2015/10/13 のログ
レティシア > (男を助けたのは女の気紛れ。否、魔族の女にしてみれば、男を助けたという意識があるのかは怪しい。凍った弓矢に驚いてこちらも砦へと籠ってしまえば、今、姿が見えるのは動かない死体と剣を持った男と自分だけ。己の気配に気が付いたらしい相手がこちらへと視線を向ければ、女はひょいっと肩を竦ませて)

あら、見つかっちゃったみたいねぇ……え?

(向けられた男からの言葉に女は、キョトンとしたのも一瞬、嫌そうに形の良い柳眉の片方をを上げて)

――イヤよ。どうして、あたしがお前と戦わなければならないの?戦う理由とやらを教えて頂ければ、考えても良いけど?

(こちらを見据える相手の瞳に臆する事もなく、砦に女の凛とした、否という声が響く。)

アルバトロス > 「闘う理由? 満たされるため、ただそれだけだ。」

(嫌そうに片方の眉を上げて問い掛けてくる女に、剣を突きつけたままの体勢で言葉を返す。戦いの中で得られる高揚感、緊張感。敵を倒した時に得られる優越感、勝利の快感。それらが綯い交ぜになったものが、自分の中を満たすことを望んでいる。魔族と人間を見境なく切り捨てるのは、どちらかにそれらを得られるだけの者が居るかもしれないという、単純な理由だった)

「…逆に、お前は何しに来た?」

(そう女へ問いかけつつも、剣を死体に突き刺して持ちあげると、それを思い切り振って女の方へと飛ばす。ぶつけて落とす。ただそれだけの単純なものだった)

レティシア > …満たされるため?……それはそれは…随分と自分勝手な理由だこと…。お前のその自己満足に付き合わされる魔族も人間も…いい迷惑ね。――それで、その器は満たされたの?

(相手の答えに女は、目深に被ったフードの下で、口元に指先を当てながら、クスクスと可笑しそうに笑う。相変わらず空に留まったままでいれば、男がこちらへと、死体を飛ばすのが見えた。口元に添えた指先を、再び、そちらへと向ければ、女にぶつかるまであと、一歩と言う所で死体が凍り、そのまま男の頭上へと落下してゆき)

――あたし?…そうねぇ…砦の戦いの見物と……ただ、今宵の獲物を探しに来ただけよ。

アルバトロス > …人を守るだとか、大義名分を掲げろとでも言いたいのか?そんなものでは、喉の渇きを紛れさせることすらもできない。…満たされているならば、こんな場所に残っては居ない。

(依然として上空に浮かんだまま、口元に指先を当てて笑う女を見据える。振り飛ばした死体は、女まで後僅かの所で凍りつき落下してくる。それを盾で邪魔くさそうに払い退ければ、氷を砕け散ってしまった。幾らか、兜の中の男の顔が苛立ちに歪む。そのまま、女からの返答を聞いてから)

獲物、か。…その獲物は見つかったのか?

(どのような獲物を求めているのか、と質問をする合間に女をどうにか地面へと引き摺り下ろす手段を考える。)

レティシア > …さぁ?お前の戦う理由なんて、どうでもよくってよ?……ただ、お前のその喉の渇きとやらは、いつになったら満たされることやら…

(自分で尋ねたクセに、男の理由など、興味ないと言うように、自分勝手な女は、ひょいっと肩を竦ませた。女の方はと言えば、そろそろ空中にいるのも飽いてきた頃合いだが、足元にいる狂犬のような男を、どうしたものかと首を傾げる。向けられた問いに、瞳を瞬かせると、ニィッと笑みを深めて)

えぇ、見つけたわ。……でも、その獲物は牙を剥いてきていて、近づかせてくれないの。

(大仰に女は困ったと溜息をついてから、眼下の男へと視線を向ける。まるで値踏みするように見つめれば、更に笑みを深めて男を見おろしていて)

アルバトロス > …どうでもいい、か。逆に有難いな。余計な詮索をされると面倒だ。 …さぁな?だが、お前を斬り伏せれば多少は満たされそうだ。

(興味が無いという反応を見せた女に、感謝をするように言葉を返す。元より、理解されたいと思っているわけではない故に詮索などされては面倒だと吐き捨てるような態度を取った。何時になれば満たされるか、という問いに答える代わりに、お前を斬ればと狙いを定め続けていることを告げる)

ふん…牙を剥いていようが、そのままねじ伏せれば良いだろう?噛みつかれるのが怖いのか。…まぁ、いい。これでどうだ?

