2020/09/22 のログ
ご案内:「無名遺跡」にリチェットさんが現れました。
リチェット > 普段から朝の早い少女が、とりわけ早く起き出して、何やら上機嫌にお弁当を用意する。
そんな姿を見れば普通はデートか何かと思うかもしれない。
けれども、街の城壁を抜けて少女が向かった先は、冒険者の間でも初心者向けと名高い遺跡のひとつ。

少女からしてみれば、日帰りピクニック気分ではあるのだけれど、
いくら踏破された遺跡だとは言っても、危険な魔物が出ないとは限らない。
無謀な駆け出し冒険者であっても、パーティーくらいは組むだろう場所。
そんな、暗くじめついた半ば洞窟じみた遺跡の中を、カンテラ片手に迷いなくまっすぐに歩いていく。

「さすがに宝箱なんていうのは、期待できないだろうけど……」

初心者向けの遺跡で、それを期待するのは酷というもの。
罠の類も大抵は解除済みだろう。むしろ罠があれば、まだ人が立ち入っていない区画ということになる。
そんなわけでほとんど警戒らしい警戒もせずに、先へと進み。

ちなみに、ほぼ真っ直ぐに歩いているだけだから、マッピングも省略。
一応、冒険者ギルドで地図を買ってきたから、どうにかなるだろうというお気楽さで。

ご案内:「無名遺跡」にネメシスさんが現れました。
ネメシス > 少女の歩いた後から聞こえてくる複数の足音。
ネメシス率いる聖バルバロ騎士団の一隊である。
護衛役の兵士数名を引き連れたネメシスは、今日も物見遊山とばかりに遺跡内をうろついていた。

お目当ては遺跡の宝ではなく、遺跡に出入りする冒険者であった。
とりわけ淫蕩で知られるネメシスは好みの冒険者などを見かけては毒牙に掛けている。

遺跡の奥より聞こえる足音から、冒険者か誰かが単身で探索しているであろうことに気付き。
まずは"取り調べ"をせんと、護衛と共に音のした方へと向かうのであった。

ガシャンガシャンと金属の音が少女の元へと近づいてくる。

リチェット > 多少崩れてはいるものの、経過した年月を勘案すればいまだ健在と言える遺跡の通路
石造りの人工的な洞窟ともいえるそこは、足音が良く響く。
しかも金属鎧の兵士が複数ともなれば、大層な騒音ともなるわけで。

「フルプレートアーマーの冒険者……って感じでもないよねぇ
 こんなところに兵隊? っていうのも、なんだかおかしいし?」

近づいてくる足音は、もうすぐそこまで。
ここまで真っ直ぐに歩いてきたものだから、ランタンの灯りくらいは見つかってしまうかもしれない。
これがただの冒険者なら、お買い得品を売りつけるか、情報を買い取っても良いのだけれど。
何となく嫌な感じしかしない。

ランタンの灯りを囮替わりその場に置くと、自身はさっと横道へと姿を隠す。
暗がりでは一見分かりにくい脇道に、ちょこちょことポーチから取り出した魔石を転がし。
そこから先は、岩陰にそっと身を隠す。

先日、路地裏でひどい目に遭ったばかりなので、用意は周到に。
この先に用があるなら通り過ぎるだろうし、こっちに用があるなら動きがあるはず。
ひと抱えはありそうな工具を手に、物音を立てないように息を潜め。

ネメシス > 少女の読みは正しかった。
フルプレートの騎士は王都でも悪名高い貴族であり、その部下はこれまた性質の悪いゴロツキ同然の連中である。

「「畜生、いませんぜ。」」

「「この辺まで足音がしたんだけどなあ。」」

「「おい、ランタンがあるぞ。」」

部下の連中は口々に喚きつつ、道に置かれたランタンを拾っていた。

数拍後に遅れてやってきたフルプレートの女騎士…ネメシスは深くため息を吐いた。

「どうやら、向こうも心得があるようね。
こうなると、かくれんぼ開始かしら♪」

標的を見失ったにも関わらず、ネメシスは上機嫌であった。
この遺跡は冒険者を狩りだすのにもよく使う場所の一つである。
つまり、ネメシス達はある程度構造を理解していた。

