2017/06/27 のログ
ご案内:「無名遺跡」にピリムさんが現れました。
ピリム > ガリ、バリバリ、ボリ、ガリガリ………
無名遺跡の迷宮に響く金属を噛み砕く音、咀嚼する音。
石畳の通路、その通路の終着点である行き止まりにある木製の扉に隔てられた小さな部屋。
この不愉快な音は扉の奥、部屋の中より響き通路に木霊する。

――その小さな部屋、中は永続的に明かりを灯す魔法のランタンが幾つも壁に設置されていて、丁度の部屋の中央に安置された宝箱を強調するように部屋を照らしている。

が、その宝箱は開封されており、現在進行形で中身を漁られている状況である。
漁っているのは腐敗臭すらしそうなボロボロの布切れをローブのように身体に羽織っているだけの小さな人影。
それは開いた大きな宝箱に背を預け、宝箱の中に保管されたと思わしき硬貨や魔法の武器を周辺に散らかし、その散らかしたそれらを「喰らって」いた。

比喩ではなく文字通りの意味で……。

傍目から見ればただ小柄な人影が何かを貪っている様に見えようか、だが近づきローブの中を覗き込めば見えるだろう。
魔法の付与された短剣をまるでチョコレートバーを大事そうに両手で掴みながら、その鋭い牙でガリ、バキ、メキメキ、と金属であり魔力が付与されているにも関わらず容易く噛み砕いて咀嚼している。

その口は人間の頭部程度のサイズなら丸のみできる程に大きく喉元まで裂け、目元からこめかみに並んで複数の眼がギョロリと蠢き周囲を眺めている。

人目がないから故のヒトに非ずの異形なる姿。
ヒトに擬態することなく、異形たる姿を曝け出しての食事は酷く楽しそうであった。

ピリム > 喰らえど喰えらえど、空腹は収まらず欲望は萎えずただただ貪り続ける。
魔法が付与されていれば剣も槍も硬貨も本も只管に噛み砕き咀嚼し飲み込み体内で生命力に変え、余った物を身体の強化へと利用する。
例えば防御魔法が付与されているモノを喰らえば僅かながら魔法に耐性を、炎の魔法が掛かっていれば吐き出す吐息に熱を、と喰らえば喰らうほどに身体の中がぐるぐると目まぐるしく変化し、その属性が郷土が変化していく。

冒険者から武具を取り上げて喰らうのが一番である。
が、冒険者が来なければ冒険者のように宝箱を漁り、喰らい、時には金属製のゴーレムや罠ですら胃に収める貪欲な少年。

喉の半ばまで裂けた口からは次第に唾液を滴らせ、足元には生臭い唾液を糸を引いて滴らせる。
その不気味な姿を見るモノは誰もいない、ただ室内を照らす魔法の灯りが宝箱と一緒に異形の少年を照らすのみ。

ガリ、バリバリ、ボリ、ガリガリ………

少年は言葉を発しない
代わりに鳴り響くのは噛み砕く音と咀嚼音。
それだけが静かに小さな部屋に木霊し、木製の扉をこえて通路へと響く

ピリム > あれからどれだけ経っただろうか?
小さな部屋に安置されていた宝箱が空っぽになるには十分な時間が経過した筈である。
当人は時間の経過も気にせずに貪り続けた結果。
腹部が異様な形に膨れ上がり、周囲には柄だの鞘だのという魔力が込められていない物だけとなってしまった。

その中央で少年は惰眠を貪る。
次目覚めたときには肉が喰いたいと…
血の滴る生肉が喰らいたいと、そう願いながら意識を手放して…

ご案内:「無名遺跡」からピリムさんが去りました。