2018/09/13 のログ
■ラファル > 今の現状を図式にするとこういう風になる。
壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁
壁 壁
壁 機 壁
壁ラ 機 師壁
壁 機 壁
壁 壁
壁壁壁壁壁壁壁壁入口壁壁壁壁壁壁壁壁壁
ラ=ラファル 機=魔導機兵 師=影時
つくづく、師匠はすごいと思わざるを得ない、身体能力だけで考えれば、ラファルで二体相手にするべきであるところを、一人で翻弄しているのだ。
その上、こちらの戦況に対して逐一的確なアドバイスをしてくれる。
蹴りもあまり効果がなく、衝撃波も真空波も、効果がないときた。
遣りづらい相手だと、少女は思う。爪も牙も上手く立たない。
動きが鈍重だから相手にできるが数で来られると驚異と思える。
少女は冷静に、平静に機会を観察する、弱点を探る獣のような目で。
手段は、まだまだ沢山ある、氣を使った打撃は効果があるのは、師匠が既に実践済みである。
それ以外で……。
「―――!?」
大きな機兵の影で見えないが、珍しく焦ったような声。
それと同時に、大きな音が響き渡る、何かがあったことは悟ったが、見に行くことができない。
目の前には、機兵がいるからで、ある。
そうなると、悠長な事は言っていられなくなってくる、滅多なことはないと思うが。
体力的には、師匠は少女と比べれば低いのだ、人外と比べるなと怒られるだろう。
人間としては、かなりどころではなく、体力のある御仁だし。
それは兎も角、だ。
少女は槍を構えて―――打ち込んでくる機兵に対峙する。
叩き落としのような縦の動き、左手を槍の側面にそっと添えて、竜の腕力で軌道をずらす。
そのまま、懐に踏み込んでいき、ナイフを手放して落とし、掌底をその胸の中心に叩き込む。
風は空気で、空気は振動。格闘のそれと原理は違うだろうが、振動を直接叩き込むは浸透撃。
物質であれば、硬さも何もかもを徹し、内部を直接破壊する打撃。
内部機構を破壊されれば、さしもの機兵と言えど行動は不可能になろう。
奇しくも、心臓部にある宝玉も叩き割っていた。
その勢いのまま、機兵を弾き飛ばし、二体のうち後衛、光放つ方に、ぶつけてしまおう。
残心とし少女は殴った機兵を観察し、戦況を確認する。
■影時 > 一つ、彼らを同時に相手取る際に、予測であるという前置きがあるが、こうであろう、という予感がある。
同士討ちを行う、場合によっては味方の被害に構うことなく攻撃を行うということはしないかもしれない、という仮定だ。
今のところこの仮定は通じている。
この場に居る個体だけかもしれないが、射線上に前衛となる機兵を置くことで制圧されるという愚を避けている。
だが、此れだけでは打つ手に欠けるということを自覚している。
効果を見込みづらい鎖鎌を仕舞い、入れ替わるように小さな張り子の紙球を幾つか取り出し、導火線に念を送って火を灯す。
さっと投じれば、白煙が起こる。目くらまし用の煙玉だ。咄嗟に己の姿を煙に巻いて隠す。
『! ……!!!』
そんな折だ。少女と相対する機兵の一体が槍を叩き付ける。並の人間であれば、この直撃で沈む。潰れてこの場に散らばった骸となる。
だが、少女はヒトではない。ヒトの形に化けた竜である。
故に必勝を期しうる槍は見た目とは裏腹の腕力に其れ、引っ張られて機兵も蹈鞴を踏む。その瞬間にこそ致命的というべき隙が生じるのだ。
踏み込んでくる姿が胸部の中央に掌を叩き込み、生み出す震動を内部醸造に注ぎ込まれ、ぱぁんと中枢たる結晶も破砕する。