「急に音がしなくなった、てことは近くに隠れているわよね。
ほら、手分けして探すわよ。」

促すように両手を叩けば、それを受けて部下たちはそれぞれ二人一組となって隠れることが出来そうな場所を探し回る。
部下たちは鎧こそ着けているばらつきがある物の、手には鋭い穂先の短めの素槍を持っている。

彼らに指揮を出したネメシスはというと、落ちていたランタンを手に周囲を照らす。

「確か、この辺に隠れる場所がなかったかしら?」

ニタリと笑みを浮かべ、岩陰の方へと近づいてく。

リチェット > 近づいてくる足音からして、数は数人。多くても十には届かないくらいか。
できればそっとしておいてほしかったのだけれど、どうやらお目当てはこちらだったようで。
大層な金属鎧を身に付けてはいるものの、やっていることは野盗と変わらない。
この国に居れば、兵士がそんな略奪行為に手を染めているなんてことは日常茶飯事のことで。
そこに驚きはないのだけれど、厄介なことには変わりない。

しかも向こうは野盗としては手慣れた様子で、2人1組で周囲の捜索に切り替えてきた。
即席の罠は張ったものの、これでは一網打尽とはいかないわけで。
嫌な汗がひと筋背中を伝って落ちていく。

少女が隠れたのはまっすぐに伸びた大通りから、一本脇へと逸れた小道のひとつ。
荷物を持った大人がすれ違うにはやや厳しい、それくらいの幅。
ましてや剣を振り回すなどというには狭すぎる空間で。

そんな脇道の5mほど奥の岩陰に隠れていたのだけれど、ひとりこちらへと近づいてくる足音
罠を使えるのは一度きり。小道の向こうにはまだ人の気配がたくさんあるから、どうしたものかと迷ってしまう。
けれども迷っている時間はなく。
心の中で「なるようになる!」と当たって砕けろの精神で気合いを入れる。

ヒュンと風を切る音が近づいてきた騎士に向かう。
狙いは目でも首でもない。手にしたランタン。
それが当たろうとも外れようとも、同時に飛び出した少女が大きく振りかぶった規格外のレンチが騎士の手元へと襲い掛かり。

ネメシス > ジリジリと、気配が漂ってくる。
ネメシスは岩陰の向こうにアタリが居るのだと確信した。
これは魔術的な能力などではなく、戦場の敵兵や暗殺者を相手に何度となく重ねた経験が培った勘である。

さて、相手の腕前はいか程だろうか?
万全を期すのなら一旦部下たちを集めるべきであるが、酔狂なネメシスは敢えて単独で近づいた。

次の瞬間、風を切る音が耳に届き。
手に持っていたランタンが破壊される。
ガラスが足元に飛び散り、中の火が足元で揺らめく。

「…くっ!」

ネメシスは突如として現れた巨大なレンチを回避すべく後方へと跳躍。
数歩ほど引き下がった所で剣を抜いた。

「「副団長、無事ですか!」」

物音を聞きつけ、部下の一組が戻ってくる。
手に持った槍の穂先を少女の方へと向けつつ、ネメシスの前に立ちはだかる。

リチェット > 油断しきっていると思った相手は、けれども想像以上の手練れだった。
放ったクナイは狙い通りにランタンに当たったものの、次の一手は完全に空振り。
ここまでならまだ想定の範囲内だったのだけれど、すぐさま距離を取って剣を抜くあたりは侮れない。

そうとなれば、複数が待ち構える小道の向こう側に向かおうなどと思うわけがない。
事実、すぐさま駆け寄ってきた2名が既にこちらに向けて槍を構えているのが見えたから。
それを認識するや否や、少女はくるりと踵を返すと、一目散に小道の奥へと駆け出した。
同時に、転がり落ちたランタンからモクモクと煙が湧き出し、駆け出していく少女の姿を隠してしまう。

それでも足音は響くわけで。
どちらへと逃げたかくらいは分かってしまうだろう。

(地図見てる暇もなかったし、それに爆裂石を起動させる余裕もなかったっ!)

