2018/07/08 のログ
ご案内:「ミレーの隠れ里」にイナリさんが現れました。
イナリ > ×月×日 曇り時々雨
あれから何日経ったのでしょう
何ヶ所かのミレー族の方達の里を巡り、許可を得て社を建てさせて頂きました
稲荷神様の信仰も少しは得られ少しは安心出来るものです
ミレー族の方以外との出会いもありましたが…
ここでは人間の方はよく思われておりません、その理由をはっきりと理解する形となりました
残念な事ですが、それも仕方ない事なのでしょうね
残す里もあと僅か、そこにもまた社を建てさせて頂ける事を願いましょう

かたりと机代わりにした平らな岩の上に筆を少女、墨が乾くのを待って日記を閉じる。
ここはまた違う隠れ里へと続く道、新たな社を築く為に訪れていた。

「もう少しで到着でしょうか…次の隠れ里も無事であれば宜しいのですが」

そう呟き、緩やかに立ち上がる。

イナリ > 信仰とは、それをまず得るのに敬う心に到る事は無い。
その存在を、まず信じる事が始まりである。
信じる心を持つ事で、敬う心に到る道が生まれるのだ。
だから、まず存在を伝え、広める事が大事である。
社はその足掛かりの一つ、そう考えて貰いたい。

「ともあれ、何事も無く到着すれば良し…ですわね」

続く道なき道を確かめるように、少女は進んで行く。
今のところ、なんだかんだで調子は良い。
その調子の良さが、なんとなく怖くもあるのだが。

イナリ > 「………そうですわね。
事が上手く進んでいる時に、障害は起こるものなのですわ」

不意に少女の足が止まり、ぴこん、と耳が揺れる。
その視線は進む先、木々の茂む場所へと向けられていた。
ミレー族の方達の天敵、そう言えるだろう人間。
それとは別に、この世界に生存する上で危険とされる存在。
…それが、魔物と呼ばれる存在。

その言葉に反応するように、がさりと茂みが揺れる。
人間を優に超える巨体を持ち、その巨体に釣り合った怪力を持つも乏しい知性。
それに加えて食人種であり、凶暴性も高い…姿を現わしたのはオーガーだった。

「困りましたわね、私としては、余り手を下したくはありませんのよ?
出来る事なら、大人しく身を引いて…」

ふぅ、と溜息を吐きながら、考えるような仕草をとって言葉を掛ける。
が、それを待ってくれる魔物ではなかった。
手にした棒切れと言うか、棍棒と言うか、そんな獲物を振り上げ、少女へと打ち下ろす。

「…なんて、待って下さいませんのね?
これだから、言葉の通じない相手は困りますわ」

それは少女に当たる事はなく、ただ地面を打った。
少女の姿はその場にはなく、その攻撃を避け、宙を舞っていた。
そのまま少し距離を置いて、すとん、と着地をする。

イナリ > どうしたものか…そうやって、考える余裕はある。
だが、魔物はその手を止める様子は見せない。
獲物を振っても、叩き付けても、少女にはかすりもしない。

「その攻撃、当たらないのはご理解頂けません…ですわね。
うーん………どうしたものでしょうか?」

とん、と身軽に攻撃を屈み避けながら、ぱんっ!と脛に蹴りを打ち込む…が、効かない。
続け様に足払いを仕掛けてはみるも、打ち抜けない。
身丈の問題もあってか、相手に対しての己の攻撃は軽過ぎる。

「ふぅ…力を出すのは、不本意ですの。
出来るならば、当たらない時点で引いて欲しかったですわ」

その言葉と共に、少女の金色の瞳が強く輝き始める。
次の瞬間、ふっ、とその姿が消え…

「時期が時期ですもの、風邪に掛かる事はないと思いますわ。
それでは…ご機嫌よう」

その姿は、気が付けば魔物の肩の上、その手が首筋にそっと添えられていた。
ぐらり…魔物の体が大きく揺らぎ、ずどぉんっ、と大きな音を立てて倒れてしまう。
少女はその前に肩から離れ、ふわりと側に着地をした。

イナリ > ぱんぱん、と服を払う仕草。
僅かに乱れた巫女装束を整え、軽く一礼。

「さて…それでは、先に進みますわね」

倒れた魔物は、しばらくすれば目を覚ますだろう。
そうなる前にと、少女はさっさとその場を後にするのだった。

ご案内:「ミレーの隠れ里」からイナリさんが去りました。