(言葉を聞く限り、獲物というのは自分のことらしい。ならば、と剣を納めてみせる。降りてくれば、まだ斬り伏せる事も出来る可能性があると踏んでのことだった)

レティシア > …あたしも、そういう面倒な事はキライねぇ……あら、意外と気が合うかもしれなくてよ?

(享楽、刹那主義の女にしてみれば、素直な感想を口にしたまでで、感謝されるゆわれはないとばかりに、片手をヒラヒラと振ってみせる。しかし、まだ己を斬るつもりでいるらしい男に女は呆れたように溜息を再度、漏らした。)

それは、あたしのやり方ではないわ?…そんな事をして、せっかくの獲物に傷でもついたら、どうするの…。

(何やら男の提案が聞こえてくれば、どうやら剣を納めてくれたらしい。まぁ、この男の事だから、直ぐに斬りつけてくる事も予想できたのだが、女はそのまま、空中より背中の翼をはためかせて降りてくる。男の目の前、3m程の距離を空けて地面へと降り立つと、被っていたフードを取り、素顔を晒す。隠れていた銀の巻き毛が現れ、ユラユラと揺れていて)

――こんばんは、黒衣の君。…先程は、出過ぎたマネをしたわ…。

(目の前の男を見つめつつ、謝罪の言葉を口にしていても、その口調は少しも悪いとは思っていない様子で笑みを浮かべていて)

アルバトロス > そうか、それはとても嬉しい………とでも言って欲しいのか?

(片手をひらひらと振る女の言葉に態とらしい口調で嬉しいと言ってみせてから、先ほどと同じ、冷たさを感じさせる声で言葉を続ける。呆れたような溜息をつく様子を下から見上げたままでいて)

無傷で捕えてどうするんだ?愛でるつもりでいるのか?随分と酔狂なことだな。

(無傷のままでいる獲物が反撃に出ないとも限らない。だが、女はその可能性すら無いだろうという余裕を感じさせる。剣を納めるのを見た女が、背中の翼をはためかせて降りてきた。3m…剣を抜いて、斬りかかるには微妙に時間が足りない。素顔を晒した女の顔を見て)

挨拶や謝罪が聞きたいわけじゃない。俺に何の用だ。用件次第では斬り伏せるぞ。

(笑みを浮かべる女に、剣の柄に手をかけて問いかける)

レティシア > …嬉しいなら、もっと感情を込めて、仰って?…王都の劇場にいる大根役者でも、もっと上手に言えるわよ、きっと。

(冷たい口調の男の態度も何のその。戦場にいる剣士と王国にいる役者を同一に比べてみたりして、相変わらず、笑み浮かべながら、冗談をたたく。地面へと降り立って、挨拶の言葉を口にしてから、マントの下のドレスの脇を両の指先で摘み、軽く膝も折る。向けられた問いに、本日、幾度かの溜息を漏らしつつ)

あら、怖い…。何の用って…お前、さっき言ったじゃない?…愛でるのよ?

(何を言っているのだと呆れたような口調で言葉を返した。剣の柄に手をかけている相手に、怯える様子も見せずに、一歩、近づくと、つぃっと右手を差し出してみせて、艶めいた甘い声音で言葉を紡いだ)

――ねぇ、あたしと一緒に夢を見ない?

アルバトロス > あぁ、そうか。なら、言う必要は無いな。それに感情を込めたとしても、それは本心からの言葉ではない。 …そんな偽物、紛い物で満足するのなら、言ってやるが?

