2018/06/05 のログ
レイカ > 「……ヌレヌレセンベイタケ……?」

……ああ、なるほど。
この人はどうやら…何かを探しているらしい。
肩をすくめ、私は軽く笑みを浮かべた。
ふっと、その時に殺気を収めておこう。

「ああ、なるほど…そのキノコだったら生えている場所を知っている。
案内しよう、本当はもう少しだけ育ってから食べるつもりだったんだが…。」

私は、里を横切るルートを指さした。
そっちは樹海の道、森のさらに奥へと向かう道だ。

「珍しいキノコだが…、実は生えている場所にある法則があってな。
その法則さえつかんでしまえば、見つけるのはたやすいんだ。」

確かに冒険者のようだ。
いちいち警戒していた自分が馬鹿らしいとさえ思えてしまう…。
肩をすくめて、私は樹海の道を示した。
彼が先に行ってくれるならば、私はそれの後についていくつもりで。

ヴェルム > 「!!…おお!ありがとうございます!」

そんなキノコなど無い。
しかし彼女はあると言い切り、森の奥を指し示す。
そう簡単に里の中を見せるとは思っていない。
だが「君は騙されたんだ」と言ってくれれば、まだ心象は良かったが。

「ご安心下さい、たくさんは採りません。
一つ二つでも十分に財になりますから!
ではぜひ、案内をよろしくお願いします」

ともあれ、まずは相手に話を合わせる。
キノコのある場所を指し示して貰えれば、そちらのほうを興味深く観察し、案内までしてもらえるとあればこれ以上心強いものはないと。
彼女の示すルートに従い、樹海の道を歩き始める。
警戒も解かれ殺気も放っていないが、油断はできない。
こちらはすでにあの「防壁」を見てしまっているのだから。

「それにしても、このようば所に集落があるとは思いませんでした。
どのような名前の村なのですか?」

さも雑談とばかりに彼女に里について伺う。
何も知らない冒険者という振る舞いなので、あれがミレーの隠れ里など知るよしもないし、彼女もそれについて話すこともないだろうが。

レイカ > 「なに、気にすることはない。」

…ここのところ、いやな来客ばかりだ。勿論、仕方がないといえば仕方がない。
私たちとこの国の関係を考えれば、それこそこうなるのは目に見えていた。

だが、あの場所にとどまっていても結果は変わらなかっただろう。
だからこそ私は戦うと決めた。
たとえどんな相手でも。

「……名前は特に決めていない。
何しろこんな樹海だ、誰かが訪ねてくることなんか極々まれなことだから。
私たちは、私たちだけで生活しているよ……。」

防壁を作っておいて、それを見られたら「私が一人で住んでいる」は通らない。
だから、規模は言わずに複数であることだけは伝えた。

さて…もう少しだけ進んだら、そろそろいいだろう。

「それで……そんな演技までして一体何の用だ?
わざわざありもしないキノコの名前を出してまで、あの里のことを調べたんだ…。
もしかして…先日消えたミレー族の里が関係してるのかな…?」

風のうわさで耳にした…あの星の聖猫派に加担していたミレー族の里の末路。
私は強気な笑みを浮かべ、相手に挑発的な視線を投げかけ。

樹海の中で、私と彼は二人っきりだ…。
ここならば、お互い隠し事も何もいらないだろう…。

ヴェルム > 「いやはや、そうでしたか。
名前があったほうがいいと思うのですが、まぁ外野の僕がいうことではないですな」

たいてい、集落に名前をつけないのは憶えにくくするためか、移動を余儀なくされる場合があるときくらいだ。
ミレー族の里であればなおさらだ。
女性の案内を受けながら、いかにもわくわくとした感じを出したまま樹海の道を歩いていく。
キノコを求めてやってきた冒険者として、群生しているキノコがどこにあるかと熱心に周囲を見渡している。
不審なほど樹海の奥へ奥へと向かっていても。
そこでようやく、彼女は本題に入った。

「へ?
ありもしないって…そんなわけないでしょう、貴方もあると言っていたではありませんか。
それに演技とか、ミレー族とかどういうことです?」

まぁ、案の定というやつだ。
だがまだひっかけの場合もある。
だから間抜けで情熱的な冒険者を続けることにする。
さも困ったような表情で苦笑いを浮かべながら、強気な彼女の雰囲気に圧されて後退りする演技を。
そう、いよいよという状況になるまでは。

レイカ > 「あいにくと…私はわりと……本気で人間が嫌いなんだ。
特にうそつきは…殺したくなるくらいにな。
まあ…嘘に関しては私も嘘をついたんだから、お相子だな。」

