2020/12/18 のログ
ご案内:「無名遺跡」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「きゃああぁぁあぁー!!」

 悲鳴が響く地下幾層にも重なった遺跡の上層階のとある廊下。

 石造りの壁に床、勿論天井。一見なんの変哲もなくしばらく真っ直ぐ一直線に続く回廊をてくてくと一人探索していた冒険者。
 ヒーラーの立場でソロとは珍しい部類だが、上層階の雑魚モンスターくらいならばどうにか捌ける為、あまり下層には降りないつもりで安全圏の狩りだった。

 今は2階層辺りの、熟練の冒険者だと入口付近と云われてしまうような浅い場所。光る苔が作為的にか自然にかところどころに群生していて日差しも入らないのにほんのり明るい、長い長い回廊を往く途中――

「!? え?! あっ、あ、あー!!」

 冒 険 者 が 穴 に 落 ち ま し た 

 仕掛けられていた罠を見落として、一定の歩幅で床を踏みしめた瞬間。ぱかっと大きく口を開けて開き、床だった場所は落とし穴として起動し、一人の冒険者を叩き落としたのであった――

ティアフェル >  ずささささーっと成す術なく転がり落ちては目を回して伸び。

「~~~~~~……」

 しばし、しーんと水を打ったような静寂が支配した。

 不幸中の幸いだったのが、まだ上層であるため罠の仕様が甘く落とし穴も底に槍などが突き立っていたり、触手や、毒霧が発生していないところだろうか。
 お陰様でのんびり気絶することが出来ていたが。

 いつまでも死んではおれない。やがて、ぽとん、とどこからか落ちてきた水滴が額に落ちて、ぴくり、閉じられていた睫毛が震える。

「ん……ぅ……、っぃたたたた……」

 緩慢に意識を取り戻すと、薄ぼんやり滲んで映る穴の縁と冷たげな石の天井。同時に頭を打ち付けたためずきずきと響く痛みに唸り。
 少しの間、そのまま頭を抱えて身体を折り曲げていたが、徐々に気を取り直すとそっと上半身を起こし。

「ぁ、あー……あそこ、から落ちたのか……。不覚。罠スルーしてしまった……やっぱレンジャースキルは必須だなー……」

 基本的なトラップ検知と解除はなんとかして覚えたのだが、やはり本職ではないためこうした見落としは発生する。
 っはーと深々溜息を吐き出して、自力で打撲部にスタッフを翳しヒールを施して立ち上がり。

「登れる、かしらー……?」

 廊下に開いた穴の上をどこかぽかんと見上げて3,4メートルくらいの深さと推定すると眉根を寄せ。

ご案内:「無名遺跡」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 一方その頃。
同遺跡中層で、遺跡内のモンスターの生態を確認していた男。
マンドラゴやグリーン・ウィップなどの植物系を中心に、時折大ネズミなどを倒しつつ、内部をクリアリング。
幸い、特に異常はなさそうだったので、

「んー、まあこんなもんかな。
そろそろお昼だし、ご飯でも食べつつ……っ!?」

などと考えていると、隣の部屋から大きな物音。
何かが転がり落ちた音――何だろうかと思い、足音と気配を消しながらそちらの部屋を覗くと、見慣れた少女の姿。
どうやら、気絶してから起き上がったようで、上をぽかんと見上げている。

「(……あー、もしかして)」

それを見て、大体事情を察した男。
や、と手を上げて挨拶してみる。

「やあ、ティアちゃん。災難だったね、上から落ちたんだよね?」

ティアフェル > 「………は?」

 IN・落とし穴な女。這い上がれそうにはないなー……どうしようかー。
 などと上を見上げて首を捻っていたが。

 不意にどこかから声がした。上ではない? 落とし穴なのに横穴空いてたらあんま意味なくね?ときょとんとして声の発生源を辿り。
 そのどこか呑気な口調が知り合いらしいと悟ると。

「クレスさん……?」

 変なところで会う……むしろ変なところでしか会わない人NO1

クレス・ローベルク > 「……ん?うん、そうそう。クレスさん」

と気楽に言う男。
変なところでしか会わない人No1の異名を人知れず獲得している男は、少女を見ると微笑んで。

「まさか、こんなところで会うとは奇遇だね……。
こっちは依頼で来たんだけど、君も冒険者関係の仕事かな?」

まさか、ほかに冒険者が来るとは思わなかったから、上の落とし穴、解除してなかったんだよねえ……と苦笑いで頬を掻いて。
しかし、それはすぐに力強いものに変わる。
既に、ある程度マッピングされた地図を広げ、上層への階段を確認すると、

「此処からなら、すぐに上層に戻れる筈だ。ついてくるといい」

などと言って、彼女を先導するように前を歩いて――数分後。
「あれえ?」と男は首を捻る。
この地図の先には階段があるはずなのだが、目の前には壁しかなく。

「うーん……困ったな。地図を間違えてたのか……?」

と、男が地図を上下逆にしてみたり、矯めつ眇めつしたりしている最中。
まるでその目を盗むように、周囲の壁がまるで生き物のように蠢き、新しい通路を作ったり行き止まりを作ったりしている。
音もなく行われているため、男は気づいていないが……。

