2023/04/08 のログ
ご案内:「無名遺跡」にベルさんが現れました。
■ベル > ダンジョン探索中の冒険者相手の配達採取依頼を完遂し、階層を降ってきた分だけ昇る帰路。
当然地図を確認しながら移動をしてきたのだが、突然目の前に、あるはずの無い帰路が現れる。
首を傾げながら後方を確認し、少しばかり引き返して見ると……
今、自分が地図に記されていない場所に居ることが判明した。
しかし、動揺こそすれど我を失うことはない。
ダンジョンで行動していると、こういった事象が起こることは決して珍しいとも言えなかった。
冒険者がこぞって訪れるような場所にはありがちな、常識の埒外の現象──
その現象に際して、いかにリカバリーするかが力量というものだろう。
そう考えて、位置から地図を作り直すくらいの気概で通路を歩き出し。
マッパー兼シーフ担当の冒険者でもある己には、ノウハウがある。
ご案内:「無名遺跡」からベルさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にタマモさんが現れました。
■タマモ > 「………」
無名遺跡、九頭龍山脈にて、いくつも点在するもの。
内一つの遺跡内、それなりに奥深くか、その辺りに少女の姿はあった。
場に似合わぬ、何ら備えと言える装備でない、異国風の着物姿。
ミレー族らしき、狐を模した耳だが、一風変わった複数の尻尾。
別に日除けとしても、雨避けとしても不要だが、手にした唐傘は閉じられ、その左手に収まっている。
静かに佇み、見詰める先は、分岐された通路。
左には、少し進んだ先に扉が見え。
真ん中には、奥深くに続く、更なる通路か。
右には、少し進んだ先に曲がり角、その先は分からない。
ちなみに、少女に背後には、いくつかの発動済みの罠が見えていた。
今回の遺跡、点々と罠が仕掛けられたところを見るに。
まだ誰も入った事がないとか、発動した罠が自然に戻るタイプなのか、そのどちらからしい。
前者であれば、後から来た者にとって、楽な遺跡となるだろうが。
しかし、先に進めば、何らかの期待が出来る。
が、後者であれば、先に進んでも、何ら期待の出来ない遺跡となるのだが…さてはて。
■タマモ > 左の通路を見て、真ん中の通路を見て、右の通路を見る。
とん、とん、と唐傘を軽く肩を叩くように当て。
しかし、その歩みは止めていた。
「こうして、何度もこうした場に来ておるが…
いつも思うのは、あれじゃのぅ。
…罠を動かさせず進む、何と言ったか…その手の者達は、便利だと思い知らされるものじゃ」
ぽつりと呟きを零し、頷き一つ、腕を組む。
足を止めている理由は、分岐する道を決めかねているから。
呟きの内容は、罠を発見、解除する盗賊系の存在を指しているのだろう。
実際、少女は危険に対する直感、強引な力押しで進んでいる。
大体の罠は回避で済み、一部の罠は、何らかの力で押し潰されているのだ。
少女からすれば、これはこれで面白いのだが。
時に、正面からぶつかり合う、そんな楽しみもしたくなるもの。
先に待ち受けるものが、先を守る番人とか。
己より先に進んでおり、その先に待つ宝を奪い合う存在とか。
後はあれだ、遊べそうな相手とか。
あってくれると良いな、とは思うが、期待は禁物。
■タマモ > 「よし、やはり、こうした時は、これに限る」
もう一つ、うむ、と頷けば。
組んでいた腕を解き、手にしていた唐傘を、とん、と分岐点の中心に立てる。
そして、バランスの良い位置を見出せば、ぱっと手を離すのだ。
手が離れれば、支えを失い、唐傘はゆらゆらと揺れ始め。
…ぱたん、と倒れるのは、当然の事だが。
少女が見詰めるのは、その倒れた方向。
要するに、唐傘が倒れた方向で、進む先を決める、との方法を取ったのだ。
【倒れる方向、123が左、456が中、789が右、0が後ろ】 [1d10→2=2]
■タマモ > じっと見ていれば、唐傘は、斜め左へと倒れる。
つまりは、左へ進めと行っているのだ。
「よし、あの扉じゃな?」
そう、左には、少し進んだ先に扉があった。
倒れた唐傘を、ひょいと拾い上げれば。
ずんずんと少女は突き進み、一気に扉の前に。
その扉へと、両手を添えれば…
すぱぁんっ!と、豪快に開け広げるのだった。
え?罠?先も言った通り、何かあれば直感が働く。