仕掛けていた罠を起動させるよりも、逃げの一手を打ったのだけど、稼げる距離は知れたものか。
右へ左へと、とりあえず当てずっぽうに分かれ道を駆け抜ける。

途中でいくつか水筒のようなものをばら撒いていく。
中身は機械弄りの際に使う潤滑油。知らずに足を踏み入れれば、滑ってしまうことは想像に難くなく。

ネメシス > 「「これ、クナイですぜ。」」

足元に転がった風切り音の発生源である金属を部下の一人が拾い、周囲に得意げに見せびらかす。
クナイが東方の集団が用いる道具であることは騎士団の大半が知っていた。

「本当にタダの冒険者かしら?
ますます興味が湧いたわね。」

ネメシス達が珍しい道具に目を向けている間に、少女は背を向け逃げ出していく。

「まあいいわ、考えがあるもの。」

「「了解です。」」

ネメシスの前に現れたゴロツキ二人のみが少女の後を真っすぐに追いかける。
途中遺跡の狭さに手間取ったり、少女がばら撒いた油で足を滑らしたりと翻弄されっぱなしだ。

ただ、少女が逃げ切れそうな予感を抱く頃。
先回りしていたネメシスが少女の行く手に塞がり剣を向けていた。

「数が多いとこういうことも出来るの。
分かった?」

チェックメイトとばかりに笑みを浮かべるネメシス。
背後には別の部下2名が投げやりを少女に向けて構えていた。

リチェット > 初めて来る遺跡で、しかも事前の調査はほとんどなし。
それでも持ち前の方向感覚のみでどうにか入り口の方へと向かってはいたのだけれど。
さすがに初心者向けと言われるだけあって、出入口が無数にあるというわけではなかったらしい。
遺跡の入り口付近に待ち構えられてしまうと、どうすることも出来ず。

こちらに剣を向けているのは、まだ年若い女性。
その後ろに並ぶのが厳つい男ばかりなのでちょっと意外ではあるけれど。
それぞれが武器を構えているのを見て、ここらが潮時かとレンチを持っていない方の手を挙げる。

「よぉーく勉強になったよ。
 でも、数でゴリ押しとか……幼気な女の子相手に、大人げないよね?」

背には中身がほとんど入っていなさそうに見える小さなリュックがひとつきり。
腰にはポーチを提げてはいるものの、こちらも金目のものはあまりないだろう。
言下に盗るようなお金はないよ、と言わんばかり。

命あっての物種だから、刺し違えてでもという気がサラサラないものの、
まだレンチからは手は離してはいない。それが武器に見えるかはともかく。
構えられた投げ槍を放とうものなら、こちらも顔面めがけてぶん投げるくらいの威嚇をしつつ、
野盗と変わらない集団と対峙して。

ネメシス > 咄嗟に出入り口を抑えに向かったのだが、あと一歩遅れたら逃げられていたことだろう。
ネメシスは目の前の少女を見つつ、心の中で安堵の息をついていた。

手に地図らしきものが見当たらないが、元々冒険者としての勘が良いのか。
そして、手に持っているレンチを離さない辺りどうやら相当用心深い。

「幼げねえ…貴女、見た目からして15は超えてるんでしょ?
それなら立派な大人よ。」

初めから金に用はないらしく、無言のアピールには特に反応を示さず。
剣を鞘に仕舞うと、一歩一歩と近づき。
やがて、少女の顎を右手で掴もうとするだろう。

後方で部下二人は槍を構えたままだ。
下手にやりあうより、抑止力として武器を持っていることを示すことに徹するようだ。

「この辺りも物騒だからね、色々と取り調べをしているのよ。
貴方も協力してくれる? そうね、近くにあるうちの拠点で取り調べましょうか。
それとも、このまま埃臭い所でした方がいいかしら?」

ネメシスは楽し気な表情を浮かべたまま、少女の顔を覗きこむ。

リチェット > 「女の子に年齢を聞くとか、マナー違反だと思いませんか? 若くて綺麗ねお姉さま?」

ここで煽り文句を入れるのは簡単だけれど、それをしてしまっては商人失格
というか、ごくごく普通に命が危険に晒されてしまう。
にっこりと営業スマイルを浮かべつつも、まったく笑っていない瞳でやり返す。

こちらの方へと近づいて来られると、腰を落として警戒を露わにするけれど、それ以上の行動には及ばない。
手練れの相手からすれば、仔猫が毛を逆立てて威嚇しているような感じにも見えるかもしれず。

取り調べと言われれば、しぶしぶながら了承する。
後の男たちの身なりは鎧といってもまちまち。けれども隊長格らしいこの女性の鎧は立派なもので。
権力を相手に逆らったところで、碌なことにならないものは重々承知のこと。

