2018/12/20 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にレイカさんが現れました。
レイカ > 「……さすが、いい仕事をしてくれますね。」

頼んでいた鎧を眺めた後、私は一人でその鎧を着付けした。
薄い朱色の鎧だけれども、以前までつけていた銀色のブレストプレートアーマーよりも軽い。
それでいて、護っている場所はそれよりも多い。
スケイルメイル、特別製ののスケイルメイルにそでを通し、私はうなずいていた。

首には、少し太めだけど蛇よりも短い、私の友人が乗っている。
いろいろとあって、ここの里の防衛に協力してくれている友人を首に巻いたまま、私は外に出た。

少し寒い……はずなのに、それをあまり感じない。
この鎧が発している、わずかな熱のおかげなのだろうか。
少し歩いても、鎧は動きをほとんど阻害しては来なかった。

私は、見張りのミレー族の人に告げる。

「少し出かけてきます、何かあったらいつものようにドリアードに伝えてください。」
『了解しました、行ってらっしゃいませ、レイカ様。』

もうすっかり、私はレイカ『様』と呼ばれるようになっていた。
最初こそ照れてしまっていたけれども、どうやら慣れてしまったようだ。
軽く右手を振ってから、私は里の門をくぐり…森の中へと跳躍した。

ご案内:「ミレーの隠れ里」にジーヴァさんが現れました。
ジーヴァ > 大樹が日差しを覆い隠し、獣の鳴き声や飛び交う精霊が宙を舞うこの樹海は、
まさしく天然の要害と言えるだろう。
その中を一人、ジーヴァがローブをはためかせてある使命のために走り抜く。
ギルドから与えられた肉体強化の秘薬によって向上した身体能力を使えば、
障害物だらけの道のりも風切り音と共にたやすく越えていけるのだ。

「マスターからの直々の命令とはいえ……本当にこんな場所にミレーの里があるのか?
 隠れ里と言っても、もっとマシな場所に作るだろ……」

疲れはさほど感じないとはいえ、景色の変わらない森を進み続け、少しだけ開けた場所に出る。
相変わらず人影も建物も見えないが、少し休もうと彼は考えた。

「精霊はたぶんドリアード、ドライアドなんだろうが……数が多い気がする。
 いざ戦うことになれば……逃げるしかねえな」

地面に露出した木の根に腰を下ろして、革の水筒から水を一口飲み干す。
ギルドマスターから与えられた仕事。それは、この樹海にあるミレーの隠れ里を発見することだ。
噂にすらならない隠れ里、最後の秘境。そこにどんな秘伝があるのか、ジーヴァは少しだけ期待していた。

レイカ > ………軽い。軽すぎて、私が宙に浮いているようだった。
動きを全く阻害させずに、木々を飛び回れるのに、少しだけ嬉しくなってしまった。
全の銀製のプレートよりも軽くて、防御はむしろこちらのほうが上。
ダメージに対する体制も高くて…やはり、さすがというべきだろう。
首に巻いている友人の頭を撫でながら、私は里の周りを見回るように、木々を飛び移っていた。

「ふう……、いい鎧ですね。」

少し呼びかけるように、私は笑みを浮かべていた。
本当にいい鎧だ、この鎧を提供してくれた彼女に、お礼を言いつつ。

そんな折に、ドリアードからの呼びかけがあった。
この時期は、ドリアードの力が弱まる傾向にあるためだろう、迷いの森が機能していない。
人間と思わしき人物が一人、どうやら里を探しているらしい。
マスターという単語からも、何か嫌な予感がする。

「……………いいでしょう……。」

今なら、なんだか負ける気がしない。
私はすぐに、木々を跳躍してその人物のもとへと向かった。
今までなら、多少木々を揺らすこともあったそれが…ほとんどない。
以前、私を育ててくれた人いわく、木々を揺らさずに飛び回れば一人前だといわれた。
それができるようになったのも、嬉しい。

さて……。
私はその人物の真上から、声を落とす。

「そこのお前!このドリアードの森に何用か!
ここは、おいそれと人間が立ち入っていい場所ではないぞ!」

ジーヴァ > 真上から響く声に、思わず革の水筒を地面に落とす。
零れた冷水を嘆くこともなく、ジーヴァは声の主を見上げた。

「俺の名は三つ星のジーヴァ、魔術師ギルド『アルマゲスト』からの使者だ!
 ここにミレー族の里があると聞き、共に手を携えるためにやってきた!」

木の上に立つ彼女は弓矢と軽装鎧に身を包み、微動だにしない身体からは
ここでの生活に慣れていることを伺わせる。
感知できる魔力もかなりのものだ。おそらく、精霊との契約を結んでいるのだろうとジーヴァは予測する。
ここでの戦闘を避けるために、できる限りの語彙を尽くして村への案内を頼もうと試みた。