遂に機能を停止した姿が蹴り飛ばされ、煙に巻かれた機兵に叩きつけられて甲高い金属音を奏でる一方で。
「……――こいつは、ええい、検分している暇も無ェか!」
隠し部屋の中に躍り込む忍びが、見つけるものがある。
決して広くない部屋に一塊の骸となった紅白の装束だったと思しい布片と二つの朱塗りの棒状のもの、床に突き立てられた一振りの刃と。
その一番最後の刃の光に微かな逡巡を覚え、掴んで引き抜く。その刃の形は緩く沿った片刃のそれであった。
ろくに検分することなく、刃――カタナに練り上げた氣を流す。練り込まれていない鋼であれば、忽ち崩れる程のものだ。
その刃を引っ提げて、隠し部屋から飛び出る。起こる風に煙が晴れ、近くに拳を構えた機兵の懐に入って――振るおう。
刹那、斬音が響く。袈裟懸けに切り裂く剣線が胸部の結晶体ごと、機兵を切り下してその機能を奪う。
■ラファル > 見ると、師匠は見えなかった。
正確に言えば、煙が出ているので、けむり玉だということが認識できた。
無事だと思えて、その途端安堵とともに、溢れる息。
「あー………。」
安堵感から声が溢れた理由は色々試す積もりだったが、やはり未だ、修行が足りないのだろう。
焦って破壊してしまったのだ、師が危険だと思ったから、というのは師がしったら怒るだろうか。
命のやり取りしているのだから、全力を持って事を成せというふうに怒られるだろうか。
それとも、もっと色々試せと怒られるだろうか、頭の中を過るが、それよりも先に、蹴り飛ばした機兵が、背中からぶつかった事により、機兵の注目がこちらに向いた。
光る光輪、そして吐き出される光線。
「わ ちゃ ちゃ ぁっ!」
きらり、と光ったと思えば飛んでくるそれ、少女は左に飛んで避ける。
多分、それを無効化する方法は出来なくはないと思う。
やってみるべきかどうか悩んだ結果、回避することにした。失敗してダメージ受けてもと思ったのだ。
その折に、金属が、金属を切り裂く甲高い音が響く。
見ると、師匠が煙玉の煙から出てきていて、一体を切り倒していた。
これで、二対一である。
ならば、と少女は試すことにする。
踏み込み、光臨を背負った機兵に対し、駆け寄り、風の精霊にひとつのお願いをする。
直進で近づく少女に、機兵は二度目の光線。本来の少女の速度ならば、光線を放つ前に懐に潜り込むことも不可能ではない。
ではなぜか。
少女が風の精霊に願ったのは、空気で姿を隠す方法。
空気の密度を上げて屈折率を変え、姿を消す、少女の隱業の方法だ。
機兵には、その隱業は効果がないハズである、ではなぜか。
光は、曲がるものである。少女の作る空気の壁に、捻じ曲げられる。
つまり、光線であれば対処ができることを確認しつつ、口を開く。
「Grrrrrrr………」
竜の唸り声が、部屋に響く。
それは、竜を識るものであれば、理解できるだろう。
目の前の存在を破壊するための方向。
即ち 竜の咆―dragon canon―
■影時 > ――手にする刃の手ごたえを、確かめる。
問題ない。寧ろ、不安を覚える位に氣の流れがいい。伝わりが良い。詰まりは上物であるということである。
何故こんな場所にそんなものがと思う。だが、その思索に費やす時間はない。
今は何にしても、カタをつけなければ息すらも抜けないのだから。
「柄木が崩れているか、こりゃ。よろしく無ェな。……って、向こうもよろしく無ぇか!?」
切伏せ、機能を失う機兵を前に右手に握る得物の柄の具合に閉口していれば、いよいよ晴れ行く煙の向こうに響く声に顔を起こす。
最後の残敵がある。まだ健在だ。先ほどから使っている光線、熱線を躱している様を見れば大丈夫であろうとは思う。