(大根役者と感情の込め方で競うつもりは毛頭ないと剣の柄に手をかけたまま、鼻で笑うようにして答える。音を立てないように、僅かにだが足を前に出して、笑みを浮かべて冗句を口にする女との距離と詰める。だが、やはりどうしても鎧の装甲同士がぶつかる音が鳴ってしまう。ドレスの脇を摘まんで膝を折り、礼節ある仕草をとる女がまた溜息を吐くのを見遣りながら)

………何?

(女の言葉に、一瞬戸惑うような声を返した。愛でるとはっきりと口にし、臆することなく此方へと一歩近づく女。差し伸べられる右手を見てから、女の顔へと視線を移す。甘い声色での誘い。何を考えているのかは分からないけれど)

その夢は、俺を満たせるものか?

(女と見る夢が、自分の中を一時でも満たせるものかどうかを尋ねた。満たせると答えらならば、その手を取るだろう)

レティシア > …お前、見かけによらず…きっと嘘はつけないのね…根は真っすぐなのね…。

(目の前の男を女は紫の瞳を細めて見つめる。鎧同士が奏でる音で、男の方も距離を詰めている事に気が付いたが、女は気にする素振りも見せない。右手を差し伸べて、言葉をかければ、そこで初めて今までとは違う男の反応が見て取れた。女は更に、ゆっくりと男へと近づいてゆく)

――えぇ、きっと満たして差しあげるわ……さぁ?

(既に手を伸ばせば、相手に手が届く距離まで近づいた。間近になれば、男を見上げるような姿勢へとなり、急かす訳でもなく、男へと差し出す右手はそのままで)

アルバトロス > 生きるための嘘ならば、幾らでもついてやるがな。 ………。

(女の言葉に素っ気ない態度で答えたが、根は真っ直ぐだという言葉には無言だった。満たされるためだけに動いているという点だけで言えば、非常に正直とも取れる。だが、それを肯定する気にもなれなかった。僅かに頭部の兜が考えるように俯くかのように動いたが、それは完全に無意識の仕草だった。ゆっくりと、先ほどと変わらない速度で歩み寄ってくる女。剣にかけた手は既に離れていて)

面白い。お前の夢がどのようなものか…愉しませてもらおうか。

(女の手を取った。鎧に覆われた手が女の手を掴む。見上げてくる女を鎧の中に隠れた男の瞳が見下ろす。そのまま、女を抱き寄せて姫抱きの形で抱えあげると、まるで人攫いのように女を連れていくのだった)

レティシア > (甲冑姿の男が己の手を取れば、満足そうに菫色の瞳を細める。初めて男の瞳を間近に見れば、左右の違う色合いのそれに一瞬、吸い込まれそうにもなる。しかし、それも本当に束の間、女も自ら男へと身を寄せて、抱きかかえてもらえれば、そのしっかりとした首元へと両腕を回し……自分の意志で何処かへと攫われてゆき――)
ご案内:「タナール砦」からレティシアさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からアルバトロスさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にソードさんが現れました。
ソード > もう、どっちが砦の中にいるか、ってぇ程度の違いでしかないよな。この砦。

(魔族相手に陥落した砦を、城壁の下から見上げながら嘯く。
陥落として陥落とされ、そしてまた陥落としては陥落とされる。
自分が以前に参加した作戦から、そう日は立っていないハズであるのに、あの日人間側が制圧していた砦は、今はすっかり魔族のもの。
まぁ、地力の面では明らかに人間側が劣っているのだから、それはさほど不思議ではないけれども。もういっそ、わざとこの状況を楽しんでいるような者が両陣営にいるのだろうなぁ、などと思える。
抜き身の鋼剣を肩に担ぎながら、ふぁ、と軽く欠伸をする。)

さて、お仕事しますかねぇ。

(嘯いて、のそりと歩き出す。
本日のお仕事は、砦内の魔族の制圧補助。王軍や騎士団の任務のお手伝いである。
既に相当数の兵力が砦にとりつき、打って出てきている魔族と剣を交えている者も多い。)

