2019/12/29 のログ
ご案内:「無名遺跡」にジョージアさんが現れました。
ジョージア > ――――夜が、明けたらしい。

そう気づいたのは、頭上から差し込む陽光が、閉じた瞼の奥の双眸を刺激したからだ。
鈍く、幾度か瞬いてから、ゆっくりと目を開けて光の差す方を見遣る。
遥か頭上高く、ぽっかりと開いた穴から、冬の日差しが柔らかく降り注いでいた。

「………いた、…っ……」

身を起こそうとしたけれど、背中が、腰が、身体中が痛む。
仕方無く仰臥した体勢のままで、可能な範囲へ視線だけを巡らせた。

幸い、さほど寒くはない。
けれどジメジメしていて、身体を投げ出している床は明らかに湿っていて、
お世辞にも快適な寝床とは言えなかった。
背負っていた荷物も、剣も、少し離れた場所へ転がっている。
拾いに行きたいけれど、未だ暫くは動けそうになかった。

「……ここ、どこなんだろう」

呟きに答えるものも、居そうにない。
もっとも、居たら居たでロクなことにならない可能性の方が高いだろう。
昨夜、暗がりの中を歩いていて気づかず穴から落ちた、意識を手放して一晩、
何事も無かったのだから――――誰も、何も、居ないのだとは思うけれど。
ならば自力で、ここから抜け出さねばならない訳だ。
もう少し休んでからでも構わないだろう、と、溜め息をひとつ。
呼吸するだけで、ずきずきとあちこちが痛むけれども。

ジョージア > 瞬き、そして、呼吸を、浅く、次第に深く。

――――もう少し、もう、暫く。
せめて普通に息を継げるようになるまでは、とても動けそうにない。
脱出の方策を考え始めるのは、そのまた先のことになるだろう――――。

ご案内:「無名遺跡」からジョージアさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」に獣魔目録さんが現れました。
獣魔目録 > 其処は何も無い部屋であった。
何も無い、光源も無ければ持ち帰れそうな物もない、魔物の姿も無ければ罠も無い、無い無い尽くしの小部屋であった。

この部屋に辿り着くのは凄く簡単だろう。
適当に無名遺跡を歩き回って適当に扉をあけて中に入れば、其処はこの部屋。

ただしく言うならば何処にでもある何の変哲も無い部屋である。
出入り口の扉などは今にも朽ちて外れてしまいそうで、床もまた歩けば軋みはしないが軽く床がぬけそうな嫌な感触を得るだろう、石で出来た床であるのに……だ。

しかしだ。
その無い無い尽くしの部屋にだからこそ何かが起きる。
例えば魔物が巣食うとか、冒険者が物を捨てていくとか。
遺跡の中での出来事だ理由など無数に仮定できよう。
そして現実にこの小部屋では何かが起きている。


――明かりも何も無い小部屋の中央に確かに何かが浮いている。

ふわりふわりとではなく、まるで空間に固定されているようにピタリと空中で浮遊し制止している本が1冊。

薄い陽炎のように本より湧き上がる濃厚な魔力と獣臭。
魔獣の皮で装丁された1冊の黒き魔導書の名は獣魔目録。
ありとあらゆる魔物の情報が書かれ、知恵あるモノはその書より魔獣を召喚し契約することすら可能な魔導書である。

書物より湧き上がる陽炎のお陰で部屋に入り込んだものの眼には存在は見えよう、魔力を見る事が出来ればさらにハッキリと存在を確認できよう、それくらいに深く黒い魔獣の皮で装丁された魔導書であった。

不思議な事に今宵は書は紐解かれてはいない。
まるで書に触れる者を待つかのように静かに佇んでいる。

獣魔目録 > 触れるモノが居ない。

本に触れるべき人間が居なければ本は本としての役目を果たせない。

風の吹く音すらない狭い部屋。
部屋の中央に浮かんだ本は静かに人の訪れを待ちわびるのであった。

ご案内:「無名遺跡」から獣魔目録さんが去りました。