2017/01/18 のログ
ご案内:「無名遺跡」にゼイヅさんが現れました。
ゼイヅ > いやはや、人生とはこうも先が読めない物なのか。
人ならざる老人の姿をした己は、自分の魔力により作り出した棍を杖代わりに、嘆息と共に遺跡の中を歩き回る。
暗闇の中、明りも無い。といって己には暗視といったスキルも無い。

「……こちらかのう?」

事の起こりは数分前だ。古戦場の付近を歩き回り、目ぼしい獲物――いや、稽古をつけるような存在を捜し歩いていた際に、古の物か、強制転移の魔法陣を踏んでしまったのが始まり。

恐らくは強者が、魔族の進軍をこれより先に進めさせない為の命を賭した物だったのだろう。踏んでからの発動までに時間差も無く。
気がつけば暗闇の遺跡内に転移をさせられていた。

「まぁこれも修行修行。善哉善哉。」

コン、と棍で床を叩く。その音の反響を耳で捕らえ、自分の肌を僅かになぞる空気の流れから出口と思しき方角へと進んでいる。
音の反響は壁や床のつくりを自分の脳裏に描かせ、物理的な罠の存在を知覚させる。
―――先程の魔法陣のような魔力を持った罠や、時間差無しで発動する類の物でなければ己の身を傷つける事は難しいだろう。

そうして地図も無い、手がかりも無い。暗闇の中とは言え己からすればこれも又一つの修行とも取れる道中を楽しむ――ローブの裾がいい加減擦り切れつつある事と、女性の匂いを感じ取れない事を除けば然程の不満も無かった。

ゼイヅ > コォォーン……コン、コン。

目は半分だけ閉じている。不意に光を見てしまえば両目とも暫く使い物にならない。その状況は避けておく為にだ。
節くれだった指が棍を緩く打ち据え、更に数度音の波長を変えてより正確な周囲の確認を始める――。

石造りの確りとした通路が続く。床も土がむき出しになる事がなく、丁寧に『作られた』遺跡だと言うのは理解が出来た。
天上はやや高い。オーガ種位ならば背筋を伸ばしても腕を振り回すことも出来そうだ。通路の横幅もそれなりに広く、長物を武器とする場合にも不都合は無いだろう。

壁の所々にはかつて松明や魔法の照明を設置していた、設置されていたと思われる痕跡がある。
また――通路のところどころにある人骨か。何かしらの骨か。
それらが残されている辺り、この辺はまだ平穏な部類なのだろう。
装備品は遺品が無いのは、誰かしらが持ち帰ったと推測できる。
全てを溶かす様なスライムといった生物であれば骨も残らぬだろう。

故に、死ぬ事はあってもそれは理不尽な死因ではない。――足元にあるスイッチを踏めば、床から槍が飛び出るような罠に掛かる事が無ければだ。

「おっと。ふーむ、大分仕掛けが弱くなっているのかのう」

床から飛び出てきた槍も、自分の棍を宛がい角度を僅かに逸らす。天井に突き刺さる――事無く。
乾いた硬い音と共に床に落ちてくる槍は、少し肉厚の足裏を防護する具足があれば鎧にしか傷をつける事は出来ないように思えた。
長年の物により、射出する力が落ちている事を伺わせる。

ゼイヅ > 其の侭足取りは変わらずに先へ、先へ。
遺跡の外に出る事が出来たのはたっぷりと日数が経過してからの事だった。
この時の事を思い出すたびに出てくるのは、食料と女っ気の無い世界こそが地獄であると。
そう悟りを開いたかのように口に出す事だろう。実際に彼が何を食したのかは語られる事なく――。

ご案内:「無名遺跡」からゼイヅさんが去りました。