私の目は…たぶんとても冷たく映る。
そう、私はうそつきは嫌いだ…今まで何度も嘘をつかれて生きてきた。
ミレーの楽園…そんな言葉に騙されたこともあった。
そして、その嘘を平気で着く人間も…大嫌いだ。

「どういうことかと聞くのか……まあいい。
完ぺきな演技だから逆に怪しすぎるよ…、もう少し考えるべきだったね。」

完璧すぎるからこそ、逆に怪しかった…。
立ち止まって、私はそっと耳飾りに触れている。
それだけで、この森の中は…騒がしくなるだろう。

「……話してもらおうか、君の目的を…。
さもなくば…この森全体と一戦、やりあってみるか?」

ヴェルム > 「…そうか」

どうやら、彼女は本気らしい。
いよいよ…というやつだ。
短い言葉だったが、それが答えになっただろう。
演技には自信があった、それを見破られたのは、ただの人間嫌いから来る不信感だけではないだろう。

「逆に聞きたいな、君は何者だ?」

ただのエルフではない、密偵の訓練を積んだ者の演技を見破る能力は、それに関わる立場にいたことを示す証拠。
彼女は、軍に関わっていた人物ではないだろうか。
背負っていたリュックを地面にぼとりと落とし、森のざわめきに耳を傾ける。
なるほど、彼女は一人ではないということだ。

「どうしようかな…
でもやり合ったらお互いに痛い目にあうかもしれないよ?」

演技をやめた男の雰囲気は、あんまり変わらなかったかもしれない。
彼女の冷めた姿を見ても、どこか余裕そうな、あるいは何も考えていないような佇まいで。
戦いになったとき、彼女は勝てるだろうか。
本当に単独か、何か仕込みでもあるか、いろいろな考えを張り巡らせているだろう。
少なくとも、彼女の質問には答えない、まだ。

レイカ > 「……ただの、偽善者だよ。」

その問いに、私の答えも短かった。
名前を名乗るつもりもなければ、何より私が何者なのかをしゃべるつもりもない。

「質問に質問で返すのはあまり感心できないな。
もっとも、私も君が何者なのかを知りたいと思っているところだ…。
でも、できるなら穏便に済ませたいし、何より里のことをしゃべられるのも困る。」

彼の雰囲気に、私はむしろ安心を覚えた。
そしてこれで確定した、この目の前にいる相手は敵だ。
だったら私も、容赦するつもりなんて全くない。

痛い目を見るかどうかは、やってみないとわからないだろう。
わざわざ里から離れたのは、単純な話だ。
子供が見ているから離れたところにいたい、ただそれだけだ。

「…一戦遣り合うということでいいのか……?
さっきも言ったが、できるだけ穏便に済ませたいんだけどな…?」

ヴェルム > 「…なら僕も答えよう。
王国軍第十三師団の長、ヴェルム・アーキネクトだ。
よろしく」

彼女の答えは、期待していたものではなかったが、自らを偽善者という彼女の言葉には、本質が含まれているような気がした。
その自虐めいた言葉を聞けば満足し、自らの立場を明かす。
かつてティルヒアという王国と敵対する立場にありながら、今は王国のために働く人間。
王国軍でありながらミレー族と魔族を、表立って引き入れる異色の軍勢。
そしてつい先日、星の聖猫派に協力しているという理由でとあるミレーの里を滅ぼしたと報道された師団。

「十三師団の名前は、聞いたことくらいはあるかな。
あんまり有名どころじゃなかったはずなんだけどね」

完全に孤立無援という状況にも関わらず、あんまり危機感を抱いていない様子。
彼女の目は完全に敵としてこちらを見ている。
だがこの男は、どこか哀れむような目で彼女を見ていたかもしれない。

「あはは、穏便に済ませたいなら仲良く握手でもするかい?」

そんな気もないくせに…と。

レイカ > 「…………。」

やはりか、十三師団。
ドリアードたちが話していた、星の聖猫派と関係があったミレー族。
その里を襲撃し、滅ぼしたとされている師団だ。

滅ぼしたというのは多少語弊があるかもしれない。
だが、だが……。
私の怒りは、そこには向けられなかった。
もっと別のところへ、最も憎むべき場所へとむけられていた。