しかし、向こうも一体倒したとは雖も、次も安定して倒せるとは言えるまい。
機兵がなおも光線を射かける。今度は強く、だが、それも風の精霊が生み出す大気の屈折によってあらぬ方向へと流れる。
魔法的な原理にはよらない、物理現象としての顕現であるが故なのだろうか。安堵する間もなく。
「……ラファル!」
響き出す唸り声に、いかん、と唸っては足元を軽く蹴る。
蹴り上げた石ころをぱっと掴んではその唸り声がする方角へ直ぐに投じる。
こつんと固めた拳を落とす代わりに、最大火力は無用と告げるために。
その後に刀を構え、残る機兵へと駆け寄ってゆこう。あと一撃をくれてやる程度であれば、経年劣化した柄も保つだろう。
狙いは機兵の背後の腰部。目一杯氣を籠めた刃で腰骨と思しい部位を横薙ぎにしてしまえば、白銀の巨体がたまらずにぐらつく。
其処に隙が生じよう。最後の一撃、止めをくれてやるに足る瞬間が。
■ラファル > 空気の壁は、主に屈折率を変えるために、機兵の光線を曲げるために使うもので。
レンズのように集中すれば、前だけということも可能である。故に、予想外の物理的な石ころを防ぐものではなかった。
大きな声、それとともに飛んでくる石ころ。
すこーん!と、いい音がし、石がどたまにブツカッタ。
「いったーい!」
チャージは中断されて、額をさすさすとさする少女。
空気の壁は、風の精霊へのお願いなので、集中してなくても持続する。
使役の強みというやつであろう、が、光線も熱を持つものであれば、あと数発曲げれば効果も消えていくだろう。
そんな隙に一発光線が飛んで、歪められてあらぬ方向に着弾。
そこをすかさずという事なのだろう、師の一撃が機兵の腰部を破壊し、動きが鈍る。
咆哮がダメらしいので、少女は踏み込む。
震脚で、遺跡の石畳を踏み砕きながら、全身のバネを使い、再度掌底からの、浸透撃。
ずどん、と重い音を立てて、内部機構を破砕し、止めとする。
東部にしなかったのは、首筋でダメだとすると、頭ぶち壊してもダメな気がしたから。
■影時 > 「俺の火遁、土遁の類もそうだがな……吐息を使うってなら、もう少し開けた場所じゃねェとまずいぞ。」
大技の類はそうだ。
特に周囲の環境に対する影響や地形を大きく変えるような類のものは、よくよく考えて使わなければ要らぬ被害を招きかねない。
そうしなければ、と思う心境は少なからず理解はできる。己とて心底まで血も涙もない訳はないのだから。
しかし、閉鎖環境ともいえるこの空間内での行使は、どこまで被害が及んでしまうのか全て計算ずくにはできない。
「と、ッ……此れで一先ず、仕舞いか。
やはり数があるとどうしても手間取っちまうか。大事ないか? ラファルよ」
腰斬に処した機兵が駄目押しの浸透撃を被り、此れを以て完全に陥落する。機能を失う。
崩れ落ちる機兵の陰から離れ、ほっと息を吐けば完全に砕け散った柄から、中身の刀身が落ちて石畳に突き刺さる。
薄っすらと籠った気もあっての切れ味だろうか。
突き立った刀身の茎に刻まれた銘、否、銘代わりの朱を入れた蓮華の彫り物にはて、と首を傾げて、止めを刺した姿に声をかけよう。
■ラファル > 「あーい……。」
いろいろ試そうとしていたが、試しすぎていた模様、やはり大技はダメなようだ。
ダメというか、ここでは致命的である、特に少女の咆哮は破砕の衝撃。
室内で使えば室内の壁を反響して室内に居るすべてを破砕しかねないものだ。
衝撃から生き残ってもぺしゃんこになること請け合い。
らふぁるはおぼえた。
「師匠からの石が痛かった。」