ティアフェル >  やっぱり、友人剣闘士であった。その注射器はモンスター相手にも使うんかい…とこんなところでも手放していない様子なので、もはやないと落ち着かない状態に陥ってるんじゃと穿ちながら彼の腰元に一度視線をやって戻し。

「なるほど……あなたも剣闘士やら冒険者やら……相変わらず忙しい男ねえ……。
 ヒーラーとして復活したのでひゃっはーしながらフィールドワークに没頭しているところよ!
 お外さいこー! 腹立つくらい寒いけど…!!」

 ここにいるってことは察してよ!と自意識過剰かつ主張の激しい女は胸を張ってのたまいて。それから、地下なのでまだ染み入るような寒さも多少マシな環境にも関わらずちょっとした文句。
 どうせ解除したところで罠はすぐに復活するからなーと苦笑いの表情にアホ毛を振って。

「お、さっすがだねー……この位のダンジョンお手の物ですかー」

 ついてくるように促されて、少々茶化しながらも合いの手を入れてその後ろを歩いて行ったが。

「えー……迷ったのー…? どーするの? エロい罠みっけたらかかってよ。わたしヤだからね」

 先に進んでいる限り気づかない罠があれば率先して掛かってしまうポジションの相手。身勝手な発言をその背に送っては、周囲をきょろきょろと見回して。

「……なんか、道が変わってない……? とりま、基本に立ち返り印をつけて……検証」

 なんだか同じ壁を何度も見ているような、先に進んでいるのに戻っているような気になって、ギ…と手近な壁にナイフを抜いて×と印を刻んで。

クレス・ローベルク > 「うん、ヒーラーとして復活したのは前に噂で聞いた。
おめでとうとは言わせてもらうけど、ひゃっはーしながらやる事がフィールドワークとは……施療術者[ヒーラー]というより、遺跡潜り[パスファインダー]みたいな事するね」

等とからかい半分で言っていた時期が懐かしい。
何かエロイ罠見つけたらかかってよとか言い出す彼女に、そういう罠を見つけたらかかる寸前まで行く様に誘導してやろうと心に決めつつ地図を見ていたが。

「ん……?」

彼女が声をかけたのに気付いて、顔を上げる。
上げた先、既にその手はナイフで傷をつけていた。
角石で積み上げられた壁にできた傷は、しかしその上にあぶくが沸いて……瞬く間に消えてしまった。

「……生きている迷宮[リビング・ダンジョン]」

と、ぽつりと呟く。
眉間を抑えて、「あー……なんといえばいいか」と言葉を探して。

「どうやら、あの落とし穴は獲物を感知するための感覚器だったみたいだ。人間や動物でいう舌みたいなもんかな。
それが作動したことで、獲物を閉じ込めて吸収するモードに変わったっぽい」

つまり、此処からがこのダンジョンの真の姿という事になる。
肉体か、それとも魔力か、或いはそれ以外か……閉じ込めた獲物の何を"吸収"するかは解らないが。
一つ言えるのは、この生きているダンジョンを出し抜くか、さもなくば満腹にするまでは出られないという事になる。

「さて、どうするか……」

と、珍しく真顔で思案に沈む男。
どうやら、状況はそれなりにまずい、らしい。

ティアフェル > 「わたしの噂まで流れてるとは……みんな暇ねえ……。
 ありがとう……なによー、悪い?」

 冒険者なんだからダンジョンくらい潜るでしょと口を尖らせて云い。
 なにかを予感して、もしも、先に進むように云われても無視して背中を押してやろうと心に決める。そしてトラップの餌食になったら微笑んで見守ろう。

「あれ…? なにこれ……
 え? リビ……? え? えぇー!!」

 ぎぎ、と軋んだ音を立ててつけた傷があっという間に消え失せ。そして、どこか遠く向こうでなにかがごり…と重たげな音を響かせてスライドする音が響いた。また、どこかで道が塞がれたらしい。

 目を丸くしていると横から解説が入って、声を上げ。ダンジョン型の食虫植物の胃にでも入った気持ちに陥って冷や汗を滲ませた。

「満、腹に……?」

 思わずその一言に、じっとそちらを見つめる。この人を……一瞬考えかけたが、いや、お前が食われろと云われるのが落ちであるし、いけないわ。お友達を地獄に突き落としちゃそれはいけないわ。とぶんぶんと首を振り、内なる自分との闘い。

 結局、がし、とその腕をつかんで軽く見上げるように視座を置き。

「二次元移動が駄目なら三次元移動よ! さっきの落とし穴を見つけるか天井に穴を空けて上からとか!
 階層によって罠が変わるから――上か下に逃げればいいんじゃないかなっ?」

 ――そんな力技提案。ちなみに穴を空けるのも登るのも――自分じゃできそうにないんだけども。