「はいはい、どこへなりともお伺いさせていただきます。
 まぁ、でも物騒だって分かってるなら、まずは他にすることがあるよね……」

添えられた手を払いのけることはしないまでも、未だに武器を向けたままの男たちにはジト目を向け。

ネメシス > 「あらら、ごめんなさい。」

マナーを指摘されると、赤い舌を伸ばして誤魔化す。
少女の瞳の奥がこちらを凝視しても、数で優位に立っているネメシスは動じることが無い。

重心を下げ、いつでも武器を振るえる状態の少女だが、ネメシスは安全を確信しているのか。
顎に触れたまま首を傾げては少女の手荷物などを眺めていた。

「そうね、大人しく従ってくれるのなら両手を出してくれる?
ああ、その物騒なレンチも取り調べが終わる迄預かるわね。」

顎から手を離すと、部下たちに視線で合図を送る。
二人の部下は槍を下げ、代わりに一人が手錠を手に少女に近づく。
抵抗なければ、そのまま両手に手錠を掛けてからレンチを預かるだろう。
行き先は遺跡近くの騎士団の拠点。

リチェット > 「後でちゃんと返してよね、大事な商売道具なんだから。」

むすっとした感じで愛想も無しに告げる相手は、女性隊長ではなく下っ端の男
大人しく両手を差し出してはいるものの、従順とは程遠い。
喧嘩っ早いゴロツキならば、今頃、拳が飛んできていてもおかしくはないだろう。
まぁ、そんなことをされたらされたで、色々と利子を付けて請求する腹積もりだからの行動ではある。

ちなみにレンチの重さは見かけよりは重たいものの、特に不審なところは見当たらない。
下手に弄り回せば、何かのギミックが作動するかもしれないけれど、それで怪我をしたとしてもこっちの知ったことではなく。

まるで罪人といった感じに手錠を掛けられ、前後をむさ苦しい男たちに挟まれながら遺跡から出る。
青い空を見上げればまだ日も高く、予定ならばもう少し奥まで探索していたところ。
溜息を吐きながら、来た時には見かけなかった拠点へと連れていかれ―――

ネメシス > 手錠を掛けられた少女を連れ、騎士団は遺跡を後にする。
少女に向けられた視線は生々しかった。

ご案内:「無名遺跡」からネメシスさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からリチェットさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にアークデーモンさんが現れました。
アークデーモン > 篝火が炊かれたその広い空間は生臭い錆の匂いに満ちていた
丁寧に作られた石畳の床は精密で真っ平らに広がる
高い天井、大規模な空洞を支える柱は見当たらず、四方は暗がりに通路が飲まれ見える
中央にいかにもな祭壇があり、そこに巨大な獣の影が蹲っていた

「……ケダモノは話が通じなくて困る」

感情に乏しいが呆れた気配は滲む呟きはその獣の上に立つ人影のものだ
蹲った獣はよく見るとぶすぶすと燻り続けている
近くによれば巨大な熱量を感じるかもしれない
だが、炎は上がらず煙も立たない。ただ、肉が焦げてゆく音が微かに漏れる
小さな丘程度はある巨体を祭壇の上に丁寧に丸めたまま、身じろぎもしない
獣は既に事切れていた
その頂点で人影は嘆息したように小さく肩を揺らす
顔色が悪い、というレベルではない白皙の面差しが周囲をぐるりと一瞥した

アークデーモン > がらんとした空虚な空間
何も気配はなく、無音の世界

「裏側の空間か。例の遺跡の仕掛けに裏側から入ってしまったのか」

周囲を眺めながら、やや楽しげにぶつぶつと呟く声だけが響く
足元の獣を眺めながら首を捻り眉を軽く顰めた

「邪魔をしたのは此方だな」

小さく首を振りながら、獣の屍の丘からゆっくりと下る
どう降りているのかは判らないが、階段を下るかのように歩をすすめ、宙を移動し床に降りた
こつ、と小さく床を踏む音がした

「ケモノなりに宿痾があっただろう。無念を残しては私も気分が悪い。後で代わりを寄越す」

見上げるような屍へ淡々とした口調で語りかけると、労うように片手を伸ばし僅かに触れる
すぐ、戻すと踵を返し歩きだした
延々と四方へ広がる石床を進み、やがて闇に消えた

ご案内:「無名遺跡」からアークデーモンさんが去りました。