ソード > (のそのそというやる気のなさそうな歩調から、申し訳程度の駆け足へと足並みを整える。城壁が近付き、戦の雄叫びであるとか剣戟の音がより大きく聞こえ出す。)

―――おー……やっぱり、こっちのが優勢なんだな。

(戦の様をはっきりと見ながら嘯く。
概ねこの戦場では、攻城側の方が優勢である事が多い気がした。
実際、砦の攻略戦など防衛側の方が圧倒的に優位なものであるのだろうが、ことこの砦においてはいつも攻めている側が押しているような印象がある。
まぁ、男がたまたまそういうところばかりを見ているからなのかも知れないが。
今回も敵陣には、強大な魔族やそれに準じる実力者の気配はない。)

……また退屈な仕事になるかねぇ。

(ため息交じりに男は零し、すれ違いざまに小鬼を数体なで斬りに斬り棄てて、速度を上げた。わき目も降らず、城壁の足元までたどり着き、そのまま水平な城壁を駆け上っていく。)

ご案内:「タナール砦」にロザリーさんが現れました。
ロザリー > その戦場を上空から見ている者がいる
厳かなドレスに袖を通した力あるヴァンパイア

魔王アスタルテの魔王軍、その一角が砦に進行したという話を聞き、戯れにその様子を眺めにきた

状況は…やや劣勢だろうか
魔王軍と言っても所詮ピンキリ、末端に知恵なき魔物が多いのは必然だろうか

──数人、吸血姫の存在に気付き、射掛ける人間がいたが
弓矢を霧散することで躱し、片手から業炎を放ち絶命させる

成程、末端が弱小というのはお互い様らしい

ソード > 前言撤回。

(城壁を駆け上りながら、男は突如として笑みを浮かべた。
先ほどまでの退屈極まりなさそうな表情から一転してのもの。
眼は爛々と輝き、獣のように歯を剥き笑う。
しかし不思議と、威圧感や覇気のようなものを垂れ流す事はなく。
城壁の上から射かけられる矢をかわし、魔法を打ち払い、翼持つ魔物を一蹴しながら、男は重力をあざ笑うように天へと昇って行く。
そしてついにそのまま、男は城壁の上までたどりついた。
色めき立つ、城壁上の魔族や魔物たち。
しかし、男はそれらに目もくれず、もう一度城壁の石畳を蹴った。)

遊ぼうぜ、姉ちゃん!

(次の瞬間、男の姿は天上にあった。
上空より戦を睥睨する麗しき吸血姫のその正面に、まるで転移でもしてきたかのように。
剣を振るう。
右腕で掴んだ、鋼のブロードソード。
横一閃、狙いはその右脇腹。)

ロザリー > 「──!」

虚を突かれた
が、瞬時に魔術刻印に記述された式を起動
振るわれたブロードソードを一瞬で出現した白銀の盾が弾く
満足に魔力を出力することが出来なかったのもあり、一撃を受けて盾は砕け散り魔力の粒に戻る

「…剣を振る前に名くらい名乗れ、下郎め」

蒼碧の瞳が何か汚物でも見るかのように睨めつける
その人間から古来から知る『嫌な匂い』がしたからだ

ソード > 振るった剣は、振り抜けず。
弾かれた勢いには逆らわず剣を引き戻し、男はそのまま重力の戒めの下、高度を下げ始める。
故に、向けられた言葉には見上げる形となる。
睨みつけてくるその眼もまた、見上げる形。
対する男は、歓喜に目を輝かせたままに答える。

「ははっ、自己紹介の前にあいさつくらいはするもんだろうが。
いいねぇ、姉さん。今夜は楽しめそうだ!」

彼女の視線の意味など知る由もなく。
何より、そんな事はどうでも良いとばかりに落下していく男。
天上に向けて、ようやく名乗りを上げた。

「ソードだ!おめぇさんは何てんだい!?」

鋼の剣を肩に担いで、その問いかけの終わりと共に男は城壁へと着地した。
次の瞬間、右側から襲い掛かって来た小型デーモンを、一瞥もせずに両断する。
視線は、天上の吸血姫へと向けられたままだ。