どうとでも、なるものだろう…きっと、多分。
ご案内:「無名遺跡」にプレストさんが現れました。
■プレスト > 少女の直感が働かなかった理由は簡単だ。
この部屋、既に罠が発動しており。その罠に豪快に掛かっている男がいたためだった。
何故か男なのに触手に囚われてしまっているという奇妙な状況。なんか命の危険よりも触手も捕まった方も困ったような奇妙な空間が目の前に広がっていた。
「いやん。」
気色悪い声とはこの事か。
万歳をする様に両手が触手に捕えられ、触手その物が肌をまさぐろうとしては嫌がる様なそんな状況で上げた声だった。
体の大半が露出しており、身に付けていた革の装備品は溶かされている。足元に転がっていたのは武器と、宝箱がある。
宝箱のトラップに引っかかったか、それとも解除に失敗したのか。
■タマモ > 扉を開き、目の前に広がった光景。
うん、なるほど、己に危険はないようだ。
まず思ったのは、そんな考えだった。
こうした光景、普通に考えれば、少女なり女性なりが、捕らわれている、そんな事が多い。
しかし、今回の被害者は…
…だが、残念な事に、やって来た相手も悪かった。
「おぉ…これはこれは、なかなかの見物じゃ。
………?…うん…?」
扉を開いた、その場で足を止め。
触手の罠に掛かった男に対し、じーっと眺めているのだ。
その発言から、明らかに、これは目の保養だ、とか言わんばかりのもの。
己からすれば、こうした状況、男であれ女であれ、楽しめてしまうのだった。
こうした罠は、大体が、命を左右するものではない。
事が終わるまで、のんびり眺めているのも手だ。
そう思っているのだが、ふと、その相手に覚えがあるのに気付く。
一歩二歩、罠の反応しない距離を確かめ、近付いてから。
かくん?と首を傾げ、改めて、男を見遣る。
そうされる男からすれば、この少女をどう思うのか。
その辺りは、相手次第なのだろう。
■プレスト > 「いや見物じゃねぇけど助けてくれよ!?同じ冒険………。
……あれ、タマモ?」
注意深く歩む少女の足元、よく見ると足元のレンガが1つ窪んでいる。
大方宝箱に目が眩み、猪突猛進で突っ込んだ結果が伺える。他のレンガは窪む様な様子もなく、本当にただの罠として天井から触手が降りて来たのだろう。
少女が注意深く進んでいれば、この部屋の罠がそれ1個しかない事が知れる筈。
「いやこういう罠ってさぁ!普通逆だろ!?タマモとかこう、可愛い子とかキレイな子とか捕まってるもんじゃねぇの……?」
男の方は逆に入室者を見た時に気が付いた。唐傘という珍しい装備。子供の様で肉体はそうではない少女といえばそうは多くないのがこの国。
助けを求めるかちょっと思案したのはそう。色々ヤったからなー、反撃とかされないかなー等と保身に走った思考があった為だった。
「取り敢えず助けてクダサイ」
少し時間を置いてから見遣ってきた相手にかくん、と首だけを下げてお辞儀をするのだった。
上半身は少なくとも命乞いというか大人しくしている。下半身はさておき。助けるも助けないも相手次第だが、よくよく見るとこの触手、先端に目がついていて明らかにタマモの方を捕まえたかったという様な落胆した目の伏せ方をしていた。
「宝箱の中身とか、落ちてた宝石みたいなのとかと交換!交換でどうだ!」
見物、という言葉にちょっとだけ危機感。そういえばこの少女色々な事の経験値があるので自分の貞操と言う物も危ないかもしれない。
交換条件はあまり興味をひけないかもしれないが、ほんの少しだけ男の身体から漂うのは先日までは感じられなかった神聖『だった』存在の気配と言うか残滓。
それを感じてどうなるかはまた相手次第という所
■タマモ > 救いを求める男の声だが、少女は明らかに、えー?とか、そんな感じの表情。
だが、己の名を呼ばれた事で、やはり知人だったか、と理解する。
…まぁ、相手の名前がすぐ出ないのは、ご愛嬌だ。
男を眺め、そして、視線を軽く下げる。
もう少しすれば、触手に嬲り者にされる男、と言う状況になるのだが。
そこに、大した危機感は感じられない。
足元を見れば、レンガの窪み、宝箱はすぐに視界に入る。
そこで、事の流れの大体は理解出来た。
理解出来たからと、素直に助けるかどうかは…この少女だ、悩ませてくれるところだが。
「ふむ…そうやもしれんが、差別はいかんぞ?
