2016/01/23 のログ
ご案内:「無名遺跡」にリーゼロッテさんが現れました。
リーゼロッテ > 「このぉっ!」

少女の声が遺跡の中に響き渡る。
甲高い声で気合を入れれば、瓦礫の山に岩の弾丸を叩き込んでいく。
しかし、その程度で瓦礫の山は崩れきることはない。
既に魔法の弾を幾度撃ち込んだかも分からなかった。
落胆の溜息をこぼすと、ぺたんと石畳の床に座り込んでいく。

「どうやって帰ろう…」

砲弾の飛び出す罠をぎりぎり避けたは良いものの、帰り道はこの通り、壊れた天井からなだれ込んだ土砂と瓦礫で塞がれていた。
使役獣も、こんな狭っ苦しい場所には助けに入ることは出来ず、お手上げの状態。
このまま出れなくなって死んじゃうかも…なんて思えば、少しだけ青ざめるも、否定するように頭を振れば茶色の猫毛を揺らしていく。

「ここ以外にも…出口に通じているところがあるかもしれないし」

これ以上消耗するのは良くない。
ブルーな気持ちを切り替えようと、ポジティブに考え直せば立ち上がり、奥へと歩いて行く。
途中で分かれ道があったりすれば、そこから出口に通じるはずと。
帰れないかもというのもあって、戦々恐々としたちょっとだけ弱気な足取りで、小さくコツコツと進んでいく。

リーゼロッテ > 奥に進むほど出口から遠ざかる。
けれど進まないといけない。
ジレンマに陥っていく中、たどり着いたのは妙に開けた場所。
なんだろうと踏み込めば、僅かに吐き気を催すほどの強い腐臭が立ち込める。
先程よりも一気に青ざめると口元に手を当ててうつむいていく、
そんな彼女の存在に気づいたのかどうか、開けた場所に置かれていた石棺から、のそりと腐れ果てた死骸が起き上がる。
いわゆるゾンビと呼ばれるものだろう、初めて目にするそれに、青さが引かぬまま目を見開くと、ライフルを構える。

「ぅ、ぁ…っ…!?」

どうすればいい、どうしよう?
困惑する声がだけが溢れる、魔物だし死骸だから…とは言え、人型はやはり戦いづらい。
せめてとライフルの銃口を足へ向ければ、魔法の弾丸を放った。
青白い光が魔法陣となり、弾丸が吐き出されるとゾンビの膝を撃ちぬく。
べしゃりと地面崩れ、藻掻く1体。
しかし、まだまだ数はいる。
ありふれたホラー映画の様な光景は、不慣れな少女にはシゲキが強すぎて…一歩ずつ後ずさりながら、再度魔法の弾丸を構築しようとするも、恐怖のせいで上手く構築ができずにいた。

ご案内:「無名遺跡」にヴァイルさんが現れました。
ヴァイル > リーゼロッテの背後から、遺跡の湿った空気を切り裂いて幾条もの紅い光が奔る。
それは少女へ襲いかかろうとしていた何体かの動死体の頭部や脚を貫き、破壊していく。

「また遭ったな」

振り返るなら、焦げ茶の三つ編みの少年が薄笑いを浮かべて立っているのがわかるだろう。
遭ったことがないはずなのに、どこか聞き覚えのある声と、禍々しい気配。
両手の指の間には紅色の短剣が何本も握られている。ゾンビに投射されたものの正体だった。

リーゼロッテ > 「…っ!?」

背後から通り抜けていく赤の閃光。
それがゾンビを貫き、元の躯に戻していくのが見えれば青ざめた表情は驚きに変わる。
他のゾンビたちも沈んだことだろうか、声がする方へと振り返れば、同い年ぐらいの少年の姿が目に映る。
自分と同じ探検にきたのだろうかと思いながらも、笑みを浮かべていく。