ロザリー > 落下していく男を見下ろしながら、その高度をゆるりと下げていく
やがて、その城壁から僅かに浮いた位置へと留まると、口を開いた

「ソード……剣か。
 苛烈で、熱のある良い名だな」

くつくつと嗤い、再びその姿を見据える

「吾はロザリア、宵闇城キルフリートの主である。
 ……戯れに戦場を覗き見に来ていたのだが…お前のような怪物がいるとはな」

周囲へとその目線を逸らす
ロザリアの降臨に怯えた魔物が城壁から引いていく

やれやれ、あの様子ではこの砦はとられるな

そう思い、簡易的に出現させた魔法陣から数十のヴァンパイアバットを砦内へと放つ
戦いは拮抗していなければ、面白みがない

そして、再びソードへと向き直った
「さて…邪魔者はいなくなったぞ」

ソード > 「へへ、そりゃどうも。
ただまぁ、名付け親がちと単純だっただけだと思うぜ。」

名について褒められれば、破顔。
嬉しそう、というよりは、やはり楽しそうに。つまらなさそうに戦に参加していた時とくらべれば、やはり随分と違う。

「ロザリア。いいねぇ、見た目とピッタリな感じの名前だ。それも、どこぞの城主様と来たもんだ。―――いいねぇ、いいねぇ、最高だ。
このまま、是非と俺と戯れてってくれや。」

相手の名乗りを受けて、上機嫌そうに頷きながら剣を担ぎ直す。
よく磨かれた刃。
しかし、ものとしては中級品。かろうじて粗悪とは言えない程度の安物である。
と、彼女を見て他の魔物どもがその身を引いた。
んん?などと周囲を見回していると、彼女の傍らに魔法陣が生じた。
そのまま面白そうに成り行きを見ていたが、なるほど彼女の目論見通り、放たれた吸血蝙蝠はいい具合に魔族不利の戦場を押し戻している様子で。

「便利なもんだ。いや、本当に。……っと、まぁいいか。
んじゃあ、せっかくベッドメイクまでして貰ったんだ。
激しくて愉しい夜にしようや!」

(跳躍。
次の瞬間、現出。
移動というよりは、やはりもはや転移。
彼女の右斜め前方、低く身を沈めたような体勢。踏み込む足は右足だ。
剣を振るう。
軌道は先ほどと同様。
否。
純粋な横薙ぎではなく、やや斜めに切り上げるような少しだけ角度のついた一撃。狙いは変わらず、彼女の右脇腹。)

ロザリー > 「ベッドメイクとは…フフ。
 面白い言い方をするな、小僧」

身の丈は子供ほどしかないロザリアではあるが、
生きた年月は目の前の青年よりもはるか上、故にそう呼び称する

「愉しき夜にしよう、というのは…同意しよう」

不敵な笑みを浮かべ、ソードを迎え撃つ
その瞬発力は既に人間を超えているように思えた

基本的に魔術師であるロザリアにとっては、間合いを詰められれば厄介な相手
霧化し、魔術で翻弄するのが常ではあるが…今宵は興が乗っている

先ほどと同じ狙いの一撃は黄金の剣によって阻まれる
激しい剣戟を奏でたその剣はロザリアの細腕に握られていた

「舞台に映えるは、やはりつるぎとつるぎの舞だな。
 まずはこれで相手をしてやるぞ」

ブロードソードを打ち払うままに、くるりとドレスを翻し、ソードの右袈裟を薙ぎにかかる

ソード > 無骨な鋼の剣を受け止める黄金の剣。
いいねぇ、という呟きは心中にのみ木霊して。
次の瞬間には、彼女の剣は己の右肩に迫っている。
そのままその美しい刃が男の肩に吸い込まれるように迫り、紅の外套に触れた瞬間。

ギィン、と。

再び鳴り響く剣戟の音色。
黄金の刃を受け止めたのは、無論男の肩でも紅の外套でもなく。
男の手にした剣、その柄尻。
黄金の刃の根元の部分で、しっかりと受け止めている。黄金の剣身は、確かに外套に触れている、ぎりぎりのタイミングである。