ダメージは後にも先にもそれだけです、槍の一撃はいなしたので、そこまでのダメージにはならないし。
光線は当たらないようにそらして、空気の膜も消えていく。
精霊さんに魔力をご馳走してからまた空気の浄化をお願いする。
そして、真紅の刃に視線を向ける。
「師匠、それ、刀?」
最初の印象はそれで。
地面に突き立つとか、どんな切れ味ですかと空恐ろしくなる。
下手したら、まだ子供竜の弱いウロコとか切れそうだ。
むしろ、成竜にも通用するんじゃないか、とか考えてみる。
■影時 > 「だが、課題として遣るにゃイイ具合だ。
お前さんの吐息と同等の威力を他に余波なく、余さず敵に叩き込む。そういった手管もいつか、考えても良いだろうよ」
大技がけっして駄目ではない。要は使いどころだ。
大きな力には相応の責任が伴う。常套句の如く、何かと言い習わされる事柄だが、使いどころを誤れば諸共に被害を被る。
殊に地下深くとなれば、質量とは最早暴力そのものとして自分達を押しつぶすだろう。
敵のみを滅ぼすならばそれでいい。その逆はいけない。故に思考実験ではないが、そんな事柄も告げて。
「はっはっは、そりゃぁ痛くないと制止にゃならんからなァ。
大事ないなら何よりだ。地上に戻る、否、家に戻るまで気を抜くんじゃァ無いぞ。
……ン、見ての通り、刀だなァ。多分、もう一つ小ぶりな奴がある筈だ。」
空気が美味い。浄化による恩恵だ。助かるとその使い手たる弟子に礼を述べ、件の刀に目を遣る。
刀身自体は見た目は普通だ。
何度も折り返し鍛えられたと思しい、木目に似た模様が浮かぶ刃金は鋼鉄色。
手掛けた刀匠が刻む銘は柄に収まっていた茎の部位にはなく、その代替とばかりに蓮華の模様を彫り、それに沿って朱が流されている。
はたして、素材そのものが尋常の鋼鉄であるかどうかも怪しいが、大業物の類に相違ない。
もう一振り、添え差しの小太刀が現存している筈だろう。地に刺さった刃を慎重に引き抜き、肩に担いで隠し部屋の方に歩む。
其処にある。こちらは朱塗りの鞘に収まり、主だったらしいものの白骨体と共にある。
どれ程の年月に晒されたのか。風化しかけているが、辛うじて幾つかのものが識別できる。
「……姫武者の骸か」
ぼそり、と。骨盤の形状、紅白の巫女装束にも見える戦装束のなれの果てと思しい布片から、察しよう。
■ラファル > 「うーん………。」
思考実験、自分の最大火力と同等の何かをぶつける為の方法。
確かに、音と衝撃なので拡散しやすい、それを拡散させずにブチ込む方法という、ちょっと危険な思考。
しかしそれの有用性は確かであり、考えるにはいいだろう。こういうところで、問題なくぶっパできるのは強み。
「おっちゃんひどいー。」
笑いながら大事無いと言い切る師匠に頬を膨らませる。
まあ、言うほど怒ってないのは、額をさすっているところと、呼び方と。何より、師匠もちゃんと空気のケアをしてるところからわかってもらえるだろう。
刀の良し悪しはあまり詳しくないが、あの機械を切ったことで、その切れ味などは把握できた。
強い刀を手に入れたんだ、という思考に、羨ましさはない。
自分には牙と爪、あとナイフがある。
それと同じように、師匠も手に入れただけである、人間には爪や牙がないから、その代わりなのだという認識。
「ひめむしゃ。」
無くなっているであろうその骸、いつからのものかはわからないが、昔のものであろう。
じ、と見つめてみるもふむとうなる。
「いないね。」
竜の目は霊を見ることができる、此処にいないだけなのか。
成仏したのか、それは分からねども、言えることは此処にはいない、という事実。
