2020/10/31 のログ
ご案内:「無名遺跡」にさんが現れました。
> 「ょい……しょっ……と。」

そんな掛け声とともに、女は暗い遺跡の床を踏みしめる、その右手にはロープが垂れさがっていて、そのロープは上の方、闇に包まれている。
腰につけているカンテラの光量を大きくして、床を、周囲を軽く光らせて確認をする。此処は袋小路のようで、後ろは無く、前にしか道がない。
願ったりかなったりの状態を確認すれば、ロープを手放す。上の階で杭で固定しているから意図的に誰かが切らなければ落ちることはあるまい。
うんうんと、確認をしてから、布で作られたヘルメットを被り、ふぅん?と軽く鼻を鳴らす。
胸元から一枚の紙を取り出し、カンテラで光を当てながら、その内容を読む。

「とりあえず……ギルドの依頼は。捜索願、と。」

無名遺跡。
様々な冒険者が、過去の遺物や魔法の武器などを求めて入る場所、沢山あるからか、どれも掘りつくされているわけではないようだ。
ただ、その為に遺跡の罠などが多く、危険も大きい、聞けば、魔導機械……だったか、何とかとか思い出せないが、超強力なゴーレムもいるらしい。
冒険者は危険を承知で入るのだが、其処で消息を絶つのも少なくない。
生きているのか死んでいるのか確認のため、ギルドに呼ばれていくという事も、冒険者にはあるのだった。

「生きてれば、良いのにねぇ。」

捜索が早ければ、冒険者が気概があれば、生き残る確率は出てくる。
しかし、一般人だと、大体は死んでいると考えて良いだろう。
しゅるり、と依頼書を胸にしまい込み、たゆんたゆん、と揺れる胸を揺らしながら、女は奥へと、足をふみだ―――さなかった。
とりあえず、シーフとして。罠の確認をする為に、ゆっくりと身を下ろし、地面を、壁を、じっと見やる。

ご案内:「無名遺跡」にチューベローズさんが現れました。
チューベローズ > その匂いの主は遺跡の中に現れた新たな気配に興味を持ちそちらへと向かったため、相手からしたら遺跡の奥から澱んだ空気を上書きするかのような甘い金木犀の花の匂いが漂い始める。

少女が足を踏み出す度に石造りの地面をポクと、軽い音を響かせながら闇の奥、人間離れした目を持つ少女の瞳に映るのは一人の冒険者。
先程まで遊んでいた男とは異なる柔らかそうな女性で自然と少女の表情には笑みが浮かんだ。

> 「………あら。」

香り。甘い、甘い香り。金木犀の花の香りは、青空の下に有って此処に有るような匂いではない。
誰かが香水でつけているという可能性もあるが、其れよりもまずする事ができた。
誰かが近づいている、匂いが来ると言うのであれば。

「シルフィード、おねがぁい。」

甘えるような蕩けた女の声は、精霊に願いを掛けるもので、その願いによって生み出される魔法は、空気の壁だ。
空気が対流を行い始めて、金木犀の匂いを此方に届かないようにするための物、自然の匂いでない時点でそれは冒険者として警戒するべき匂いだった。
遺跡というのは得たいが知れない場所だ、匂いで引き寄せて人を食らう植物の化け物がいないとも限らない。
とろんと蕩けているようなたれ目の、金色の瞳は、闇の方―――袋小路で壁を背にしているがゆえに、その反対側に向けられる。

「だぁれ?」

問いかけを短く掛ける。
戦闘の意志がない物であれば、若しくは、逃げ延びている冒険者であれば、その声に応えるだろう。
言葉に反応し、襲い来るならば、それはモンスターと断じてしまえばいい、意識を刈り取られ、傀儡となった冒険者に襲われる事も想定。

一番面倒なのは―――

様々なケースを思考し、女は、じぃ、と闇夜を見つめて相手の反応を、待つ。

チューベローズ > 少女からしたら別に何か目的があって出している匂いでは無い為、相手が精霊の力によって壁を作ろうとかまわずに、穏やかな笑みを浮かべる。

今まで遊んできた冒険者たちに比べればだいぶ頭も、腕も良い様で、其れもまた少女の興味を惹く。
そして向けられる誰何の言葉。
クスクスコロコロと、闇の奥から少女の笑い声が響く。
その感情はただただ楽しい、これから起こることが楽しみとばかりに。

「ふふ。名前をいったら信じてくれるのかしら?」

カンテラの明かりの領域に先ずはいるのは漆黒のレース地のスカート。
そして程なくしてその全身がうっすらと照らし出される。
歩く度に揺れるスカート、ちらりと見える足元は厚底の可愛らしいブーツに小さな足、腰の辺りは絞られくびれた腰に薄い胸、総じて小さな体と小さな頭。
つぶらな大きな瞳と、長い銀糸の髪の毛が目を誘う様に少女が動く度にふわふわと動く。
その弱弱しい姿は、この遺跡にいるにしては不釣り合いで、強い違和感や異物感を与えるだろう。
本人はそんな事はかまわずに、相手と少し距離を置く様に足を止めると、こてんと、小さな首を傾げてみせ。
精霊の作った空気の壁や、その中心にいる人物へと再度視線を滑らせ。

「お姉様は、誰なのかしら?」

此方を見詰める金色の瞳を少女も見つめながら逆に問いかけた。

> 帰ってくる返答は、からかいの色を滲ませているような、愉悦を感じる声に聞こえる。
こんな場所、危険な場所である無名遺跡にそぐわない声音と楽し気な音色は、逆に不気味にも感じる。

「信じる信じないよりもぉ?会話が出来るかどうかぁ……会話する意思があるかどうかぁの方が大事よねぇ?」

当然、信じることはない。名も知らぬ、闇の中に潜む相手を無条件で善性で、大丈夫だと信じるのは、初心者冒険者ぐらいなものだ。
若しくは、頭の悪い、名ばかりの冒険者とか、自分は無敵だと頭悪く信じ込むようなお馬鹿さんだ。
自分はそういうタイプではない、力こそパワーとかそんな信奉者ではなく、経験と学習を胸に、臆病に生きるシーフだ。
声音に、怯えを含めないのは、未だ、怯える時間ではないから。
力こそパワーな冒険者ではないが、こういう場所では怯えや竦みは致命的だし、それを相手に悟られれば侮られる。
だから、今は怯えず泰然と、カンテラの光に入ってくるその姿を見据える。

「おねーさんはぁ、ほむら。と言うの、冒険者をしているわ。
 ちょーっと依頼があって、この遺跡に入りぃ込んだぁ他の冒険者の生き死にをぉ見に来たのぉ。」

間延びする声は、馬鹿にしているわけではなく素である、と言うのもハーフだから、母国語が二つになり、頑張って覚えたはいいが、間延びした喋り方になってしまっている。
気になるならごめんなさいねぇ、と。
ただし、言葉とは裏腹に女の眼は彼女の事をじっと見て、居る。
服装は高級品であり、一般的な人では手の出ぬようなものだし、立ち居振る舞いは、其れこそ貴族社会に生きる人の様。
幼い肢体、戦闘を好むような風貌でもなく、それこそ、貴族の館の中で、花壇を愛でていてこその美しさ。
誘拐された、なら、此処にいるのは判るけれど、そんな情報は無く、それと同時に、彼女の態度がおかしい。

―――庭にいるかのような、気楽さでしかないのだ――――。

「この遺跡の―――この区域の、守り手か、なにか、かしらぁ?」

たらり、と背筋が寒くなり、問いかけは、固く。