「俺たちは人間の集まりじゃない!種族を問わず、知識を求める者の助けになるものだ!
 村へ案内してくれ!」

交戦の意志はないというように、魔術師の武器である銀の錫杖を取り出して地面にゆっくりと置く。
さらにフードを脱いで顔を晒せば、常人にはない魔眼めいた真紅の瞳が彼女を見つめることだろう。
これ以上の武器はないというように両手を高く上げて、彼は守り人の出方を伺った。

レイカ > 「魔術師ギルドだと………?」

私は木から飛び降り、その少年の前に立つ。
その魔力の大きさを感知できるならば、この魔力は一つのものではない、それがわかるだろう。
そしてその魔力、膨大な魔力の大半は、首にかかっている生物から発せられていることにも、すぐに気づくだろう。

「俺”達”ということは、お前だけがこの森に入っているわけではないということか?
…知識を求めるものの助けというが、その実という例もいくらもある。
村へ案内することはできない、このまま立ち去るがいい。」

魔術師ギルト、要は王都のギルドの一角。
奴隷ギルドとのつながりはないだろうが、ギルド…と名前がついている以上、貴族の息がかかっていることを否定できない。

あの村は、結界がないのだ。
だから、おいそれと知らない人物を案内することはできない。

ジーヴァ > こちらの目の前に降り立った彼女は警戒心を崩さない。
それを表すように、彼女を取り巻く魔力は渦巻いて収まらず、
首に巻かれた生物から放たれているのが感じられる。
見えない圧力に下がりそうになる足を堪えながら、まっすぐに彼女と対峙した。

「……いや、今回入ったのは俺だけだ。
 それと、誤解を解くために言わせてもらうぜ。
 王都のクソ貴族共が金出してるところとは違って、俺たちは純粋な一つの目的から生まれた。
 それは――星々が住む空の向こうに至ること」

周囲を取り囲む精霊たちの視線めいた魔力の圧力は空気を重くし、
警戒心と敵意に満ち溢れた雰囲気が二人を包む。それでも彼は一歩踏み込んだ。

「案内してくれるなら、魔術の教育から結界の構築までやってやる。
 あんたらが払う報酬はこの森に生えてる植物とか実験への協力でいい。
 ちょっとだけ魔力を貰ったりするだけだ」

もちろんギルドマスターからそこまでの権限は与えられていないが、
ジーヴァには最低限の知識はある。いざとなれば、大書庫から必要な本を引っ張り出せば
なんとかなるだろうと考えていた。
それに精霊がここまで多く棲む森ならば植物も多量の魔力を含み、貴重な材料となる。
常に調合や研究の材料の確保に悩むギルドにとっても美味しい話ではあるのだ。

レイカ > 「…………今、なんといった?」

星々が住む空の向こう側へ行くこと、つまり空よりも高い場所へと至るような研究をしている。
それを目的として、貴族からの献金を受けずに活動しているギルド。
なるほど、私がいない間に街ではそんなギルドも立ち上がっていたのか。

いや、今はそんなことはどうでもいい。
先ほど、聞き流すところではあったが……決して聞き捨てならない言葉を聞いてしまった。

結界の構築を報酬として行う…。
つまり、すでに私の里は町へ情報が完全に漏れているということになる。
なるほど…もはや案内しようとしまいと、里の場所が割れるのは時間の問題だったか。
おまけに今は、ドリアードの力が弱まる時期。私は頭を抱えたくなった。

「……私の里は、その王都のとあるギルドから逃げてきたものばかりだ。
案内はしてやる、だが結界の設置は必要ない。…私達には、それよりも強力な防衛戦力がある。
そして……お前たちのその計画に協力はしない、私たちが欲しいのは、空へ上がるための術じゃない。」

夢をかなえたいなら好きにすればいい。
ただ、私たちを何かしらの闘争に巻き込むつもりならば…この首に巻かれた彼女が、容赦はしない。

ジーヴァ > 案内はしてくれるということで話は落ち着いたようだが、
彼女が警戒を崩すことはない。
外部の人間をここまで入れたがらないとは思わなかったが、
どうやら自分たちより先に里と協力関係を結んだ者がいたらしい。
マスターからはこれで及第点を貰えるだろうが、ジーヴァはそこからさらに踏み込んでいく。

「……王都からのミレー族……結界に頼らず精霊や他の奴に守りを任せる……
 元奴隷か、それなら尚更魔術を学ぶべきじゃねえか?」

地面に落とした銀の錫杖を手に持ち、フードを下ろして目深に被る。
いつもの格好に戻ったところで、彼女にもう一度質問を繰り返す。
結界で隠れ住むミレー族たちとは違い、彼らに知識はないのだろう。
ならば学ぶべきだ。幸いミレー族の魔術に関する本も大書庫には存在する。

「俺たちはあらゆる知識を収集する。
 ミレー族の魔術も勿論写本として残ってる。全部じゃないけどな。
 ……協力が嫌なら、一冊ぐらいは置いておくぜ」

そう言ってローブの裏から取り出したのは、一冊の黒い革表紙が目立つ分厚い本。
内容はミレー族の魔術について書かれたもので、初歩的なものが多く詳細に書かれている。