「助かりました、あの…」

その途中でかかった言葉は再開を意味するもの、しかし声と気配は覚えがある。
何より、その三つ編みはあの少女を髣髴とさせるには十分だっただろう。
緊張の色が表情に浮かびながら、彼から離れようとバックステップを踏んで飛びのいていく。

「あなたは…あの時の…っ!」

自分を騙し、弄んだ存在。
何より、魔族というものが嫌いになった根源でもある。
愛らしい表情が険しくなり、本人としては睨みつけるように視線を突き刺しているつもりだが…子供っぽい顔立ちもあって、あまり迫力がでない。

「助けてくれたのは…ありがとうございます」

何はどうあれ、彼は自分を助けたのだからと律儀にお礼は伝える。
しかし直ぐに銃口を向けられるような構えのまま、それを解く様子はなく。
じっとそちらの様子を伺っていた。

ヴァイル > 「なんだ? これだけか。もっと雲霞のごとく這い出てくるものかと思ったが」

広間の奥に目を凝らしたが、暗闇は沈黙で返した。
構えていた短剣は少年の手の中に溶けるようにして消えていく。
険しい視線が自身へと向けられれば、愉悦に笑みを深くする。

「たった一人で随分と深くまで潜ってきたな。
 何か見つけなければならないものでもあるのか?
 ……それとも単に迷ったか?」

感謝の言葉に大して構うこともせずに、自分の破壊した元・ゾンビのもとに
三つ編みを揺らして屈み込み、拾い上げて検分しながら、そんな風に問う。

リーゼロッテ > こちらの視線に嘲笑うような笑みが変えれば、少女とて少々ムッと来るものがある。
相変わらずに警戒を強めたまま、問いかける言葉にそっぽを向きたいところだが…視線をそらしたら何かされそう。
そう思えば、じっとその様子を見続けるしかなく。

「こんなところ…何か用事がなかったら来ないです。迷ってこんな奥までも来ないです」

迷ったというのは出口を失った今としては、半分はあたっているけれど。
彼にそれを言うのは嫌で、口は出さず伏せたまま不機嫌そうに言葉を返す。

「……私に何か用ですか?」

何か仕掛けてくるかとおもいきや、倒されたゾンビの状態を確かめたりだの、何かを探っているようにも見える。
同じ探索にでも来たのだろうかと思いつつ問いかけ、ムスッとしたままに様子を見やる。

ヴァイル > 「は。
 もっと奥に進むのならこんな亡者どもの比にならん魔物と罠が潜んでいるぞ。
 単独で赴くんなら、もっと研鑽してからか、装備を整えてから来ちゃあどうだ」

粘着くような、不快感を煽る声色。

やれやれ、はずれか、などとひとりごちながらゾンビから手を離して立ち上がる。
少年の求めているものはないようだった。

「別に?
 大して得るものもなかったし、そろそろ引き返そうとここを通りかかったら
 品のない動死体どもとへっぴり腰のおまえを見かけただけさ」

冒険者としては軽装にすぎる少年はそう答えると、
未練もなさそうに少女に背を向けて、広間から伸びる通路の一本――
おそらく、遺跡の出口へと通じているのだろう――に向かい、
ゆっくりとした、足取りで歩いて行く。

明らかに遺跡の構造を把握している、確信のある歩き方だった。

リーゼロッテ > 「い、いざとなったら…ザムくんから貰った風の力で吹き飛ばしますから大丈夫です…っ」

前回襲われた時に放った風の力のこと。
ちゃんと力が発揮できる今なら、大体の魔物なら吹き飛ばせるはずと強がったのは、彼の言葉に反抗したいから。
びしっと指差し、不機嫌顔のままに紡ぐ。

「そ、そうですか…」

それなら自分に危害を加えることはないのだろうと思うも、やはり野良猫のように警戒している。
一度犯されかかったのだから、当たり前なのだろうけれど。
あっさりとこちらに背を向けて歩いて行く彼に、安堵の息が溢れるも…先ほどの言葉を思い返す。
引き返すと言っていた、つまり、その道は帰り道だ。
けれど…彼と同じ道を歩いたら何をされるやらと、不安で瞳が揺れ、ぎゅっとライフルを握る。
ついて行くべきか、無理して奥に行くべきか…。