男子も女子も、等しく扱われる、それが正しい世の流れじゃろう。
罠に掛かれば、素直に最後まで、美味しく頂かれるか…
………やれやれ、仕方無いのぅ」
もっともな意見だが、残念、少女は男でさえ、こうした状況下は可愛らしいと思ってしまっている。
男の意見に、賛同半分、と言った感じの言葉を返ししているも。
改めての救いの言葉と、お辞儀と、交換条件。
…後は、おまけで触手の反応。
それ等を見遣った後、やれやれ、と肩を竦めながら、そう答え。
もう一歩、踏み出せば。
軽く、男へと向かい、片手を翳すように伸ばし。
ぐっ、と何かを握るような動作。
次の瞬間、触手に捕らわれていた男の姿は掻き消え、ぽんっ、と己の手元に。
そのまま、半裸状態?となった男を、お姫様抱っこして救ってやるのだ。
「ほれ、これで良いんじゃろう?」
獲物を失った触手は、戻って行くのかどうか。
とりあえず、とん、と床を蹴り、扉の前まで。
一旦の安全を得た後、そう抱えた男へと伝える。
男女逆の方が絵になる?そんな常識、取っ払ってしまえ。
■プレスト > 「なんでそんな表情になんの!?明らかに悩んでたよな!?」
こう、表情は言葉よりも雄弁に少女の内心を物語っていた。そう、少女は捕食者の目であり、保護者の目であり、生殺与奪とかなんかそんな難しい言葉の支配者でもあった。
触手の動きに命の危険は感じないが、気色悪い物は気色悪い。そう、女のコを捕らえるべきだった触手は男の素肌を嫌々触っているので、なんか奇妙なむず痒い感覚を味わっていた。
知りたくなかった感触。正に初体験。
「等しく扱われたら目の前で良い年した男が泣きわめくぞ?
地獄のような光景だぞ?いいのか?わんわん泣きわめいたり、こう、なんか気色悪いアレの出し方になるんだぞ……っと。」
相手の言葉に抗弁するように切札にならない切札をちらつかせていた所、すっと触手の感触が消えた。気が付くと少女の腕の中にすっぽり収まり、御姫様抱っこの様に保護されている状況だった。
触手は何故かお辞儀をする様に少女にぺこ、と先端を下げた後、天上にしゅるしゅると音を立てて戻っていく。
よくよく見ると天井に小さな穴があって、そこが塒の様だ。其処に納まっていくとパタンと言う音と共に天井の蓋が閉じられる。
と、同時に少女が通り過ぎた窪んでいたレンガがガコン、と音を立てて戻った様だ。
「お、おぉぉ。眼福。じゃねぇ、いや眼福だけど。
助かったぁ~……。さっきまでの地獄と比べたら今の天国のような光景だわ。」
男は一応大人の肉体だけに、少女の腕で御姫様抱っこをされると目の前には可愛らしい顔立ちの少女と、こう、盛り上がった肉の山が見えてしまう。
そりゃ天国でしかない。ほっとしたような声。とはいえ相手は恩人なのだ。いきなり失礼な事も出来ない。
なるべく相手の腕の中で動かない様にしつつ、ぽけっとを弄って取り出してきたのは真珠を連ねた様なブローチと、装飾だけは豪華そうな短剣の2つ。
観察したり鑑定するならもう少し詳しい情報も出るだろう。
「相変わらず、すげぇなぁ……俺、それなりに重くねぇ?」
■タマモ > 「………きっと、気のせいじゃ」
まず、最初の男の叫びに、すっ、と視線が逸れる。
きっと、そんな心の内を、この少女に語れば。
男女等しく、体験する事は大事じゃぞ?なんて、答えが返ってくるだろう。
そんな性格なのだ、この少女は。
そして、次の叫びには。
「………」
少女は、沈黙で返した。
ただ、その表情を見ると、こう思うだろう。
それはそれで、悪く無い…きっと、そんな考えを浮かべているだろう、そんな表情だ、と。
ともあれ、長々といじめるのは可哀想か、そう気紛れに思ったか。
男は、気付けば助けられていた。
それと同時に、罠の仕組みも、目の前の動きで感じられ。
最後に、戻って行った触手へと、ぐっ、と親指を立てて応えてやるのだった。