そして、師に視線を送る、続けるのか、それとももどるのか、と。
■影時 > 「そうそう、よぉくな。よォく考えてみるといい」
笑いつつ、頷いて考える事を薦める。推奨する。
力はあるのだ。人間の血が混じっていても、竜という強壮なる存在の血を受け継ぎ、竜とヒトの姿を使い分けられる存在だ。
遣ろうと思えばきっとどこまでも伸びる。死なぬ限り、伸びしろがどこまでもある。
その行く末を最後まで見届けられるか否か、己が何処まで生きられるか否かにもかかるが。
戦いが終われば、一先ずは穏やかな時間が来る。
己の呼び方と浄化された大気という恩恵にあずかれるのは、実にありがたい。
「――居たら、俺も只じゃぁ済まんな。
思うに、残念すらも擦り切れる位にこの穴倉に押し込められたという具合か。
迷宮の仕掛けか。それとも、犯し続けてもなおも暴れるが故に、持て余してここに幽閉し、死ぬに任せたか。
……何かの縁だなァ。ラファル、貰ってってやれ。それとな、今から広げるこの風呂敷に上手く骨の欠片も吹き寄せられるか?」
己も、その手の怨霊が居ればピンとくる。だが、居ない。居ないのは最早、居なくなる位に年月を経たのか。
それとも自害の際に己が祟り神にならないようにしたのか。
部屋の壁を見れば、いくつもの刀傷や血の跡と思しい染みがそこかしこに残っているのが見える。
手に入れた刀を床に置き、残っている小太刀を取り上げ、鞘から引き抜いて状態を確かめる。
鞘や柄の状態は悪いが、大刀と同じ素材と刀匠の作と判別出来る刀身は奇跡的と言える位に状態がいい。
この状況を鑑みるにむりに先に進むのは吉ではない。
故にと、雑嚢から取り出す風呂敷を広げ、そこに散らばった布切れや骨片を移してゆく。
死人は何も言わない。物を貰うかわりに、せめてこの地の底から出してやるのが礼儀であろう。
■ラファル > 「うん、……密閉。」
よく考えるという言葉、そして思いつくのは、今の現状。
密閉空間で使うとひどいことになる、つまり、威力をあげるなら密閉空間の方が都合がいい。
思考はどんどん加速しつつも、しかして、まだ答えにたどり着く気配は見えず。
今は思考を中断し、意識を師匠に戻すことにしよう。
「ん?ちょっとヤってみるね。」
集められるか、と言われて、少女は部屋の中を見回す。
くん、と鼻で匂いを嗅いで、風の精霊に願い、彼女の残滓だけをより分けて持ってきてもらおう。
余りにも精密すぎるから、魔力をガンガン取られてる気がするけれど、仕方がない。
骨のかけら、服のかけら、すべてを集めるときにはさすがにふふぃぃ、と疲労感を覚える。
「えーと、もらって?」
何を?と、首を傾いで、次に視線は刀の方へ。
ととと、と近寄って拾い上げる赤の鞘。
血の赤というには鮮やかな紅で、状態が悪くなっているのでこれであれば、本来であればもっと輝いただろうことが分かる。
ん、とうなづいて。持つことにする。
■影時 > 聞こえてくる言葉には、微かに口元を釣り上げて目を細める。
今は敢えて助言はしない。アドバイスはしない。
此れは自分で考えることに意義があり、導き出した答えに補足と裏付けをするのが師の仕事である。
「――手間取らせちまったなァ、ラファルよ。箒がわりに風ではき寄せてくれる程度で良かったのに」
すまんなぁ、と。期待以上の仕事をしてくれた、させてしまったという思いがあれば、素直に無頼を気取る男も頭を下げる。
地上に戻ったら、何か甘いものでもご馳走してやる方が良いかもしれない。
いずれにしても、此れからの事を考えると一度、商会にも顔を出す必要があるだろう。
「もう一振り、あるだろう。この小太刀がな?
