2018/03/19 のログ
ご案内:「無名遺跡」にピリムさんが現れました。
■ピリム > ――…随分と長い間眠っていた気がする。
瞼を覆うように積った砂埃をまだ完全に力の戻っていない左手の指先で払い、後はその左手の掌でパッパッと顔全体を叩いて残りの砂埃を叩き落とすと、両腕をぐぐっと遺跡の天井に向けて伸ばして背筋を真っ直ぐに伸ばし、身体を解しに掛かる。
するとパラパラと身体のあちこちで砂埃が固まったものか天井から落ちた石か良く判らないが通路の床へと落ち、首を左右に曲げて捻るとゴキゴキと聞くに堪えない音が響く。
「ンー…………………。」
瞼を開く前にもう一度だけ欠伸を零すが、久々の擬態した身体は中々に動かし難く、思わず頬の赤い筋に合わせて本来の口まで開き、大欠伸じゃ済まない顔になり……バクンッと慌てて閉じて、両手で頬をすりっと撫でて、危ない危ないとそんな仕草。
場所はどこだろうか、遺跡の迷宮の浅いところだとは思うが、やっと戻り始め考えるだけの熱の入り始めた鈍い頭で考えるが、記憶がどうも曖昧である。
やっと開くようになった疑似の身体の際のメインとなる赤い空虚な眼を開き周囲を眺めるが、矢張り記憶にある場所ではない、と言うか何処だろう本当に……。
しかし……それより何より目覚めた身体が訴える。
それは自然と口から言葉になり吐き出された。
「……オナカヘッタ…………。」
■ピリム > 空腹、飢餓、渇望、空腹。
脳裏に過ぎる言葉は欲望にストレートな物ばかり。
一先ず手っ取り早くそれらを満たそうと、両膝に力を入れて立ち上がると、再び両腕を天井に向けて伸ばし、今度は足も背中も腰も存分に伸ばしてから歩き始める。
喰いたいのは肉、金属、水晶、鉱石、宝石、諸々。
出来れば水分もホシイと欲望ばかりが浮かび上がる。
さて行動に移そう、人差し指と中指をそろえて鼻の下を軽く仰ぎ、周囲の空気を掻き乱し集めて吸うと、その中に欲望を満たすのに十分な香りを手繰り寄せ、その臭いの方向へと向おう。
但し服装は酷くボロボロだ。
普段から確かに冒険者の亡骸から剥ぎ取ったボロボロのものを装備しているが、長い時間が経過していたのだろう、布なんてあまり激しく動くと壁にぶつかった箇所から容易く引き千切れ、穴なんてあきた放題あけたい放題であった。
と、なると衣服も何とかしたい。
無くても生活には問題ないのだが、擬態するのに衣服は必要であるし、擬態できずに獲物に逃げられるのも面白くない。
なので歩きながらに周囲を空虚な赤い眼を右に左に向けて、都合よく倒れた冒険者でも探そうとする。
――…死んだ冒険者でも構わないが、出来れば生きた冒険者であれば言う事無し、飢えと同時に欲望も満たせるのであれば更にヨシ……と。
■ピリム > 美味しそうな匂いは下層から漂っている様だ。
人に擬態した魔物は欠伸を噛み締めながら下層に向けて足を進める。
其処にあるのは宝かそれともモット美味しそうな何かか…
その姿は闇に溶け込むように遺跡の奥へと消えていくのだった。
ご案内:「無名遺跡」からピリムさんが去りました。