「妾としては、あの流れでも、妾にとっては眼福だったんじゃがなぁ…
まぁ、お主の気持ちは分からんでもないし、良かろう」
そして、続けて向けられる言葉では。
男にとっては、だが、無慈悲な側面がありつつも、その気持ちの理解のありようを示しながらも。
向けられる視線に、まだ余裕があったならば、もう少し見ていた方が良かったか…とかどうとか、わざと呟いてみるのだ。
「あー…素で持っておる訳でないしな、別に、そう重くは感じんぞ?」
とりあえず、お返しは後で良い、と。
取り出した品々は一度戻させ、よいせ、と男をやっと下ろしてやる。
■プレスト > その日1つの種族を越えた友情が生まれた。触手と狐耳少女と言う種族の壁を越えた友情は語り継…がれなくていい。
「ウソデス タスケテイタダイテ アリガトウ」
その呟き。もう少し見ていた方が良かったか、というのは効果覿面だった。沈黙で返していた事もあり、効果は特別に強く働いたようだ。
力の差というより、立場の差とこういう状況なら上下関係ははっきりさせておかないと自分が危うい。
そういう事だけは自然と身に付けている詐欺師と言うかペテン師だ。
降ろしてもらうと、片方のブーツは完全に使い物にならないのでバランス感覚が良くない。
両方素足になった方が立ちやすいのか、無事だったブーツも脱いで放り投げるのだった。
「魔法?とかなのか。まぁこういう理解出来ない能力があるからよくわからんけど、タマモにとって重くないなら良かったか。
んで、タマモは何でここに?」
戻された宝物はありがたく無事だったバックパックに仕舞い込む。
ウェストポーチ等はダメになっていたので食料等もあまり余裕はない状況。もっとも、さっきの2品を売れば十分にプラスの収支になるだろう。
ほっとしたように吐息をつくと、ふとした疑問を素直に向けた。どうしても立つと視線の関係で少女の顔と共に胸の谷間に視線が吸い込まれるのは仕方ない。そう、これは必然なのだから。
「この部屋はさっきのトラップだけ見たいで、他は罠も無さそうだし茶でも飲むか?なんか良い茶を貰ったんでな。」
何時もなら媚薬だとかそう言う物を混ぜる男も、今回ばかりは普通の茶を差し出すつもりの様だった。
迷宮の奥に進むつもりなら少女についていく方が安全かもしれないし、安全じゃないかもしれない。
だから話題を切り出し、なるべく自然にパーティーを組む方が良いかと思うに至る。
なお、何故このペテン師が冒険者が本職でもないのにここにいて、1人だったのかは聞かれると涙目で答えが返ってくるかもしれない
■タマモ > 動物であれば、意思疎通は容易いもの、なのだが。
それが触手にまで通用するか、は疑問なところである。
…出来ていたら出来ていたで、面白そうだ。
少女であれば、間違いなく、そう言うだろう。
「………ちっ」
カタコトな、素直そうな男の感謝の言葉。
だが、さり気無く、聞こえないような舌打ちが、男には聞こえたかもしれない。
まだ続けば、また投げ込んで楽しもうとする気満々だったのが、きっと感じられるのか。
そう考えれば、男の対応は正しかった、と言えるのだろう。
「あー…妾は魔法に疎い、ちと違うが、それに似寄ったもの、と考えておけば良い。
妾はいつもの通りじゃのぅ、何かあれば、と思い適当に来ただけじゃ」
色々と失ったらしいが、とりあえず、戻り準備を整えている男。
それを横で見ながら、そう答えつつ、ひらひらと手を振ってみせる。
少女からすれば、気紛れ行動はいつもの事だ。
ちなみに、男の視線には気付いているが、何も言わず、である。
己もまた、そうした事の理解が深いから、であるが。
「ほほぅ、茶か…茶菓子があれば、言う事なしじゃが。
その辺り、贅沢は言えまい、頂くとしよう」
少女の事だ、そうしようと、そうしまいと、飲む可能性はあるのだが。
素直に出すのであれば、素直に頂くのみである。
「して、お主の方こそ、どうしたんじゃ?