「…無理して死んだら元も子もない、ですからね」

だから帰るのだと、それらしい理由をこじつける独り言。
何が起きるかも分からないが、今は彼の後を追い掛けるしかなく、少し距離を離して彼の後に続く。
緊張した表情は相変わらず、じっとその背中を見つめながら進むだろう。

ヴァイル > 少女が着いてくるのを認めれば、少年――ヴァイル・グロットは
くつくつと喉を鳴らして笑い声を立てる。

「おいおい。随分と心細そうな歩き方だな。
 迷ってないんじゃあなかったのか?」

わざとらしくそんなことを言う。着いてくることを咎めはしない。
こつこつと遺跡の床を叩く針のようなヒールはこれまた冒険には向いていない履物だったが、
ひび割れ隆起する石畳を苦にもしていない様子だった。

「ま、賢い選択だと思うぜ。おまえにしてはな」

いちいち嫌味を口にしないと気がすまないらしい。
迷いない歩調で分かれ道を選択し、角を曲がり、直進していく。
安全な道を選んでいるのか、魔物や罠との遭遇は起こらない。
徐々に空気の匂いが変わっていくことから、出口には確かに近づいていることが察せられるだろう。

ふいに先導する少年が、少女へと踵を返し振り返る。

「にしても、そんなに強張った表情で付いてこられては、
 後ろから撃たれやしまいかと気が気じゃないな。
 近くに来いよ」

心にもないことを口にして、手招きをする。

リーゼロッテ > 「ま、迷ってなんて無いですっ。帰り道が潰されちゃったんですっ」

笑い声が聞こえると、ぐぬぬと何処と無く悔しそうな顔で子供のような反論を返す。
こんなところをヒールで歩くなんて危なっかしいと思うのだが、全く問題なさそうに歩いているのが…少しだけ憎たらしく思えて、不機嫌顔が解けそうにない。

「っ――!! あなた、絶対お友達いないでしょ!」

神経を逆なでする声に簡単に引っかかれば、からかわれた子供のように高い声を少し荒げて噛みつき返す。
絶対そうだ、こうやって偉ぶるから遊ぶ時に友達から省かれるタイプだとか、勝手に考えながら後に続く。
しかし、なんの危なっかしい様子もなく出口が近づくと…嬉しいやら憎たらしいやらで、なんとも言えない表情となり、目元が横一線になりそうだった。

「…あのね、自分に乱暴した人に警戒もしないで側に行く人なんていないと思うよ?」

指で弄ばれたことは未だに引っかかっている。
戯れの言葉に、まじめに答える辺りも歳相応というよりは少し幼い。
ただ、襲う様子がないのも事実で…銃口は相変わらずだが、灯っていた魔法陣の光は消える。
ワンテンポ遅れるかもしれないが、この距離ぐらいならどうにかなると考え、少女なりの譲歩をしながら続こうする。

ヴァイル > 「帰り道がわからなくなったんなら同じことだろう」

涼し気な声で言って、手をひらひらと振る。
そんな風に少女の言葉に柳に風といった調子で受け答えしていたが、
『友達がいない』という罵りに対してだけは、眉をぴくりと動かす。

「はは。
 仲良くしようと尻を追いかけてるやつはいるんだが、どうにもすげなく逃げられている。
 改めるつもりなんざないがね」

声は相変わらず皮肉の色が濃い。
しかし何か思うところがあるのか、少女に向けている表情は
今までと少しだけ異なる、困ったような笑い方だった。

歩みを止め、歩き疲れた、とでも言うように壁に背中でもたれかかり、
横目で少女を見やる。

「そう言うなら着いてこなければいいだろう。半端な奴め。
 ……なあ、どこでもいいから噛ませてくれよ。
 血がないと、ひょっとすれば帰り道を忘れてしまうかもしれん」

