2019/09/24 のログ
ご案内:「無名遺跡」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 『自分が管理する森の奥で、地下に続く階段を見つけたので、中を探ってきて欲しい』

男が請けた依頼は、そんな平凡なものだった。
階段――つまり未発見の遺跡と言っても、要するに古代人が使った施設の"使い古し"
こういう場合のオチは、元民家とか元倉庫とか、まあそういった特に価値も害もない物と、相場が決まっている。
だから、男がこれを請けたのは、本当にただの暇潰しで、何も期待できないし、だからこそ何も危険はないと思っていたのだ。

――少なくとも、この時は

          ○

埃っぽい暗闇の中を、一人歩いていく。
階段の作りは石で出来た簡素なもの。
特に、罠や門番の影もない――強いて変化を挙げるなら、階段を降るにつれて、階段や壁が風化のない、整備されたものになっていく程度か。

「出来れば早く済ませて依頼人を安心させたいけど……」

そんな事を言いながらも、男は慎重に歩いていく。
何もない可能性は高いが、少しの気の緩みが危険に繋がるのが冒険というものだ。
剣に手をかけ、何時でも戦えるようにしておく。

クレス・ローベルク > 「――ん」

階段が終わった。
その先にあったのは、広い空間だった。
ランタンで照らしても、部屋全てを照らすのは不可能なほどに。
それでいて、中にはなにもない。ただただ、がらん、としている。

「それでいて、壁や床はしっかり掃除している、と」

無骨且つ、広大な空間――ホールや踊り場といった、文化的な空間ではない。
どちらかというと、倉庫や工場、或いは――

「儀式場や実験場、ってのも有り得る話か」

儀式場が文化的ではないと言えば、幾人もの宗教者が文句を言う気もするが。
しかし、何らかの魔術的効果を得るための工程、という意味で、儀式とは文化というより、寧ろ技術に属するものだと男は考えている。
それに、神聖魔法の儀式などでは、下手に調度品を置くと場の『意味』を変えてしまって危険であるという話を聞いた事がある。
平和を司る神から戦災回避の加護を得ようと思ったが、儀礼剣を飾り付けていたばかりに軍神が呼び出された、とか。
それは流石に笑い話だとしても、何時でも使える魔術儀式・実験の場というのは、魔術師が良く欲しがるものの一つだ。

「仮にそうだとしたら、もう少し詳しく調査しないと駄目か」

そう言って、部屋を見渡しながら歩き始める。
今の所、意識は部屋全体に有り、降りてきた階段にはないが――しかし、此処は何の変哲もない森の中。
もしかしたら、たまたまやってきた冒険者などがやってくるかもしれず。

クレス・ローベルク > 「……今の所、特に異常はない、かな?」

魔術的な形跡は見当たらない。
壁の方に、壁画の様な物はあったが……それが何なのかは解らなかった。
だが、それ自体に魔術を感じない限りは、『異常なし』と判断するしか無い。

「もう少し調べるか……?」

壁や床は調べた。後は天井しか無い。
だが、空を飛べるわけでもない男が調べるのは骨が折れそうだ。
天井自体も高く、ランタンの灯りが届いていない。

「ふむ……」

顎に手を当てて考える男。
さて、帰るか、それとも別の手を探すか。

クレス・ローベルク > ――男は、結局帰る事にした。
ご案内:「無名遺跡」からクレス・ローベルクさんが去りました。