2018/10/22 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にレイカさんが現れました。
■レイカ > 森の中にも、どんどんと枯葉が目立つようになっていた。
すっかり冬の装いに近づいていく森を、私は今日はゆっくりと歩いていた。
見回りなのだが、別の理由はこうしてドリアードたちとの会話。
食料も安定して手に入るようになり、手に入りにくかった医療品も今では簡単に手に入る。
ここまで安定するようになってしまうと、次に考えることは里の拡大だろう。
本当はそんなこと、私はするつもりなんかなかった。
ただ、皆と平穏に暮らせる場所が欲しかっただけ。
その平穏が手に入った今…私は次に何をすればいいのだろうか。
「………ぜいたくな悩みなんでしょうか…。」
里を守っていく、当然のことだ。
里を大きくして、この場所を町として発展させる。
騎士団に目を付けられているのに、そんなことをして大丈夫なのかと不安になる。
あの里を、住処を追われたミレー族の駆け込み寺にする…。
今は、それが一番いいんだろうけど、どうやってそれを周知させればいいのだろうか。
悩みは尽きないかもしれない…。
ご案内:「ミレーの隠れ里」にヒビキさんが現れました。
■ヒビキ > その依頼を受けたのは、ひょんな偶然が重なった結果であった。
討伐依頼を終わらせて王都に戻る旅の途中、山賊に襲われている行商人を助けたヒビキは、近くの村まで彼を送り届けた所でとある頼みを受けたのだ。
聞けば彼は、山奥の小村への行商の途中でトラブルに見舞われていたらしい。
荷馬が傷を負い、行商を続けられなくなった彼ではあるが、その小村は秋に植えるための植物の種を待ち望んでいるとの事で、それだけでも届けたいというのだ。
道中の会話でヒビキの為人を信頼した行商人は、麻袋に入れられた種をサムライ娘に託し、どうか小村へと届けてほしいと報酬も全て前渡しにして頼んで来たのである。
そんな依頼を受けたヒビキは、手書きの地図に描かれた酷く複雑な経路をたどり、今現在、獣道としか思えぬ森の細道をミレーの隠れ里に向けて進んでいるのである。
まだ若い娘とは言え、使い込まれた異国の武装は荒事を生業とする者に特有の油断の無さを滲ませて、基本的には顔見知り以外近づく事のない隠れ里へと真っ直ぐに近付いていく。
その姿は隠れ里の防衛を担う者に、強い警戒心を抱かせる事となるだろう。
■レイカ > さて、そろそろ里に戻ろうか。
そんなことを考え始めた矢先に、ドリアードたちがざわつき始めた。
このあたりの森は迷いやすく、そして里へはそう簡単にたどり着けないように細工してある。
その森の中に、私の知らない誰か。ひいてはドリアードの知らない誰かが足を踏み入れる。
そうなると、すぐにドリアードの包囲網を伝って、私に伝わる。
敵意があるナシはわからない。
ドリアードが伝えてくれる情報は、ただそこに誰かが近づいていることだけ。
だが、そこに誰かが近づいているならば、すぐにでも行かなければならないだろう。
私は、その場から飛び上がり木々を飛び渡って、すぐにそのものの真上に来る。
…まず、わかったことは一つ。大きいということだ。
小柄な私だが、その大きさは少しうらやましくもある。
「……どなたですか、ここはあまり人の立ち入っていい場所ではありませんよ。」
最近の私は、殺気を随分と抑えられるようになっていた。
里が安定したからか、それともここのところあまりそういった事情になっていなかったからか。
ともかく、私はその人の目の前に降りて、距離を開けたままそう尋ねた。
■ヒビキ > 後ろ頭に括った長い髪は、異国情緒の強く漂う艷やかな漆黒。
一見無造作な歩みの中にも油断無く周囲に走らせる切れ長の双眸は、横一文字に引き結んだ唇の作る無表情も相まって怜悧なまでの美しさを湛えている。
スラリと高い長身は余程に鍛えられているのだろう。
ちょっとした挙動の中にも、野生の肉食獣を思わせるしなやかさが見て取れる。
その癖、緋色の"着物"に包まれた体躯と来たら、胸やら尻やらたわわに実った見事な肉付きが過剰なまでの色香を漂わせてもいた。
大凡、人気のない森の中に一人で分け入るにふさわしい人物とは思えぬ物の、纏う装具はどれも業物。その上、相当に使い込まれている。
そして、その娘の腕の良さは里の守り人たるエルフが近付く少し前から足を止め、黒曜の双眸を真っ直ぐ樹上に向けている所からも伺えようか。
軽装のエルフからの声掛けにも、樹上からの軽やかな着地にも動じる事のない無表情は