いけしゃあしゃあとした言い方。
歪めた唇の奥に牙が覗く。

リーゼロッテ > その帰り道を先に見つけられてしまったからだと言い返したいところだけれど、この問答を繰り返しても、彼に苛々させられるだけな気がしてくる。
ならばここはこれ以上言い返さず、心を押し殺そうとぐっと言葉をこらえて、耐えていく。

「だって、そんなにムッとさせられることばっかり言われたら、だれだって逃げるよ」

完全に敬語が抜けてきたのは、彼に心を許したわけではなく、敬いたくないから。
困ったような笑い方が見えれば、ちょっと言いすぎてしまったかなと少しだけ表情が曇っていき、ごめんね と俯きながら、小さく謝ってしまう。

「半端とかそうじゃないとかじゃないと思うけど…」

悪態とともに壁に寄りかかり、疲れたように血を求めると、そもそもそれで疼いてしまったのを、忘れるはずがない。
半目閉じた疑いの眼差しが、彼に向けられるも…本当なら、二人でこんなところで行き倒れも嫌だ、
と、いうより、彼と終わりをともにするのが、少女と知っては嫌で、じっと見やった後、深くため息をこぼす。

「……あのウズウズさせるのとか、毒とか、痺れるとか、そういうの無しなら…」

ただ血を差し出すだけならと、仕方なく頷こうとするも、身を守るための条件は付け加える。
彼が守るかどうかは分からないが、じっと丸い瞳が見つめ続ける。

ヴァイル > 「あいつはなんのかんので話に付き合ってくれてるから、
 いずれは素直になってくれると思うんだがなぁ……」

顎に手を宛てがって、ふむ、と笑うことも忘れ思索するような様子を見せる。
常にまとっていた邪悪な気配はなりを潜め、ただの年頃の少年のように見えた。

「……ま、おれの生業は過日におまえにしたように、万物を愚弄することだ。
 そんな者に謝るだけ無駄だぞ、おまえ」

しかしその一瞬の後、再び馬鹿にしきったにたにた笑いを見せつける。

「いいぜ。安心しな。
 このヴァイル・グロット、一度取り交わした約束はそれなりに守ることに定評がある」

軽口を叩いて、近くに並べば、ヴァイルの背丈は少女より少し高い程度。
石のように冷たいヴァイルの掌が、少女の手に触れ、持ち上げる。
しばらくその五指を眺め――少し屈み、手を引いて、口を開き、人差し指の先にそっと牙を立てる。
穿たれる傷はごく浅いもので、不思議と痛みはない。
そこから滲む血液に、存分に味わおうとするように舌を押し付け、丹念に無心に舐り上げていく。

以前のような催淫の効果は顕れないが、ちょっとした酩酊に似た感覚はあるだろう。
噛みつくさいに痛みを感じさせないための処置の副作用であった。

リーゼロッテ > 誰かのことを思い出しているようだが、寧ろ…彼の話に付き合う存在が居る事自体が信じられないこと、失礼ながらに丸い瞳を一層に丸くしていた。

「……」

心配して謝ればこれである、特に返事の言葉も出ない。
ただ呆れたような溜息を零して、そうですか と、とても棒読みな声で答えてしまう。
本当に感情のギアがおかしな方向にかかっているのか、それともそういう素振りなのかは分からないが。

「それなりじゃイヤ、ちゃんと守って…」

念押しの声とともに近づいてきた彼に、少々怯えながら様子を見つめる。
細く、小さな手は指が幼子のように細い。
牙の痛みに耐えようと目を閉じるも、何故か痛みがない。
きょとんとしながらその様子を見つめているが、貪りつくように血を楽しまれてもあの痺れはない。
ただ…ちょっとだけゾワッとしてしまうと、俯きながらに頬を赤らめる。
痛み止め程度にやってくれたのかもしれない、そう思うことにして、それ以上強くならなければ、大人しく血を差し出していく。
元々肉類を口にすることが少ない方なので、血の香りに食の影響があるとすれば、えぐみがない綺麗な血の香りだろう。