「その十三師団が何の用だ……。
あいにくだが、私はその集団に加担していない。」

そして、もちろん握手なんかするつもりはない。
一瞬風が吹いた、とてもこの時期にはあり得ない、冷たい風が…。

「もっとも……王国軍にそんな言葉は通じないか…。
証拠をでっちあげて、罪をかぶせる事なんかなんとも思っていないだろうからな…。」

それで苦しんだミレー族が何人いる事か。
私の目は、だんだん吊り上がっていく。
怒りと、殺意と……そして憎しみで。

「答えろ…あの里に何の用だ。
もしまた滅ぼすつもりなら……今ここで、貴様を殺す。」

ヴェルム > こちらの立場を明かしてどうなるか、多少興味はあった。
それでどうなるという話でもあるが、彼女の怒りが向けられることはなかった。
怒りが向けられたのは、そう…もっと巨大な、王国という存在そのもの。
だからこそ彼女らは哀れに見えてしまう。

「調べる理由としては上等じゃないの。
ウチは関係ありませんって言って、はいそうですか~ってなると思う?」

ここに来た理由、言わずともわかるだろうに。
星の聖猫派という存在が、無関係のミレー族に影を落とすことになることくらい、彼女も理解しているだろう。
そしてこちらの立場も。
彼らと関わりがあるかどうか調べなければならない。
つまり里の中へ入り、調べるということ。

「誰かが王国をどうにかしてくれるのを待ってるだけの分際で、ずいぶん偉そうじゃない」

彼女の怒りはどこから来るものか。
自分には想像もつかない経験をしてきたということだろう。
だからとって、こっちに剣を向けられても困るというもの。
怒りにかまける彼女に、ついつい思っていたことを口にしてしまった。

レイカ > 「なってくれないと困る。
そもそも結界を作る力すら奪っておいて、よくそんなことを言えたものだ。」

やはり、私の危惧していた予測は当たっていた。
星の聖猫派、ミレー族のテロリストが現れたということは、関係のないミレー族までターゲットにされる。
そして、この国はミレー族にとってあまりにも過ごしにくい場所だ。

なにか理由があれば、必ずそこにしわ寄せがくる。
弱者を襲うのがこの国のやり方だから、こうなることは目に見えていた。
あの時、必死になって彼らを…便乗し攻め入ろうとする彼らを止めて、本当に良かったと思う。
もしも止められていなかったらと思うと…。

「国の飼い犬の分際の癖に、私に指図するのか?
誰かがどうにかしてくれるなんて思っちゃいないよ、私は彼らを守りたい、それだけだ。」

誰かが言っていた気がする。
私の世界は、あの狭い防壁の中にしかない。
国そのものが変わるのを待っているなんて考えこそおこがましい。
私は、私の世界を…あの里を守る、それだけだ。

「………君をあの里の中に入れるつもりはない。
すぐにここから立ち去れ、そして二度と近寄るな。
次に会ったら、その時は本当に容赦はしない。」

私は踵を返す。
これ以上はおそらく平行線になるだろうから。

ヴェルム > 「僕に言われても困るな」

別に王国軍を代表してここに来ているわけではない。
結界を作る力とか、文句を言われてもどうしようもない。
まぁ、それで気が晴れるなら好きに言わせてやろう。
テロリストの仲間と疑われて、平静としているほうがおかしい話だが。
まぁ、こっちも仕事だ。

「あんまり餌貰えない飼い犬だけどねぇ
これだけの力があって、あんな小さな村を守るためだけに使うなんてもったいない」

彼女の批判すら、皮肉ってジョークにしてしまう。
実際、あんまり餌が貰えないのは本当のところだが。
それにしても、彼女の洞察力と能力は実に興味深いもの。
正直この集落からは大した収穫は無いと思っていたが。

「見逃してくれることには感謝するよ、僕も森を焼き払いたくないからね。
それじゃあ、また会おうか」

ともあれ、このまま強行すればどちからが血を見ることになる。
それだけは避けなければならない。
男は樹海の道を戻り、里を眺めることもなくそのまま帰還の途につく。
彼女についても少々調べなければなるまい。
それに、あの場所に来た師団長は、自分が初めてではないだろうから。

レイカ > 「……ただの恨み節だ。」

こっちは本当にテロリスト、星の聖猫派には関与していない。
潔白でしかないのに、何を調べるつもりなのかはしらないが、またでっちあげるつもりなのだろう。
だが、これではっきりとしたのは、十三師団は私の敵だ、ということだ。

「力をどう使おうと勝手だろう…。
それこそ、貴様に指図されるいわれは全くない。」

また会おう、そのセリフは捨てたいところだ。
私は二度とは会いたくない…できるならば平穏に暮らしたい。
しかし、おそらくはそうもいかないのだろう…もはや。

どうやら…しばらくは忙しい日々になりそうだ。
そう思い、私はドリアードの言葉に耳を傾け、男が森から立ち去るのを確認して…里へと戻った。

ご案内:「ミレーの隠れ里」からヴェルムさんが去りました。
ご案内:「ミレーの隠れ里」からレイカさんが去りました。