「何でもいいぜぇっ、愉しいなら万事OKだ!」

そのまま、剣を振りぬく。
柄尻で相手の剣を跳ね上げる動きのまま、その剣刃で彼女の身をおびやかす意図。
必然的に軌道は左袈裟の斬り上げとなる。

ロザリー > 「───ほう!」

『人間であれば』致命となる一撃を、躱すでもなくあえて高度な技術をもちて防御する
それだけで自身の強さ、技量、何よりもその戦闘勘に自信が伺えた

思わず笑みが溢れる
剣術に関してはそれほど造詣が深いわけではないが、
不死者へと堕としたこの肉体は、人間の身体能力を上回るもの
まともに受けるだけでも、このソードという男の力が理解る

「無骨に見えて器用なやつだ。ふふっ!」

笑みを零す少女の顔は愉しげだ
元より誰かと何かを比べること、というのが好きなのだろう

向かい来る切り上げを舞うような動いで後方へ転身し躱す
そのままバネを使うように再び懐へ飛び込み、剣を振るう

打ち払い、打ち払われ、薙ぎ払い、薙ぎ払われ
夜の城壁の上で何度も刃鳴と共に火花が散る

「なかなかの腕であるな、ソード!」

楽しげな声と共に繰り出されたのは、心臓を狙う突き
黄金の剣に魔力が込められ、薄紫色に朧気に光る
並の鎧程度ならば刺し貫いてしまうであろう、一撃が迫る

ソード > 「ちぃと目がいいだけさ!」

手先はぶきっちょでねぇ!と。
そこまでの言葉をつづける程の時間は、この刹那の剣戟の中においてはありはせず。
己の一撃を回避した少女を見やり、笑い返す。
次の瞬間には己の懐へと現出している彼女の一撃をまた防ぎ、反撃を加えて、また防いでは斬り返す。
実に芳醇な時間。いいねぇ、愉しいねぇ、と男は笑う。
きっと彼女も笑っている。
しかし、まだまだじゃれあいはこれからだ。

「ロザリアも、いい感じだぜ!」

戦の手を止めて、遠巻きにそれを見つめる者まで現れる。
それはそういう戦いへとなっている。
だが、互いにこれが全力でない事は明らかで。
男は知らずとも彼女の本分は剣士ではないし、男の技も力もまだ底ではない。
故に、繰り出された黄金の刺突に薄紫が纏われた時、戦いの歯車は一つ上へとシフトする。
その必殺の一撃に対して男が見せた動きは、これまでの男の武技とは明らかに毛色が違う技であった。
迫る刃のその腹に、男の刃が触れる。
そして黄金の刃が男の胸へと至り、その紅の外套の布一枚を貫いた刹那、男は剣を振るい、右足を引くようにしながらその身を半身に翻した。
シャリィィィンッ、と。
これまでの剣戟とは異なるメロディ。
男はそのまま彼女の刺突を斬り流す。黄金の切っ先は紅の外套の胸元と、男の纏う安物の鎧の胸部表面に裂傷を作りながら流れていく。
それはまるで舞うような体裁き。

「よッ―――と!」

そのまま、斬り流し振りぬいた鋼剣を小器用に手の中で逆手に持ち替え、突き出された彼女の剣と腕に沿うように上体を回して、横一閃で彼女の首を左側から狙う。

ロザリー > 「!」

やるやる、とは思っていがここまでとは
致命の一撃を皮一枚で躱す芸当、この男は全く命が惜しくないのか
もしくは、その程度では死なぬ故にそのような真似ができるのか
考えている暇もなく、自身の首へと刃が迫る