「――――…ヒビキ。この先に、用がある。」
年相応にトーンの高い声音で端的な答えを返した。
警戒心など滲ませてはいないものの、弓矢を向ければ斬り殺される。
そんな背筋の凍る未来を感じさせる、油断のならぬ立ち姿。
■レイカ > 「……………この先に、ですか?」
私は、その出で立ちを注視していた。
私も多少なりとも、戦う術は身に着けている。
その頭の中でわかる、この人の周りの空気は、まるで氷のように冷たい。
確か、間合いという表現ができるんだったか…あの着物の姿の場所では。
殺気はない、警戒心も感じない。
だがその間合いに入れば、おそらく私は非常に不利な戦いを強いられるだろう。
同じ近接戦でも、私は体術だが相手は剣術。
長いほうはともかく、あの短いほうは少し厄介か。
なんて考えているものの、この先に…里に用があるならば通すわけにはいかない。
「ヒビキさん…で、いいのでしょうか。この先には何もありません、お引き取りください。」
何もないというのは嘘だ、この先には私の里がある。
そして何より…私は別にこの人に対して、怖いだとかそういう感情はない。
やはりそこは、一度心を壊したからか…この程度の”冷たさ”では物怖じすることはない。
■ヒビキ > 小柄で華奢なその体躯。赤紫の髪からツンと突き出た長耳や、ギラギラと激しい敵愾心を滲ませる双眸の苛烈さを差し引いても非常に整った美しい容貌は、彼女が森の妖精族―――エルフなのだとヒビキに知らせた。
「―――…そう、この先。」
これから向かう小村については、決して他言しないでほしいとしつこいくらいに念押しされた。
こんな場所で、旅装とも思えぬ軽装にて出会ったからには、彼女は近くに居を構えるエルフなのだろう。
目的地たる小村についても恐らくは知悉していようが、万が一という可能性もある。
うかつに口を滑らせるわけにはいかなかった。
「…………………」
エルフの物言いに、サムライ娘がス…と双眸を細めた。
どこか超然とした無表情の小さな変化は、それだけで周囲の温度が数度下がったかの様な錯覚を与えるだろう。
「――――……何も無いなら、通せんぼを受ける謂れもない。」
一方的に言い放ち、むっちりと肉付きのいい脚線が無造作に歩みを再開しようとする。
■レイカ > 「そうですか……。」
一瞬だけ足が動いた、そしてその先にある気配が一層鋭くなる。
間合いが動く感覚がわかる、どうにも私の体が、やはり戦いに慣れているのだろう。
一歩だけ動いたその足が、一気に周りの温度を”下げる”。
戦うしかないかな、そんな考えを私は持つ。
いつでも弓に手をかけられるように少しだけ後ろに重心を置く。
幸いここは森の中、森の中は私のテリトリーだ。
力で負けても、技術で勝てる場所ならば…まだ互角に渡り合えるだろうか。
「…何もないから、このまま回れ右して帰るという選択肢もあるはずですよ?」
近寄ってくる、その姿。
身長が160にも満たない私にとって、彼女はまさに壁だった。
見上げるほどの大きさというわけではないが、近寄ってくるだけでもやはり圧迫感はすごい。
■ヒビキ > 儚げな細身の奥に内在する烈火の如き殺気こそ魔物じみているものの、彼女はまだ修羅に堕ちた訳ではないのだろう。
善性を残した有り様は、清廉さすら感じられる。
なればこそ、老若男女の区別無く敵対者を撫で斬りにするサムライ娘も、彼女の命を奪うつもりは無い。
しかし、サムライ娘の鉄面皮はどこまでも怜悧に温度を遮断し、極端に口数の少ない淡々とした声音もまた、戦闘回避の助けとはならぬのだ。
「―――…言ったはず。私は、この先に用がある。」
雑魚ではない。
恐らく、並の冒険者程度ならば瞬時に無力化出来るだけの実力の持ち主だろう。
細身に纏わりつく妙な気配は、精霊の加護の類。
苛烈な炎を内に秘めた双眸にも、何かしらの力を感じる。
しかし、それでもヒビキの歩みを止める程の手練では無いだろう。
ゆらりと持ち上がった双腕が黒色の籠手を背負った長物の柄に沿える。
―――…ジャコンッ。
妙に機械的な音と共に精緻な装飾の施された長鞘が、肩に担がれた水平位置にて固定される。
チリチリと肌を焼く緊張は、吹きすさぶ秋風すら歪める様。
一触即発の気配の中、止まらぬ歩調が悩ましく揺らす双乳のたゆんたゆゆんという柔らかな動きはいっそコミカルな程に場違いだ。
神速の踏み込みを持ってしても長刃の届かぬ安全距離。
しかし、まさにこの瞬間エルフの細身が刃圏に入る。
それに気付けるか否かが、彼女の実力を図る最初の試金石となるだろうか。