2017/05/04 のログ
メンシス・パール > 壁に手を沿え、迷わないように歩いていく。
しかし、こうも暗く、方向感覚が鈍る場所に居るとイライラや緊張が募っていく。
手練れとなれば数日間は遺跡に籠る者もいるそうだが…

「気が狂いそうになるな」

凡そ常人なら耐えられない空間。
よくこんなところに魔族は住みつけるなと感心しつつ、小さく呟く。
せめて暗闇を見通すような魔法を身につけておけば良かったと後悔する。

「しかし…」

さっきから一向に人や魔族、魔物や魔導機械とやらに出会わない。
道を間違えたか、単純に運よくスルー出来ているのか…
誰も合わないことが逆に不安と恐怖心を煽る。
常に周囲を警戒しながら、決して足は止めず、前へ。前へ。

メンシス・パール > 壁沿いに歩くこと数分。
遂に、別の空間へ繋がる通路へと行き当たる。
やっとこのだだっ広い空間から抜けられると思いながら、振り返って横目で暗闇を睨む。

「…」

この広間の中央には何があるのだろうか。
もしかしたら珍しい武具や宝石などのアイテムがあるかもしれない。
もしかしたら危険この上ない魔獣が眠っているかもしれない。
もしかしたら……

「いや、やっぱりやめておこう」

ここで欲を出すわけにはいかない。
暗闇から通路の方へと目を向ければ、そちらへ向かって歩き出す。
当初の目標通り、依頼主が望む財宝を目がけて一直線に進んでいった。

ご案内:「無名遺跡」からメンシス・パールさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にアンリさんが現れました。
アンリ > 「いだぁーーーーーーーっ!!!」
本気絶叫が迷宮に響き渡る。のぉう! とか、あおぁー! という悲鳴が続けざまに上がって、地面を何度も殴る音が響く。

「ちょ、っと、でかいんじゃあ、ないのっ!?」
本物のトラばさみに足首をガッチリと噛まれて、悶絶をする魔法使いが一人。
痛い。
一つ隣の通路では服を溶かす触手が。
そのもう一つ隣の通路では、女性を狂わせる毒ガスが。
その色とりどりの罠の中から、ガチのトラばさみをチョイスする。いや選んだわけじゃないけど。

アンリ > 「ふんぐっ……!!」
気合一発、トラばさみを掴んで引っ張る。
みしりと音がして、床に打ち付けられたトラばさみが尋常ならざる力で引っ張られたためか、床にヒビが入る。

「んぎぎ、……ぎぎ……っ!」
強烈なばねで足首を挟んでいるからか、思い切りその刃をこじあけようとしても、なかなかこじ開けられない。
少しずつ、少しずつ………間の空間が開いていく。


魔法使い……

人間の魔法使いとして自由に旅する彼女ではあるが、実は魔の世界に住まう人あらざるもの。
その魔力と、何か良く分からない膂力、そしてこの程度では死なないタフネス。
身体能力は一級品だ。 なかなか芽が出ない競技選手によくつけられる二つ名だ。

罠を恐れず、敵を恐れず、ずんずん進むそのスタイルについてこれる普通の冒険者はいないから、いつも一人旅である。

アンリ > 「だりゃー!!!」
気合一発、床からトラばさみを引っこ抜いた。足首についたままだけど。
その勢いのままごろん、と地面を転がって、あまりの痛みにその場で悶絶する。
痛い痛い痛い。地面を何度叩いてもギブアップないんですよ。

「もげるもげるもげるもげる………。
 んぎぎぎぎ………っ!!」
本当にもげそう。
その場で丸くなるように横になりながら、トラばさみをガッチリつかんで無理やり力任せにこじ開ける。

無防備? 今痛いんですよこっちのが大事なんですよ。

アンリ > 「うりゃあっ!」
ばちぃん、っとバネを弾き飛ばしながらトラばさみを粉砕すれば、足首を引っこ抜いてふーふーと息をはきかける。
ちょっと胸と膝が邪魔をして遠いけど。

「………うー、生き物や魔力のついた罠はなんてことないけど、こういう無機物系だけは厳しいわね。
 なかなか察知もできやしないし。」
ちぇ、っと舌打ち。
溢れんばかりの魔力と体力パワーゴリ押しでなんとかなればいいんですよ、なんとかなれば。
魔力察知能力もまあそこそこあるから、そんなに引っ掛かることも無い。

ただ、古びた罠……弓矢が飛んで来たり、石が落ちて来たり。
その手の罠にはいい具合にひっかかるのが最近の悩みだ。
矢はお腹に刺さったし石は頭に当たってたんこぶができた。
ありがとうタフネス。

アンリ > 魔法使えよ、という言葉を受けたことも何度もある。
ただ、彼女の魔法は基本的に破壊と焼却に特化した戦闘魔法。
象が鼻を振るうかのように、サイが角を突き出すかのように。
持って生まれた力を本能任せに振るう彼女に、そんな器用なことができるわけもなく。

「ああもう、……こんなんじゃ走れやしない。
 しばらくここで休憩、はしたくないんだけどなー。」
ため息一つ。冒険者暮らしも慣れたから、豪華なベッドに思いを寄せることはないのだけれど。
壁に背を預けてため息一つ。足首の血はようやく止まったところ。

アンリ > 「したくないんだけどなー…」
ため息交じりでごろりと横になれば、すぃー、と安らかに寝息。
休める時に器用に休む。これくらいは冒険者の心得としてできるのです。

………寝起きは、まあ、そんなにすぐに跳び起きれるわけじゃないのだけれど。

ご案内:「無名遺跡」からアンリさんが去りました。