2023/04/10 のログ
■キョウカ > 右手にするのは普段使いの刀。左手に掴むのは――赤黒い大剣のようなカタチをしたもの。
魔物たちに囲まれた際、ちょうどすぐ手近にいたオークの両腕を切り飛ばし、落ちた大斧に炎の洗礼を浴びせたものが。
目方だけはちょうどいいのだが、如何せん切れ味に欠ける。
それはそうだ。こんな地の底で利剣がひょいひょいと、拾える/ドロップするとは限らない。
……であれば火を流して作り替え、即席で打ち直すに限る。
それができるのが己が身に発露したチカラであり、妖力の具現である。
もちろん、そんなことをやって耐えられる道具は多くない。だいたいは数号打ち合うと崩れ去る。
「お前は存外耐えうるようであるが……」
元・大斧は剣に無理やりに作り替えたとはいえ元が良かったのか、酷使同然の改変からの使用に耐えている。
だが、たぶん限度はある。それもすぐにだろう。安物であれば矢玉にするくらいが精々である。
故にその使い方は、心置きなく使い潰すことに何ら躊躇いなくなる。
クハ、と口の端を釣り上げて左手の大剣を振り翳し、横薙ぎに打ち振るう。二度、三度。そして四度。
周囲の敵を払い除け、牽制するとともに少しでも雑魚を削り、減らす。
たったそれだけ。たったそれだけなのに――、
(――脆い)
溶岩の如く赤色の熱を湛えた刃が、ひび割れる。無理やりに捩じ込まれた火力に耐えかねると弱音を吐き出す。
己が隙を見逃さぬとしたのか、小賢しく寄ってくるヒトガタを逆手にした右手の刀で刺し。
限界を迎えだした大剣をちょうど遠く、向こうに見えた大型の有翼獣に向かって投げ付ける。
車輪の如くぐるぐる廻り、大気を熱しながら飛ぶ刃が獣の頭に切り込めば、其れを契機に爆ぜる。爆裂が起こる。
剣/斧と同じ目方の火薬を炸裂させたら、同じくらいにはなるのか。
轟音、震動、爆音、炸裂。そして火炎。火薬とは違い、もうもうとした煙はない。飛散する鉄片ともども、殺傷力が起こる。
■キョウカ > 「まだまだ斬れそうな手合いは残っていようとはいえ、成る程これが魔物の部屋!
巷で厄介と宣われるのもむべなるか……で、ござる!」
左手は軽くなった。故に元々の手持ちである刀を両手で握り直す。
此れもまた戦利品ではあるが、素性が良かったのだろう。
炎を流しても変わらず、劣らず、そして耐えられるという剣、刀は大体が名剣、名刀の類と言える。
無銘でも、この刀はまさにその類だ。好みで言えばもう少し長さが欲しかったが、贅沢か。
代替がそうそう望めない時点で、無造作に扱えない。
切先に刃を灯しつつ、長い髪を揺らして周囲を見渡す。
天井がぼうっと明かりもなく光を放っているお陰で、光源には困らない。
炎の妖力で燃やした敵も多い。肉が燃える悪臭と煙こそあっても、陰影が際立つならば視線も通るというもの。
どうやら出入口があると思われる通路、経路を見出せば、其処に集り出す敵を見定める。
「おうおう、集まって固まるのは拙者に恐れを為したか?
自惚れを抜きにしても、下策の極みでござるな。……兵法は疎い身なれども、突き破られように」
さながら、盾兵を前に出して陣を組む兵士たちの如き厚さ、壁を作っているかのような布陣。
兵法の類に覚えがあるモノでもいるのか?
この国の兵学軍学の類は多少は暇潰しに見てみた記憶があるが、似たような例があった気がする。
落ちたものを寄ってたかって辱め、弄ぶであろう手合いにしては随分と組織立っている。
しかし、関係ない。
血振りの代わりに炎を伝わらせた刃鋼を振り、一旦鞘に納めて深呼吸。
次に履物の底を石床に擦らせ、大きく身を捻って抜き打つ刀刃が風を割く。生じた炎が大気を巻き、うねって部屋の奥へと奔る。
まるで炎の竜巻めいた斬風が血肉を貪り、飽食して爆裂し、血肉を灰燼に帰してゆく。
そのあとに残るのは燃え残った骨、焼身になりきらずに済んだ大小の武器、そして隠匿されていた宝箱。
おお、と残ったものを見れば、晒しで抑えられた胸元を揺らし、喜色をあらわにして刀を収める。
使えそうなものは拾って陰に突っ込み、宝箱はこじ開けてその中身に一喜一憂する。
少なくとも数日暮らせそうな換金源ができたとなれば、地の底で修業に打ち込む益もあろう――。
ご案内:「無名遺跡」からキョウカさんが去りました。