ソードの振る剣が吸血姫の首を斬り抜ける瞬間、
それは闇色の霧へと姿を変えた

僅かに後方へ、霧が人型を形作り、ロザリアが現れた
それまで彼女がいた場所には音を立てて黄金の剣が落ち、金色の魔力の粒となって霧散した

「剣では一歩及ばんか……人間相手に術に追い込まれるとはな」

苦笑を浮かべ、その右手を前方へ掲げれば、
ロザリアの周囲に先端を鋭く尖らせた白銀の燭台が無数に現れる
その数は軽く見ても20以上だろう

「余興は終わりで良いな?」

ここからが本番である、と
魔術を使うモードに切り替えた吸血姫が口の端を歪めると同時
鋭い切っ先を向けた燭台達が降り注ぐようにソードへと突進する

ソード > 男は、瞬きもせず笑っている。
振りぬいた剣が彼女を捉えたにも関わらず、その手ごたえがなかった事にも、浮かべるのは笑みだ。
しかしそれ単体には不思議と狂気が付随しない。
本当に、楽しそうに男は笑っていた。
男があの一撃をギリギリまで引き付けられた理由は一つだけ。
それが最も効率の良い動きであると知っているからだ。下手にひよった方が、梃子の原理だの何だのの問題で技は成立しにくい。
ましてや、あの斬り流しや舞いは先日剣を交えた人形から見憶えた覚えたての武技だ。だがあの局面では、それこそが最も効果的な技であった。霧になってかわされたとは言え、吸血姫のその身を捉えた事が証左でもある。

「やっぱり、そっちが本職だよなぁ?」

再度、闇より現出する彼女。
己のように速度ではなく、魔導によってその身を再構成する事によっての移動。見据えながら、足元で霧散する剣には一瞥もやらず見返し、彼女の言葉に応じた。
既にそこには、20を超える凶器も現出している。
彼女の動きを見れば、否、あるいは彼女が高位の魔族であると考えるなら、それは自然な結論。
彼女の本来のスタイルが、魔術を絡めたものであるという事。

「待ちくたびれたぜ?」

対して男は、剣士である。
そして今でも、剣士のままだ。
否、正確には戦士の方が良いのか。
それでも尚、男は笑って返した。
殺気はなく。闘気はなく。敵意はなく。
しかし油断もなく。
まるで、散歩にでも行くように。
まるで、食事でもするように。
まるで、女でも抱くように。
まるで、呼吸でもするように。
ここまで通して男は、ずっと自然体だ。
本気ではないから、ではない。
男にとって闘争は、本気であるとかないとか以前に、呼吸と同じなのだ。
一歩を踏む。降り注ぐ剣呑な白銀の雨に向けて。
ザワリ、と。
空気が騒ぐ。大気中の魔力がまるでおびえるように戦慄いた。
男の「変化」は一瞬。
同時に響くのは剣の、鋼の音色。
紅の外套は無残に切り裂かれた。鎧もまた同じように引き裂かれる。
彼女の放った燭台の雨によって。そして、男の内側から突き出した鋼の鱗によって。

「余興は終わり、だろ?小手調べやめて、全開でいこうぜ。」

そうして、剣で、そして徒手で、飛来した白銀すべてを叩っ斬り、打ち砕いた後、男は変わらずそこに立って彼女を見ていた。
縦に開いた瞳孔。体表に浮かぶ鋼の鱗。そして額には一本の角。
その姿は明らかに尋常の人間ではなく。
とある生物の姿を想起させる。
即ち、竜である。

ロザリー > 「───妙に鼻につくと思えば…」
眼前で繰り広げられる光景を前に、ボソリと呟く
そうだ、嫌な匂いは初めからしていたのだ
こうやって姿を見るまでは半信半疑だったが…

「貴様、古の呪われし怪物…ドラゴンの血族か」

ギリ、と牙を鳴らして歯噛みする
相手がドラゴンであると理解した途端にその表情からは笑みが消える

同時に、ロザリアの周囲に膨大な魔力が収束していく
相手が相手である以上、もはや手を抜くまでもなく、その『本気』を見せるということだろう

が、その魔力が形創る前に、吸血姫は問う

「一つだけ訊こう……貴様は『こちら側』ではないのか」

竜の血という極限の魔性を持つ者がなぜ人間などに味方をするのか
それがわからなかった