一人で来るような場所、でもなさそうとあれば…置いてかれたか、迷ったか、どちらかじゃろうなぁ。
どうせ妾も一人、誰か他に居るなら、連れて行くか、連れて戻るかしてやろう。
どうしても、一人で、ってなら別じゃがな?」
そうした中、ふと己もまた、男へと問うてみる。
それに対する答えは、別にどちらでも良いのだから、どうするかは男次第となる訳だが。
その答え次第で、己もどうするか、と言うのもあるのだ。
…まぁ、別行動となる場合、普通に巡るだけ巡って帰る予定。
■プレスト > 「茶菓子は流石にゴザイマセン。
んじゃ、ちょっと待ってくれな。お茶、お茶っと。」
バックパックを一度降ろして荷ほどきをすると、奥から出てくるのは茶葉とお湯入りの瓶といった一般的な物。
そして自分の方に話を振られるとピタッと動きが止まる。振り絞る様な、悲しみを込めた声で続きが紡がれる。
地下迷宮よりもどんよりとした雰囲気が流れるのは言うまでもない。
「あー、いやな?女冒険者を引っ掛けたまではよかったんだが、シーフだって嘘ついたんだわ。
魔法使えねぇし、腕力ねぇし。となると騙れる職業ってそれ系しかねぇだろ?
で、罠解除しくじって呆れられて捨てられて今に至るってな……くそ、お金とか諸々手に入るチャンスだったんだがなぁ。」
等と、涙なしでは語れない痛々しい話が続く。
いや、痛いのは男の性格ではあるが。この後どの様な話の流れになるかは、当人たちしか知らない話。
ご案内:「無名遺跡」からプレストさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からタマモさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
■ドラゴン・ジーン > 昼夜の関係も無い、閉ざされた無名遺跡の底にてそれは潜んでいる。朗々と照らし付けて来るのは何者かが敷設した魔力照明の灯火だ。延々とひた続く回廊の彼処において悍ましい怪物達が跋扈しているのをその気配から感じとる事が出来るだろう。焼き締めた魔法煉瓦が壁や床、それに天井までをも埋め尽くし、そこに補強として建てられた梁には入り込んだ蜘蛛のかけた白い巣がカーテンのように下がっている。
その廊下に面した一室の中にそれは潜んでいた。何の変哲もないベッドが幾つかに食料や水の入った棚。椅子やテーブルが設けられ、良くみれば竈らしきものまで備わっている小部屋だ。入口にたてられた木製の門戸に刻み付けられた魔法陣はまだ活性化しており、白々と放たれる発光は即ち邪な者達を寄せ付けない結界の一種だ。この遺跡に元々在ったものではなく、遺跡を攻略する冒険者が一時的なセーフルームを拵える為にかけた魔術の賜物となる。
「………」
今も入口周囲から壁や床にまでぎちぎちに走った魔法文字の放つ力によって、その御蔭で此処には怪物達も容易には立ち入れないという訳だ。しかしながらにおいて封鎖されているのは入口の門戸だけであって、それ以外の場所からならば容易に此処に忍び込む事も可能であった。
即ちにおいては敷き詰められた煉瓦のモルタルの欠けた僅かな隙間を経由してスライムのような不定形ならば此処に入り込める。
元々は竜の形を形成しているその怪物は今は黒いコールタールのような形状として、今は眠る者の居ないベッド下の物陰に平らに伏せるようにして潜伏している。
休眠状態ではないその証に、時折に頭部から伸びている触角が炯々と光を湛え、うねるようにして周囲の暗がりを照らし出す。
ご案内:「無名遺跡」からドラゴン・ジーンさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にベルさんが現れました。
■ベル > ダンジョン探索中の冒険者相手の配達採取依頼を完遂し、階層を降ってきた分だけ昇る帰路。
当然地図を確認しながら移動をしてきたのだが、突然目の前に、あるはずの無い帰路が現れる。
首を傾げながら後方を確認し、少しばかり引き返して見ると……
今、自分が地図に記されていない場所に居ることが判明した。
しかし、動揺こそすれど我を失うことはない。
ダンジョンで行動していると、こういった事象が起こることは決して珍しいとも言えなかった。
冒険者がこぞって訪れるような場所にはありがちな、常識の埒外の現象──
その現象に際して、いかにリカバリーするかが力量というものだろう。
そう考えて、位置から地図を作り直すくらいの気概で通路を歩き出し。
マッパー兼シーフ担当の冒険者でもある己には、ノウハウがある。