらって。

──周囲の気配をオーラで探知してみるが、どうやら自分以外で生きている者は居なくなったらしい。
こんなもんか、と独りごちながら地下牢から出て地上に戻ってゆく。

エレイ > それから静かな砦の中を色々歩き回って見てみるも、特に興味を引くものは見つからなかったらしく、やがて男は伸びをしながら砦を後にした。

───こうしてこの夜、砦の制圧状況はリセットされた。
この後どちらの勢力が砦を取っているかは、男の預かり知るところではなく──。

ご案内:「タナール砦」からエレイさんが去りました。