ヴァイル > 幼い指を口に含んで、それごと血の味を楽しむ。
噛み付いて吸血するという異常さを除けば、暴力性のない行為ではあった。
どこか犬がじゃれつくのに似ている。

「……ふう」

やがて満足したらしく、目を細めて指から口を離し、顔を上げる。
牙を立てられた指に傷は残っていない。赤い跡がわずかに残るのみ。

どこか眠たげな顔をしていたが、何度か瞬きをすると鋭さを取り戻す。
血の味の余韻に浸っていたのかもしれない。

「よし。おかげで英気を養えたぞ。感謝しよう」

にやりと笑い、少女の手を引いたまま有無を言わさず再び歩き始める。
血を飲んで高揚したのか、足取りも楽しげなものに変わっていた。

「ところで、そろそろ名を教えてくれてもいいんじゃないか。
 『おまえ』のままで思い出に留めるにはいささかわびしい物があるね」

そうして歩いていけば、やがて遺跡の出口へとたどり着くだろう。

リーゼロッテ > 指先から血を啜られていき、彼の唇が離れる。
傷口はなく、赤が残る指先を見やれば、不思議そうに傷の跡を探そうと目で追いかけていく。
実際に血を吸ってからは気力が戻ったようにも見えて、本当に血が足りなかったのかもと察していくと、うっすらとやわらかな笑みがこぼれていた。

「どういたしまして…って…!」

そのまま開放されることなく手を引かれてしまう、予想外の事に一層驚きが浮かびつつ、惹かれるがまま。
楽しそうな彼に、思いの外子供っぽいのかもと思えば笑みは深まる。

「そうですね…リーゼロッテです、今日みたいに乱暴しないでくれるなら…いいんですけどね」

今日は前の夜のことは伏せることにした、その方が互いにも良さそうな気がしたからで…。
出口にたどり着けば、使役獣の大きな隼と共に遺跡を去っていくだろう。
たどり着いてから、改めてのお礼を伝えて、夜明けの空に消えていく…。

ご案内:「無名遺跡」からヴァイルさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からリーゼロッテさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にタマモさんが現れました。
タマモ > 少女が歩いているのは、また新しく目にした遺跡の中であった。
この地はこう、この様な場所が多いようで飽きがこない。
もっとも…そう思えるのは、それなりの実力があってこそ、ではあるのだが。
どれくらい進んできただろう、あんまり覚えてない。

ただ、きっと奥へと進めば、またお宝か何かがきっとある。
それだけが期待にあった。
…なにをもってお宝なのか、それはまだいまいち少女は理解してないところがあるのだが。

タマモ > 「それにしても…今回の場所というのは、何も無いみたいでつまらんのぅ?
まったく、こういう時に鬱陶しく思える魔物とやらが居てくれると良い暇潰しになるのじゃが…」

はふん、溜息をついた。
結構深くまで来ているはずなのに、敵の姿一つ今のところ見ていない。
…実のところ、結構な数のトラップがあったはずなのだ。
普通に来ていればいくつかに引っ掛かり、そういった意味では苦戦を強いられるはずなのだが…
少女は不思議とそういった類をすべて綺麗に避けてやってきていた。
段差を踏むタイプのものは程よくそれを跨ぎ、張られた糸はたまたま屈んだりしてすり抜けた。
入れば侵入者を襲う守護者のある部屋は気が向かないと入らなかったりしたりもしている。

「………ん?」

ふと少女は足を止めた、道が左右に枝分かれしている。
その左右の分岐地点で立ったまま、少し考え込む仕草。

「ふむ…こういう時はこれに限るのぅ」

ぽんっと手元に唐傘を取り出した。
それをぴったりと立て、手を離し…倒す。ぱたり、右側に倒れた。
うん、いつもの適当な決め方だ。

タマモ > 唐傘がこちらに倒れた、という訳で少女は分かれ道を右へと進む。
ちなみに、左側には通路一帯が落とし穴になっているようなトラップが設置されていた。
普通に歩き進む少女がもしこちらを選んでいれば、見事に引っ掛かりそうな代物だ。

