2020/05/06 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にラディエルさんが現れました。
ラディエル > 恐らく他に幾つも点在しているのだろう、隠れ里のひとつ、其の入り口近く。
住人であるミレーたちの魔術によって、ある程度の力の持ち主で無ければ、
何の変哲も無い森の中、細く伸びる獣道の傍らで、ぼさっと佇む黒衣の男、という、
其れは其れで怪しげな眺めになっているかも知れないが――――

「………ま、一宿一飯の恩義、ってのがあるからな」

明らかにヤバそうなモノの姿を、少し早めに見つけて知らせてやる、
其の程度の役目を買って出て、己は夜の森に居た。
何も無いでは不安だろうと、古びた木のロッドを貸して貰い、
やはり借り物の、僧衣にも似た黒い長衣を纏って。
――――其れも此れも、怪しい行き倒れの己を拾ってくれた、里の住人の恩義に報いる為だ。
役に立つかどうか、もしかすると己が良い目印になってしまうのでは、と、
思わなくも無かったが――――。

ラディエル > ―――――しかして、もしもヤバそうなモノが現れた場合。
其れ、が魔族であれば、己の眼は其の姿を、種族を、はっきりと認識するだろう。
然し、もしも相手が人間であれば―――そいつがどんなに悪辣でも、
此の眼は相手を人間であると認識する。
そして、何れにしても、己に彼らを捕縛、あるいは撃退する力など、
端から備わっていないのだ。
と、いう訳で―――――

「いざとなりゃ、俺が殺されてる間に逃げろー、て言うしか無いやね」

用心棒でも斥候でも無く、生贄、とでも自称しようか。
里の住人たちは、己が魔術を操ると信じているようだったが、
―――――ちらり、指輪の嵌る左手を一瞥すれば、掌にはもう傷は無く。

「……血を媒介にする魔術、とか、こっちの国じゃポピュラーなのかね。
 意外な程あっさり信じたな、皆」

何のことは無い、有り体に言えばペテンの類である。
己の血液に宿る力を、子供の擦り傷に分けてやっただけのこと、で。
―――――我ながら、大した偽善だ、と笑うしか無い。

ラディエル > 「―――――、と」

蟀谷辺りへ微か、引っ掛かる感覚。
佇む姿勢は変えず、顔の向きも変えず、視線だけを巡らせて、
―――――少し先の木々の間、自然物とは思えぬ色合いの何かが動くのを見た。

「………マジか」

思わず呟き洩らしてから、仕方無い、とロッドを握り直し。
足音を忍ばせて数歩、里とは真逆の方へ距離を取ってから、
―――――態と、足許の小枝を踏み躙った。
パキ、と響く乾いた音に目を細めて、――――走り出す。

兎に角里から少しでも離れて、少しでも己に引き付けるよう。
後のことは、――――後でゆっくり考えることにした。

ご案内:「ミレーの隠れ里」からラディエルさんが去りました。