2021/09/16 のログ
ご案内:「無名遺跡」にアルシェさんが現れました。
アルシェ > 中層まで降りられた前回の探索は、けれども収穫という意味ではあまり実入りは良くなかった。
それゆえにあまり時間を置かずして、こうして再度の探索に繰り出した。
今回は先に進むことよりも、手堅く探索重視。
先輩からは地図にない道は危険だと教えられているから、安易にそちらに脚を踏み入れることはしない。
とはいえ、その地図も全てが網羅されているわけではないから、その途切れた先を目指すつもりで。

「―――こんにちは?」

そうやって、ひとり遺跡の奥で地図を片手に歩いていると、奥に人影が見える。
いつでも武器を取り出せるように腰を落としながらも、先にこちらから声を掛ける。
敵意はないという意思表示。
遭遇することは少ないながらも、遺跡の中で同業者に出くわすことはなくはない。
ただ今日の相手は、まるで戦場か王宮前にいるかのような全身鎧で。
表情も窺えないだけに、人間なのかさえ怪しく思えてしまう。
そんな訝しさが、語尾にも出てしまっており。

グライド > (まぁ、いずれにしても、だ。
兎にも角にも持って帰って仕舞えば問題あるまい
最悪破壊して持って帰っても文句は言われないのだから、その点は気楽だ
腕輪を指に引っかけ、くるくると回しながら手遊びしつつ
さて、元来た道を早々に帰ろうとした所で――不意に。)

「――――――……おん? ……おっと、こんなトコでお仲間たあ、珍しいな。」

(掛けられた声音は、女の其れ
人間か、或いは魔物か、どちらも在り得る故に、警戒混じりに振り返るのは
きっと、相手も己も同じ。 冒険者や傭兵であれば当然の反応だろう。
視線の先、此方に向けて構えている一人を見かければ、ゆっくりと其方を振り返りつつ
害意は無い事示す様に、一声気楽に返した、が。

――其の刹那、指で回していた腕輪が、鈍く光った。
仕舞った、と、急いで腕輪を握り潰そうと掴もうとした、が
其れより早く、指先からすり抜ける様にして浮き上がった腕輪が
近づいて来た娘に向かって、途轍もない速度で飛んで行く。)

「――――――……落とせ!」

(説明の何もかもを後回しに、そう叫んだが、果たして間に合うか
真っ直ぐな軌道は、狙いやすい筈では在る、が、短剣では少々狙い辛かろう
されど、もし素手や足で迎撃しようとするものならば、其れが最も悪手と為る

――曰く付きの、古代の魔法具、別名、堕落の腕輪。
装着した者へ、恐らくは一時的に、では在るが、淫魔の性質を付与する其れは
依頼者曰く――女が近づくと、自発的に、装着されに行くのだ、と)。

アルシェ > 相手の装備から、仮に襲ってくるとしたら、その大盾を用いての体当たりだろうと当たりを付けていた。
何せ他に武器らしい武器が見当たらない。
仮に何か隠し持っていたとしても、フルプレートの騎士が暗器など飛ばしてくるとは思いもしない。

「―――へ? って、きゃっ!?」

暗がりの中で何かが飛んできたのは認識できた。
同時に男の声が響くのも。
けれど反応するには、そのスピードがあまりに速い。

防御するなら短刀が一番なのだけれど、刃を引き抜いてから迎撃していたのでは間に合わない。
一歩踏み込んで半身になると、紙一重で避けようとする。
それがただの投擲武器ならば、その対応で間違いはなかっただろう。
けれど、魔法具の類で追尾―――自動装備などという一風変わった機能を有しているなどとは思いも寄らず。
少女の動きに合わせて軌道を曲げたそれが手首へと納まり。

「え? ちゃんと避けたのに……何これ?」

手首を振り回して、そこに嵌る鈍く光る腕輪を払い落とそうとする。
そんなことでは当然外れるはずもないわけで、左手で掴んで引っ張ってみるも、どうやって嵌ったのか抜ける様子はなく。

グライド > (暗器では無いし、攻撃でも無い――と言った所で、信用はされまい
己も其の発動は初めてみる光景であり、自動装着なぞと言う精度の高さに驚きもしたが
問題は其処では無い、可也距離自体はあったはずだが、腕輪の速度が其れだけ早かったのだろう
回避と言う、恐らく最も相性が悪い選択をした娘に、装着された腕輪
一度嵌れば、如何にも簡単に破壊できそうにも見える細身のソレは
けれど、外れる様子も、たわむ様子も見せる事無く

―――次の瞬間、腕輪の光が強まる。
手首から、ゆっくりと娘の身に、腕輪から放たれる魔力が流れ込み
ゆっくりと全身に浸透して行くごとに、身体の感覚に変質を起こす
付与される淫魔の性質――即ち、淫蕩、発情、強欲――
上書きする訳でも、娘自身の自我を塗り替える訳でも無い
娘が娘である儘に、ただ、性質だけを植え付けて行くモノ。)

「っだぁ、間が悪いったりゃありゃしねぇ…!」

(フルプレートの音を響かせながら、近くまで辿り着く男が一人
その様子を伺いながら、同じ様に腕輪を外させようと目論むだろうが、きっと無意味だろう
浸食する淫魔の性質が、娘の深部にまで浸透するごとに、きっと
其の身に、そして、其の胎に。 熱が、そして疼きが。 炎を拡げて行く事と為るか)。

アルシェ > ドクン、と心臓が跳ねるように拍動する。
腕輪の鈍い光があたりを照らすほどに強くなる。
どことなく落ち着かない、そんな妖しさを秘めた光に、少女の動きが止まり。

「え…? やだ……何か、染み込んで………んっ、やぁ……」

右腕の先から、冷たいような、熱いような、もどかしい何かが広がってくる。
意識して自分を保っていないと、あっという間に押し流されてしまいそうな。
そんな不安を抱いたのも、わずかの間だけで。

「はぁ……どうなって……んっ、ふぁ………」

得体の知れない不安はすぐになくなったものの、代わりに空腹感にも似た疼きが残る。
それがどういうものなのか、知ってはいるのだけれど、理解が追い付かない。
切なく疼く身体へと自らの指を這わせて宥めながら、潤んだ瞳で近寄ってきた男を見上げ。

「ちょっと……我慢、できない……です……」

なまじ知っているからこそ抗えない。
羞恥に顔を染めながら、娼婦のような艶めかしい仕草で、男を暗がりの奥へと誘い―――

ご案内:「無名遺跡」からアルシェさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からグライドさんが去りました。