少女は進む、ただひたすらに通路を突き進む。
その目の前には…こう、明らかに怪しい、作りが少々凝っている扉。
少女は考えなしに手を伸ばし…すぱーんっと豪快に開け広げた。
ごしゃっ…それと同時に聞こえるのは、何かが押し潰された音。
相当年季が入っていたのだろう、勢いよく開けた拍子に扉に施された装飾の一部が外れて飛んだのだ。
それが、本来は開けた途端に開いた対象へと射られるはずだった矢を設置した装置にぶち当たった。
当たり所が悪かったのだろう、矢を発射する部分が壊れている。

こうして、トラップというトラップは少女に何の被害も与える事もないままに奥へとの侵入を少女に許した。

タマモ > 入り込んだ場所はだだっ広い部屋だった。
ざっと見た感じ…うん、宝物庫とは少し違う気がするか?
煌びやかな宝石や装飾品とかが散らばっているという訳でもなく、なんかよく分からない道具っぽいものが飾るように幾つかのテーブルに分けられ置かれていた。
魔力を感じる事が出来るのならば、それらがどれも魔力を宿した道具や機械だと分かるだろう。
…が、少女にはそれを認識できる力は無い。
少女が出来るのは魔力を感知するのではなく、魔力を掻き消す事だけなのだ。

「はて…なんか大層に飾られておるような気がしないでもないのじゃが…何なんじゃろうな?」

適当に手にして、角度を変えて見る。
うん、よく分からない。

タマモ > …ぴくん、不意に少女の耳が揺れる。
部屋のどこかで何かの軋むような音が聞こえた。
次いで、きりきりと何かを引き絞るような音…これは、矢か?

どうしようか?そんな事を考えている余裕は与えてくれない。
ひゅんっ、とその方向から、少女に向かい矢が射られる。
手にしていた金属製の道具っぽいものを持ったまま、ゆらりと少女の体が体一つ分ずれる。
矢は正確に、少女がそのまま佇んでいれば心臓のあった部分を抜けていった。

「危ないのぅ…じゃが、攻撃が正確過ぎて避けるのは楽じゃ…が…?」

そちらへと振り返り、ぴしっと道具を持ってない手で指差してその相手へと言葉をかけるも…途中で止まった。
言葉をかけていた相手が、どう見ても生き物ではない。
前にあったゴーレムとも違う。
なにであるかと少女の浮かぶ言葉で言うならば…ロボットだった。
四本の足をした下半身、バランスは良さそうだ。そして上半身は人型だろう。
ただ、その手も四本あり、しっかりと武器が持たれていた。
武器とはいっても剣だ、さっき自分を射ようとした矢はどこだろう?
警戒しながらも、それがどこから出てきたものなのか首を捻った。

ご案内:「無名遺跡」にリーゼロッテさんが現れました。
リーゼロッテ > 今日も機械を探しての探索に出ていたが、奥に進むに連れて物音が響く。
既に先客がいるのか、それとも何か機械が動いているのか。
恐る恐るという足取りで奥へと進めば、既に開かれたドアを見つける。
ライフルを構えて、銃口に魔法陣を灯す。
また悪い人がいませんようにと祈りを込めながら、出入り口の壁に身を寄せると一呼吸。
ゆっくりと、その奥を覗き込んでいく。

(「ミレーの女の子…? あれは…?」)

狐を思わせるミレー族っぽい娘と、向かい合う鉄の戦士。
四足の異形を見やりながら警戒するも…親しみがあるミレーという種族というのもあって、するりと出入り口を抜けて中へ入り、姿を現す。
銃口は一旦下へと向けて、今はロボットの方へと警戒の視線を向ける。

「あの、あれは…?」

挨拶の前に、彼女の方へあのロボットの正体を問いかける。