使うかどうかはお前に任せる。扱いに困るなら、お前さんのご母堂に預ければいい。
由来はどうあれ……此れはよく斬れる刃物だ。良い道具はどれだけあっても困るというものじゃぁない」
辛うじて鞘は原型を保っているが、いずれにしても鞘も柄も新調しなければまずいだろう。
そうでなければ保存にも困る。余分な湿気も入らない位の密閉状態だったから、劣化の速度が違う刀身は保っていたようなものだ。
如何に自分で使うものは自分で使うが身上の己でも、流石に刀の拵えを新たに誂え直すとなると、商会を頼る他ない。
言いつつ、風呂敷包みを閉じて零れるものがないものを確かめる。
残る大小の刀については、別途取り出す長い手拭のような布を使い、包んでおくことにしよう。
■ラファル > 「―――あ、そうだったの?」
骨の欠片というもののイメージが違った模様。自分はいっさいがっさいを考えて集めたが、そこまでしなくてよかった模様。
少女は、もっと大雑把でよかったのか、と、頷いた、まあ今さらの話でもあるからいいか、と。
考え方によれば。精密作業の訓練とも言えなくもないし、と。
師匠の考え方に染まっているのか、修行と考えることにした。
「うん、とりあえず、鞘と、柄の修復はしないとね。
ボクが使うなら、頑丈な素材のほうがいいよね……」
普通の木の鞘、木の柄であれば握りつぶしてしまうから。
確かに、その小刀の切れ味ま凄まじいものがあるし、予備はあってもいいだろう。
師の言葉にうなづきながら、別の大小を包む姿を眺める。
■影時 > 「だが、有難ェ。拾い残しが無い方が、この御仁も喜ぶだろうよ」
忍びとなれば、死して屍を拾うものはないことを念頭に置かざるを得ない。
斯様に少しでもよく葬ってもらえる機会があるならば、余さず身体の欠片は持ち帰ってくれる方がいいだろう。
自分であれば、そう思う。まして如何なる性格等かは知らなくとも、女性であれば尚の事に違いあるまい。
「帰り道に、何処か見晴らしのいい場所に墓を作るか。
……俺が使うにしても、頑丈で尚且つ水が沁みないように工夫しておきてェところだな」
王都内に流石に都合のいい異邦人向けの墓地は願えまい。
無縁の御仁となれば、善い所を見繕って葬り直すことになるだろう。そう考えながら、商会に預ける際の注文も脳内で幾つか考える。
柄の造形や他のこまごまとしたものは自分に併せて作り直すことになる。
己には己の、弟子には弟子の最適解というものがある。
少なくとも、この位の刃であれば強い氣や魔力を乗せても劣化することなく、十二分な性能を発揮するに相違ない。
一通り荷造りを済ませれば、荷物を抱えて立ち上がろう。また、帰りも闇に紛れて地上を目指すことになるだろう。行きも帰りも、修行だ。
■ラファル > 「うん!」
彼の言うことは、実はよくまだわからない、忍びの心得を全て教授してもらったわけではないし、何よりも、生死観が、東洋のそれと違う。
だから、師匠がそういうのであればそうなのだろうという、小さな子供的な考えて同意した。
「お墓……後でお姉ちゃん呼ぶ?」
ひとつ上の姉であれば、物理的にも、魔法的にも水染みしみないのは作れるだろう。
お墓を作るだけなら作れる、そのあとの加工ならと、提案。
そこまで考え、姉であれば、柄や鞘を修繕したあと、自分が使っても壊れないようにできるだろう。
お母さんが忙しいなら、その手もあると思ったのだ。
そして、いつまでも、ここにいたら、新たな機兵が来るかもしれない。
師匠に促されるまま、少女も闇に溶け、静寂がもどる―――
■影時 > 仮に傍に来ていれば、よしよしと頭を撫でてやったかもしれない。
この辺りの価値観はとやかく言うものではない。
死人の気持ちは生者には分からない。でも、寝かしてもらえるならば身に欠けているところがあってはいけない。
それでは、安らかにきっと眠れはするまいと。
「――墓は俺が掘るさ。
ン? それはそれで興味があるが、大丈夫だろうよ。柄巻に漆をかけておけば、水染みにも強くできる」
鞘ももともと、漆を塗り重ねて作るものだ。
より細かな細工として、かの姉の力を借りれば弟子が扱う際にはより不足なく、強化を行うことが出来るのだろう。
武具についての知識の伝授、教授は帰り道や商会で細かな仕様を伝え、注文する際にでも行うことだろう。
今は新たな機兵や魔物に遭う前に脱出を果たそう――。
ご案内:「◆無名遺跡(イベント開催中)」からラファルさんが去りました。
ご案内:「◆無名遺跡(イベント開催中)」から影時さんが去りました。