2017/06/30 のログ
ご案内:「無名遺跡」からタマモさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にピリムさんが現れました。
ピリム > ガリ……ゴリゴリ……バキッ……ガリゴリ………

無名遺跡の浅い階層、初級の冒険者から中級の冒険者までが踏み込み荒らしていく危険度が低い階層の回廊に響くのは何時も以上に不穏な音色の何か金属がひしゃげ砕かれる音。

音源を探ればヒカリゴケの淡い灯りに照らされた小さな人影が回廊の片隅で夢中になって何かを齧っている姿が見えるだろう。

その姿はまるで浮浪者。
ぼろぼろの穴あきのフードがついたローブに身を包んだ「人影」。
あくまでもヒトではなく、人の様な者。
少年と言っても過言ではない幼さの残る姿なのだが、無名遺跡を一人彷徨い生きるだけの「力」を持つ者が普通の人間である筈がなく、その少年……喉元まで避け金属を意図も容易く噛み砕く牙の並ぶ口、蟲の様に感情の欠けた瞳とこめかみに向けてつらなる紅玉の様な目玉を見ればそれは魔物である事が判るだろう。

ただ彼は辺りを警戒するような気配も殺気も放ってはいない。
今はただ途中で掴まえたリビングメイルを夢中で貪っている最中であり、その姿は無防備ですらあった。

ちなみに味は極上に美味い。
金属の鎧に含まれた希少な金属部位の歯ごたえ、宿っている魔性の力の少し辛味のある甘さ、それに何と言ってもコイツに犯され殺された者達の無念と言うものが蕩けるほどに甘ったるくて、止められない……。

ピリム > 頭部を守るヘルムから胸部を守るブレストプレートを順に喰らい、ガントレットを丸呑みして最後に大事そうに脚部のパーツを噛み砕き、ゴクリと飲み込むと口の周りに残った金属片を長い舌でぺろりと拭い、満足そうに自らのおなかをポンポンと叩くと、喰らったばかりの金属が自ら取り込めたか確認する為にゆっくりと膝を伸ばして立ち上がり、遺跡の壁に掌を押し付けて力を込める。

バキ……メキメキメキ…………

再び無名遺跡の回廊に響く音は金属を齧る音に似て非なる物。
小さく細い指先がその指先から喰らったリビングメイルと同様の素材に包まれ変化すると同時に壁にその指が容易くズブと食い込んでいく、その余波で壁自体が悲鳴をあげ砕けていく音である。

この能力は少年の元の生物の能力の一つであった。
それを本能的に理解し、身を守る術として発動された結果である。
フードの奥、連なる紅玉の瞳も人と同じ場所にある感情の欠けた眼もこの時ばかりは何処か恍惚とした色を浮べていた。

アア、この力を振るい、獲物を薙ぎ倒し、蹂躙できたらどれだけ楽しいか……言葉はまだ覚えていない、代わりにその感情と思惑を表現するのは喉を鳴らして響かせる耳障りな鳴き声で。