2018/09/18 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にレイカさんが現れました。
レイカ > ここのところ、どんどん空気が冷たくなっていく。
秋が近づいている、というよりもどんどん冬になっていくという空気を、私は感じ取っていた。
去年までならば、食べ物をどうしようかとか悩んでいたけれども、今はそんなこと、心配するほうがおかしい。
食糧庫には、この村全員で食べたとしても冬を乗り切れるだけの貯蓄がある。

勿論、その対価も総出で作っている。
最近、新しい小屋を建設して…そこで蚕を育て始めた。
あの蟲の繭は、上質な布の素材になるから、取引材料になる。
新しく迎え入れたミレー族の人から教えてもらった、古い知恵だ。

それを横目に見ながら、私は一枚の羊皮紙に目を通していた。

「………隷剣会か………。」

奴隷と一般人を戦わせて、勝てば開放、負ければ屈辱…。
ダイラスで手に入ったというそのお知らせを目にしながら、私は肩をすくめていた。

「要は、体のいい貴族の遊びのようなものか……。」

レイカ > ダイラスの闘技場での一大イベント、のようにも書かれている。
だが、よくよく見れば奴隷には”開放”という最大のえさをぶら下げて、その実は…。
武器だってそうだ、一時的に返してくれるといいつつも手入れされていない武器ほど信頼できないものはない。

私も、弓矢を使うがそれの手入れを怠ったことはない。
奴隷として扱われ、おそらく体力も全盛期ほどは期待できないのも目に見えている。
結果が見えている出来レースのようなにおいを感じ、私は半眼を禁じえなかった。

そのあとに書いている、隷属の会にしてもそうだ。
金にうるさい奴隷ギルドが、そんな大損するかもしれないようなことをするとは考えにくい。
貴族の差し金があったとみてもいいだろう。

「…………昔の私ならば、行ったかもしれませんね…。」

私は軽く、笑いながら独り言ちた。
いや、ごちたというよりも…まるで行かないのか、というような視線を投げてくる、傭兵団に向けた言葉だった。

今の私は、そんな正義の味方のような嗜好は持ち合わせていない。
やるなら勝手にやれ、私には関係ない。
ただ、その言葉しか出てこなかった。

レイカ > 私は正義の味方じゃないし、そういうことならばどこかの正義感の強い団体が勝手に行くだろう。
それで身を亡ぼしたとしても、私には関係のないことだ。
今はただ、この里を守っていかなくてはならない。
外の世界に関しては、私は今は一切のかかわりを持たないようにしているのだ。

勿論、時折訪ねてくる支援者にも、この里のことは口止めしてもらっている。
懸念材料があるとしたら…今はまだ音さたのない騎士団くらいか。
いつ、こっちに攻め入ってくるのかが読めない以上…どうしても警戒は怠れない。
まあ、そのよそでこうして里を拡張していっているのは…秘密だ。

「……あ、そこが終わったら一度休憩してください。
中で冷たいものでも入れるので、一息ついてからにしましょう。」

ある程度の作業が終わったと、里の人が報告してきた。
私は顔をあげて、その言葉に次の指示を出す。
慌てる必要はない、季節が変わるまであと2月ほどの時間がある。

蚕を育てる小屋は、もう少しで完成というところか…。

レイカ > 「……あ、この羊皮紙、燃やしておいてください。
子供たちに見られたら、きっといろいろと聞かれると思いますよ?」

私は、羊皮紙を傭兵団の一人に渡した。
これはさすがにみられるわけにはいかない…特にヒーローごっこが好きな子供たちには。

……だが、私は驚いた。
そういった自分の声が…いやに冷たかったことに。

ご案内:「ミレーの隠れ里」からレイカさんが去りました。