2023/04/09 のログ
ご案内:「無名遺跡」からベルさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にキョウカさんが現れました。
キョウカ > ――地底とやらはじめじめしている癖に、妙に落ち着く。

最低限の生活費を稼がなければならない時の選択肢、つまりは暇潰しの幅はまだ多くない。
この国、この土地に来てまだ長くないからということもあるが、詰まる所修業の場というものを求めているからだ。
世渡り上手な先達などは、有力者のお抱えになる、取り立てられて身を立てる――らしい?
疑問符がついてしまうのは、実体験を踏まえた経験者という知己などが無いからだ。
ともあれ、自分の身でそれは望むまい。頭の上で疼くように震える双角は、それこそ切っても切り離せない。

だから、嗚呼。戦うというのは。武を磨くというのは。逃避にも似て否応ないほどにさえ打ち込めるのだ。
剣を振るえば炎が上がる。火花が散る。
刹那の間に産まれて飛び散り、砕けてはらはらと舞う火の粉に照らされる口元はきっと、嗤っていたことであろう。

「まだまだ足りぬでござるなぁ。もっともっと、寄越してみよ……!!」

そんな声が響くのは地の底。どれほど深くかは分からなくとも、日が当たるには深くを掘り進めなければなるまい。
いわゆる名もなき遺跡の一つ。
最近発見された侵入口から単身踏み込み、踏み抜いた落とし穴の底の奈落には“魔物の部屋”と俗称される空間があった。
単独行動を旨とする冒険者、探索者であれば侵入したくない外れスポットである。
木っ端のような雑魚から、歯ごたえのある個体等々、有象無象が詰め込まれたような場所。
其処に放り込まれた女は袖口や周囲の闇を門とし、抜き放った得物や腰の刀を振り回し、吼える。

白刃を伝い、切先に灯す炎は赤く。振り捨てる、切り捨てるたびに飛び散るものもまた紅い。

力任せでもあり。其れでありながら刃筋が立った一振りは都度敵を割く。
そしてその担い手は今いる場所に振り下ろされる双牙を躱しつつ、踊るように次の餌食を選ぶ。